J-WAVEで放送中の番組『INNOVATION WORLD』(ナビゲーター:川田十夢)のワンコーナー「KYOCERA TECHNOLOGY COLLEGE」。5月8日(金)のオンエアでは、いきものがかり・水野良樹がリモート出演。「これからの未来、音楽を通じてできること」をテーマに、。「Google ハングアウト」を活用して学生向けの講義をおこなった。
■新型コロナで「すごく悔しい」現状…今後の課題は
新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、あらゆるライブやコンサートが延期・中止となっている。この状況について、水野に心境を伺った。
水野:そういう意味では当事者で、ホールツアーが全部延期になってしまいました。実際に予定しているライブ公演がほとんどできない状態です。今日はたまたま作業部屋なんですけど、外部のレコーディングスタジオを使ってみんなで集まることもなかなかしづらい状況にあるので、制作もできないですね。基本的にはまず身動きが取れない状態からどうやっていくか、みたいな話になってしまっています。
川田:いきものがかりのコンサートやライブを何回か拝見していますけど、大がかりで、毎回趣向を凝らした時間帯があるので大変ですよね。延期も再起動も大変だろうなと思います。
水野:そうですね。関わっているスタッフが100人規模とかなので、その準備の量を考えると、すごく悔しいところはあります。
現在、SNSで「#うたつなぎ」などのバトンやチャリティの動きが盛んだ。水野は「それは当たり前にあるべき」としつつ、「一方で、この状況が1、2年続いていくということも考えられる」と懸念する。
水野:この状況を契機に、モノづくりの方法や届け方がどんどんと変わっていくと思うんです。なので、それに対してどう向き合っていくのかを本気で考えていかないといけないんだろうなと思っています。それぞれの環境がかなり違うじゃないですか。音源制作を全部できるという方もいれば、僕もそうですけど、あんまりできないという方もいる。それぞれが持っている個別の環境によって、ずいぶん差が出てしまうというのが、これからの課題になってくると思います。各個人がよりモノを作りやすい、届けやすいという環境を、組織側が手助けしないといけないんじゃないかなと思っています。
■全員が当事者だからこそ…
新型コロナウイルスを取り巻く状況の中で、川田は「インディペンデント(インディーズ)の人が気軽に演奏しづらいだろうなと思う」と考えを述べる。水野は、インディペンデントの良さを認めながらも「多くの人が関わることによって出来上がる面白さもある」と、自身の見解をこう語る。
水野:僕ら(いきものがかり)はたぶん人の力を借りてやっているグループ。だから、「人が集まって、いろいろなものの集合地みたいなもので制作されていくことが面白い」というのがなくなっちゃうのは、もったいないなという気はします。
川田:そういった状況のなかで、「今こういうことをやっているよ」ということを、言える範囲で教えてください。
水野:正直、なかなか手がないですよね。作品を作って届けられる状況ができていくとは思いますが、その上で作品のテーマがあまり“分断”に寄らないようにしたい。新型コロナウイルスが今までの災害と違うのは、ほぼ全員が当事者になってしまうところ。「あそこの街で何かが起こってしまった」という傍観者でいられずに、全員が当事者で、全員がある意味、直接的に政治であったり、災害への対策に意見を持ったり発言をしたりするべき状況になってしまうと、基本的には分断にしかならいない。「あなたの生活と私の生活は違うから、この政策だとあなたの生活は保てるけど、私の生活は保てないから怒ります」ということがいくらでも起きてしまう。世の中全体がさらにバラバラになっていく状況のなかで、それをオブラートに包むのが文化の役目のような気がするんです。分断のあるひとつの勢力の意見にくみするような音楽ではなく、なるべくつなぐようなものを作っていきたい。それが僕の一番の政治性だと思うので、それを出していきたいと思っています。その手段が奪われているところもありますが、なんとか踏みとどまってやりたいです。
川田:水野さんが作るいきものがかりの音楽は、全般的に「みんな立場は違うけどポジティブな方向の旗印に向かっていく」という楽曲が多い。だから、今こういうときに新しいものを作らなきゃいけないというのは難しいときですよね。
水野:難しいですね(笑)。僕自身も当事者だから、たとえば政策が発表されたら、それに対して怒りを持つこともあるし、「なんでこんな状況なんだ」って思うこともあるわけです。それとのバランスをとるのもなかなか難しい。だけど、そこをなるべく諦めたくないと思っています。
■いきものがかり『笑顔』の歌詞
学生から「分断という言葉を聞いて、いきものがかりさんの曲を思い出しました。『笑顔』という曲がすごく好きで、歌詞がすごくこの時代に向いていると感じました。作られた当時の意図を教えてください」という質問が投げかけられた。
水野:『笑顔』を作った2013年当時も震災が起きていたので、「分断」という意味では今と同じような状況も生まれていました。なので、そこは意識にあったと思います。あとは、基本的に僕は人と人とは分かり合えないというか、「他人と他人はどんなに心をひとつにしようとしても分かり合えない」というところからスタートしています。だけど、一緒の空間で一緒に生活していかなければならなかったり、全然考えが違う人とも議論を重ねていかなければならなかったりというのが現実だと思うんです。なので、そこらへんを分かち合うというのは、ひとつの問題に対してもひとつの喜びに対しても、それぞれの側面でしか見ることができないけれども、それを媒体に分かり合えない人たち同士がつながれるんじゃないか、みたいな気持ちがすごくあるんです。そこらへんを背景として書いたんじゃないかなと思います。
川田:水野さんの書く音楽は「何かが起こってから書く歌」がひとつ機能性としてあるけれども、「あのときよかったな」とポジティブに作用することもあります。
水野:なんか試されますよね。
川田:ポップであることの強度というか。こうして(学生が)歌詞を思い出してくれて、いま聴きたい曲として挙がっているわけですから。
水野:すごくうれしいです。励みになります。
『INNOVATION WORLD』のワンコーナー「KYOCERA TECHNOLOGY COLLEGE」では、毎月1名のゲスト講師が登場。週替わりのテーマで学生向けの授業を実施する。放送は毎週金曜の21時40分ごろから。
【この記事の放送回をradikoで聴く】(2020年5月15日28時59分まで)
PC・スマホアプリ「radiko.jpプレミアム」(有料)なら、日本全国どこにいてもJ-WAVEが楽しめます。番組放送後1週間は「radiko.jpタイムフリー」機能で聴き直せます。
【番組情報】
番組名:『INNOVATION WORLD』
放送日時:毎週金曜 20時00分-22時00分
オフィシャルサイト:https://www.j-wave.co.jp/original/innovationworld/
■新型コロナで「すごく悔しい」現状…今後の課題は
新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、あらゆるライブやコンサートが延期・中止となっている。この状況について、水野に心境を伺った。
水野:そういう意味では当事者で、ホールツアーが全部延期になってしまいました。実際に予定しているライブ公演がほとんどできない状態です。今日はたまたま作業部屋なんですけど、外部のレコーディングスタジオを使ってみんなで集まることもなかなかしづらい状況にあるので、制作もできないですね。基本的にはまず身動きが取れない状態からどうやっていくか、みたいな話になってしまっています。
川田:いきものがかりのコンサートやライブを何回か拝見していますけど、大がかりで、毎回趣向を凝らした時間帯があるので大変ですよね。延期も再起動も大変だろうなと思います。
水野:そうですね。関わっているスタッフが100人規模とかなので、その準備の量を考えると、すごく悔しいところはあります。
現在、SNSで「#うたつなぎ」などのバトンやチャリティの動きが盛んだ。水野は「それは当たり前にあるべき」としつつ、「一方で、この状況が1、2年続いていくということも考えられる」と懸念する。
水野:この状況を契機に、モノづくりの方法や届け方がどんどんと変わっていくと思うんです。なので、それに対してどう向き合っていくのかを本気で考えていかないといけないんだろうなと思っています。それぞれの環境がかなり違うじゃないですか。音源制作を全部できるという方もいれば、僕もそうですけど、あんまりできないという方もいる。それぞれが持っている個別の環境によって、ずいぶん差が出てしまうというのが、これからの課題になってくると思います。各個人がよりモノを作りやすい、届けやすいという環境を、組織側が手助けしないといけないんじゃないかなと思っています。
■全員が当事者だからこそ…
新型コロナウイルスを取り巻く状況の中で、川田は「インディペンデント(インディーズ)の人が気軽に演奏しづらいだろうなと思う」と考えを述べる。水野は、インディペンデントの良さを認めながらも「多くの人が関わることによって出来上がる面白さもある」と、自身の見解をこう語る。
水野:僕ら(いきものがかり)はたぶん人の力を借りてやっているグループ。だから、「人が集まって、いろいろなものの集合地みたいなもので制作されていくことが面白い」というのがなくなっちゃうのは、もったいないなという気はします。
川田:そういった状況のなかで、「今こういうことをやっているよ」ということを、言える範囲で教えてください。
水野:正直、なかなか手がないですよね。作品を作って届けられる状況ができていくとは思いますが、その上で作品のテーマがあまり“分断”に寄らないようにしたい。新型コロナウイルスが今までの災害と違うのは、ほぼ全員が当事者になってしまうところ。「あそこの街で何かが起こってしまった」という傍観者でいられずに、全員が当事者で、全員がある意味、直接的に政治であったり、災害への対策に意見を持ったり発言をしたりするべき状況になってしまうと、基本的には分断にしかならいない。「あなたの生活と私の生活は違うから、この政策だとあなたの生活は保てるけど、私の生活は保てないから怒ります」ということがいくらでも起きてしまう。世の中全体がさらにバラバラになっていく状況のなかで、それをオブラートに包むのが文化の役目のような気がするんです。分断のあるひとつの勢力の意見にくみするような音楽ではなく、なるべくつなぐようなものを作っていきたい。それが僕の一番の政治性だと思うので、それを出していきたいと思っています。その手段が奪われているところもありますが、なんとか踏みとどまってやりたいです。
川田:水野さんが作るいきものがかりの音楽は、全般的に「みんな立場は違うけどポジティブな方向の旗印に向かっていく」という楽曲が多い。だから、今こういうときに新しいものを作らなきゃいけないというのは難しいときですよね。
水野:難しいですね(笑)。僕自身も当事者だから、たとえば政策が発表されたら、それに対して怒りを持つこともあるし、「なんでこんな状況なんだ」って思うこともあるわけです。それとのバランスをとるのもなかなか難しい。だけど、そこをなるべく諦めたくないと思っています。
■いきものがかり『笑顔』の歌詞
学生から「分断という言葉を聞いて、いきものがかりさんの曲を思い出しました。『笑顔』という曲がすごく好きで、歌詞がすごくこの時代に向いていると感じました。作られた当時の意図を教えてください」という質問が投げかけられた。
水野:『笑顔』を作った2013年当時も震災が起きていたので、「分断」という意味では今と同じような状況も生まれていました。なので、そこは意識にあったと思います。あとは、基本的に僕は人と人とは分かり合えないというか、「他人と他人はどんなに心をひとつにしようとしても分かり合えない」というところからスタートしています。だけど、一緒の空間で一緒に生活していかなければならなかったり、全然考えが違う人とも議論を重ねていかなければならなかったりというのが現実だと思うんです。なので、そこらへんを分かち合うというのは、ひとつの問題に対してもひとつの喜びに対しても、それぞれの側面でしか見ることができないけれども、それを媒体に分かり合えない人たち同士がつながれるんじゃないか、みたいな気持ちがすごくあるんです。そこらへんを背景として書いたんじゃないかなと思います。
川田:水野さんの書く音楽は「何かが起こってから書く歌」がひとつ機能性としてあるけれども、「あのときよかったな」とポジティブに作用することもあります。
水野:なんか試されますよね。
川田:ポップであることの強度というか。こうして(学生が)歌詞を思い出してくれて、いま聴きたい曲として挙がっているわけですから。
水野:すごくうれしいです。励みになります。
『INNOVATION WORLD』のワンコーナー「KYOCERA TECHNOLOGY COLLEGE」では、毎月1名のゲスト講師が登場。週替わりのテーマで学生向けの授業を実施する。放送は毎週金曜の21時40分ごろから。
【この記事の放送回をradikoで聴く】(2020年5月15日28時59分まで)
PC・スマホアプリ「radiko.jpプレミアム」(有料)なら、日本全国どこにいてもJ-WAVEが楽しめます。番組放送後1週間は「radiko.jpタイムフリー」機能で聴き直せます。
【番組情報】
番組名:『INNOVATION WORLD』
放送日時:毎週金曜 20時00分-22時00分
オフィシャルサイト:https://www.j-wave.co.jp/original/innovationworld/
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