J-WAVEで放送中の番組『INNOVATION WORLD』(ナビゲーター:川田十夢)。10月18日(金)のオンエアでは、お笑いコンビ「ピース」の又吉直樹が登場。話題の新作『人間』の執筆時のエピソードを話した。『人間』は又吉にとって三作目の出版となる。
【この記事の放送回をradikoで聴く】(2019年10月25日28時59分まで)
■真心ブラザーズの影響を受けて
川田は「巷では『火花』『劇場』『人間』は三部作と言われてますが、そういう意識はありましたか?」と問いかける。
又吉:自分から「三部作」って呼ばれにいく行為って、すごくみっともないんじゃないかと思ったんですけどね(笑)。ただ、いつかは『人間』というタイトルでやってみたいと思っていました。一作目の『火花』に引っ張られて二作目は『劇場』になったので、なんとなくそろってしまった感じです。
『人間』の冒頭で出てくる表現について、川田は「又吉さんは真心ブラザーズが好きですよね。『レコードのブツブツ』っていう曲があって、普通はレコードを"ブツブツ"って言わないと思うけど、『人間』の冒頭で出てきますよね。あれってオマージュなんですか?」と質問する。
又吉:オマージュではないけど、YO-KINGさんとあいみょんさんと三人で飲んでたときに、まさに二人がその話をしてたんです。YO-KINGさんはブツブツっていう表現をしていて、あいみょんさんはポツポツかボツボツだったんです。「なるほど、音の捉え方って違うんですね」っていう話をしていて、僕は小説にブツブツって書いたけど、そのときはYO-KINGさんのまねをしたと思われたら嫌だなと思って「実は僕も......」って入っていけなかったことを覚えています。
続けて又吉は「真心ブラザーズの影響を大きく受けた」と話す。
又吉:ただし、表現や物の捉え方、面白がり方が全然違っていて、僕は複雑に考えたり悲観的に捉えたりするんです。だけど、YO-KINGさんはそういうのを笑ってくれるから気持ちいいです。相談すると「誰もそんなこと気にしないよ」って言って「あそこのパン屋さん、おいしいよ」とか、すぐに話を変えてくれて、そういうのがすごく素敵だなと思います。
■小説は完成しない?
又吉は作品が出来上がっても「完成した」という思いにならないと話す。
又吉:完成しても「まだいろいろできるな」という感じがするんです。一旦、『人間』がこの形で完成してよかったっていう思いはありますけどね。
川田:小説家の推敲もひとつの技術で、「ここは練ったんだろうな」と思うようなところが文体に現れていて、読者としては面白いところなんです。今回は新聞の連載ということもあり、新聞小説はそのへんの潰しが効かないから苦労したのでは?
又吉:むしろそれを利用したいと思いました。やろうと思えば先に全てを書いてから出すこともできたけど、僕はライブ感を出せないかなと思いました。この先の展開が難しいと思ったら普通は戻って直すけど、そのままいってしまえという感じを出したいと思いながらやってました。面白い作業でした。
川田:そのライブ感が一読者としてはすごく読みやすくて、一気に読んでしまう感じがありました。又吉さんは芸人でもありますから、文章を推敲するときに自分で読み上げますか?
又吉:読むときもあります。朗読が好きなのでセリフも地の文も、自分で読んで自分で聞きます。
川田:作家にも種類があって、文章からリズム感や間を感じる作家がいます。又吉さんはお笑いの人だから、その間とかが小説にも現れていて、これは音読してる人なんだろうなと思ったんです。
又吉:音読もしてるし、人にも読んでもらいます。女性の声とか方言の雰囲気みたいなものはなかなかつかめないので、読んでもらいます。
川田:町田 康さんの本を読むとリズム感を感じるじゃないですか。それにも近いような、でもお笑いの間。
又吉:町田さんは音楽的なところと落語の語りみたいなところがありますね。僕のは、もしかしたらお笑いのリズムみたいなものかもしれないですね。
⬛︎恋愛と演劇は似ている
又吉が、これまでに執筆した作品を振り返った。
川田:又吉さんの小説は、表現のまわりにあるいいことや悪いこと、悲しいことにまつわる話が続いていますね。それは意識的にそうしているんですか?
又吉:そうですね。『火花』は芸人の先輩後輩の関係性を描いていこうと思い、どうしてもああいう話になってしまいます。『劇場』は劇作家を主人公にしました。恋愛は人と人が付き合って、どういうふうになっていって、結婚するのかしないのかという流れというか台本みたいなものがあるけど、相手がその通りに動いてくれないところがあります。恋愛と演劇は似ていて、演出能力が低い劇作家が恋愛でも全然演出できてないっていう。自分のエゴを押し付けるから恋愛がうまくいってない。演劇で学んだことが恋愛で活かせたり、恋愛で学んだことを演劇で活かせたりというふうにできないかと思ったんです。『人間』は、そういう青春期や表現に携わっていた人間で何かしらの挫折を抱えた人が、それ以降の30代になっていって、その時代のことをどうみてどう感じているのかを書いてみたいと思ったのが動機でした。だから、今のところ表現の話がみっつ続いてしまっているんです。
最後に、小説を書き続ける原動力を訊いた。
又吉:小説は自分の中の知らない部分が出てきやすいですね。お笑いももちろんそうですけど。わからないまま書いていって、わからないことを書くっていうのがやりやすいジャンルなのかなって。「掴みにいく」じゃないけど、それはすごく思いますね。あるものではできない。
又吉の新作『人間』をぜひ手に取ってみてほしい。
J-WAVE『INNOVATION WORLD』では、テクノロジーの進化を追うラジオプログラムを届け、リスナーと「2WAY」で未来を探る。放送は毎週金曜の20時から。お楽しみに。
【この記事の放送回をradikoで聴く】(2019年10月25日28時59分まで)
PC・スマホアプリ「radiko.jpプレミアム」(有料)なら、日本全国どこにいてもJ-WAVEが楽しめます。番組放送後1週間は「radiko.jpタイムフリー」機能で聴き直せます。
【番組情報】
番組名:『INNOVATION WORLD』
放送日時:毎週金曜日 20時-22時
オフィシャルサイト:https://www.j-wave.co.jp/original/innovationworld/
【この記事の放送回をradikoで聴く】(2019年10月25日28時59分まで)
■真心ブラザーズの影響を受けて
川田は「巷では『火花』『劇場』『人間』は三部作と言われてますが、そういう意識はありましたか?」と問いかける。
又吉:自分から「三部作」って呼ばれにいく行為って、すごくみっともないんじゃないかと思ったんですけどね(笑)。ただ、いつかは『人間』というタイトルでやってみたいと思っていました。一作目の『火花』に引っ張られて二作目は『劇場』になったので、なんとなくそろってしまった感じです。
『人間』の冒頭で出てくる表現について、川田は「又吉さんは真心ブラザーズが好きですよね。『レコードのブツブツ』っていう曲があって、普通はレコードを"ブツブツ"って言わないと思うけど、『人間』の冒頭で出てきますよね。あれってオマージュなんですか?」と質問する。
又吉:オマージュではないけど、YO-KINGさんとあいみょんさんと三人で飲んでたときに、まさに二人がその話をしてたんです。YO-KINGさんはブツブツっていう表現をしていて、あいみょんさんはポツポツかボツボツだったんです。「なるほど、音の捉え方って違うんですね」っていう話をしていて、僕は小説にブツブツって書いたけど、そのときはYO-KINGさんのまねをしたと思われたら嫌だなと思って「実は僕も......」って入っていけなかったことを覚えています。
続けて又吉は「真心ブラザーズの影響を大きく受けた」と話す。
又吉:ただし、表現や物の捉え方、面白がり方が全然違っていて、僕は複雑に考えたり悲観的に捉えたりするんです。だけど、YO-KINGさんはそういうのを笑ってくれるから気持ちいいです。相談すると「誰もそんなこと気にしないよ」って言って「あそこのパン屋さん、おいしいよ」とか、すぐに話を変えてくれて、そういうのがすごく素敵だなと思います。
■小説は完成しない?
又吉は作品が出来上がっても「完成した」という思いにならないと話す。
又吉:完成しても「まだいろいろできるな」という感じがするんです。一旦、『人間』がこの形で完成してよかったっていう思いはありますけどね。
川田:小説家の推敲もひとつの技術で、「ここは練ったんだろうな」と思うようなところが文体に現れていて、読者としては面白いところなんです。今回は新聞の連載ということもあり、新聞小説はそのへんの潰しが効かないから苦労したのでは?
又吉:むしろそれを利用したいと思いました。やろうと思えば先に全てを書いてから出すこともできたけど、僕はライブ感を出せないかなと思いました。この先の展開が難しいと思ったら普通は戻って直すけど、そのままいってしまえという感じを出したいと思いながらやってました。面白い作業でした。
川田:そのライブ感が一読者としてはすごく読みやすくて、一気に読んでしまう感じがありました。又吉さんは芸人でもありますから、文章を推敲するときに自分で読み上げますか?
又吉:読むときもあります。朗読が好きなのでセリフも地の文も、自分で読んで自分で聞きます。
川田:作家にも種類があって、文章からリズム感や間を感じる作家がいます。又吉さんはお笑いの人だから、その間とかが小説にも現れていて、これは音読してる人なんだろうなと思ったんです。
又吉:音読もしてるし、人にも読んでもらいます。女性の声とか方言の雰囲気みたいなものはなかなかつかめないので、読んでもらいます。
川田:町田 康さんの本を読むとリズム感を感じるじゃないですか。それにも近いような、でもお笑いの間。
又吉:町田さんは音楽的なところと落語の語りみたいなところがありますね。僕のは、もしかしたらお笑いのリズムみたいなものかもしれないですね。
⬛︎恋愛と演劇は似ている
又吉が、これまでに執筆した作品を振り返った。
川田:又吉さんの小説は、表現のまわりにあるいいことや悪いこと、悲しいことにまつわる話が続いていますね。それは意識的にそうしているんですか?
又吉:そうですね。『火花』は芸人の先輩後輩の関係性を描いていこうと思い、どうしてもああいう話になってしまいます。『劇場』は劇作家を主人公にしました。恋愛は人と人が付き合って、どういうふうになっていって、結婚するのかしないのかという流れというか台本みたいなものがあるけど、相手がその通りに動いてくれないところがあります。恋愛と演劇は似ていて、演出能力が低い劇作家が恋愛でも全然演出できてないっていう。自分のエゴを押し付けるから恋愛がうまくいってない。演劇で学んだことが恋愛で活かせたり、恋愛で学んだことを演劇で活かせたりというふうにできないかと思ったんです。『人間』は、そういう青春期や表現に携わっていた人間で何かしらの挫折を抱えた人が、それ以降の30代になっていって、その時代のことをどうみてどう感じているのかを書いてみたいと思ったのが動機でした。だから、今のところ表現の話がみっつ続いてしまっているんです。
最後に、小説を書き続ける原動力を訊いた。
又吉:小説は自分の中の知らない部分が出てきやすいですね。お笑いももちろんそうですけど。わからないまま書いていって、わからないことを書くっていうのがやりやすいジャンルなのかなって。「掴みにいく」じゃないけど、それはすごく思いますね。あるものではできない。
又吉の新作『人間』をぜひ手に取ってみてほしい。
J-WAVE『INNOVATION WORLD』では、テクノロジーの進化を追うラジオプログラムを届け、リスナーと「2WAY」で未来を探る。放送は毎週金曜の20時から。お楽しみに。
【この記事の放送回をradikoで聴く】(2019年10月25日28時59分まで)
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【番組情報】
番組名:『INNOVATION WORLD』
放送日時:毎週金曜日 20時-22時
オフィシャルサイト:https://www.j-wave.co.jp/original/innovationworld/
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