小林武史「アートの役割は、時代の“鏡”となって切り込んでいくこと」

J-WAVEで放送中の番組『GOOD NEIGHBORS』(ナビゲーター:クリス智子)。3月11日(月)のオンエアでは、小林武史さんが登場。東日本大震災から8年。いま、小林さんは何を思うのでしょうか。小林さんが実行委員長を務める芸術祭「Reborn-Art Festival」の話も伺いました。


■震災を機に、生き物のリアルな部分を感じるようになった

小林さんは、宮城県の牡鹿半島や石巻市等を舞台にした、音楽、食、アートを楽しむ総合芸術祭「Reborn-Art Festival」の実行委員長を務めています。こういった活動を通じて、この8年で感じたことを伺いました。

小林:いろんな顔があるんです。普通の街では、なかなかないくらい多様に乱反射するというのかな。そういう感じになることってそこまでないと思うんですよね。
クリス:東日本大震災によって、東京も変わったこと、変わらないことが炙り出されてしまったことがありますよね。
小林:いろんなことがせめぎ合って、生き物はそうやって生きていくんだと、あらためて感じざるを得ないです。いろんな誤差とか、乱反射していくような、そちら側からは陰になっちゃってるけど、こちら側からはポジティブに見えることとか、そういったことが並行しちゃうんだけど、そこを乗り越えることでポジティブなことがあるんだって気付かされる日々です。
クリス:そうですね。
小林:東京で会社勤めしてる人や、子育てしているご夫婦とかも、みんなそうだと思うんですけど。
クリス:「乱反射している」ということを自覚することが大事だと思うんですけど、どうでしょうか?
小林:昔に比べると、そういうことが見えやすくなってきたと思うんです。震災によって生と死や、コミュニティのあり方が剥き出しになったけど、フィクションみたいな力で覆い隠してた部分、差別的なこととか男女のこととかが、ボーダレスになっている。僕はそれは前向きに受け止めています。

そして「生き物としてのリアルな部分を感じられるようになってきたということはおもしろい」と語りました。


■アートの役割は、時代に切り込んでいくこと

「Reborn-Art Festival」は2017年に初開催されました。今年は2回目の開催ということで、8月から約2ヶ月間行われます。2017年の初開催は、51日間の開催でした。

小林:2年前は、やってみないと分からないことが多かったです。51日間のうち45日間くらい雨で、36日間連続で雨でした。開催の初日から、宮城県の記録を作っちゃって(笑)。
クリス:そんな時期だったんですか?
小林:寒い夏になっちゃって。自然の中に作品があったりするから、ドロドロの世界だったんです。だけど、結果としてはすごく高い評価をもらったと思います。来てくれた人も予想より多かったですし、芸術祭の多様なパワーが被災地には有効だったと思います。あの場所だからできる新しい出会い方があったと思います。

もともとこの芸術祭を始めるときは、どのような芸術祭にしようと考えていたのでしょうか。

小林:地方の芸術祭でありがちな、特に被災地ですから、東北に寄り添っていくというか、歴史的な民話の世界とかとサブカルをちょっと混ぜるくらいの感覚だったんです。でも途中から、世界の芸術祭を見ても根っこは同じところにあると感じました。
クリス:どういった部分でそう感じたのでしょうか?
小林:テーマとして、アートの役割は、「今の時代はどうなのか」ということを、鏡になって、切り込んでいくことだと思うんです。エンターテインメントとは違う表現を許されている。そういう意味で、優しいだけでなくて、グッと入っていく芸術祭にしようと思いました。
クリス:確かに「Reborn-Art Festival」では、そういうアートの強さや面白さがあったと思います。
小林:人間が丁寧に管理していく何か、ということではなくて、管理が行き届かない自然のありのままだったり、美しさだったりといったものと、現代アートは化学反応を起こしやすいと思うんです。都心で室内できちんと管理された作品もいいけど、それを外に出したときに今までにない力が出ると思います。

今回の「Reborn-Art Festival」のテーマは、「いのちのてざわり」。さらに、エリアごとにキュレーターを変えるシステムを採用していて、小林さんは桃浦(もものうら)エリアを担当しています。

小林:「桃浦ビレッジ」という、ちょっとした体験宿泊施設を作ったんです。すぐそばに荻浜小学校という、震災後に人口流出などが原因で廃校になった学校があって。そこに、人が滞在する、住まうことができるようになったんです。前回はそこに地域のアーティストに集まってもらって、展示をしました。桃浦エリアのコンセプトは「リビングスペース」で、生きる空間ということで、居間の延長で茶の間のようなイメージです。
クリス:「いのちのてざわり」に加えて、桃浦エリアには「リビングスペース」というコンセプトもあるんですね?
小林:大事なのは、夜という時間は密度が濃くなっていくという、そこに触れないと「いのちのてざわり」というところに行けないなという想いがあって、それをやりたいです。

今年の「Reborn-Art Festival」は8月3日(土)から9月29日(日)まで、58日間の開催です。詳細は、公式サイトをチェックしてみてください。

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【番組情報】
番組名:『GOOD NEIGHBORS』
放送日時:月・火・水・木曜 13時-16時30分
オフィシャルサイト:https://www.j-wave.co.jp/original/neighbors/

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