後藤正文(ASIAN KUNG-FU GENERATION)と川田十夢(AR三兄弟・長男)が考える、「テクノロジーとライブエンターテイメントの未来」とは。未来の可能性について、自身の想いを明かした。
後藤と川田がトークを展開したのは、4月12日(日)放送のJ-WAVEのPodcast連動プログラム『INNOVATION WORLD ERA』のワンコーナー「FROM THE NEXT ERA」。後藤は同番組の第二週目のナビゲーターを務めている。
■5Gの到来で奥行きのあるエンターテイメントの表現を
第5世代移動通信システム(5G)では、4Gよりも通信速度が飛躍的に向上する。川田は、現状の動画のような2次元的なものから、情報空間の奥行きが生じて「空間的な作用や体験をより伝えることになる」と解説。ライブの楽しみ方が変わり、まるで会場にいるような感覚を得られるようになるそうで、今のような時期だからこそ提供すべきものだと語った。
川田:今までのライブ盤の楽しみ方って、耳と目で平たい情報、要するに2つの感覚だけで再現させているんですね。ほかのところは人間の想像力で、ライブに行っているかのように高揚させている。でも、ちょっとした、周りにいる人たちの雰囲気や声、館内の様子とか、触覚的な感覚をより備えられたら。
後藤が「新しい技術によって、特定の役割の視点を体感できるのか?」と問いかけると、川田は「出てくると思います」と回答。「ライブでPAさんの卓なんて触らせてもらえないけど、触っているかのような感覚とかね。役割を持ってライブに参加するのも楽しいと思います」と、観客や演者にとらわれず、さまざまな視点からライブを楽しめるようになる可能性があり、それが醍醐味のひとつ、だと語った。
■これからのAIは…
2019年の大みそかに放送された「第70回NHK紅白歌合戦」(NHK総合)では、最新の人工知能によって蘇った「AI美空ひばり」が登場し、新曲『あれから』を披露した。後藤は、AI美空ひばりのパフォーマンスを観ていないと前置きしつつ、自身が亡くなったあとに「AIゴッチは使わないでほしい」と、AI化に抵抗感があることを明かした。
後藤:僕が急になくなったとしても、僕のパソコンにあるデモとか、ああいうのをアンソロジー的に公開するのはやめてほしくて。未完成のものは未完成だから、勝手に発表しないでほしいという気持ちはありますね。だから、ザ・ビートルズのアンソロジーのときとか、ジョン・レノンはどういう気持ちなんだろうって。
これを受け川田は、「生前に『こういう使い方をしてほしい』と示したほうがいい。本人の意志がそこにないと難しい」と、AI化に関して本人の意思が介在すべきだと提案。後藤は「ファンとしては『もう1度会いたい』みたいな気持ちがあるのかもしれない。『誰が何のものか』というのは難しくなってきますね」と、ファン心理も考えなければならないと述べた。
川田:ダリやピカソの記憶を人口知能に渡して、着色だけをピカソ風にするとかはわりと簡単にできます。ああいうのは、ピカソという人はこういう色彩感覚を持っていた人なんだということが後の世代にも残るから、なにかしらのテクノロジーを使ってその人の感覚を残しておくべきだなとは思うんです。後々、人々が着色をするときに、絵具の1つとして「ピカソ色」みたいなものが残っているとかは、あったほうがいいんじゃないかと思います。
後藤:難しいなと思うのは、音楽でもAIでマスタリングしてくれたりMIXしてくれたりする機能があって、「巨匠のプリセット」とかあるんですけど、やっぱり「そんなに仕事していない」って思ったりするんです。人ってその都度変えていくので、たった1つの角度をやり方としては抜き出せない。ピカソの絵も、この絵だったからこの色になってとかね。だから、たった1つのやり方としてまとめるんじゃなくて、その人は作品ごとにアプローチを変えて、もっと多面的なはずで、みんながそれを理解した上で楽しむといいのかなと思います。
■さまざまな技術が共有できる時代に
現在、新型コロナウイルスの影響で、ライブシーンは厳しい状況が続いている。後藤は「ポストコロナ」時代を迎えたとしても、将来的には新たな、なにかしらの脅威がやってきて、同じような状況になる可能性もあると語る。加えて、「テクノロジーがサポートできる時代がきたらいい」と、希望を口にした。
後藤:楽器周りの人たちも、チューニングがめちゃくちゃ上手な人がいるんですよ。「あの人がチューニングすると本当にいいよね」みたいな。そういう人のチューニングができたらいいですけどね。しかも、たとえば僕がライブでナントカさんという人のチューニングのやり方でギターを演奏したらいくらか入るとか、それだったらフェアな感じがします。みんなが同じように頑張りようがあります。
この提案に川田は「フェアだし、人と人が触れ合えない、近くに寄れないことがあっても、データで一発なら、いいことだと思います」と同意。すると後藤は、このような技術は「本当はエンターテイメントとかで使うんじゃなくて、生活のなかに広がっていったほうがみんなを助けるかもしれない」とアイデアを出し、川田は「家庭でも『お米を炊くのが上手い人』とかいますからね」と、早速その可能性を広げていた。
川田の最新の著書『拡張現実的』(講談社)は現在発売中。川田は著書について「コンピューターの話ばかりはしていなくて、想像の話とか、たとえば『オレオレ詐欺の反対語はなんだろう?』といった、発想のほうを拡張している」と紹介した。
デジタル音声コンテンツ配信サービス 「SPINEAR」の他、Apple PodcastsやSpotifyなど各ポッドキャストサービスでは、今回のオンエアのノーカット版を配信中。濃密なトークを堪能してみては。
【Apple Podcasts登録はコチラ】https://podcasts.apple.com/jp/podcast/innovation-world-era-podcast/id1506148093?l=en
同番組は、各界のイノベーターが週替りでナビゲートする。第1週目はライゾマティクスの真鍋大度、第2週目はASIAN KUNG-FU GENERATION・後藤正文、第3週目は女優で創作あーちすとの「のん」、第4週目はクリエイティブディレクター・小橋賢児。
【この記事の放送回をradikoで聴く】(2020年4月19日28時59分まで)
PC・スマホアプリ「radiko.jpプレミアム」(有料)なら、日本全国どこにいてもJ-WAVEが楽しめます。番組放送後1週間は「radiko.jpタイムフリー」機能で聴き直せます。
【番組情報】
番組名:『INNOVATION WORLD ERA』
放送日時:日曜 23:00-23:54/SPINEAR、Apple Podcasts、Spotify、YouTube等でも配信
オフィシャルサイト: https://www.spinear.com/shows/innovation-world-era/
後藤と川田がトークを展開したのは、4月12日(日)放送のJ-WAVEのPodcast連動プログラム『INNOVATION WORLD ERA』のワンコーナー「FROM THE NEXT ERA」。後藤は同番組の第二週目のナビゲーターを務めている。
■5Gの到来で奥行きのあるエンターテイメントの表現を
第5世代移動通信システム(5G)では、4Gよりも通信速度が飛躍的に向上する。川田は、現状の動画のような2次元的なものから、情報空間の奥行きが生じて「空間的な作用や体験をより伝えることになる」と解説。ライブの楽しみ方が変わり、まるで会場にいるような感覚を得られるようになるそうで、今のような時期だからこそ提供すべきものだと語った。
川田:今までのライブ盤の楽しみ方って、耳と目で平たい情報、要するに2つの感覚だけで再現させているんですね。ほかのところは人間の想像力で、ライブに行っているかのように高揚させている。でも、ちょっとした、周りにいる人たちの雰囲気や声、館内の様子とか、触覚的な感覚をより備えられたら。
後藤が「新しい技術によって、特定の役割の視点を体感できるのか?」と問いかけると、川田は「出てくると思います」と回答。「ライブでPAさんの卓なんて触らせてもらえないけど、触っているかのような感覚とかね。役割を持ってライブに参加するのも楽しいと思います」と、観客や演者にとらわれず、さまざまな視点からライブを楽しめるようになる可能性があり、それが醍醐味のひとつ、だと語った。
■これからのAIは…
2019年の大みそかに放送された「第70回NHK紅白歌合戦」(NHK総合)では、最新の人工知能によって蘇った「AI美空ひばり」が登場し、新曲『あれから』を披露した。後藤は、AI美空ひばりのパフォーマンスを観ていないと前置きしつつ、自身が亡くなったあとに「AIゴッチは使わないでほしい」と、AI化に抵抗感があることを明かした。
後藤:僕が急になくなったとしても、僕のパソコンにあるデモとか、ああいうのをアンソロジー的に公開するのはやめてほしくて。未完成のものは未完成だから、勝手に発表しないでほしいという気持ちはありますね。だから、ザ・ビートルズのアンソロジーのときとか、ジョン・レノンはどういう気持ちなんだろうって。
これを受け川田は、「生前に『こういう使い方をしてほしい』と示したほうがいい。本人の意志がそこにないと難しい」と、AI化に関して本人の意思が介在すべきだと提案。後藤は「ファンとしては『もう1度会いたい』みたいな気持ちがあるのかもしれない。『誰が何のものか』というのは難しくなってきますね」と、ファン心理も考えなければならないと述べた。
川田:ダリやピカソの記憶を人口知能に渡して、着色だけをピカソ風にするとかはわりと簡単にできます。ああいうのは、ピカソという人はこういう色彩感覚を持っていた人なんだということが後の世代にも残るから、なにかしらのテクノロジーを使ってその人の感覚を残しておくべきだなとは思うんです。後々、人々が着色をするときに、絵具の1つとして「ピカソ色」みたいなものが残っているとかは、あったほうがいいんじゃないかと思います。
後藤:難しいなと思うのは、音楽でもAIでマスタリングしてくれたりMIXしてくれたりする機能があって、「巨匠のプリセット」とかあるんですけど、やっぱり「そんなに仕事していない」って思ったりするんです。人ってその都度変えていくので、たった1つの角度をやり方としては抜き出せない。ピカソの絵も、この絵だったからこの色になってとかね。だから、たった1つのやり方としてまとめるんじゃなくて、その人は作品ごとにアプローチを変えて、もっと多面的なはずで、みんながそれを理解した上で楽しむといいのかなと思います。
■さまざまな技術が共有できる時代に
現在、新型コロナウイルスの影響で、ライブシーンは厳しい状況が続いている。後藤は「ポストコロナ」時代を迎えたとしても、将来的には新たな、なにかしらの脅威がやってきて、同じような状況になる可能性もあると語る。加えて、「テクノロジーがサポートできる時代がきたらいい」と、希望を口にした。
後藤:楽器周りの人たちも、チューニングがめちゃくちゃ上手な人がいるんですよ。「あの人がチューニングすると本当にいいよね」みたいな。そういう人のチューニングができたらいいですけどね。しかも、たとえば僕がライブでナントカさんという人のチューニングのやり方でギターを演奏したらいくらか入るとか、それだったらフェアな感じがします。みんなが同じように頑張りようがあります。
この提案に川田は「フェアだし、人と人が触れ合えない、近くに寄れないことがあっても、データで一発なら、いいことだと思います」と同意。すると後藤は、このような技術は「本当はエンターテイメントとかで使うんじゃなくて、生活のなかに広がっていったほうがみんなを助けるかもしれない」とアイデアを出し、川田は「家庭でも『お米を炊くのが上手い人』とかいますからね」と、早速その可能性を広げていた。
川田の最新の著書『拡張現実的』(講談社)は現在発売中。川田は著書について「コンピューターの話ばかりはしていなくて、想像の話とか、たとえば『オレオレ詐欺の反対語はなんだろう?』といった、発想のほうを拡張している」と紹介した。
デジタル音声コンテンツ配信サービス 「SPINEAR」の他、Apple PodcastsやSpotifyなど各ポッドキャストサービスでは、今回のオンエアのノーカット版を配信中。濃密なトークを堪能してみては。
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同番組は、各界のイノベーターが週替りでナビゲートする。第1週目はライゾマティクスの真鍋大度、第2週目はASIAN KUNG-FU GENERATION・後藤正文、第3週目は女優で創作あーちすとの「のん」、第4週目はクリエイティブディレクター・小橋賢児。
【この記事の放送回をradikoで聴く】(2020年4月19日28時59分まで)
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【番組情報】
番組名:『INNOVATION WORLD ERA』
放送日時:日曜 23:00-23:54/SPINEAR、Apple Podcasts、Spotify、YouTube等でも配信
オフィシャルサイト: https://www.spinear.com/shows/innovation-world-era/