ビル&メリンダ・ゲイツ財団と日本の関係は? 2020年、日本が担う大きな役割とは

J-WAVEで放送中の番組『ACROSS THE SKY』(ナビゲーター:玄理)のワンコーナー「WORLD CONNECTION」。11月10日(日)のオンエアでは、アメリカ・シアトルを拠点に、世界で活動するビル&メリンダ・ゲイツ財団に注目。日本代表の柏倉美保子さんに話を伺った。


■財団設立の背景とその活動

ビル&メリンダ・ゲイツ財団は、Microsoftの創業者ビル・ゲイツとその妻メリンダ・ゲイツよって2000年に設立された。この財団を設立するに至った背景は何だったのか。

柏倉:1993年、婚約中だったビルさんとメリンダさんは、初めてアフリカを訪れました。そして、現地で多くの子どもたちが病気で亡くなる姿を目にしました。環境が整っていれば救えた命です。そこで、ふたりは話し合いを重ね、財産を貧困問題の撲滅に捧げることを決めたんです。ふたりがまだ結婚する前のことでした。ふたりは今でも、アフリカで決めたこの決断こそが「人生で一番の決断だった」と話しています。それを経て、2000年に財団が設立されました。

同財団は「すべての生命の価値は等しい」を信念に、発展途上国の人々の健康状態を改善し、最貧困と言われる状況からの支援を行っている。

柏倉:主に医療面で、発展途上国の人々の健康状態を改善させることを中心に活動しています。業務の7割以上が、発展途上国の保険医療分野の支援です。財団のなかにはさまざまな部門があり、製薬やワクチンの開発といったテクニカルなチームから、現場で母子保健や栄養、そしてマラリアやエイズの治療などに取り組むチームもいます。他にも、医療システムの改善を目的としたチームもいます。

アフリカが支援の中心地域だが、アジアではインドなど、部門によって必要だと考える地域に積極的に資金投入を行っている。特にビル・ゲイツとメリンダ・ゲイツがビジネスで成功してきた背景があるということで、財団のチームは、イノベーションや戦略を軸に、貧困撲滅を目指して活動しているという。


■他の組織が取りたがらないリスクを取る

ビル&メリンダ・ゲイツ財団は、イノベーション、科学的根拠、コラボレーション、楽観主義を活動の軸にしている。

柏倉:この財団の特徴は、他の組織が躊躇してしまうようなリスクも取りに行く点です。最先端の技術や研究分野ではあるものの、リスクが大きすぎるようなところに積極的に資金投入して、新しいイノベイティブなモデルを探しています。今年4月には、ドローンによるワクチンデリバリーのプロジェクトが立ち上がりました。アフリカのガーナで、数百機のドローンを使ってワクチンや医療品を届けるプロジェクトです。米カリフォルニア州に拠点を置くZiplineとタイアップし、財団や他の政府企業が支援しながら、黄熱病やはしかなどのワクチンや、多くの医薬品をドローンによって届けるモデルを展開しています。

ビルとメリンダは、支援によってどれだけの命が救われたのか、医療の改善が見られたのかといったインパクトを重視しており、厳しいKPIを達成するために、あらゆる部門が途上国の状況改善に向けて日々運営されている。

これまで多くの支援を行ってきた財団だが、どのような成果があったのだろうか。

柏倉:投資先の一つとして、2000年に設立されたGaviワクチンアライアンスがあります。立ち上げに深く携わり、多くの額を拠出しています。2000年に立ち上げられた段階では、世界の子どもたちの5人に3人にしかワクチンが届いていませんでした。今は、5人に4人にワクチンが届けられるようになりました。2030年には5人中全員にワクチンを届けられるように、パートナーシップをさらに深めて進めています。


■財団と日本の関係

ビル&メリンダ・ゲイツ財団は、日本では2017年7月から活動している。同財団が考える、日本の魅力とは?

柏倉:財団にとって、日本は宝物の宝庫のような国です。製薬やITなど、最先端の技術を多く持つ民間企業があります。日本政府も財団にとって重要です。日本は、ODA(政府開発援助)の拠出額が世界第4位であり、財団の「すべての生命の価値は等しい」という価値観を共有する国であると思っています。私の役割は、日本の製薬企業や政府とどういったコラボレーションをすることで、新しいソリューションを途上国の現場に届けられるのか、を考えていくことです。
玄理:日本では、どのようなアクションを起こしているのでしょうか。
柏倉:企業とのパートナーシップの例として、エーザイ株式会社とのコラボレーションがあります。世界で5人に1人がかかっている、顧みられない熱帯病(熱帯地域の病気の総称)という分野があります。貧困地域で生活される方々が直面している病気への資金投入は、なかなか利益になりません。しかし、ビル&メリンダ・ゲイツ財団と多くの製薬企業が連携し、顧みられない熱帯病の製薬の開発を促進するイニシアチブを立ち上げました。そのなかでもエーザイ株式会社は、医療薬品を途上国の現場へ無料で届けています。

顧みられない熱帯病は、研究開発資金を投入するにはハードルの高い分野だ。財団は、そのような企業とパートナーシップを組みながら、新しい医薬品の促進に努めている。


■日本にいながらできること

財団の活動内容を聞いた玄理は、「私たちが日本にいながら、参加できること、考えることはあるのか」と、質問を投げかける。

柏倉:日本の若い世代の方々や、民間のビジネスリーダーの方々と話して感じるのは、「自分は社会にどのように貢献できるのか?」といったことに関心を持つ方が増えているということです。日本のODAの政策に関心を持っていただければ、この分野への知見も広がるはずです。ゲイツ財団が拠出して、Japan Trackerというサイトを立ち上げました。日本の政府開発援助を“可視化”したサイトです。また、持続可能な開発目標(SDGs)を広げていく取り組みの中で、日本を重要なパートナーとしてみています。2020年には、次世代やビジネスリーダーたちとコラボできるイニシアチブを立ち上げる予定です。
玄理:社会に貢献したいと思いながらも、何をすればよいのかわからない人も多いと思います。そんな方々も参加できるものが、より身近になればいいなと思います。

最後に、ビル&メリンダ・ゲイツ財団の今後の活動について伺った。

柏倉:2020年は、日本が大きな役割を担う年になります。2020年後半は「成長のための栄養サミット2020(仮称)」を主催します。2020年から2030年にかけて、世界の栄養不良にかける資金が決定する重要な場です。そこに向けて、さまざまな連携を日本政府と進めています。また、SDGsを通して、日本の次世代の若者や民間のリーダーたちとさまざまなことができる1年にしたいと思います。

社会に貢献する方法は人それぞれ。柏倉さんが語ったように、まずは知見を広げ、自分にどんなことができるのかを考えてみてはいかがだろうか?

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【番組情報】
番組名:『ACROSS THE SKY』
放送日時:毎週日曜9時-12時
オフィシャルサイト:https://www.j-wave.co.jp/original/acrossthesky

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