『天気の子』新海誠監督、RADWIMPSの曲を聴いて「こういう映画をやりたいんだって気付いた」

J-WAVEで放送中の番組『INNOVATION WORLD』(ナビゲーター:川田十夢)。7月26日(金)のオンエアでは、映画『天気の子』の新海誠監督と主題歌を歌う三浦透子さんが登場。作品をつくり続ける新海さんの原動力や三浦さんの歌について訊きました。


■『天気の子』は予想とは違う終わり方?

川田が新海さんに初めて会ったのは、『君の名は。』の試写会が行われた3年前のこと。当時、初対面ではあったものの、「アニメーション史、日本の映画史に残る作品ですよ!」と感激して伝えたと振り返ります。そんな川田は『天気の子』をすでに2回鑑賞しています。

川田:『天気の子』を初めて観たときの感想は「向こう20年の新海さんの作品が楽しみ」だったんです。夏休みの映画のひとつの定型みたいなものに自分で穴をあけたので、次の次の次まで楽しみだと思いました。1回目に観たときはズドンときて言葉が出なくなっちゃって、この感覚は最初に文学に触れたときの感じだなと思って。言葉になる前のものをもらっちゃった感じがして、ぼう然としてましたね。
新海:確かに物語って予想しながら観るじゃないですか。そういう予想とは違う終わり方をする作品かもしれないですね。

川田は「新海さんの作品には文学性のようなものがある」と分析します。

川田:『君の名は。』でエンタメ方向にふれて、新海さんは国民的作家という宿命を背負う感じかなと思いましたけど、やっぱり文学作品だと思いました。
新海:「何よりもエンタメでありたい」という気持ちはあるし、そのつもりだけど、面白いとかワクワクする、ドキドキするといった五感にアクセスできるような映画にはしたくて、「面白かった」「よくわからないけど観てよかった」って言ってほしい。言ってもらうために考え尽くしているからエンタメのつもりではあります。
川田:新海さんの映画は原作も考えてるから、原作からイメージを膨らませる人じゃないとたどり着かない物語だと思いました。全てイメージできてるからすごいなと思いましたね。
新海:日本は令和の時代でも作家主義で、宮崎駿さんのようにオリジナルのアニメーション映画をつくる伝統があるんです。1本つくるのに億単位のお金がかかるのに、ひとりの作家性のようなものにベットしてもらえるのは、怖いことでもあるし、日本のエンタメの豊かな部分でもある気がしています。


■野田洋次郎の素晴らしさ

番組ではAI(人工知能)アシスタントの「Tommy」が、新海さんのSNSや過去の取材記事、作品などのデータを収集して分析する性格診断を行いました。

「哲学的なタイプかつ、 新しいアイデアを進んで受け入れるタイプ。自分の才能を誇示することにあまりこだわらず意思決定し、自身のみの成功という点にはあまり関心がない。また、規則正しい生活を望み、快楽を求めないストイックな一面も見受けられる」と診断。

AI Tommyの分析を聞いた新海さんは「めちゃくちゃいい人みたいですね」と笑います。

新海:物語にも発明が必要です。『天気の子』であれば「東京の100パーセントの晴れ女」っていうのは、ひとつの発明のつもりです。それだけで一気に広がります。楽しいと思えるものは、発明が入っているものなんです。その意味ではTommyさんは当たっていますね。
川田:僕は音楽体験に近いのかなと思いました。いいアルバムって何度も聴きたくなるというふうに、音楽が緊密に関係しているので。
新海:わかっているからこそ、立つ鳥肌ってありますよね。

そして、音楽を担当するRADWIMPSの野田洋次郎さんの話題に。

川田:セリフとしてあがっていないところを音楽が補完してますよね。
新海:『君の名は。』のときは『スパークル』とか『なんでもないや』とか、「どんな言葉があると映画としていいか」という話を一瞬だけして、そのときに話した言葉とは違う歌が出来上がってきました。今回はそういう話は一切なくて、僕が洋次郎さんにお渡ししたのは最初の脚本だけです。それで『愛にできることはまだあるかい』と『大丈夫』ができてきて、「この人すごいな」と思って。僕はこういう映画をやりたいんだっていうことを『愛にできることはまだあるかい』を聴いて気付きました。僕は洋次郎さんのことが好きすぎて(笑)。

番組では、RADWIMPS『愛にできることはまだあるかい』をオンエア

『天気の子』では作中に「カップヌードル」など、実在するメーカーや商品が出てきます。川田が、その点について「コマーシャルっぽい話がすごく自然に織り込まれているし、むしろバラエティな広がりに繋がっていて、その強度がすごく嬉しい」と感想を述べます。

新海:「そんなに周りのプレッシャーがあるの?」って心配されることがあるけど、全く逆で、僕がやりたくて僕が銘柄を書いて許可を取りに行ったんです。某ハンバーガー店もどうしても実名で出したくて、一度お断りされたけど日本の本社に「直接説明させてください。あそこはあのロゴじゃないと成り立たないんです」て言ったんです。出てくる宣伝の車とかも許可を取るのは大変なんですけど、僕たちの実生活がそうじゃないですか。企業ロゴに囲まれて、それで楽しいと思うことも息苦しいと思うこともあるという、そのものを描きたかったんです。
川田:遊びもふんだんにあってよかったです。新海さんはまず作品に取り込んであとから許可を得るというのは以前から変わらないですね(笑)。

絶え間なく作品を生み出そうとしている新海さんの原動力を訊くと、作品によって違いはあるものの、『天気の子』は"作品に対する批評"だったと話します。

新海:たとえば、『君の名は。』は死者を蘇らせる話であるとか、災害をなかったことにする話だとか、そういう受け止められ方もあることがわかったんです。そのときに、次の映画は怒られないものにすべきかと一瞬思ったんですけど、自分が一番やりたいこと、自分の核を考えると怒られるもの、何か踏み外してしまうもの、叱られてしまうものがどうしても好きだし、正しい道だけにはのれないし、もっと叱られるものをつくりたいと思ったんです。


■ナチュラルすぎて気付かれない

後半では、RADWIMPSが手がけた『グランドエスケープ (Movie edit)feat.三浦透子』を歌う女優の三浦透子さんが登場。川田は三浦さんに対して「歌っているときとしゃべっているときとでは声の印象が違う」と言います。

三浦:歌っているときとそうではないときで、意図的にシフトチェンジをすることはないんですけど、いただいた歌詞を見て、歌い方も含めて全部イメージが先にあって、どんなふうに歌うかとかどんな声を使うかは、選びながら歌っています。

『天気の子』では、最初に『グランドエスケープ (Movie edit)feat.三浦透子』の収録がおこなわれたと三浦さん。

川田:あの曲が流れるとき、やばいですよね。一気にアガる感じがします。合唱みたいなアレンジもあってね。
三浦:いいところでかけていただきました。

三浦さんは、歌う曲がどういう場面で使われるのか、監督に訊いてからレコーディングに臨みました。

川田:どこでこの曲がかかるのか、わかってる歌い方だというのは感じましたね。
三浦:そもそも映画のために作られた曲だし、そこが私に与えられた役割だと思ったので。

三浦さんは、子どもの頃にサントリー「なっちゃん」のCMに2代目なっちゃんとして出演。現在も女優として活躍しています。歌うことと演じることについて訊きました。

川田:歌うときは表情もつくってますか? 今、会話してるときの表情も豊かですよね。
三浦:イメージをもって立つようにしています。そうじゃないと歌えないっていう"そもそも論"があるんです。私が作ったわけではないし、もらったものを歌うから、私は体を使って表現することを担っているので、立ち方とか顔だけじゃなくて、体をどう使うかみたいなイメージがないと恥ずかしくて立ってられないです。
川田:憑依するというか、何かになってないと......。
三浦:そう言うとちょっと恥ずかしいですね(笑)。
川田:『グランドエスケープ』の歌詞ってすごいけど、誰になって歌ってるんですか?
三浦:聴いたときすごく不思議で、どんな目線から書いた歌詞なんだろうって。遠く離れた、上なのか横なのかわからないけど、追われているイメージで歌っています。でも、絵を観たときに納得した感じもあります。
川田:三浦さんは、ずっとナチュラルですよね。あまりにもナチュラルで、最初は新海さんからもスタッフだと思われてたんですよね。
三浦:そうなんですよ。全然気付かれなくて(笑)。
川田:声も作ってる声じゃなくて、自ずと出ている声だからグッときちゃうんでしょうね。

番組では『グランドエスケープ (Movie edit)feat.三浦透子』をオンエアしました。

映画『天気の子』は絶賛上映中です。ぜひ劇場に足を運んでみてください。

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【番組情報】
番組名:『INNOVATION WORLD』
放送日時:毎週金曜日 22時-23時
オフィシャルサイト:https://www.j-wave.co.jp/original/innovationworld/

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