作家・本谷有希子「旅が面白くなくて…」2年ぶりの新刊執筆のきっかけ

J-WAVEで放送中の番組『RINREI CLASSY LIVING』(ナビゲーター:村治佳織)。9月1日(土)のオンエアでは、劇作家・作家の本谷有希子さんをゲストにお迎えし、最新作『静かに、ねぇ、静かに』の執筆の裏話やその他の活動について訊きました。


■2年間小説を書けなかった理由

演劇や小説でさまざまな賞に輝き、芥川賞も受賞している本谷さん。1年ほど前から村治と友人として交友を深めている仲だといいます。そんな本谷さんの2年ぶりの最新刊『静かに、ねぇ、静かに』が、先日刊行されました。

村治:何で2年のブランクが?
本谷:敢えて書かなかった感じではなくて、書けなかったんです。書いてはいたんですけど、上手く書けずに、書いては捨て、書いては捨て、やっている間に2年たっていただけです(笑)。
村治:そんななか『静かに、ねぇ、静かに』ができた訳ですが、これはどんなふうに?
本谷:私は毎度、書き終わると小説の書き方を忘れちゃうんですよね。だから時間がかかる。「どうやって小説って書くんだっけ?」というところから、色々書きながら試して「こういう書き方はどうかな」と試行錯誤しているうちに、今回はきっかけとなるエピソードがあって。自分が「もう書けないからいいや」と、去年の6月に友人とマレーシア旅行に行ったんです。その旅が大変面白くなくて。それとともにその旅中に写真をスマホでとにかく撮ったんですよ。普段あまりそういうことはしないんだけど、旅が面白くないから撮ってたら、それが逆に面白くなって取り憑かれちゃって、旅そのものよりもホテルで撮った写真をアルバム整理しながら見返している時間のほうが面白くて。自分の写真なのに「面白そう」とか「楽しそう」とか「おいしそう」とか言っている、このホテルが面白いなと思って「これは小説になるかもしれない」と。きっかけはそのようなちょっとした違和感みたいなもので。
村治:ヤマコという登場人物が、ホテルの中で本谷さんみたいな作業してますもんね
本谷:斜めにみていたところがあるんですけど、インスタグラムとかにのめり込む意味がわかったかな。でもそのこと自体は不自然で怖いなと思ったけど、ここまで嫌な話を思いっきり書けたのも久しぶりだったから、基本的に性格が悪いので私(笑)。



■休んでいた演劇の活動も再開 村治佳織も参加?

小説家と同時に劇団を立ち上げて知られるようになった本谷さん。執筆活動をはじめたきっかけを訊きました。

村治:そもそも小説家になろうと思ったときは何歳だったんですか?
本谷:小説家になろうとしたタイミングはないですね。18歳のときにとにかく田舎から出てきたくて、東京にきました。演劇の学校に入ったけど「何かをしなくちゃ」という焦燥感に駆られて、ワンルームの部屋にワープロが一台あって書いて。処女戯曲と処女小説は、私が18歳のバイトをしているときに同時期に書いていて、たまたま人にみせたら演劇学校の子が「やろう」と言ってくれて、劇のほうが先になりました。
村治:小学生のときから読書感想文が好きとかじゃなかったの?
本谷:嫌いだった(笑)。
村治:それで、すぐに評価されて才能に気づく人がいて、まわりの人が本谷有希子という才能を見つけたわけですが。2000年には「劇団、本谷有希子」を旗揚げして。最初の公演は?
本谷:高田馬場の住宅地にある小さい劇場を借りて、借金してやって。お客さんは入って50人くらいだったかな。それがけっこう上手く口コミというか、連日お客さんが来てくれて、立ち見とかもでて。
村治:そこから休みなく10何年やって、少しお休み、そしてそろそろまた演劇をもう一回やってみようかなという気持ちになっているんだよね?
本谷:今、なんとなくまわりで言ってくれている人とのタイミングとか、モチベーションは何をやるかより「誰とやるか」というのでしかなくて。どういう人と出会って、どう転がっていくか、まず声をかけてくれた人がいて、「この人と作りたい」というのしか根っこのモチベーションがなくて。それで今、ちょっとワークショップしたりとか、佳織にも来てもらったんだけど。
村治:演劇の人はワークショップといって実験的なことをしたりして。
本谷:私の場合はとにかく色々なことから疑ってみようと思って「本当に役者じゃないとできないか」とかで。表現者だったら役者じゃない人のほうが、面白いことってけっこうあって。だから佳織にも「遊びにこない?」といって来てもらって、演技してもらったんだよね。
村治:私は何でもわくわくするのが好きだから、声をかけてもらったらホイホイ行くので。これがいつ本公演の形になるかはわからないし、私はそのとき客席で笑っているかもしれないし。
本谷:ギターを弾いているかもしれないし、出てるかもしれないし、色々な可能性があるという。
村治:プライベートでも仲がいいし、表現者としても。
本谷:でもそれを考えると、芝居したら佳織がうちに来なくなるかもしれない。関係が壊れるかもしれない(笑)。
村治:怖いらしいですね、演出家としては。
本谷:それは昔の話です。
村治:集中して役者さんに酷い言葉を投げかけるというか。
本谷:酷いというよりしつこい、「何でできないの?」みたいなことを純粋に疑問で訊いていたり。だから、ある程度しぶとかったりして、でも暴言とか吐いたりはしない。
村治:今は母になったから母性もあるし、違う演出方法でやるんじゃないかと。楽しみですね演劇のほうもね。

11月には本谷さんの作品『生きてるだけで、愛。』が映画化。趣里さん、菅田将暉さんらのキャストで公開されます。小説家、劇作家として表現者としての本谷有希子さんの今後の活躍に注目です!

【番組情報】
番組名:『RINREI CLASSY LIVING』
放送日時:土曜 20時-20時54分
オフィシャルサイト:https://www.j-wave.co.jp/original/classyliving/

関連記事