「Amazonはローマ帝国に似ている」元マイクロソフト社長が語る凄さと今後

J-WAVEで放送中の番組『J-WAVE TOKYO MORNING RADIO』(ナビゲーター:別所哲也)のワンコーナー『MORNING INSIGHT』。9月20日(木)のオンエアでは、元・マイクロソフト代表取締役社長の成毛眞さんをお迎えし、世界4大IT企業の一つ、Amazonの戦略を大解剖。同社の特徴的なビジネススタイルなどについてお話を伺いました。


■ECからエンタメまで! 巨大企業・Amazonを支える様々な事業

今や時価総額100兆円にもなるという巨大企業・Amazon。EC関連だけでなく、世界最大のクラウドサービスを展開し、さらにはエンターテイメント業界にも参戦している同社は、まさに「鵺のような存在」であると成毛さんは言います。

別所:経営のプロから見て、Amazonの経営のすごいところとは?
成毛:経営の最終的な通知表、通信簿という意味では、時価総額というのがあります。これが今、全世界でAmazonはAppleの次で100兆円になります。月に行く方もいますが、100兆円となると月に50回ほど往復できそうな規模になります(笑)。その意味では大成功している企業ですね。
別所:最近ではGAFAの、世界のリーディングカンパニーとなっている。ほかの3社と比べて、突出してAmazonというのはどういった部分があるのでしょうか?
成毛:先日Appleが新しいiPhoneを出しましたが、AppleはiPhoneとMacBookの2本立てです。それに比べるとAmazonは、物も売っていますし、AWSというITのビジネスもしています。最近では、Amazon Goというコンビニみたいなものも出すなど、多岐に渡る事業がAmazonの強みの1つだと思います。
別所:エンターテインメントもやってますしね。エミー賞も獲る作品をAmazonが作っているわけです。もはや私たち生活者としては、Amazonと無関係に暮らすことは不可能ということでしょうか?
成毛:僕の周りで昨日だけでもAmazonから、3つ荷物が届いてました(笑)。美顔ローラーと、ソーダが2箱届きましたし、もしかすると最近買ったものの6割ぐらいはAmazonから送ってくるのかもしれません。そういう人が増えてるんだと思います。
別所:やはり人々の生活を一変させた影響力を持つ企業。マイクロソフトのトップでいらした成毛さん、これをどう見ていらっしゃいますか?
成毛:実はAmazonは物を売っている通販企業だと思われている方が非常に多いですが、IT企業でもあります。IT企業のなかでも、クラウドというサービスがありまして、これはアメリカだとCIAや国防総省ですとか、そういった巨大な組織まで使うサービスになります。この分野では、既にマイクロソフトもAmazonに負けています。もちろんIBMも負けていますから、地球上最大のクラウドサービスをしている会社ということになるわけです。小売店だけではないという意味では、どの人の生活にも、仕事にも深く関わってしまう、ある意味では、鵺のような存在といってもいいかもしれないですね。
別所:Amazonがここまで巨大化、成功した理由はどこにあるとお考えですか?
成毛:Amazonは今までにさまざまな失敗もしています。過去にはFire Phoneというスマホを2014年から2015年まで1年間だけ出しました。そういった試みを繰り返しながら。いいものは伸ばし、ダメなものはすぐやめる。しかもその試みの回数が多いというのが、Amazonの1つの特徴です。これからどうなっていくのかは、本人たちにも実はわかってない気もします。


■Amazonはローマ帝国に似ている?

成毛さんによると、Amazonでは多岐に渡る事業について、その部門ごとに自治的に仕事をさせるのが特徴で、それはローマ帝国の統治体制にも通じるものであると言います。

別所:成毛さんは本のなかで、Amazonはローマ帝国や江戸幕府のようだと書いています。これはどういうことですか?
成毛:経営トップのジェフ・ベゾスは、かなり怒りっぽい人らしいのですが、彼の恐ろしいところは、深くそれぞれの事業に関与しながらも、どんどん人に任せる点です。まるでローマ帝国のようだと思います。
別所:どういうことですか?
成毛:ローマ帝国というのは、江戸時代もそうだと思うんですけども、いわゆる占領した地域の国々をそれぞれ自治領みたいにします。宗教も、お金の単位も下手したら変えなくていい。そういうことで帰属意識を高めていき、帝国全体として大きくなるというクセがありました。
別所:「Amazonを知ることは、未来の経営学を知ることだ」とも書かれていますが?
成毛:Amazonには、実は日本企業にない特徴があります。あまり短期的な売上や利益にこだわっていないんです。逆に言うと、創業以来、まだ1回も配当していない。つまり、利益を出さない時期っていうのがかなり長かったわけです。お金はどんどん稼ぎますが、稼いだお金はどんどん投資していく。これは意外と日本の企業にはない特徴です。
別所:それは未来の経営学とちょっと繋がっていくものがあるんですか?
成毛:これからどんどんそういう傾向になってくると思います。
別所:株主、大丈夫ですか?
成毛:株主は利益よりも、もしくは配当よりも、成長を買いたいんでしょうね。


■ファッションリテーラーとしてのAmazon

現在でも多岐に渡るサービスで世界屈指の巨大企業として君臨しているAmazon。そんなAmazonの今後について成毛さんは、ファッションリテーラーとしての事業に注目していると言います。

別所:そうやって考えると、Amazon帝国は一体どこまで、どこへ、どのように進んでいくのか気になります。ほかにAmazonのすごいところは?
成毛:クラウドサービスですね。企業のなかに、鎮座していたメインフレーム、コンピュータを複数の企業で使えば安くなるんじゃないかと。銀行であれば、お昼はATMが使われ夜はほとんど使われません。日本の銀行とイギリスの銀行やニューヨークの銀行が、1台のコンピューターを共同で利用する。時間差を利用すれば、コンピュータのコストが半分になる。それがクラウドの基本的な原理です。このへんのスキームが、これからさらに伸びてくると思いますね。
別所:世界では、Amazonへの課税対策や法律などの議論もあがっていますが。
成毛:マイクロソフトも独禁法でさんざん叩かれた経験がありますが、あのときのマイクロソフトのシェアは9割ぐらいありました。ところがAmazonの場合は、アメリカの全小売の4%程度のシェアしか持ってないはずです。アメリカの小売の10%程度というふうに通信販売は言われています。しかもマーケットも違うので、その分、規制が緩やかになるということもあるかもしれません。
別所:今後、Amazonが将来的に狙っていくこととは?
成毛:ズバリ、ファッションですね。今、おそらくAmazonは全米最大のファッションリテーラーだと思います。アパレルのリテーラーとしては、どんどん伸びています。
別所:日本でもはじまったアマゾンファッションはいかがですか。
成毛:今年からAmazonは日本で力を入れると言っていますが、ブランドが揃うかどうかが、これからの鍵かもしれません。
別所:Amazonのファッションに注目ですね。あと車などは?
成毛:どうでしょうね。その前にAmazonGOというサービスがありますから。こればっかりはリテールをやってるAmazonでなければできないシステムです。
別所:無人コンビニ。Amazonでキャッシュレスで決済できる。
成毛:すごいですよね。

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【番組情報】
番組名:『J-WAVE TOKYO MORNING RADIO』
放送日時:月・火・水・木曜 6時-9時
オフィシャルサイト:https://www.j-wave.co.jp/original/tmr/

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