城田優、主演ミュージカル『ナイン』の魅力は“多言語” 稽古での苦労は…

J-WAVEの番組『STAGE PIA WE/LIVE/MUSICAL』(ナビゲーター:中井智彦)。10月23日(金)の放送では、先週に引き続き俳優・城田 優が登場。現在稽古の真っ最中だというミュージカル『ナイン』について話を伺った。

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主人公・グイドは、素直で真っ直ぐな人間

『ナイン』はイタリアの映画監督フェデリコ・フェリーニの自伝的映画『8 1/2』を原作とするミュージカル。城田が演じるのは、スランプに陥った映画監督グイド・コンティーニ。彼を取り巻く様々な女性たちとのストーリーが展開していく。

【あらすじ】
創作スランプに陥った映画監督のグイド・コンティーニ(城田優)は、新作の撮影が迫っているにも関わらず、構想が浮かばず苦悩していた。 そんな中、結婚生活に不満を募らせた妻のルイザ(咲妃みゆ)に離婚を切り出されてしまう。グイドは妻との関係修復とスランプ打開の為、ルイザを連れてベネチアへ逃亡。スパのマリア(原田薫)が誘うベネチアの温泉で癒しの時を過ごす筈が、グイドの新作と離婚危機スキャンダルを嗅ぎつけたマスコミが押しかけてきて休まる暇もない。その上、グイドの愛人カルラ(土井ケイト)が追って来て妻との溝も深まるばかり。 挙句に映画プロデューサーのラ・フルール(前田美波里)がアシスタントで評論家のネクロフォラス(エリアンナ)を伴い脚本の催促にやってきた。撮影は4日後に迫っている。
女性たちに翻弄され現実から幻想の世界へと迷い込んだグイドは、少年時代に戻り母(春野寿美礼)の元へ。さらには自身の性を目覚めさせた娼婦サラギーナ(屋比久知奈)との出会いへと思いを馳せ、失った愛を追い求める。
迷走するグイドは、成功の鍵となる自身のミューズ、女優のクラウディア(すみれ)に新作映画への出演をオファーするが…。
ミュージカル『NINE』オフィシャルサイトより)

中井はグイドというキャラクターを、プレイボーイの代名詞であるベネチア出身の術策家ジャコモ・カサノヴァのようだと感想を述べる。城田が思うグイド像とは何なのか。

城田:僕自身もまだわかっていないんですが、すべての人に対して愛を持った人物です。僕自身もそうですし、たぶんみなさんもそうだと思うんですけれど、対女性だったとして、その女性に対して求めるものや魅力的だなと思う部分がそれぞれ違うと思うんです。性的に魅力的に見えたり、母性を感じたり、友情が芽生えたり。そのすべての意味を込めたものというか……ただただ性的にすべての女性を見ているわけではない。これはあくまで僕の解釈ですが、『ナイン』という作品においては、プロフェッショナルとしてのリレーションシップだったり、性的な目で見ている愛だったり、無償の愛だったり様々なものがあって、人それぞれまったく違うんです。

『ナイン』ではメインキャストとして8人の女性が登場する。城田を含めて9(ナイン)となるわけだが、今回のバージョンで実際に登場する女性は16人に及び、城田演じるグイドは、冒頭から16人の女性を関わることになるという。

城田:その絡み方も、全員に対して「女ったらし」になるというわけでもないので、ここがまた解釈と実際の作品の持つメッセージみたいなものが、ちょっと難しいところなんです。ただ僕自身としては、今言ったように、生きているなかでたぶん誰しもが普段から感じることなんじゃないかなと思いますし、非常に素直で真っ直ぐな人間だったんだろうと思います。もちろん妻がいながら不倫をしたり、色々な方たちと関係を持つということは「素直」という言葉だけで許されることではないかもしれないですけど。基本的には理解できる部分もあり、そういうところも彼の魅力なのかなと。色々な方たちが魅了されてしまう、センスや才能や人となりを持っていたんだろうなと思います。

作品の魅力と「多言語」への苦労

城田は今年初めにイタリアを訪れたそうだ。「8割はプライベートです」と笑うが、そこでアントニオ・バンデラスがブロードウェイで歌った『ナイン』の歌を聴いたという。

城田:それこそイタリアの街を歩きながら『ナイン』の曲をたくさん聴いていました。曲が難しくて「入ってこないなあ」と思っていました(笑)。
中井:『ナイン』は難しいですよね。
城田:ミュージカルはポップスと比べると、もともと難解に作られているし、気持ちを表現していたりするので不協和音とかも多々あります。でも『ナイン』は、僕が演じてきた作品のなかでもトップクラスに難しい。それこそ『スウィーニー・トッド』では、スティーブン・ソンドハイムによる難曲が多いと有名ですが、「(『ナイン』の作詞・作曲を担当した)モーリー・イェストン、なんでこんな曲を書いたの?」というぐらい、すごくあっちこっち変なところにいくというか……歌稽古は本当に大変でした。
中井:日本語だとまたちょっと難しいですよね。
城田:かといって、英語だったら簡単かと言われたら、僕は英語がもともとしゃべれないんです。独学で習得してなんとなく日常生活でしゃべれる程度になりましたが……『ナイン』でも何曲か英語で歌うんです。
中井:えー!
城田:だから、それもすごく大変ですよね。意味をしっかりと心に刻み、発音も含めて英語でちゃんと歌わなければいけない。かつ音もとらないといけないということで、もう歌稽古はてんやわんやでした。
中井:あはは(笑)。
城田:この作品の魅力として「多言語」があります。アメリカ版では英語、フランス語、ドイツ語、イタリア語とたくさん出てきます。日本語版でも同じように、日本語、英語、イタリア語、フランス語、ドイツ語。
中井:曲のイメージを崩さないですね。
城田:曲に関しては7、8曲が英語ですね。意外とネイティブな人が多くて。すみれ、エリアンナ、土井ケイトちゃん、そして私の4人が英語で歌います。あとはセリフでイタリア語、フランス語、ドイツ語。もうね、頭がおかしくなりそうですよ。全然わからないし。僕の場合はスペイン語も話すので、イタリア語はちょっと似ているからなんとかなるんですが、フランス語とかは本当にわけがわからないです(笑)。
中井:そうですよね(笑)。
城田:ドイツ語も出てきますし、本当にキャストのみんなはすごく頑張っています。だから多言語なのも作品の魅力です。とにかく歌に関しては難解な曲が多くて、みんなとても苦労しています。

「もう演出家の時代は終わった」に込められた思い

グイドを作り上げるうえで、演出の藤田俊太郎とどのように話を進めていったのか。城田は、自身が主演と演出を務めた『ファントム』の演出方法に通ずるところがあったと話す。

城田:役者に寄り添ってくださり、一緒に作っていく。それこそ最初の台本読みのタイミングで「もう演出家の時代は終わったんです」と声高らかにおっしゃっていたんです。
中井:どういうことですか?
城田:「これからは役者のみなさんが自分から作っていく時代だと思います」と。演出家が「こうしろ、ああしろ」という時代ではないと。もちろん彼なりの意味があって、僕自身は演出家の時代は終わっていないと思っています。それこそおもしろかったのは、藤田さんが「それを一番感じたのは、2019年に城田さんの『ファントム』を観たときなんです」という話をされて、僕はそのときに「演出がよくなかったということですね。ありがとうございます」と冗談で言いました(笑)。でも、それくらい藤田さんのなかでは役者が自分たちでいろいろなことをやっていく時代だということを言いたかったと思うんです。
中井:なるほど。
城田:藤田さんがすごく歩み寄ってくれて、色々な意見交換というか、ひとつひとつ確認をしてくれるんです。「大丈夫ですか?」「これはどう思いますか?」とか。だからそういうところもすごくやりやすいですし、そこに関しては正直まったくストレスがないし、すごく進めやすいですね。

ミュージカル『ナイン』は、TBS赤坂ACTシアターにて11月12日(木)~29日(日)に上演予定。チケットは現在発売中。

『STAGE PIA WE/LIVE/MUSICAL』では、ミュージカル俳優の中井がゲストを迎えて、ミュージカルの話や作品の解説など、さまざまな形でミュージカルの魅力をお届けする。放送は毎週金曜の22時30分から。
radikoで聴く
2020年10月30日28時59分まで

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番組情報
STAGE PIA WE/LIVE/MUSICAL
毎週金曜
22:30-23:00

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