J-WAVEで放送中の『Mercedes-Benz THE EXPERIENCE』(ナビゲーター:スガ シカオ)。その時代、その場所で、どんな音楽を聴きたいか———時代を越えて、国境を越えて、ナビゲーターのスガ シカオが旅好き・音楽好きのゲストと共に音楽談義を繰り広げる、空想型ドライブプログラムだ。
8月9日(日)のオンエアでは冨田ラボと「2000年の東京」を空想ドライブ。ここでは、2000年の思い出や当時聴いた曲、キリンジの名曲『エイリアンズ』の誕生秘話を明かした部分を紹介しよう。
そんな冨田は今回、「2000年の東京」空想ドライブを選んだ。
冨田:2000年の日常とここ最近の日常のレコーディング業界を考えても、当時は必ず外のスタジオに行ってレコーディングをしていましたよね。
スガ:行ってましたね。外のスタジオでしかレコーディングをしてなかったですね。
冨田:そう、それが基本でしたよね。家ではプリプロっていいて、準備をしたものをスタジオに持っていく文化だったじゃないですか。
スガ:毎日のようにスタジオでレコーディングを夜遅くまでやってましたよね。
当時は、レコーディング終了が25時だと早いくらいだったという。
冨田:(当時は)みんなそれが普通だった。僕はわりと早めにそのスタイルを変えたんだけど、どんどん自宅でやるプリプロ部分が本番のレコーディングと変わらなくなっていくじゃないですか。僕の自宅の地下にスタジオがあって、そこにほとんどいるので(笑)。
スガ:あそこにほとんどいるんですね(笑)。
冨田:(今は)9割くらいそこにいるけど、2000年当時は13時からレコーディングをスタートすることがほとんどだったじゃない。だから、その前にCDショップに寄って、新譜を買って車の中で聴いて、スタジオに着いても作業の合間とかに聴くんですよね。それからレコーディングをするアーティストとかスタッフも、一緒にその曲を聴きながら「これ、カッコいいね」「この何がいいね」とか話も少しして、レコーディングが終わってまた帰りに車で聴くみたいなね。
スガ:今、そのルーティンはないっすよね。
冨田:ないよね。最近、なおさら家にいるようになったから、あの日常が非常に懐かしく思える。2000年の東京は楽しかったなって気持ちがありますね。
2000年当時、冨田はプロデュースを始めて間もない頃だったと話す一方で、スガはその頃、人生最大のスランプに陥った年だったと振り返った。
スガ:この曲、めっちゃ好き。
冨田:カッコいいよね。
スガ:でも、2000年の曲じゃないですよね?
冨田:これは1970年代の曲なんだけど、2000年近辺はリイシューものしか聴いてなかったんですよ。だからその頃を思い出すと、1970年代とか1980年代の曲ばっかり思い出しちゃうんです。
スガ:この曲はいつ聴いてもいいですよね。
冨田:よく景気づけに聴いてました。この曲はEarth, Wind & FireのキーボードのLarry Dunnがけっこうアレンジしているんです。他の曲よりなんかシンフォニックでしょ。
スガ:俺も仕事行く前にこの曲かけて行こ(笑)。
続いて、冨田はErik Tagg『Got To Be Loving You』を選曲した。
スガ:都会的なジャズ・ソウルですね。これも1970年代ですよね。
冨田:そうですね。Erik Taggはオランダのアーティストで、全然知ってる人がいなかったんですよ。これこそ僕もリイシューされたものを聴いて、「アメリカ以外でも(リイシュー盤が)作られていたんだな」って。
スガ:めちゃくちゃアメリカ臭しますけどね。
冨田:彼はその後、ギタリストのLee Ritenourが歌もののアルバムを制作した時に、フィーチャリング・ボーカリストを務めて、それから有名になるんですよね。リイシューの中でも「こんなにいいものがあるんだ」と発見した曲です。
最後に冨田はSteely Dan『Gaslighting Abbie』を紹介した。
スガ:この曲が入っているアルバム『Two Against Nature』は発売日に買った思い出はあります。
冨田:僕も発売日に買ってスタジオで聴きましたよ。
スガ:このアルバムは2000年に発売されましたけど、けっこう久しぶりのリリースでしたよね。
冨田:Steely Dan名義だと、1980年の『Gaucho』以来ですよね。1980年代と1990年代をすっ飛ばして、20年ぶりのリリースでしたね。 スガ:すごく話題になりましたよね。1970年代に作った黄金期からしばらくしてアルバムを出すって勇気はすごいですよね。
冨田:すごいプレッシャーだよね。
スガ:何をやっても過去は超えられないと思われちゃうけど、このアルバムもすごかったですからね。
スガ:キリンジって僕と同じ頃にデビューしていて、ジャンルも「ロック以外」っていうくくり方をされていたじゃないですか。キリンジはなんとなく同じフィールドでファンもすごくかぶっていたんです。
冨田:そうかもしれない。
スガ:会ったことはないから音源しか知らないけど、ちょっとしたライバル意識もあって。曲が出るたびに気になりながら、2000年に出た『3』っていうアルバムは、完全にやられた感があって、いまだに僕はこのアルバムを愛聴しているんです。いったい、このアルバムがどんな風に作られていたのかっていつか冨田さんに訊こうと思ってたんです。たとえば、このアルバムの平成の名曲に数えられる『エイリアンズ』もどういう風にできあがったのかって。
冨田:『3』は1999年と2000年くらいで作りました。キリンジのスタッフと「この年は攻めよう」って話していて、アルバムを出す前にシングルを2、3枚出していたんです。だからキリンジだけでも、すごく忙しかったことを覚えています。しかも当時はMISIAの『Everything』も『3』のほとんど並行で制作していたんですよ。
スガ:スゲえ話だな。相当過酷なスケジュールの中で作ってたんですね。
冨田:あの年はけっこうスケジュールが詰まっていましたね。
スガはキリンジの『エイリアンズ』について、「ボーカルのグルーブと後ろで流れるトラックのグルーブがほんのちょっとズレている」と分析する。
スガ:ボーカルに寄せると「もうちょっとテンポをあげてほしい」って感じで聴こえて、トラックに寄せると「もうちょっとハネないでほしい」って感じに聴こえるんですよ。
冨田:ああ、なるほどね。
スガ:でも、これは相当聴き込んでから発見したんです。
冨田:すごく聴き込んでくれてうれしいです(笑)。今、スガさんの話で急に思い出したことがあって。『エイリアンズ』のミックスのときに、いつも僕がキリンジでやっていた音像よりも、わりとドラムを立たせようってコンセプトでやってたんです。普通のポップスなんだけど、2000年くらいになるとドラミングとかにヒップホップとかの影響が出てきて、音像が少し変わってきてたんですよね。だから『エイリアンズ』でも、クローズドリムショットとかを普段よりデカくして、ドラム全体をカタめにして、やわらかい歌なんだけどビートはちょっとカタい感じでいこうと。
スガ:なるほど!
冨田:ミックス中にその話をしたことを、今思い出しました。
スガ:だから、これは埋まっているドラムに対する歌なんですよね。
冨田:そうなんだよね。ドラムを埋めてしまえば普通の人は気づかないと思うけど、それもなく収まりがよかったかもしれないですね。
スガ:それもひとつの『エイリアンズ』のエッセンスになっていると思いますよね。
冨田:そう思いますね。完全にまとまったものではないから、歌が浮き出たりとか言葉が浮き出たりするポイントがあるような気がしますね。
冨田は8月14日(金)にザ・プリンス パークタワー東京で開催の「TMC week 2020 〜TOKYO MUSIC CRUISE Spin-Off〜」に出演する。 https://www.princehotels.co.jp/parktower/event/contents/tokyomusiccruise/
また、7月に冨田の著書『ナイトフライ 録音芸術の作法と鑑賞法』(DU BOOKS)の電子書籍化され、Spotifyでは現在冨田ラボ(冨田恵一)Worksのプレイリストを公開中だ。
詳しくは冨田ラボの公式サイトから。 http://www.tomitalab.com/
スガが空想ドライブをナビゲートする『Mercedes-Benz THE EXPERIENCE』のオンエアは、毎週日曜21時から。
【番組情報】 番組名:『Mercedes-Benz THE EXPERIENCE』 放送日時:毎週日曜 21:00-21:54 オフィシャルサイト: https://www.j-wave.co.jp/original/experience/
8月9日(日)のオンエアでは冨田ラボと「2000年の東京」を空想ドライブ。ここでは、2000年の思い出や当時聴いた曲、キリンジの名曲『エイリアンズ』の誕生秘話を明かした部分を紹介しよう。
レコーディングの「25時終了」が当たり前だった頃
冨田ラボは音楽プロデューサー・冨田恵一のソロプロジェクト。これまでにスガをはじめ、キリンジや椎名林檎、木村カエラなど数多くのアーティストに楽曲を提供している。そんな冨田は今回、「2000年の東京」空想ドライブを選んだ。
冨田:2000年の日常とここ最近の日常のレコーディング業界を考えても、当時は必ず外のスタジオに行ってレコーディングをしていましたよね。
スガ:行ってましたね。外のスタジオでしかレコーディングをしてなかったですね。
冨田:そう、それが基本でしたよね。家ではプリプロっていいて、準備をしたものをスタジオに持っていく文化だったじゃないですか。
スガ:毎日のようにスタジオでレコーディングを夜遅くまでやってましたよね。
当時は、レコーディング終了が25時だと早いくらいだったという。
冨田:(当時は)みんなそれが普通だった。僕はわりと早めにそのスタイルを変えたんだけど、どんどん自宅でやるプリプロ部分が本番のレコーディングと変わらなくなっていくじゃないですか。僕の自宅の地下にスタジオがあって、そこにほとんどいるので(笑)。
スガ:あそこにほとんどいるんですね(笑)。
冨田:(今は)9割くらいそこにいるけど、2000年当時は13時からレコーディングをスタートすることがほとんどだったじゃない。だから、その前にCDショップに寄って、新譜を買って車の中で聴いて、スタジオに着いても作業の合間とかに聴くんですよね。それからレコーディングをするアーティストとかスタッフも、一緒にその曲を聴きながら「これ、カッコいいね」「この何がいいね」とか話も少しして、レコーディングが終わってまた帰りに車で聴くみたいなね。
スガ:今、そのルーティンはないっすよね。
冨田:ないよね。最近、なおさら家にいるようになったから、あの日常が非常に懐かしく思える。2000年の東京は楽しかったなって気持ちがありますね。
2000年当時、冨田はプロデュースを始めて間もない頃だったと話す一方で、スガはその頃、人生最大のスランプに陥った年だったと振り返った。
2000年に聴いていた、リイシューの楽曲
冨田は「2000年の東京」の空想ドライブにDee Dee Bridgewater『Tequila Mockingbird』を選曲した。スガ:この曲、めっちゃ好き。
冨田:カッコいいよね。
スガ:でも、2000年の曲じゃないですよね?
冨田:これは1970年代の曲なんだけど、2000年近辺はリイシューものしか聴いてなかったんですよ。だからその頃を思い出すと、1970年代とか1980年代の曲ばっかり思い出しちゃうんです。
スガ:この曲はいつ聴いてもいいですよね。
冨田:よく景気づけに聴いてました。この曲はEarth, Wind & FireのキーボードのLarry Dunnがけっこうアレンジしているんです。他の曲よりなんかシンフォニックでしょ。
スガ:俺も仕事行く前にこの曲かけて行こ(笑)。
続いて、冨田はErik Tagg『Got To Be Loving You』を選曲した。
スガ:都会的なジャズ・ソウルですね。これも1970年代ですよね。
冨田:そうですね。Erik Taggはオランダのアーティストで、全然知ってる人がいなかったんですよ。これこそ僕もリイシューされたものを聴いて、「アメリカ以外でも(リイシュー盤が)作られていたんだな」って。
スガ:めちゃくちゃアメリカ臭しますけどね。
冨田:彼はその後、ギタリストのLee Ritenourが歌もののアルバムを制作した時に、フィーチャリング・ボーカリストを務めて、それから有名になるんですよね。リイシューの中でも「こんなにいいものがあるんだ」と発見した曲です。
最後に冨田はSteely Dan『Gaslighting Abbie』を紹介した。
スガ:この曲が入っているアルバム『Two Against Nature』は発売日に買った思い出はあります。
冨田:僕も発売日に買ってスタジオで聴きましたよ。
スガ:このアルバムは2000年に発売されましたけど、けっこう久しぶりのリリースでしたよね。
冨田:Steely Dan名義だと、1980年の『Gaucho』以来ですよね。1980年代と1990年代をすっ飛ばして、20年ぶりのリリースでしたね。 スガ:すごく話題になりましたよね。1970年代に作った黄金期からしばらくしてアルバムを出すって勇気はすごいですよね。
冨田:すごいプレッシャーだよね。
スガ:何をやっても過去は超えられないと思われちゃうけど、このアルバムもすごかったですからね。
キリンジの『エイリアンズ』を聴き込むと…
スガは冨田に「キリンジについてどうしても訊きたいことがある」と切り出した。スガ:キリンジって僕と同じ頃にデビューしていて、ジャンルも「ロック以外」っていうくくり方をされていたじゃないですか。キリンジはなんとなく同じフィールドでファンもすごくかぶっていたんです。
冨田:そうかもしれない。
スガ:会ったことはないから音源しか知らないけど、ちょっとしたライバル意識もあって。曲が出るたびに気になりながら、2000年に出た『3』っていうアルバムは、完全にやられた感があって、いまだに僕はこのアルバムを愛聴しているんです。いったい、このアルバムがどんな風に作られていたのかっていつか冨田さんに訊こうと思ってたんです。たとえば、このアルバムの平成の名曲に数えられる『エイリアンズ』もどういう風にできあがったのかって。
冨田:『3』は1999年と2000年くらいで作りました。キリンジのスタッフと「この年は攻めよう」って話していて、アルバムを出す前にシングルを2、3枚出していたんです。だからキリンジだけでも、すごく忙しかったことを覚えています。しかも当時はMISIAの『Everything』も『3』のほとんど並行で制作していたんですよ。
スガ:スゲえ話だな。相当過酷なスケジュールの中で作ってたんですね。
冨田:あの年はけっこうスケジュールが詰まっていましたね。
スガはキリンジの『エイリアンズ』について、「ボーカルのグルーブと後ろで流れるトラックのグルーブがほんのちょっとズレている」と分析する。
スガ:ボーカルに寄せると「もうちょっとテンポをあげてほしい」って感じで聴こえて、トラックに寄せると「もうちょっとハネないでほしい」って感じに聴こえるんですよ。
冨田:ああ、なるほどね。
スガ:でも、これは相当聴き込んでから発見したんです。
冨田:すごく聴き込んでくれてうれしいです(笑)。今、スガさんの話で急に思い出したことがあって。『エイリアンズ』のミックスのときに、いつも僕がキリンジでやっていた音像よりも、わりとドラムを立たせようってコンセプトでやってたんです。普通のポップスなんだけど、2000年くらいになるとドラミングとかにヒップホップとかの影響が出てきて、音像が少し変わってきてたんですよね。だから『エイリアンズ』でも、クローズドリムショットとかを普段よりデカくして、ドラム全体をカタめにして、やわらかい歌なんだけどビートはちょっとカタい感じでいこうと。
スガ:なるほど!
冨田:ミックス中にその話をしたことを、今思い出しました。
スガ:だから、これは埋まっているドラムに対する歌なんですよね。
冨田:そうなんだよね。ドラムを埋めてしまえば普通の人は気づかないと思うけど、それもなく収まりがよかったかもしれないですね。
スガ:それもひとつの『エイリアンズ』のエッセンスになっていると思いますよね。
冨田:そう思いますね。完全にまとまったものではないから、歌が浮き出たりとか言葉が浮き出たりするポイントがあるような気がしますね。
冨田は8月14日(金)にザ・プリンス パークタワー東京で開催の「TMC week 2020 〜TOKYO MUSIC CRUISE Spin-Off〜」に出演する。 https://www.princehotels.co.jp/parktower/event/contents/tokyomusiccruise/
また、7月に冨田の著書『ナイトフライ 録音芸術の作法と鑑賞法』(DU BOOKS)の電子書籍化され、Spotifyでは現在冨田ラボ(冨田恵一)Worksのプレイリストを公開中だ。
詳しくは冨田ラボの公式サイトから。 http://www.tomitalab.com/
スガが空想ドライブをナビゲートする『Mercedes-Benz THE EXPERIENCE』のオンエアは、毎週日曜21時から。
【番組情報】 番組名:『Mercedes-Benz THE EXPERIENCE』 放送日時:毎週日曜 21:00-21:54 オフィシャルサイト: https://www.j-wave.co.jp/original/experience/
radikoで聴く
2020年8月16日28時59分まで
PC・スマホアプリ「radiko.jpプレミアム」(有料)なら、日本全国どこにいてもJ-WAVEが楽しめます。番組放送後1週間は「radiko.jpタイムフリー」機能で聴き直せます。
番組情報
- Mercedes-Benz THE EXPERIENCE
-
毎週日曜21:00-21:54