地球は“奇跡の星”なのだろうか。惑星物理学者・井田茂「さまざまな視点で捉えていく必要がある」

「この地球は先祖から譲り受けたものではない。我々の子孫から借りているものなのだ」。アメリカの先住民・ナバホ族に伝わる言い伝えだ。私たちの子孫が住むことになる地球について、私たちは今何をするべきなのだろうか。J-WAVEで2月24日(月・祝)にオンエアした番組『J-WAVE SPECIAL TSUCHIYA EARTHOLOGY』(ナビゲーター:小山薫堂&高島 彩)は、その問いの答えへのヒントを探す3時間の特別番組だ。18時台は、東京工業大学 地球生命研究所(ELSI)の副所長であり、惑星物理学者の井田 茂を迎え、宇宙という枠組みの中で地球ついて考えてみた。地球は、“奇跡の星”なのだろうか。


■惑星物理学者が考える地球の存在

井田が副所長を務める地球生命研究所(ELSI)は、「Earth-Life Science Institute」の略で、地球と生命の起源についての考えを踏まえ、宇宙における生命について考える研究所。生物学や天文学、地球科学などの研究者が実際に同じ建物に住んで日々議論を交わす、世界的にも珍しい施設だ。

井田は、自身が研究している惑星物理学は「天文学のひとつの分野だ」と解説する。

井田:天文学は天体を扱う学問ですが、その中でも惑星は内部構造があったり、表面には海や陸があったり、空気があったりする特別な天体です。そういった点として、捉えられないような天体を扱う、天文学の中でもちょっと変わった学問です。

日々宇宙に思いを巡らせる井田に、高島が「地球はどんな存在か?」と質問する。

井田:その答えは、昔よりもっと難しい質問になっています。なぜなら、地球と同じように、岩石を主体とした小型の惑星は宇宙にありふれていることが分かってきたからです。たとえば、銀河系にある数千億の星のうち、半分くらいはそういう惑星があることがほぼ確実になってきました。そうなると「どんな特徴を持っていれば地球というのか?」ということが非常に曖昧になってしまいます。そうは言っても、地球のイメージは人によって違うと思います。その条件の付け方によって、地球がありふれたものなのか、奇跡的なものなのか。そういった考えが変わってくると思います。

地球には水があり、生命がいる。多くの人はそういったイメージを持つが、それがどれだけ特別なことかはまだ分からないことだと井田は続ける。

高島:地球は、奇跡的に気温が暑すぎず冷たすぎず、生命が暮らせる星だと思っているのですが、違うのでしょうか?
井田:そういう暑すぎず冷たすぎず、表面に液体の海があるような生命が住める場所を「ハビタブルゾーン」と呼びます。それは太陽のような恒星から適当な距離にある場所なのですが、そういう場所に地球くらいのサイズの惑星がたくさんあることが分かってきました。
小山:そのハビタブルゾーンは人間の力によって破壊されたり守られたり、そういったことは可能ですか?
井田:それは難しいですね。惑星を温めている恒星は莫大なエネルギーを出しているので、それを人間の力で変えることは難しいところがありますね。


■さまざまな視点で地球を捉えていく必要がある

今、世界中で地球温暖化などさまざまな問題が叫ばれているが、それらは都合が悪くなった生命の視点でもあると、井田は述べる。

井田:たとえば、この地球には空気中に酸素がたくさんありますが、それは生物の廃棄物です。もともとは、地球の大気には酸素はなかったわけです。光合成をする生物が勝手に酸素をはき出し、地球の空気の組成が変わってしまった。もしかすると、光合成をする生物たちにとっては都合が悪いかもしれないけど、組成が変わったことで酸素を使って生きている動物が生まれ、人間も生まれました。だから、私たち人間にとって地球温暖化は都合が悪いかもしれないけど、生物全体にとってみるとどうなのか分からない部分があります。
高島:つい自分勝手な視点に立ってしまうけど、そうじゃないんですね。
井田:もちろん、私たち人類が長く生きていける持続可能な社会を作ることは、私たちにとって非常に大切なことですし、いろいろな問題を考えている私たちが住めなくなったら困るんですけどね。ただ、今はさまざまな惑星が見つかったことで、地球をバラエティある惑星のひとつとして捉えていく傾向にあります。

井田は「地球中心主義や人類中心主義という考え方もある一方で、もっと大きな視点を持つことも必要」と続ける。

井田:大きな視点だけだと、ディティールが見えなくなったり、それぞれのかけがえのないものが見えなくなったりしてしまうので、さまざまな視点で地球を捉えていく必要があると思います。
小山:(さまざまな問題に対して)答えはそう簡単にはでないかもしれないけど、考え続ける姿勢が大切な気がします。
井田:そういった姿勢も必要ですし、新しい考えが出てきたらそれを受け入れることも必要です。そうやって考えていけば、いろんなものが見えてくると思います。

さまざまな視点で地球を捉えることで、私たちの生活にも大きな発見があるかもしれない。

【この記事の放送回をradikoで聴く】(2020年3月2日28時59分まで)
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【番組情報】
番組名:『J-WAVE SPECIAL TSUCHIYA EARTHOLOGY』
放送日時:2月24日(月・祝)18時-21時
オフィシャルサイト: https://www.j-wave.co.jp/holiday/20200224_sp/top/

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