DEAN FUJIOKAの軌跡を楽曲で辿る。「コンプレックスの塊」と語るのは?

J-WAVEで放送中の番組『ROPPONGI PASSION PIT』(ナビゲーター:DEAN FUJIOKA/三原勇希)。各界で活躍する情熱を持ったゲストを迎えて、「好き」や「情熱」をテーマにトークを展開する。

8月22日(土)のオンエアでは、自身の誕生日8月19日に新曲『Neo Dimension』を発表したPITのボス=DEAN FUJIOKAが、音楽にかける情熱を語った。

デビュー曲『My Dimension』は、意思表明だった

俳優/モデルとして活躍していたDEANは、2013年の『My Dimension』リリースを機に、本格的にアーティスト活動を開始。主演・監督作『I am ICHIHASHI 逮捕されるまで』の主題歌にも起用された同曲にDEANが込めた想いは何だったのか。

三原:ボスにとってどんな楽曲なんでしょうか。
DEAN:自己紹介かな? 意思表明、独立宣言みたいな、そういう気持ちを込めて作った曲。それまでは音楽をキャリアとして考えていなかったからね。2008年、2009年のころから自分で制作を始めるようになって、その前も趣味でトラックメイキングとかはやっていて。たとえば、ビデオアートとか映像作品のバックグラウンドミュージックにつける音ネタを作るようなことはやっていたけど、自分で歌詞を書いて歌おうと思ったのが、2008年の終わりごろ、2009年の頭ごろみたいな感じだったんだよね。

DEANは「手グセ」や「鼻歌みたいなもの」から楽曲作りをしていったと明かす。そのような制作方法だったためか、リリースまでに5年かかったと明かす。

DEAN:結局自分でもどのぐらいかかったのか覚えていないんだよね。もちろん「制作はジャカルタで始めよう」という流れにはなったんだけど、それでも中華圏でも仕事を続けていたし、いろいろなところを旅しながらだったから。そんな感じで自然発生的に作り始めたから、結局2008年、2009年ぐらいに始めて、最終的にリリースまで5年かかったというね(笑)。
三原:5年!?
DEAN:そのあいだに他の曲もいろいろ作っていたんだけど、やっぱり合間に俳優の仕事をしたり、他にもいろいろなことをやりながらだったから。映画やドラマを撮り終わったら、ジャカルタに行って制作をやって1曲2曲作って、散財をしたら貯金しに他の国で俳優とかモデルの仕事をやったり。そういうノマドスタイルで仕事をしていたから。そうこうしているうちに2010年頃、台湾で自分が参加した映画が、たまたま日本と台湾の合同プロジェクトで。日本からすごくたくさんの役者さんが来ていて、その縁があって「日本でも仕事をしないか?」みたいな感じのオファーをいただいて。それで日本での一番最初の仕事が、なんか知らないけど初監督もやることになって(笑)。だから(映画の主題歌となった)『My Dimension』という曲が自分にとっていろいろな節目、ターニングポイントを象徴するような存在だった、そんな楽曲だね。
三原:すごい! 1曲にそんなにいろいろな場所でのいろいろな人との……。
DEAN:いろいろ込めすぎた(笑)。

バリエーション豊かな1stのおかげで、今でも迷わない

2016年には初アルバム『Cycle』をリリース。レコーディングはインドネシアで行われた。

三原:ジャカルタのプロデューサー、DJ Sumoさんと一緒に制作を進めていったと。どんな方なんでしょうか。
DEAN:本当はDJ Sumantriという名前なんだけど、名前が長くて、見た目もお相撲さんみたいだから「Sumoでいいじゃん、格好いいじゃん、キャッチーだよ」って、勝手にそう呼んでる。
三原:名づけ親でもあるんですね。
DEAN:うん。
三原:私もこのアルバムを聴かせていただいて、本当に1曲1曲が全然違う要素を持った、アルバム全体がミクスチャーみたいな1枚だなと思ったんです。でも、魂はロックというか。制作はどんな風に進んでいったんですか?
DEAN:そんなにちゃんとしたプロセスじゃなかった、ぐっちゃぐちゃだったから。もうなんか……エネルギーの赴くままというのかな。ジャカルタってハッピーで住みやすいところなんだけど、法律があんまり行き届かない部分とかもあってさ。カオスな感じがいいなと思ったんだよね。社会が別の基準で回っているというか、やるべきことと、やっちゃいけないこととに、違う“ものさし”がある。そういう感じだったから、ちょっと言語化できないんだよね(笑)。あまりにも濃い日々だったから。でも、すごく混とんとしたなかで、1曲1曲を形にしていったという感じ。だから今改めて聴くと、プライベートな感じというか手作り感満載というか。もちろんサウンドとしてSumoがそこはもうビシッとやってくれているのはあるんだけど、今やろうと思ってもああいうことはできない。
三原:逆にできないですよね。
DEAN:そうそう。今だったら曲のコンセプトとかBPMのこととか、キーとかグルーヴとかどんな楽器を入れるとか、全部頭のなかで設計がある程度できちゃうからね。1個1個試して、絵描きのカラーパレットというのかな、いろいろなグラデーションがあるじゃない。あれを『Cycle』というアルバムを通して、自分のやつを作ったという感じ。
三原:絵を描いたというよりもパレット?
DEAN:絵の具を作った感じかな。自分の感情表現のカラーパレットで「こういうときはこういうアプローチをする」みたいなもののバリエーションを10曲分作った。今もあれが活きてるなと思う。ここ最近新曲をガンガン作っているんだけど、あのときの基準値があるから、迷わないんだよね。
三原:すごい。でもそこまで自分と向き合って、自分のことを理解する、表現するって、それは3年かかりますね。
DEAN:そうね(笑)、本当にかかったね。

『Sweet Talk』はコンプレックスの塊

DEANはここで、『Cycle』に収録されている『Sweet Talk』をオンエア。この楽曲は、当時のDEANでなければ書けなかったものだという。

DEAN:実はこれ、シンガポールにいたときにこのタイトルにしたのよ。シンガポールに夜中も開いている野外のフードコートみたいなところがあるんだけど、そこでこの言葉がパッと思い浮かんだ。色で言うと「3色混ざっています」みたいな感じ(笑)。この曲が自分にとって初めて3言語を1つの曲にまとめたという記念すべき曲というか……当時は頭のなかがぐっちゃぐちゃすぎて、1つの言語で文章をはじめて終わらせることができなかったのよ。
三原:へえー! じゃあもう敢えてというよりも、自然とそうなった。
DEAN:というか、これしかできなかったという感じ(笑)。もっともっと後に作った『Shelly』とかも3言語を混ぜて作っていたりするんだけど、視点の切り替えと言語の切り替えが完全にリンクしていて、意図を持ってそれをやっている。でも『Sweet Talk』は、これ以外の形が作れなかったという、コンプレックスの塊みたいな曲なんだけど……そう、3色のラブソングです。

ターニングポイントとなった『History Maker』

その後、2016年10月にリリースをした『History Maker』をオンエア。この曲も並々ならぬ情熱を持って世に出したのだという。

三原:この曲はアニメ『ユーリ!!! on ICE』のために書き下ろされた主題歌として、世界的にも話題になった楽曲です。改めてどんな想いで書いた楽曲だったんでしょう?
DEAN:チャレンジしている人を応援したいというのが、一番シンプル、コアにあるのかな。人間はどんな職業についていても「もう一歩前に」とか、さらなる高みにというか、昨日よりは今日、今日よりは明日という気持ちで頑張り続けることでポジティブな未来が待っている。そういう応援歌みたいな作品を作りたいなと思って参加させてもらった曲だね。
三原:トラックメイクにもボスが関わっているんですよね。
DEAN:本当は最初に「作詞して歌ってください」というお話をいただいたんです。歌詞をはめていって「いい感じだな」というところまではきたんだけど、「自分が歌うようなタイプの曲じゃないかもな」って思ったの。どちらかというと、もうちょっとオーケストラのバラードというか、品があって壮大な感じなんだけど、ローが効いてないというか地面を震わすような……。
三原:足踏みをするような?
DEAN:そうそう。ストンプする感じとか、躍動感みたいなのがもっとあったらすごい曲になると思って。それでプロデューサーに提案をして「自分もトラックメイキングに参加させてもらえるのであれば、もっといい曲にする自信がある」と言ったんです。もちろんそうなる可能性を持っていて、もともと梅林(太郎)さんが作ったメロディがあって、それを松司馬(拓)さんがオーケストレーションのアレンジをしてくださったというものがあったからできた。結果この曲がリリースされて、すごい規模感で広がっていって、いまだに外国に行くと「『History Maker』のDEAN FUJIOKA」みたいな感じで言ってもらえたりするんです。だから自分にとっても、1つのターニングポイントになった楽曲だなと思っています。

『Neo Dimension』に込められたストーリー

新型コロナウイルス感染拡大で世界中が大きく影響を受けている2020年。『ROPPONGI PASSION PIT』もスタートさせたDEANは、今年をどのように感じているのだろう。先日リリースされたばかりの『Neo Dimension』に対する想いも明かした。

DEAN:コロナのおかげでだいぶ予定が狂ったけど、それでもいろいろと新曲を作っていて、もう完成しているのも何曲かあるし……今まで、仕事をしすぎていたなと思ったね(笑)。自分の生活のことや身の回りのことをそのままで走り続けたという感じだったから、1回足を止めて、クリエイティブな仕事をするためにやらないといけない身辺整理みたいなことができた。家族とも一緒にすごせて、そこですごくいろいろなエネルギーやインスピレーションをもらったから。
三原:前回の番組でオンエアした『Neo Dimension』も、そういう状況下でできたものなんですか?
DEAN:これは2月にストリーミングでアコースティックライブをやって、もともとは東名阪で6公演回る予定だったんだけど、コロナで中止になった。そのときにアコースティックバージョンで作ったアレンジがすごくよくて、それをベースに新しいアレンジを作ろうということで好評だったから、『Neo Dimension』という形でそれを具体化させたという流れだね。
三原:一緒に時間をすごしてきた人と作った、必然的な変化なんですね。
DEAN:そうだね。詳しくはクレジットにいろいろと書いてあるけど、ドラムはマバちゃん、mabanuaが叩いてくれていたり。
三原:そうなんですか!
DEAN:マバちゃんともすごく縁があって。最初に日本でライブをやったときに、何回かしかやらなかったんだけど、マバちゃんとDJ BAKUちゃんと3人でバンドを組んでクラブとかでパフォーマンスをやっていたのね。そこから自分はテレビドラマとか映画とかで忙しくなっちゃって、マバちゃんもソロだったりOvallですごく活躍されて。改めて『History In The Making』のときに『Fukushima』という曲を一緒にやらせてもらって、ここにきて当時3人で演奏をしていた『My Dimension』を全然違う形でドラムを叩いてもらったというのが、自分的には隠れた1つのストーリー。
三原:本当ですね。
DEAN:日本やアジアといったいろいろなツアーを一緒に回っていくなかで横山(裕章)さんがサウンドをやってくれていたというラインもあるし、いろいろなストーリーが『Neo Dimension』にもあるんだよね。
三原:やっぱり、この1曲は特別ですね。

コロナ禍の「お題」にどう答えていくか

その後もトークははずみ、DEANは番組のエンディングで「自分の話は長くなってしまう」と反省のコメントも。しかし、自身の番組だからこそしっかり話ができたとして「こういう機会を作っていただけてありがたい」と感謝。最後に今後の活動について語った。

DEAN:音楽って今、作るという意味ではそこまで変わらないかもしれないけど、ライブパフォーマンスをするという意味ではすごく状況が変わってきている。そこで自分なりにどういう表現ができるかというところを今考えて作ろうとしていて。もちろんパンデミックという状況がずっとは続かないから、いつかはまた「生の箱でみんなで音楽を楽しむ」ということはできると思うんだけど。とはいえ、それがいつくるかというのはまだ見えないから、2020年のこういう100年に1度のパンデミックみたいななかで、どんなパフォーマンス、表現活動ができるかということ、お題に対して自分がどう答えられるかというのを具体的にやっていこうかなと思っています。
三原:楽しみにしています。

『ROPPONGI PASSION PIT』は、東京・六本木に出現した、いろいろな人の“情熱”が集まり、重なり合い、さらに熱を増して燃え上がる秘密基地として、みんなの熱い思いを電波に乗せて発信。放送は毎週土曜の23時から。
番組情報
ROPPONGI PASSION PIT
毎週土曜
23:00-23:54

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