新型コロナの影響で増えた「テレワーク」 通勤時間がなくなる以外のメリットは?

新型コロナウイルスの関係で、テレワークを導入する企業が増えている。リモートワーク、在宅勤務とも呼ばれるこの働き方が、今回の件で急きょ導入された企業も多いだろう。「満員電車に乗らなくて済むのが嬉しい」という人もいれば、「家では集中できない」と悩む人もいるのでは。

数年にわたってテレワークに取り組む企業は、どんなメリット、デメリットを感じているのか。5年前からテレワークを導入するレノボ・ジャパン株式会社で働き方改革の推進を担当する元嶋亮太さんに訊いた。

元嶋さんが登場したのは、J-WAVEで放送中の番組『STEP ONE』のワンコーナー「BEHIND THE SCENE」(ナビゲーター:サッシャ・増井なぎさ)。オンエアは3月3日(火)。


■メリットは通勤時間の削減! 生産性も上がる

レノボ・ジャパンでは、2015年の年末ごろから、取得日数に制限を設けないテレワークの施策を行っている。平均すると週1程度でおこなう社員が多いそうだ。「社内の雰囲気的に、週1しかとれない」のではなく、取引先に出向く日は出社し、WEB会議で問題がない日は自宅やコワーキングスペースで働くという、社員それぞれが取捨選択をした結果ではないかと、元嶋さんは分析する。新型コロナウイルスが問題になってからは、原則としてテレワークの勤務を推奨しているという。

増井:テレワークを実際におこなってみて感じる“いい面”は、どんなところですか?
元嶋:ここ数年やってみて実感した一番わかりやすいメリットは、通勤時間がなくなることですね。
サッシャ:満員電車に乗るという、体力的な負担が減るということですね。
元嶋:はい。もちろん、メリットはそれだけではありません。この1、2週間は原則テレワークで勤務していて、(通勤時間の削減など時間に余裕が生まれ)毎日子どもをお風呂に入れることができました。ありがたいなと思って日々を過ごしています。
サッシャ:なるほど。仕事の効率や生産性という部分ではメリットはありますか?
元嶋:慣れてくるまでは、WEB会議のやり方を覚えたりツールを使いこなしたりすることに時間を使うと思います。慣れてくると、集中する時間と人とコミュニケーションを取る時間をくっきりわけることができるので、生産性に対していい影響を与えることができます。自社で調査してみると、4割強の人間の生産性が上がりました。残りの人間も、オフィスワークと遜色がないと答えています。非常にポジティブな結果が出ているのかなと思っています。
サッシャ:テレワークを続けていると、それがメインの会社に就職したいという方も増えていきそうですね。
元嶋:そうですね。最近の企業は、働きやすさで選ばれる傾向があると感じています。採用難とは言われていますが、テレワークが採用にポジティブな影響を持たせているとは思っています。


■「気持ちの切り替えがしづらい」デメリットはどう解消?

生産性が上がるなどのメリットがある一方で、テレワークにはやはりデメリットもあるのだそう。

増井:テレワークだと、「朝起きて身だしなみを整えずに業務に入ってもいいのかな」なんて悩みも出てきますが、気持ちの切り替えはできるものなのでしょうか?
元嶋:私も最初は苦労しましたし、社内で調査をしてみると、オンとオフのスイッチの切り替えが難しいという意見はあります。そこは大きな課題なんじゃないかなと思っています。私自身の話ですと、仕事専用の部屋を設けることで、オンとオフの切り替えをおこなっています。
サッシャ:しかし日本の住宅事情を考えると、ワーキングルームを設けるのが難しい人もいそうですね。
元嶋:そうですね。私も事情があってリビングで仕事をするときもあります。そういうときは、服を着替えたり顔を洗ったりといった、なんらかのワンクッションを挟んでいます。オンオフの切り替えができる方法を見つけて、日々のルーチンに組み込むことが重要かなと思います。
サッシャ:部屋がないと、子どもの休みの時期のテレワークは大変そうですね。そういう方ってどうやって仕事をしているんですか?
元嶋:子どもがオンライン会議に登場して、和んだりする場面はありますね(笑)。あとは「この時間までは仕事だからね」と、子どもに説明をして切りわけている家庭も多いんじゃないかなと思います。
サッシャ:子どもがある程度の年齢になれば、向こうが自分の部屋にこもったりすると思いますが、小さい頃は大変ですよね。なるほど。

切り替えがうまくできないことで“働きすぎてしまった気分”になる、というデメリットもあるそうだ。

元嶋:残業は上司の承認の元におこなっているので、実際の労働時間は変わっていないはずなんです。しかし、オンオフの切り替えが上手くいかないと“働き過ぎた”という気分に陥ることはあります。あとは、弊社の場合は時間単位で労働時間を決めることができるのですが、細切れで仕事をすると張り詰めた空気がずっと切れないケースもありますね。


■指示を明確に! コミュニケーションの注意点

同僚と実際に顔を合わせないことで、仕事がうまく進められるのか不安だと感じる人もいるだろう。コミュニケーションは、どんな心がけが必要なのか。

元嶋:お願いごとや仕事の指示をおこなうときは、可能な限り明確に書くことを意識しています。例えば「これお願いね」と曖昧に伝えた場合、対面していれば“阿吽の呼吸”で伝わっても、テレワークだとうまく伝わらない場合があります。きちんと説明することが重要ですね。あとは、社内チャットやオンライン会議の頻度を増やすことで、コミュニケーションの密度を保つことを心がけていています。
サッシャ:短くてもいいから会議の数を増やすということですね。
元嶋:はい。1対1の話し合いの場を増やすのも大事ですね。「今、話せる?」と訊いて、顔を見ながら打ち合わせをすることを私はよくやっています。
増井:なるほど。
サッシャ:テレワークをやって、模索したなかでアイディアが生まれてきたわけですね。


■テレワークの導入、最初は“推奨”ではなく“指示”を

会社がテレワークを推奨していても、社内に浸透しないケースもあるだろう。元嶋さんは、“推奨”ではなく、トップダウンで“指示”を出すことが大事だと話す。

元嶋:それに加えて、マネージャー層も自ら取り組む。したことがないと、「部下の顔が見えないから怖いな」といった不安があると思いますが、実際に試し、うまくいったなと成功体験を積むのがいいと思います。
サッシャ:会社だと、従業員が勝手にテレワークを始めることはできないですもんね。
元嶋:空気読んじゃいますよね。
サッシャ:結論として、テレワークをやってよかったですか?
元嶋:はい。ワークライフバランスも改善していますし、自分自身で「今日はこういう仕事だから、ここで働こう」と考えるようになりましたね。今日は何を成し遂げないといけないのか、考えるようになりました。
サッシャ:働き方を見つめ直すきっかけになったということですね。

レノボ・ジャパンは、テレワークを始める企業が何に気をつけるべきかをまとめた「はじめようテレワークスタートガイド」を無料で公開。必要な設備や、導入したが活用されない場合どうすればいいかなど、同社が試行錯誤しながら導き出した解決策が示されている。

・「はじめようテレワークスタートガイド」(PDF) https://www.lenovojp.com/business/solution/download/002/pdf/terework_startguide.pdf

J-WAVE『STEP ONE』のワンコーナー「BEHIND THE SCENE」では、気になるニュースをその裏側から光を当て、様々な視点から紹介する。放送は月曜~木曜の10時10分頃から。

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【この記事の放送回をradikoで聴く】(2020年3月10日28時59分まで)
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【番組情報】
番組名:『STEP ONE』
放送日時:月・火・水・木曜 9時-13時
オフィシャルサイト: https://www.j-wave.co.jp/original/stepone

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