詩人の最果タヒが1月、著書『「好き」の因数分解』(リトル・モア)を上梓した。どんな想いが込められた本なのか、J-WAVEで放送中の番組『GOOD NEIGHBORS』のナビゲーター・クリス智子が話を聞いた。
【2月5日(水)『GOOD NEIGHBORS』(ナビゲーター:クリス智子)】
■「好き」って気持ち自体がエネルギーの塊
『「好き」の因数分解』は、最果が48の「好き」を綴った一冊。ファッション誌『FUDGE』の連載を中心に再構成し大幅加筆、書き下ろしも収録されている。本を読んだクリスは、内容から強いエネルギーを感じたという。
クリス:「好き」の書き方が独特で、深く濃いと思いました。
最果:ありがとうございます。「好き」って気持ち自体がエネルギーの塊と言うか、明日を生きるエネルギーみたいなところもあるので、そのものの本になればいいなと思っていました。
「好き」という気持ちと向き合った『FUDGE』の連載を通じて、最果は何を感じたのか。
最果:「好き」をたどっていって、自分がどういうことを考えているかがわかりました。生きる上で、いろんなものを掴んで、いろんなものを持っているから。自分のことを考えるよりも、好きなものについて考えるほうが、深く何かを思い出せたりします。自分を超えて「生きることとは」「友情とは」「人とは」とか、そういうところまで考えが及んでいく……そんな部分が強く出た連載でした。
この本は、見開きで1つの「好き」を黒、緑、ピンクと3層のテキストにして書き分けている。
最果:連載を本でまとめるにあたって、「(読者が)どういう距離で読めばいいか戸惑うかな」と考えたんです。そこで、「こういう距離で読んでください」と説明するよりも、もっと多面的な本にしようと、新たなテキストを加筆しました。緑の文章を読んでから黒の文章を読むと見え方が違うなど、読む人によってその人の発見がある本になればいい。そう思って、ある意味で複雑なかたちの本にしています。
■ターニングポイントとなった、BLANKEY JET CITYとの出会い
『「好き」の因数分解』には、水族館、クロード・モネ、石、タモリ、ロケット、プラネタリウム、食べ放題、東京タワー、UFOキャッチャー、古畑任三郎、アジサイ、劇場、宇宙、町田 康、新幹線など、最果の「好き」がぎっしり詰まっている。
そのなかには、最果が愛してやまないBLANKEY JET CITYをはじめ、KEN ISHIIや宇多田ヒカルなど、音楽の「好き」も綴られている。
クリス:最果さんにとってのBLANKEY JET CITYは、マグマのような「好き」の熱さがありますよね。
最果:BLANKEY JET CITYは私のターニングポイントなんです。このバンドと出会うまでは、言葉が嫌いだったんです。人の空気を読んで話すとか、人が言ってほしそうなことを言うとか、そういう部分が強いから。でも、BLANKEY JET CITYを聴いたときに、「言葉がめちゃくちゃカッコいいな」と衝撃を受けました。そのことがあったから今自分は文章を書いているなという意識が強いので、やっぱり特別なバンドですね。
番組では最果が選曲したBLANKEY JET CITYの『冬のセーター』をオンエアした。
■「好き」が成仏する?
多くの「好き」を書いてきた最果によると、最初に「好き」を決めてしまうと書けないものの方が多いのだという。
最果:好きの気持ちがあふれすぎると、「これを見て」「あれを見て」となってしまう。例えばBLANKEY JET CITYだと、曲名を書いて「これ聴きました」「じゃあ、次はこれを聴いてください」って文章になってしまうんです(笑)。だから、まずは自分を落ち着かせます。好きだけじゃなくて好きを通じてもっと奥の方を書きたいので、考えを深めていかなくちゃいけない。でも、考えていてもできないので、書いて、書いて……書いていくうちに「そうなりましたか」と私も驚くような文章になったりします。
クリス:最果さんは以前に「詩を書くことは自分じゃないものになりたいから」というような話をされていましたけど、この本は自分のことを書かれていますよね。
最果:この『「好き」の因数分解』も自分がなぜこれを好きなのかを聞いてくれ、分かってくれという気持ちよりは、もう少し普遍的なところを書いた方が自分としても「好き」が成仏する感じが……、成仏しなくてもいいんですけど(笑)。言葉になったっていう感覚が強いので、「これを好きな私を理解して」という感覚よりは、それを好きじゃない人でも「同じような気持ちだな」と通じていくものがある本になっていたらいいなと思っています。
『「好き」の因数分解』のタイトルについて、「好き」をこねくり回すことで、自分も世界も違うかたちが見えてくるのではないかという期待を込めて付けたと語った。
最果は、京都文化博物館 別館ホールで6月17日(水)から7月5日(日)まで、個展「最果タヒ展 われわれはこの距離を守るべく生まれた、夜のために在る6等星なのです。」を開催予定。
【番組情報】
番組名:『GOOD NEIGHBORS』
放送日時:月・火・水・木曜 13時-16時30分
オフィシャルサイト:https://www.j-wave.co.jp/original/neighbors/
【2月5日(水)『GOOD NEIGHBORS』(ナビゲーター:クリス智子)】
■「好き」って気持ち自体がエネルギーの塊
『「好き」の因数分解』は、最果が48の「好き」を綴った一冊。ファッション誌『FUDGE』の連載を中心に再構成し大幅加筆、書き下ろしも収録されている。本を読んだクリスは、内容から強いエネルギーを感じたという。
クリス:「好き」の書き方が独特で、深く濃いと思いました。
最果:ありがとうございます。「好き」って気持ち自体がエネルギーの塊と言うか、明日を生きるエネルギーみたいなところもあるので、そのものの本になればいいなと思っていました。
「好き」という気持ちと向き合った『FUDGE』の連載を通じて、最果は何を感じたのか。
最果:「好き」をたどっていって、自分がどういうことを考えているかがわかりました。生きる上で、いろんなものを掴んで、いろんなものを持っているから。自分のことを考えるよりも、好きなものについて考えるほうが、深く何かを思い出せたりします。自分を超えて「生きることとは」「友情とは」「人とは」とか、そういうところまで考えが及んでいく……そんな部分が強く出た連載でした。
この本は、見開きで1つの「好き」を黒、緑、ピンクと3層のテキストにして書き分けている。
最果:連載を本でまとめるにあたって、「(読者が)どういう距離で読めばいいか戸惑うかな」と考えたんです。そこで、「こういう距離で読んでください」と説明するよりも、もっと多面的な本にしようと、新たなテキストを加筆しました。緑の文章を読んでから黒の文章を読むと見え方が違うなど、読む人によってその人の発見がある本になればいい。そう思って、ある意味で複雑なかたちの本にしています。
■ターニングポイントとなった、BLANKEY JET CITYとの出会い
『「好き」の因数分解』には、水族館、クロード・モネ、石、タモリ、ロケット、プラネタリウム、食べ放題、東京タワー、UFOキャッチャー、古畑任三郎、アジサイ、劇場、宇宙、町田 康、新幹線など、最果の「好き」がぎっしり詰まっている。
そのなかには、最果が愛してやまないBLANKEY JET CITYをはじめ、KEN ISHIIや宇多田ヒカルなど、音楽の「好き」も綴られている。
クリス:最果さんにとってのBLANKEY JET CITYは、マグマのような「好き」の熱さがありますよね。
最果:BLANKEY JET CITYは私のターニングポイントなんです。このバンドと出会うまでは、言葉が嫌いだったんです。人の空気を読んで話すとか、人が言ってほしそうなことを言うとか、そういう部分が強いから。でも、BLANKEY JET CITYを聴いたときに、「言葉がめちゃくちゃカッコいいな」と衝撃を受けました。そのことがあったから今自分は文章を書いているなという意識が強いので、やっぱり特別なバンドですね。
番組では最果が選曲したBLANKEY JET CITYの『冬のセーター』をオンエアした。
■「好き」が成仏する?
多くの「好き」を書いてきた最果によると、最初に「好き」を決めてしまうと書けないものの方が多いのだという。
最果:好きの気持ちがあふれすぎると、「これを見て」「あれを見て」となってしまう。例えばBLANKEY JET CITYだと、曲名を書いて「これ聴きました」「じゃあ、次はこれを聴いてください」って文章になってしまうんです(笑)。だから、まずは自分を落ち着かせます。好きだけじゃなくて好きを通じてもっと奥の方を書きたいので、考えを深めていかなくちゃいけない。でも、考えていてもできないので、書いて、書いて……書いていくうちに「そうなりましたか」と私も驚くような文章になったりします。
クリス:最果さんは以前に「詩を書くことは自分じゃないものになりたいから」というような話をされていましたけど、この本は自分のことを書かれていますよね。
最果:この『「好き」の因数分解』も自分がなぜこれを好きなのかを聞いてくれ、分かってくれという気持ちよりは、もう少し普遍的なところを書いた方が自分としても「好き」が成仏する感じが……、成仏しなくてもいいんですけど(笑)。言葉になったっていう感覚が強いので、「これを好きな私を理解して」という感覚よりは、それを好きじゃない人でも「同じような気持ちだな」と通じていくものがある本になっていたらいいなと思っています。
『「好き」の因数分解』のタイトルについて、「好き」をこねくり回すことで、自分も世界も違うかたちが見えてくるのではないかという期待を込めて付けたと語った。
最果は、京都文化博物館 別館ホールで6月17日(水)から7月5日(日)まで、個展「最果タヒ展 われわれはこの距離を守るべく生まれた、夜のために在る6等星なのです。」を開催予定。
【番組情報】
番組名:『GOOD NEIGHBORS』
放送日時:月・火・水・木曜 13時-16時30分
オフィシャルサイト:https://www.j-wave.co.jp/original/neighbors/
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