坂本龍一、村上 龍との交流を語る。『限りなく透明に近いブルー』に反感を持った理由とは

J-WAVEで放送中の番組『RADIO SAKAMOTO』(ナビゲーター:坂本龍一)。5月3日(日)の放送では近況と、40年来の友人である村上 龍について語った。


■文化に対してのリスペクトを望む

坂本は番組冒頭「この2か月で世界が一変してしまいました」と、新型コロナウイルスの影響について触れた。坂本自身は4月の頭にニューヨークの自宅に戻り、2週間におよぶ自主隔離生活をしているという。

坂本:もう隔離生活は明けたんですけども、いまだに外に1歩も出ていません。普段もほとんど引きこもっているので、そんなに実は普段と変わらないんです(笑)。オンラインでやることがたくさんあるので、けっこう忙しいです。どこか現場に行かないとできない仕事というのもたくさんあるわけですけども、僕は自宅で音楽が作れるので、本当にラッキーな仕事だと思います。僕の周りの音楽に関わる人達でも、舞台を作る人や照明を作る人、音響を制作する人、それからライブハウス、あるいは映画館や劇場。劇場もたくさんの人が働いているわけですよね。そういう人たちが本当に大変で。望むべくもないんですけど、ドイツのように文化に対してきちんとリスペクトをしてほしいものですけど、難しいのかな……? だけど、そう(難しいと)言ってはいけない、ちゃんと言わないとね。


■村上 龍と坂本龍一の不思議な交流

番組へは坂本の親友である村上 龍からメッセージが届いた。村上は3月18日に『MISSING 失われているもの』(新潮社)、4月8日に『すべての男は消耗品である。最終巻』(幻冬舎)を上梓した。

村上:えっと『消耗品』は(連載が)何年続いたんだっけな? すごく続いて、連載のいちばん最後の作品です。『MISSING』は、私小説みたいなんだけど私小説じゃないという不思議な小説で、自分でもこんなの書いたのは初めてだと思いました。坂本は『坂本龍一だより』を 読んでると、忙しすぎるんじゃないかなって心配です。僕は何にもしてないですから(笑)。あまり忙しくしないでほしいですね、というだけです。

このメッセージに対して、坂本はこう語る。

坂本:村上 龍は同じ龍が付いているし、辰年で同い年で、デビュー作の『限りなく透明に近いブルー』(講談社)もやっぱり気になって、すぐに読みました。当初、その『ブルー』に関しては、僕は反感すら持っていて、単純に普通の小説として読めなかったんです。書いてある内容が、わりとその僕たちの20代前半、10代終わりから20代前半にかけての生活、環境、といった周りのものが、そっくりというか……。かなり近い状況で暮らしていて、当時はそういう若い子がいっぱいいたわけですね。それで、ドラッグのやりすぎで亡くなったりした子たちもいた。そういう周辺のことが赤裸々に書いてあるので、なんだか僕はちょっと反感持ったんですよね(笑)。あんまり世間一般に触れてほしくない、晒したくない、僕たちだけの世界を人の目に晒したみたいな、そういう気持ちがたぶんあったんだと思うんです。

以来、坂本は村上のことがずっと気になっており、『コインロッカー・ベイビーズ』(講談社)が発売されたときにはすぐに手に取った。そして「純粋に小説としてすごい。読み物としてすごい」と思ったという坂本は、村上の自宅にインタビューをしに訪れたという。

坂本:40年くらいの付き合いなんですけど、あとにも先にも自宅に行ったのは、これだけ長く付き合っているのにこの1回だけという(笑)。変わった友だちなんです。普通、友だちっていうと、自宅行ったり来たりお互いに訪ねたり、結婚したって言ったら『おめでとう』と言ったり、そういうことがあると思うんですけど、ないんですよ、不思議な付き合いでね。それぞれみんなあるわけだから全然かまわないんですけど、こういう付き合いも面白いなと思いますよね。

村上の映画の音楽を担当したり、出演しているテレビ番組にゲスト出演するなどしているという坂本は、プライベートについて「数年に1回、会ってご飯を食べて、まぁ近況報告というか雑談をして、なんとなく別れるという感じ」と告白。『MISSING』を「すごい小説だなと思いました。どうすごいのかというのは、みんな読んで、自分たちで判断していただかないといけないと思う」と紹介した。

坂本:「全然わからない」っていう人もいるかもしれないし、人それぞれだと思うんだけど。ものは試し、読んでみてください。読まないとわからないのでね。みんな外出自粛で非日常的な時間がたくさんあるでしょうから、日ごろ読めない本とか、観ていなかった映画とかみんな観ているんでしょう。ぜひ読んでみてください。


■ニューヨーク行きを決断した理由

冒頭でも伝えた通り、坂本は4月の頭ごろに感染拡大が広がるニューヨークの自宅に戻った。周囲からは心配され、反対の声も随分とあったそう。それでもニューヨーク行きを決断したのは、こんな理由があった。

坂本:プライバシーの話をしちゃいますけれども、日本にいても家がないので東京ではホテルに泊まってるんです。それで万が一東京で僕が感染して熱が出たら、ホテルが困るんで追い出されちゃうわけです。じゃあ短期で急遽マンションを借りる、これもやっぱり熱が出てる人は貸してくれないわけで、もし感染したら路頭に迷います。

坂本は日本にいても感染をするかもしれないと思い「どうせ隔離生活をするなら、やはり自分の家でしたい」と、ニューヨークに帰ってきたそう。

坂本:ニューヨークは感染がまだまだ拡大している途中で、本当に1歩も出ないで、かなり緊張状態ではありました。今の状況でいうと、だいぶピーク時からは下がってきて、日々の死者数、感染者数、入院者数といった、それぞれの数字がどんどんと下がってきてはいます。それでもまだ1日に300人以上の方が亡くなってるというのが、異常事態ですよね。ニューヨークに帰ってくる前の4月2日に外出自粛している方たちのために、オンラインのライブというのをやりました。さらに3日、4日は、まだちょっと発表できないんですが、急遽、録音をしたくなった内容がありまして、あるスタジオでレコーディングを最少人数で2日間やりました。それは今年の後半でも発表できると思うので、また追々発表します。

『RADIO SAKAMOTO』は坂本が近況報告や今後の活動、音楽などについてトークを展開。放送は2か月に1度、第1日曜日の24時から。

【この記事の放送回をradikoで聴く】(2020年5月10日28時59分まで)
PC・スマホアプリ「radiko.jpプレミアム」(有料)なら、日本全国どこにいてもJ-WAVEが楽しめます。番組放送後1週間は「radiko.jpタイムフリー」機能で聴き直せます。

【番組情報】
番組名:『RADIO SAKAMOTO』
放送日時:第1日曜日 24時-26時
オフィシャルサイト:https://www.j-wave.co.jp/original/radiosakamoto/

関連記事