【連載】やきそばかおるのEar!Ear!Ear!(vol.22)
子どもの頃、「アメリカ横断ウルトラクイズ」(日本テレビ)が大好きで、「早く来い来い木曜日!」(by高島忠夫)と毎週楽しみにしていました。
しかし、ひとつ私を不安にさせることがありました。それは「罰ゲーム」の存在です。罰ゲームはチェックポイントによって苛酷度が違っていました。高層ビルを歩いて屋上まで上がる…ぐらいならまだ良いのですが、一番ヒドいのは砂漠に置き去りにされるというもの。しかも、置き去りにされた人は途方に暮れた顔をしていて、画面には「◯◯さん帰国?」のテロップが現れます。「『?』がついているということは帰ってきてないということ!? このまま帰れないんじゃないの? 今頃、お腹が空いてるんじゃないの?」と本気で心配しました。大人になってからそれが演出だということに気づくのですが、まだ小学生で、好きな飲み物がぶどうジュース(果汁10パーセント)だった純粋な私は、「なんとヒドいことをさせるんだ!」とブラウン管の前で泣いてしまったことを覚えています。
その点、旅の達人・野村訓市さんは、どんな国に行っても慌てなさそうな気がします。野村さんはJ-WAVEで“動かない旅”をテーマにした番組「antenna* TRAVELLING WITHOUT MOVING」(日曜 20時)を担当していますが、海外での経験値の高さに、目、ならぬ耳を見張るものがあります。なにせ、およそ50カ国を訪れていて、世界の著名人にもお会いしています。「パーティーに誘われてフラリと遊びに行ったら、ハリウッドスターや著名人が大勢いて恐縮したものの、持っていたギターで演奏したら大好評で拍手喝采を浴びた」などというエピソードも語っていました。番組がスタートして2年半。途中から聴き始めたというリスナーの皆さんの中には「野村さんはどんな人なの?」と思っていらっしゃる方もいると思います。
野村さんは20代の時に『sputnik:whole life catalogue』という雑誌の企画編集をしました。野村さんが会いたいと思った世界各国のクリエイター86名にインタビューをした本です。海外を飛び回って1年以上かけて制作したそうですが、この時、世界一周チケット(20万円)を2回使い、地球を2周半したそうです。
「野村さんが気になった人に会いに行く」といっても、場合によっては、先方が野村さんについて、どういう人なのかを知らないこともあり、無下に扱われてしまいます。「避けられているのかも」と思った野村さんは、そこで諦めずに直接会いに行っていたとか。「とにかく中に入ってしまえばこっちのもの」だそうで、事情を説明するとお話を聞かせてくれたそうです。この本をたくさんの人に見てもらったことがきっかけで仕事が広がっていったそう。野村さんはこのことについて「見えない努力よりも、見えた方がいい」と語っていました。
そのほか、野村さん流の方法といえば、名刺に肩書きを書かないこと。書かないことで、「どんなことをしているのか」「今後、どんなことをやっていきたいのか」と相手の方が自分に興味をもって聞いてくれるのだそう。この「肩書き問題」はフリーランスの私には痛いほど気持ちが分かります。「編集者・ライター」と書くと、それ以外のことをやっていても見てもらえません。肩書きを全く書かずに名前だけを名刺に書いている人がたまにいます。名前だけが書かれた名刺からは余裕が漂ってきます。その方は既に有名なクリエイターなのですが、「シンプルな名刺ですね!」と驚いてると、「肩書きを書かない方が、その人が持っているイメージで見てもらえるから」と言っていました。その瞬間、私の名刺(肩書きが複数書いてある&印象をつけたいがためにプラスチックで作っていて、他の人の名刺に埋もれたくないという必死感がすごい)を再度見て、恥ずかしくなったのは言うまでもありません。
それにしても、野村さんの経験値の高さは特筆すべきものがあります。高校の時にホームステイに行った時は、履歴書の写真の人相と高校の成績が悪すぎて、引き受けてくれる家庭が決まらなかったそうです。その後、「引取先が決まるまで」ということで手を上げてくれた家庭に、そのまま1年間お世話になったとか。海外の駐車場でニセモノの警備員から車の鍵を騙し取られたこともあったそうです。
一度旅に出ると、月単位で出かけていた時代もあったという野村さん。番組では野村さんに旅の相談をする人も多く、野村さんならではの答えが出てきます。
例えば、ある日の放送で飛行機が苦手な人からのお便りが届きました。普通は「酔い止めを飲むといい」ぐらいの答えしか出てこなさそうですが、野村さんは違います。いきなり「エアバスのA380という型に乗るといい」と切り出しました。「2階建ての、ものすごく大きな飛行機で、飛行機のエンジンがとても静かなので、その胴体の一番太い部分の真ん中の席に座ると、まるで飛んでる気分がしません」とのこと。ちなみにこの情報は、映画監督ウェス・アンダーソンに聞いたそうです。具体的な情報の上、ウェス・アンダーソン監督に聞いたという二重の驚きでした。さらに、飛行機が落ちてしまうのではないか、という不安について「そもそも明日死ぬかもしれない。人生、保証はされてないから、いつ死んでもいいと思えるように生きていれば、飛行機で死のうが、何で死のうが怖くないと思えるんじゃないでしょうか。気合いです」とのお答えが。野村さん、いや、野村先生、男前です。
一方、外に飛び出すといえば、大好きな動物園に行く時以外はなかなか外に飛び出さない私。野村さんが50カ国を訪れたのに対し、私は40都道府県、95カ所の動物園を訪れました。「数は多いけど、スケールが違いすぎるぞ!」という声が聞こえてきそうですが、そんな私が唯一できるアドバイス、それは「高速の夜行バスに乗る時は耳栓を忘れずに」です。夜行バスは早朝に着くので乗ることが多いのですが、意外と音のことを忘れている人が多いのも事実。あるのとないのとでは睡眠に影響が出てきます。「え? アドバイスが普通すぎる?」って? う~ん…こうなったら、お金を貯めて「エアバスのA380」に乗って、海外で見聞を広めて濃厚なアドバイスができるようにしようじゃないですか。でも、現地でリアルに迷ってしまって「やきそばさん帰国?」ということにならないようにしないと…。
antenna* TRAVELLING WITHOUT MOVING https://www.j-wave.co.jp/original/travelling/
子どもの頃、「アメリカ横断ウルトラクイズ」(日本テレビ)が大好きで、「早く来い来い木曜日!」(by高島忠夫)と毎週楽しみにしていました。
しかし、ひとつ私を不安にさせることがありました。それは「罰ゲーム」の存在です。罰ゲームはチェックポイントによって苛酷度が違っていました。高層ビルを歩いて屋上まで上がる…ぐらいならまだ良いのですが、一番ヒドいのは砂漠に置き去りにされるというもの。しかも、置き去りにされた人は途方に暮れた顔をしていて、画面には「◯◯さん帰国?」のテロップが現れます。「『?』がついているということは帰ってきてないということ!? このまま帰れないんじゃないの? 今頃、お腹が空いてるんじゃないの?」と本気で心配しました。大人になってからそれが演出だということに気づくのですが、まだ小学生で、好きな飲み物がぶどうジュース(果汁10パーセント)だった純粋な私は、「なんとヒドいことをさせるんだ!」とブラウン管の前で泣いてしまったことを覚えています。
その点、旅の達人・野村訓市さんは、どんな国に行っても慌てなさそうな気がします。野村さんはJ-WAVEで“動かない旅”をテーマにした番組「antenna* TRAVELLING WITHOUT MOVING」(日曜 20時)を担当していますが、海外での経験値の高さに、目、ならぬ耳を見張るものがあります。なにせ、およそ50カ国を訪れていて、世界の著名人にもお会いしています。「パーティーに誘われてフラリと遊びに行ったら、ハリウッドスターや著名人が大勢いて恐縮したものの、持っていたギターで演奏したら大好評で拍手喝采を浴びた」などというエピソードも語っていました。番組がスタートして2年半。途中から聴き始めたというリスナーの皆さんの中には「野村さんはどんな人なの?」と思っていらっしゃる方もいると思います。
野村さんは20代の時に『sputnik:whole life catalogue』という雑誌の企画編集をしました。野村さんが会いたいと思った世界各国のクリエイター86名にインタビューをした本です。海外を飛び回って1年以上かけて制作したそうですが、この時、世界一周チケット(20万円)を2回使い、地球を2周半したそうです。
「野村さんが気になった人に会いに行く」といっても、場合によっては、先方が野村さんについて、どういう人なのかを知らないこともあり、無下に扱われてしまいます。「避けられているのかも」と思った野村さんは、そこで諦めずに直接会いに行っていたとか。「とにかく中に入ってしまえばこっちのもの」だそうで、事情を説明するとお話を聞かせてくれたそうです。この本をたくさんの人に見てもらったことがきっかけで仕事が広がっていったそう。野村さんはこのことについて「見えない努力よりも、見えた方がいい」と語っていました。
そのほか、野村さん流の方法といえば、名刺に肩書きを書かないこと。書かないことで、「どんなことをしているのか」「今後、どんなことをやっていきたいのか」と相手の方が自分に興味をもって聞いてくれるのだそう。この「肩書き問題」はフリーランスの私には痛いほど気持ちが分かります。「編集者・ライター」と書くと、それ以外のことをやっていても見てもらえません。肩書きを全く書かずに名前だけを名刺に書いている人がたまにいます。名前だけが書かれた名刺からは余裕が漂ってきます。その方は既に有名なクリエイターなのですが、「シンプルな名刺ですね!」と驚いてると、「肩書きを書かない方が、その人が持っているイメージで見てもらえるから」と言っていました。その瞬間、私の名刺(肩書きが複数書いてある&印象をつけたいがためにプラスチックで作っていて、他の人の名刺に埋もれたくないという必死感がすごい)を再度見て、恥ずかしくなったのは言うまでもありません。
それにしても、野村さんの経験値の高さは特筆すべきものがあります。高校の時にホームステイに行った時は、履歴書の写真の人相と高校の成績が悪すぎて、引き受けてくれる家庭が決まらなかったそうです。その後、「引取先が決まるまで」ということで手を上げてくれた家庭に、そのまま1年間お世話になったとか。海外の駐車場でニセモノの警備員から車の鍵を騙し取られたこともあったそうです。
一度旅に出ると、月単位で出かけていた時代もあったという野村さん。番組では野村さんに旅の相談をする人も多く、野村さんならではの答えが出てきます。
例えば、ある日の放送で飛行機が苦手な人からのお便りが届きました。普通は「酔い止めを飲むといい」ぐらいの答えしか出てこなさそうですが、野村さんは違います。いきなり「エアバスのA380という型に乗るといい」と切り出しました。「2階建ての、ものすごく大きな飛行機で、飛行機のエンジンがとても静かなので、その胴体の一番太い部分の真ん中の席に座ると、まるで飛んでる気分がしません」とのこと。ちなみにこの情報は、映画監督ウェス・アンダーソンに聞いたそうです。具体的な情報の上、ウェス・アンダーソン監督に聞いたという二重の驚きでした。さらに、飛行機が落ちてしまうのではないか、という不安について「そもそも明日死ぬかもしれない。人生、保証はされてないから、いつ死んでもいいと思えるように生きていれば、飛行機で死のうが、何で死のうが怖くないと思えるんじゃないでしょうか。気合いです」とのお答えが。野村さん、いや、野村先生、男前です。
一方、外に飛び出すといえば、大好きな動物園に行く時以外はなかなか外に飛び出さない私。野村さんが50カ国を訪れたのに対し、私は40都道府県、95カ所の動物園を訪れました。「数は多いけど、スケールが違いすぎるぞ!」という声が聞こえてきそうですが、そんな私が唯一できるアドバイス、それは「高速の夜行バスに乗る時は耳栓を忘れずに」です。夜行バスは早朝に着くので乗ることが多いのですが、意外と音のことを忘れている人が多いのも事実。あるのとないのとでは睡眠に影響が出てきます。「え? アドバイスが普通すぎる?」って? う~ん…こうなったら、お金を貯めて「エアバスのA380」に乗って、海外で見聞を広めて濃厚なアドバイスができるようにしようじゃないですか。でも、現地でリアルに迷ってしまって「やきそばさん帰国?」ということにならないようにしないと…。
antenna* TRAVELLING WITHOUT MOVING https://www.j-wave.co.jp/original/travelling/
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