【連載】やきそばかおるのEar!Ear!Ear!(vol.29)
「親譲りの無鉄砲で小供の時から損ばかりしている」といえば夏目漱石の「坊ちゃん」ですが、私にとっては「脂だらけの無節操で、食事の時は“特保”ばかり飲んでいる」となっています。
年齢を重ねると体についた脂肪がとれにくく、気がつけば「脂肪の吸収を防ぐ…」的なお茶が欠かせなくなっています。少しでも高カロリーな食事が続くと「坊っちゃん」ならぬ、「肪ちゃん」になってしまいそうです。
日曜の早朝5時。ラジオをつけていると、脂肪とは全く縁のなさそうな爽やかなナビゲーターの声が聞こえてきます。声の主は昨年の10月から、J-WAVEの番組「ZAPPA」(毎朝 5時)の日曜ナビゲーターを務めている前田智子さん。
前田さんはニューヨークの大学を卒業後、2011年に「ミス・インターナショナル」「ミス・ユニバース」「ミス・ワールド」と並ぶ4大コンテストの一つ「ミス・アース・ジャパン」に選ばれました。さらに、モデル、MC、レポーターのほか、ダンサー・振付師としても活躍中です。運動神経も抜群。以前とある番組のレポートで、プールの上にボードを浮かべて、そのボードに乗って行うヨガを紹介した時は、ゆらゆらと揺れるボードに慣れず、始めこそ、体を安定させるのに苦戦していたようですが、しばらくすると「ボードの揺れが心地いいです!」と、余裕の様子でヨガを楽しんでいました。
前田さんはウォーキング指導や、ピラティスをベースにした体づくりのアドバイザーとしても活動中です。前田さんによると、歩いている時は、腕を後ろに大きく振るようにして、前に振る時は45度以下の高さにすること。さらに、腕は左右対象に動かすようにすると、グッと洗練されて見えるそうです。私は毎日重いカバンを持っているのですが、毎日重いものを持っていると、何も持たずに歩く時に違和感を覚えるようになります。前田さんのアドバイスの通り、腕を意識的に動かすことを心掛けてみようと思います。
ちなみに前田さんは、「ZAPPA」で不定期でエクササイズ(通称「ラジオ・エクササイズ」)を紹介しています。ある回では、足元がしっかり安定して、ヒップラインも綺麗に演出できるエクササイズを紹介しました。できれば動画があると…と思う方もいるかもしれませんが、なにしろこの番組、放送中はワンマンDJスタイルなのでそれは不可能。その代わりに「ZAPPA」のサイトでは、エクササイズ中の写真が公開されています。前田さんによると「ヨガで一番大切なのは呼吸。空の下で自分の呼吸に意識を向ける時間をもてば、きっと気持ち良く日曜日をスタートできますよ」とのことですよ。まずは、「ZAPPA」が始まる朝5時に起きないと…。
さて、キラキラしている前田さんとは違って、昭和っ子で山口県の田舎育ちの私が「青空で運動」といって思い出すのがラジオ体操。元祖「ラジオ・エクササイズ」です。私にはラジオ体操にまつわる、忘れられない出来事があります。
父は仕事一筋。毎朝、ご飯を食べたら、7時15分に家を出ます。父はお喋りな母の話をずっと「うんうん」と頷きながら聞いているような人ですが、どこか合理的なところもありました。そんなウチの家訓は「ご飯は3食、残さずに食べる」「用事がない時は寝る」というもの。両親の仕事が忙しかったこともあり、「用がない時は寝る」は徹底的に守られ、日曜日は買い物に行く時以外は、家族みんなで1日中寝ていました。この家訓は両親が退職した今でも色濃く残っており、私が正月休みに実家に帰ると「ご飯を食べたら、風呂に入って、すぐ寝なさい」と言われ、昼まで寝ていると「よく寝るな~。寝るのは良いことだ。もう少し寝なさい」と言われます。
そんな父は、私が小学6年生の時に、町内のラジオ体操の合理化にメスを入れました。ラジオ体操といえば、今は、1週間など期間限定にしているところも多いようですが、私の故郷は田舎なので、8月31日までの日曜を除く毎日、近所の公園でキッチリと開催され、毎朝行くのが当たり前…といった感じでした。近所のおじいちゃんが「一体、何十年着てるんだ」と言いたくなるような、ヨレヨレの下着姿で現れて、後ろの方で体操に参加していたのもご愛嬌です。
その年、父は町内会長を務めていて、ラジオ体操を仕切る係になっていました。この係になると大変で、毎朝ラジカセを持って公園に行かないといけません。父は黙々と任務を果たしていましたが、お盆に入る直前の8月11日のこと。ラジオ体操が終わった直後に、父は突然、町内を揺るがす重大発表を行いました。
「今年のラジオ体操は、本日をもって終了します」
まさかの重大発表に、子どもたちは狂喜乱舞。町内中の大人たちはざわつきました。ラジオ体操を夏休みの途中で打ち切るなんて、町内のラジオ体操の歴史の根幹を揺るがすような一大事です。父は「せっかくの夏休みなんだから、子どもたちも自由に寝ていた方がいいんじゃないか」と思った上での決断でした。我が家では事前にその事に関する家族会議が開かれたため、父がラジオ体操をやめようとしていることは知っていました。今まで「ラジオ体操は8月31日まで」ということに、何の疑いもなく過ごしてきた「ラジオ体操保守王国」の我が町。ヨレヨレの下着姿のおじいちゃんも「明日からワシは、どこでどのようにラジオ体操をしたらいいんじゃろうか」と、困惑したことでしょう。
中には私の家に「本当にラジオ体操をやめちゃうんですか?」と、問い合わせの電話をかけてきた人もいました。そんな相手にも父は堂々と説明し、理解を得ていました。私は電話越しに毅然と立ち向かう父の背中を半分寝ながら見ていて、誇りに思いました。今はラジオ体操をあまりやらない所が増えているのを見ると、父はラジオ体操短縮化の先駆者だったのかもしれません。頼もしき我が父よ。ちなみに、ラジオ体操の短縮化は継続には至らず、翌年からは再び8月31日までキッチリと行われ、町内における改革は失敗に終わったのでした。中学1年生になった私は、夏休みにかすかに聞こえてくるラジオ体操のメロディを耳にしつつ、半分寝ながら「中1になって良かった!」と思ったのはいうまでもありません。
ただし、前田さんのような人が町内に住んでいて、“スペシャルインストラクター”として、毎朝ラジオ体操に参加してくれたら、私の父もラジオ体操を止めなかったでしょう。ヨレヨレの下着姿で来ていたおじいちゃんも、新調したピカピカのシャツで現れたかもしれません…。
ZAPPA https://www.j-wave.co.jp/original/zappa/
「親譲りの無鉄砲で小供の時から損ばかりしている」といえば夏目漱石の「坊ちゃん」ですが、私にとっては「脂だらけの無節操で、食事の時は“特保”ばかり飲んでいる」となっています。
年齢を重ねると体についた脂肪がとれにくく、気がつけば「脂肪の吸収を防ぐ…」的なお茶が欠かせなくなっています。少しでも高カロリーな食事が続くと「坊っちゃん」ならぬ、「肪ちゃん」になってしまいそうです。
日曜の早朝5時。ラジオをつけていると、脂肪とは全く縁のなさそうな爽やかなナビゲーターの声が聞こえてきます。声の主は昨年の10月から、J-WAVEの番組「ZAPPA」(毎朝 5時)の日曜ナビゲーターを務めている前田智子さん。
前田さんはニューヨークの大学を卒業後、2011年に「ミス・インターナショナル」「ミス・ユニバース」「ミス・ワールド」と並ぶ4大コンテストの一つ「ミス・アース・ジャパン」に選ばれました。さらに、モデル、MC、レポーターのほか、ダンサー・振付師としても活躍中です。運動神経も抜群。以前とある番組のレポートで、プールの上にボードを浮かべて、そのボードに乗って行うヨガを紹介した時は、ゆらゆらと揺れるボードに慣れず、始めこそ、体を安定させるのに苦戦していたようですが、しばらくすると「ボードの揺れが心地いいです!」と、余裕の様子でヨガを楽しんでいました。
前田さんはウォーキング指導や、ピラティスをベースにした体づくりのアドバイザーとしても活動中です。前田さんによると、歩いている時は、腕を後ろに大きく振るようにして、前に振る時は45度以下の高さにすること。さらに、腕は左右対象に動かすようにすると、グッと洗練されて見えるそうです。私は毎日重いカバンを持っているのですが、毎日重いものを持っていると、何も持たずに歩く時に違和感を覚えるようになります。前田さんのアドバイスの通り、腕を意識的に動かすことを心掛けてみようと思います。
ちなみに前田さんは、「ZAPPA」で不定期でエクササイズ(通称「ラジオ・エクササイズ」)を紹介しています。ある回では、足元がしっかり安定して、ヒップラインも綺麗に演出できるエクササイズを紹介しました。できれば動画があると…と思う方もいるかもしれませんが、なにしろこの番組、放送中はワンマンDJスタイルなのでそれは不可能。その代わりに「ZAPPA」のサイトでは、エクササイズ中の写真が公開されています。前田さんによると「ヨガで一番大切なのは呼吸。空の下で自分の呼吸に意識を向ける時間をもてば、きっと気持ち良く日曜日をスタートできますよ」とのことですよ。まずは、「ZAPPA」が始まる朝5時に起きないと…。
さて、キラキラしている前田さんとは違って、昭和っ子で山口県の田舎育ちの私が「青空で運動」といって思い出すのがラジオ体操。元祖「ラジオ・エクササイズ」です。私にはラジオ体操にまつわる、忘れられない出来事があります。
父は仕事一筋。毎朝、ご飯を食べたら、7時15分に家を出ます。父はお喋りな母の話をずっと「うんうん」と頷きながら聞いているような人ですが、どこか合理的なところもありました。そんなウチの家訓は「ご飯は3食、残さずに食べる」「用事がない時は寝る」というもの。両親の仕事が忙しかったこともあり、「用がない時は寝る」は徹底的に守られ、日曜日は買い物に行く時以外は、家族みんなで1日中寝ていました。この家訓は両親が退職した今でも色濃く残っており、私が正月休みに実家に帰ると「ご飯を食べたら、風呂に入って、すぐ寝なさい」と言われ、昼まで寝ていると「よく寝るな~。寝るのは良いことだ。もう少し寝なさい」と言われます。
そんな父は、私が小学6年生の時に、町内のラジオ体操の合理化にメスを入れました。ラジオ体操といえば、今は、1週間など期間限定にしているところも多いようですが、私の故郷は田舎なので、8月31日までの日曜を除く毎日、近所の公園でキッチリと開催され、毎朝行くのが当たり前…といった感じでした。近所のおじいちゃんが「一体、何十年着てるんだ」と言いたくなるような、ヨレヨレの下着姿で現れて、後ろの方で体操に参加していたのもご愛嬌です。
その年、父は町内会長を務めていて、ラジオ体操を仕切る係になっていました。この係になると大変で、毎朝ラジカセを持って公園に行かないといけません。父は黙々と任務を果たしていましたが、お盆に入る直前の8月11日のこと。ラジオ体操が終わった直後に、父は突然、町内を揺るがす重大発表を行いました。
「今年のラジオ体操は、本日をもって終了します」
まさかの重大発表に、子どもたちは狂喜乱舞。町内中の大人たちはざわつきました。ラジオ体操を夏休みの途中で打ち切るなんて、町内のラジオ体操の歴史の根幹を揺るがすような一大事です。父は「せっかくの夏休みなんだから、子どもたちも自由に寝ていた方がいいんじゃないか」と思った上での決断でした。我が家では事前にその事に関する家族会議が開かれたため、父がラジオ体操をやめようとしていることは知っていました。今まで「ラジオ体操は8月31日まで」ということに、何の疑いもなく過ごしてきた「ラジオ体操保守王国」の我が町。ヨレヨレの下着姿のおじいちゃんも「明日からワシは、どこでどのようにラジオ体操をしたらいいんじゃろうか」と、困惑したことでしょう。
中には私の家に「本当にラジオ体操をやめちゃうんですか?」と、問い合わせの電話をかけてきた人もいました。そんな相手にも父は堂々と説明し、理解を得ていました。私は電話越しに毅然と立ち向かう父の背中を半分寝ながら見ていて、誇りに思いました。今はラジオ体操をあまりやらない所が増えているのを見ると、父はラジオ体操短縮化の先駆者だったのかもしれません。頼もしき我が父よ。ちなみに、ラジオ体操の短縮化は継続には至らず、翌年からは再び8月31日までキッチリと行われ、町内における改革は失敗に終わったのでした。中学1年生になった私は、夏休みにかすかに聞こえてくるラジオ体操のメロディを耳にしつつ、半分寝ながら「中1になって良かった!」と思ったのはいうまでもありません。
ただし、前田さんのような人が町内に住んでいて、“スペシャルインストラクター”として、毎朝ラジオ体操に参加してくれたら、私の父もラジオ体操を止めなかったでしょう。ヨレヨレの下着姿で来ていたおじいちゃんも、新調したピカピカのシャツで現れたかもしれません…。
ZAPPA https://www.j-wave.co.jp/original/zappa/
この記事の続きを読むには、
以下から登録/ログインをしてください。