坂本龍一と津田大介が考える、これからのアートフェス

J-WAVEで2ヵ月に1度、第1日曜にお送りしている番組「RADIO SAKAMOTO」(ナビゲーター:坂本龍一)。11月5日(日)のオンエアでは、ジャーナリストの津田大介さんをゲストにお迎えしました。

津田さんは、愛知県で3年に1度開催されている現代アートの祭典「あいちトリレンナーレ2019」の芸術監督に就任されました。就任依頼のメールが来たときには「宛先間違ってないかな?」と思うくらい戸惑い、「絶対無理。どうやって断ろうか」と考えていたそうです。

坂本:津田さんが芸術監督に選ばれた理由ってなんだったの?
津田:「あいちトリレンナーレ」は2010年に始まって、次回で4回目になるんですけど、1回目は祝祭性を大事にした「都市の祝祭」がテーマで、2回目は震災に応答した「揺れる大地-われわれはどこに立っているのか:場所、記憶、そして復活」、3回目はまた祝祭性の強い「虹のキャラヴァンサライ 創造する人間の旅」でした。テーマが祝祭からシリアス、そしてまた祝祭へと繋がるなか、建築家の五十嵐太郎さんが「次回の芸術監督はアートだけではなく、アート以外と接続できる人選がいいのでは」と僕を推薦してくれて決まったそうです。
坂本:アートの危機感っていうか…アートフェスをやろうという人たちが、なぜ、政治や社会や音楽などジャンルの違うことを取り入れようとするんだろうね。
津田:坂本さんや大友良英さん、小林武史さんのように、社会に対して様々な活動をしている人が現代美術に近づき、芸術監督をやることは、イチ観客としてすごく興味を感じます。だから、芸術の一部でもある「建築」や「音楽」のクリエイターが芸術監督をやるのは分かりますが、僕はノンフィクションとかジャーナリズムなので…(笑)。ネットやメディアはやるけど芸術とは全く違う距離の人間だったので、やっぱり驚きみたいなものはありますよね。

「あいちトリレンナーレ2019」のテーマは「情の時代 Taming Y/Our Passion」になったことが、10月に発表されました。「“情”って、情報の情でもあるけど、他にも情を使った熟語って沢山あるよね」と坂本。

これに「まさにおっしゃる通りです。情やPassionという単語のように、すごく多義的なものを考えようとしたんです」と津田さん。そして以下のように続けました。

「今、世界で起きていることは、ナショナリズムとグローバリズムの対立だと思うんですよね。ナショナリズムで政治的に閉じたがって排除したがっているけど、一方で、ネットや金融などはグローバリズムで繋がっているから切り離せない。ナショナリズムとグローバリズムが対立しているんだけど、併存せざるを得ないことで起こる食い違いから芸術祭を発想していきたいと思いました。

あと、今はナショナリズムが感情を煽ることによって、フェイクニュースなどの情報が入り混じり、感情によって世界がめちゃくちゃになっている。そう考えたときに『感情の“情”って、情報の“情”でもあるな』と思いつき、そこから“情”という言葉の意味を調べました。

『感情といった心の動き』『情報という本当の姿』『思いやり、情け』と、主に3つの要素から成り立つことを知り、この要素がテーマにふさわしいのでないかと考え、決定しました」(津田さん)

2019年、津田さんは私たちにどのような芸術祭を見せてくれるのでしょうか? 楽しみですね!

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【番組情報】
番組名:「RADIO SAKAMOTO」
放送日時:隔月第1日曜 24時-26時
オフィシャルサイト:http://www.j-wave.co.jp/original/radiosakamoto/

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