新しい生活を進めるにあたって改めて見つめ直したい「価値観」を、世界からヒントを得ながらリスナーと一緒に考えていくJ-WAVE『ACROSS THE SKY』(ナビゲーター:玄理)のワンコーナー「WORLD CONNECTION」。
6月7日(日)のオンエアでは、社会学者・上野千鶴子さんがリモート出演。「あなたが感じるジェンダー・ギャップ」をテーマに、ジェンダーにまつわるさまざまなトピックを取り上げた。
■広まるフェミニズム。逆風が追い風に変わった
認定NPO法人ウィメンズ・アクション・ネットワーク(WAN)理事長である上野さんに、日本が先進国のなかで最も遅れを取っている「ジェンダーの平等」について訊いた。WANは、女性のための情報と活動を繋ぐポータルサイトで、さまざまな人物が投稿を通じて情報をやりとりしている。例えば現在、トップに表示されているのは、コロナ禍における女性の生き方についての情報だ。
・ウィメンズ・アクション・ネットワーク公式サイト
https://wan.or.jp/
玄理:最近は、フェミニズムやフェミニストという言葉をよく耳にするようになったと思います。ですが、この言葉の意味をきちんと理解していない方もいると思います。簡単に説明をしていただけますか。
上野:フェミニズムというのは、女性への差別を反対し、男女平等を求める思想です。昔はフェミニストと言えば、レディーファーストをする男の代名詞だったのですが、今はそんな意味では使われていませんね。日本では1970年に女性解放運動である「ウーマン・リブ」が生まれました。
最近では、セクシャルハラスメントや性的暴行の被害体験を告白・共有する「#MeToo」が、フェミニズムの大きなムーブメントとなった。
上野:ここ数年間で、女性に対する風向きが変わりましたね。これまでフェミニストは大きなバッシングを受けていましたが、逆風が追い風になりました。フェミニストという言葉を知るきっかけも、最近はいろいろとありますね。フェミニスト活動をしている女優のエマ・ワトソンだったり、韓国の活動から知ったりと、さまざまです。
玄理:『82年生まれ、キム・ジヨン』(筑摩書房)という小説がベストセラーになりましたよね。内容は韓国の話ですが、日本でも同様のことが起こっているなと感じました。日常にある小さな出来事でも、「これってジェンダー・ギャップだったんだな」と気づかされました。
『82年生まれ、キム・ジヨン』は映画化もされ、日本では2020年10月9日に公開予定だ。上野は「ぜひ観てくださいね」とコメントした。
■男女格差を測るジェンダー・ギャップ指数で、日本は153ヵ国中121位…なぜ低い?
世界経済フォーラムは、男女格差を測るジェンダー・ギャップ指数を毎年公表している。2020年の発表では、日本は153ヵ国中121位という結果だった。先進国のなかで最下位という現状に、上野さんは自身の見解を述べた。
玄理:日本でジェンダー・ギャップを語ったときに、「男女差別なんてありますか?」とか「女性のほうが優遇されていませんか?」といった男性側の意見を耳にすることがあるんですね。国内での体感と国外からの評価のズレというのは、どうして起こってしまうのでしょうか?
上野:日本がどんどん悪くなっているわけではなくて、ジェンダー・ギャップについてずっと変わらないままだから今の状況が生まれているんです。日本は2003年に国際連合から「夫婦別姓を認めなさい」と言われているのに、それさえもやらないですからね。これをやれば、(ジェンダー・ギャップ指数の)ポイントはまず上がります。予算ゼロで国会でできるのに、この程度のこともしない社会で暮らしているんです。
近くの国では、韓国は変化にスピード感があるという。
上野:国会議員の女性比率を増やしましたし、あっと言う間に性暴力を禁止する法律も作りました。日本にはありませんから、どんどん世界から取り残されています。
玄理:なるほど。日本が悪くなっているというよりも、韓国など世界各国が真剣にジェンダー・ギャップについて向き合っていくなかで、日本は変わっていない。だからジェンダー・ギャップ指数が低いのですね。
上野:その通りです。
■女性専用車両は逆差別と怒る男性へ「男が男に怒りの声をあげて」
男女別姓、女性専用車両など、女性問題について口にすると、「気にしない人もいる」「逆差別だ」などの反論があがる。上野は、どう考えているのか。
玄理:たとえば男女別姓の問題なら「別姓でもいいという女性もいる」と言われることがありますよね。女性専用車両という話なら、「男性車両がないのは逆差別だ」という意見があがったりしますよね。何かしら議題をあげていくと反論があります。それは本当に逆差別なのでしょうか。
上野:女性専用車両がができた理由を考えてほしいです。男女混成車両だと痴漢がたくさんいるから、女性の自衛のためにやむなく作ったものですよね。「逆差別だ」と怒りを女性に向けるのではなくて、痴漢をする男性に対して「あなたのような人がいるから男性は迷惑をしているんだ」と、男が男に怒りの声をあげてほしいです。
玄理も都心で電車通学をしていた高校時代、自身や周囲が痴漢被害に遭うことがあったという。上野は、とある被害者のエピソードを伝えた。
上野:中学生のとき、痴漢に遭ったと教師に訴えたら「まあそんなもんだ」とニヤニヤしながら言われて、それ以来、教師に対する信頼を失ったという20代の女性がいました。
玄理:それはそうなりますね……。「たかが痴漢」と思う人もいるかもしれませんが、トラウマになることもあります。私も電車は未だに苦手です。
上野:ものすごく不愉快ですよね。
■「俺は男だからわからない」と言う上司、どうすればいい?
番組では、多くのリスナーから相談や、日常で女性差別を感じるエピソードが寄せられた。
「私の職場は女性の多い保育園です。50代の男性上司に仕事上の相談をすると、『俺は男だからわからない』と言い、話し合いになりません。解決法をみんなで話し合っているのに、最後は“男女差”に落とし込まれ、力づくで問題がなかったことにされてしまいます。どう接すればいいのでしょうか」
上野:(その上司は)「わからない」なら、その立場を引いたほうがいいですね(笑)。男の人だって、長いあいだ保育に関わっているなら、わからないわけがない。僕はプロじゃない、僕は無能だと言っているだけでしょう。
玄理:「俺はわからない」ではなく「男だから」と言うのは、他の男性にも失礼ですよね。
上野:全くその通りです。「わからないなら引っ込んどいてください、私たちが決めますから」と対応しましょう。
「私は採用のコンサルティングをしています。新卒採用、中途採用において、日系の大手有名企業は、男性を多く採用します。出産や子育て、配偶者の転勤により辞めるリスクがないからです。したがって、優秀な女性の一部しか(日系の大手有名企業には)採用されず、他の優秀な女性は中小企業やベンチャーに流れます」
上野:そういう採用の仕方をすることで、日本の大手企業は優秀な女性たちをを逃してしまう。その女性たちが海外にいくと考えたら、そのうち(ビジネスの競争に)負けますよ。絶対にツケがくると思います。
日々降り積もっていくジェンダーギャップに、ヒントを与えるオンエアとなった。WANでは現在、「WAN基金コロナ禍対策女性連帯プロジェクト」を行っている。新型コロナウイルスの影響で収入が途絶えて苦しんでいるシングルマザーや単身女性たちを支援する取り組みだ。以下のページで詳細を確認し、賛同する人は寄付してみては。
・「WAN基金コロナ禍対策女性連帯プロジェクト」のおしらせ
https://wan.or.jp/article/show/8925
「WORLD CONNECTION」では、さまざまなトピックの「今」を取り上げる。オンエアは9時20分頃から。
【この記事の放送回をradikoで聴く】(2020年6月14日28時59分まで)
PC・スマホアプリ「radiko.jpプレミアム」(有料)なら、日本全国どこにいてもJ-WAVEが楽しめます。番組放送後1週間は「radiko.jpタイムフリー」機能で聴き直せます。
【番組情報】
番組名:『ACROSS THE SKY』
放送日時:毎週日曜 9時-12時
オフィシャルサイト:https://www.j-wave.co.jp/original/acrossthesky/
6月7日(日)のオンエアでは、社会学者・上野千鶴子さんがリモート出演。「あなたが感じるジェンダー・ギャップ」をテーマに、ジェンダーにまつわるさまざまなトピックを取り上げた。
■広まるフェミニズム。逆風が追い風に変わった
認定NPO法人ウィメンズ・アクション・ネットワーク(WAN)理事長である上野さんに、日本が先進国のなかで最も遅れを取っている「ジェンダーの平等」について訊いた。WANは、女性のための情報と活動を繋ぐポータルサイトで、さまざまな人物が投稿を通じて情報をやりとりしている。例えば現在、トップに表示されているのは、コロナ禍における女性の生き方についての情報だ。
・ウィメンズ・アクション・ネットワーク公式サイト
https://wan.or.jp/
玄理:最近は、フェミニズムやフェミニストという言葉をよく耳にするようになったと思います。ですが、この言葉の意味をきちんと理解していない方もいると思います。簡単に説明をしていただけますか。
上野:フェミニズムというのは、女性への差別を反対し、男女平等を求める思想です。昔はフェミニストと言えば、レディーファーストをする男の代名詞だったのですが、今はそんな意味では使われていませんね。日本では1970年に女性解放運動である「ウーマン・リブ」が生まれました。
最近では、セクシャルハラスメントや性的暴行の被害体験を告白・共有する「#MeToo」が、フェミニズムの大きなムーブメントとなった。
上野:ここ数年間で、女性に対する風向きが変わりましたね。これまでフェミニストは大きなバッシングを受けていましたが、逆風が追い風になりました。フェミニストという言葉を知るきっかけも、最近はいろいろとありますね。フェミニスト活動をしている女優のエマ・ワトソンだったり、韓国の活動から知ったりと、さまざまです。
玄理:『82年生まれ、キム・ジヨン』(筑摩書房)という小説がベストセラーになりましたよね。内容は韓国の話ですが、日本でも同様のことが起こっているなと感じました。日常にある小さな出来事でも、「これってジェンダー・ギャップだったんだな」と気づかされました。
『82年生まれ、キム・ジヨン』は映画化もされ、日本では2020年10月9日に公開予定だ。上野は「ぜひ観てくださいね」とコメントした。
■男女格差を測るジェンダー・ギャップ指数で、日本は153ヵ国中121位…なぜ低い?
世界経済フォーラムは、男女格差を測るジェンダー・ギャップ指数を毎年公表している。2020年の発表では、日本は153ヵ国中121位という結果だった。先進国のなかで最下位という現状に、上野さんは自身の見解を述べた。
玄理:日本でジェンダー・ギャップを語ったときに、「男女差別なんてありますか?」とか「女性のほうが優遇されていませんか?」といった男性側の意見を耳にすることがあるんですね。国内での体感と国外からの評価のズレというのは、どうして起こってしまうのでしょうか?
上野:日本がどんどん悪くなっているわけではなくて、ジェンダー・ギャップについてずっと変わらないままだから今の状況が生まれているんです。日本は2003年に国際連合から「夫婦別姓を認めなさい」と言われているのに、それさえもやらないですからね。これをやれば、(ジェンダー・ギャップ指数の)ポイントはまず上がります。予算ゼロで国会でできるのに、この程度のこともしない社会で暮らしているんです。
近くの国では、韓国は変化にスピード感があるという。
上野:国会議員の女性比率を増やしましたし、あっと言う間に性暴力を禁止する法律も作りました。日本にはありませんから、どんどん世界から取り残されています。
玄理:なるほど。日本が悪くなっているというよりも、韓国など世界各国が真剣にジェンダー・ギャップについて向き合っていくなかで、日本は変わっていない。だからジェンダー・ギャップ指数が低いのですね。
上野:その通りです。
■女性専用車両は逆差別と怒る男性へ「男が男に怒りの声をあげて」
男女別姓、女性専用車両など、女性問題について口にすると、「気にしない人もいる」「逆差別だ」などの反論があがる。上野は、どう考えているのか。
玄理:たとえば男女別姓の問題なら「別姓でもいいという女性もいる」と言われることがありますよね。女性専用車両という話なら、「男性車両がないのは逆差別だ」という意見があがったりしますよね。何かしら議題をあげていくと反論があります。それは本当に逆差別なのでしょうか。
上野:女性専用車両がができた理由を考えてほしいです。男女混成車両だと痴漢がたくさんいるから、女性の自衛のためにやむなく作ったものですよね。「逆差別だ」と怒りを女性に向けるのではなくて、痴漢をする男性に対して「あなたのような人がいるから男性は迷惑をしているんだ」と、男が男に怒りの声をあげてほしいです。
玄理も都心で電車通学をしていた高校時代、自身や周囲が痴漢被害に遭うことがあったという。上野は、とある被害者のエピソードを伝えた。
上野:中学生のとき、痴漢に遭ったと教師に訴えたら「まあそんなもんだ」とニヤニヤしながら言われて、それ以来、教師に対する信頼を失ったという20代の女性がいました。
玄理:それはそうなりますね……。「たかが痴漢」と思う人もいるかもしれませんが、トラウマになることもあります。私も電車は未だに苦手です。
上野:ものすごく不愉快ですよね。
■「俺は男だからわからない」と言う上司、どうすればいい?
番組では、多くのリスナーから相談や、日常で女性差別を感じるエピソードが寄せられた。
「私の職場は女性の多い保育園です。50代の男性上司に仕事上の相談をすると、『俺は男だからわからない』と言い、話し合いになりません。解決法をみんなで話し合っているのに、最後は“男女差”に落とし込まれ、力づくで問題がなかったことにされてしまいます。どう接すればいいのでしょうか」
上野:(その上司は)「わからない」なら、その立場を引いたほうがいいですね(笑)。男の人だって、長いあいだ保育に関わっているなら、わからないわけがない。僕はプロじゃない、僕は無能だと言っているだけでしょう。
玄理:「俺はわからない」ではなく「男だから」と言うのは、他の男性にも失礼ですよね。
上野:全くその通りです。「わからないなら引っ込んどいてください、私たちが決めますから」と対応しましょう。
「私は採用のコンサルティングをしています。新卒採用、中途採用において、日系の大手有名企業は、男性を多く採用します。出産や子育て、配偶者の転勤により辞めるリスクがないからです。したがって、優秀な女性の一部しか(日系の大手有名企業には)採用されず、他の優秀な女性は中小企業やベンチャーに流れます」
上野:そういう採用の仕方をすることで、日本の大手企業は優秀な女性たちをを逃してしまう。その女性たちが海外にいくと考えたら、そのうち(ビジネスの競争に)負けますよ。絶対にツケがくると思います。
日々降り積もっていくジェンダーギャップに、ヒントを与えるオンエアとなった。WANでは現在、「WAN基金コロナ禍対策女性連帯プロジェクト」を行っている。新型コロナウイルスの影響で収入が途絶えて苦しんでいるシングルマザーや単身女性たちを支援する取り組みだ。以下のページで詳細を確認し、賛同する人は寄付してみては。
・「WAN基金コロナ禍対策女性連帯プロジェクト」のおしらせ
https://wan.or.jp/article/show/8925
「WORLD CONNECTION」では、さまざまなトピックの「今」を取り上げる。オンエアは9時20分頃から。
【この記事の放送回をradikoで聴く】(2020年6月14日28時59分まで)
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【番組情報】
番組名:『ACROSS THE SKY』
放送日時:毎週日曜 9時-12時
オフィシャルサイト:https://www.j-wave.co.jp/original/acrossthesky/
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