指揮者の沖澤のどかが、8月に開幕する「2026セイジ・オザワ 松本フェスティバル」への想いや、小澤征爾とのエピソードについて語った。
沖澤が登場したのは、クリス智子がお届けする『TALK TO NEIGHBORS』。この番組は毎週ひと組、クリスが今、声を届けたい人を迎える30分のトークプログラム。月曜から木曜はラジオでオンエアし、翌金曜には放送した内容に加えて、限定トークも含むポッドキャストを配信している。
ここでは、7月23日(木)にオンエアしたトーク内容(ポッドキャストのエピソード3)をテキストでお届けする。
・ポッドキャストページ
自身初となる『トゥランガリーラ交響曲』の指揮を目前に、彼女は「楽しみでワクワクしている」と語る。
クリス:いろいろな曲があるからこれだけが特別ということではないかもしれないですが、とても新鮮で、色彩が豊かですよね。
沖澤:そうですね。あとは、聴きに行くと毎回、最終楽章にいくころにはトランス状態というか(笑)。クラシック音楽にはない、不思議な高揚感が味わえると思います。
クリス:えぇ~!? 作曲家の(オリヴィエ・)メシアンさんがそういう方なのでしょうか?
沖澤:メシアンさんは共感覚を持っていて、実は私にも少しあるんですけど、音を聴いたときに色が見えるとか、人によっては文字に色があるとか、感覚がいろいろ共鳴するような……。メシアンはそうやって全部見えた状態で作曲をしているので、なんとかそこに近づきたいなとは思います。また、強靭なリズムを持っていて、オーケストラは演奏が困難です。現代のオーケストラはとても水準が高いうえに、サイトウ・キネン・オーケストラはスーパーオーケストラなのでなんでもできるんですけど、それでも難しい曲です。
クリス:打楽器がフィーチャーされる曲だという点では、通常のオーケストラの打楽器のセッティングやスペースよりも大きいのでしょうか?
沖澤:大きいです。また、普通はそれぞれの楽器を誰が演奏するかは演奏者に委ねられているものですが、メシアンは全部、指定しています。たとえば、パーカッション奏者1、2、3、4と別れていて「この奏者がこの楽器も演奏する」など、そこまで見据えて作曲されているんです。
クリス:へぇ……。打楽器奏者がそれぞれふたつや3つ、5つの楽器をやって、そういう方が何人もいらっしゃるということなんですね。
沖澤:そうです。
クリス:打楽器は、後ろのほうに大きく構えていらっしゃる?
沖澤:そうですね。ただ、この曲に関しては、たとえば「ビブラフォンは舞台の前面がいいのか」などは、今悩んでいるところです。
クリス:音の出方もまた違いますもんね。
沖澤:あまり舞台の奥に行くと、今度は時差があったり。でも、いつも時差を計算しながら演奏されている方が前に来ると、今度は早すぎる可能性もあって、そういうことも打楽器奏者や金管楽器の方は、絶妙なタイミングを計って普段、演奏されています。
クリス:沖澤さんは、みなさんのその感覚を読みながら指揮をしていくということですよね。
沖澤:そうですね。ある程度、仕上がったら客席に降りて、客席で聴きながらバランスを調整することもあります。
沖澤:はっきり覚えていませんが、1年以上前だったと思います。
クリス:指揮の場合、“自分らしさ”とは違うのかもしれませんが、「この方が指揮をされたから、こういう音色になる」というのは、やっぱりありますよね?
沖澤:あると思います。
クリス:これまでもいろいろな『トゥランガリーラ交響曲』を聴いてきたなかで、沖澤さんはどういう『トゥランガリーラ交響曲』を指揮できたらいいなと思っていらっしゃいますか?
沖澤:「すべてをクリアにすることによって、濃厚にしたい」という想いがあります。演奏が混沌とすることで生み出されるグルーヴ感みたいなものもありますが、この曲の場合はどこまでも緻密に作ったうえで、それを体に沁み込ませる。そして、オーケストラがこの曲を知り尽くしている状態にしたうえで本番で自由になるような、そこを目指したいです。
沖澤も尊敬する指揮者・小澤征爾が日本で初演した『トゥランガリーラ交響曲』。サイトウ・キネン・オーケストラが演奏するのは、今回が初めてだという。
クリス:以前、お話を伺ったときに、サイトウ・キネン・オーケストラの演奏を最初に聴いて「度肝を抜かれた」と仰っていましたよね。そのクオリティやみなさんのチームワークで今回『トゥランガリーラ交響曲』を演奏すると。
沖澤:そうです、楽しみですね。
クリス:沖澤さんと「セイジ・オザワ 松本フェスティバル」との最初のご縁は、『フィガロの結婚』でしたか?
沖澤:はい、2022年です。
クリス:小澤征爾さんがご存命のときで、リモートなどいろいろなかたちでご覧になってくださっていたと聞きました。
沖澤:そうです。初日のリハーサル直前に、オーケストラのみなさんが席に着かれている状態で、指揮台の目の前にある大きなスクリーンで小澤征爾先生とリモートでつながりました。あのときの空気が一瞬で変わる体験は、特別でした。その後、実際に松本まで足をお運びになって、もちろん一方的に演奏会やリハーサルには行っていましたけど、お話しさせていただくのは初めてでした。
クリス:リモートで空気が変わるのは、すごいですね!
沖澤:パっと変わりましたね。小澤征爾先生は気さくな人柄だったりチャーミングだったりというエピソードがたくさん出ますが、やっぱりオーケストラの前に立たれたときのあの緊張感とすさまじい集中力、あとは情熱ですよね。目の力だけでも圧倒されましたし、それでも威圧とはまったく別なんですよね。そこがなんとも言えない特別な瞬間でした。
沖澤:自分が習ってきた先生方やアシスタントをさせていただいた先生方は、それぞれまったく別の個性をお持ちですが、やっぱり舞台に立たれて嘘がない方は演奏に説得力があるし、伝わるんですよね。特に、小澤征爾先生とベルリン・フィルでアシスタントしていたキリル・ペトレンコ先生は、性格はまったく違うのに共通点を感じる方でした。また、小澤征爾先生の場合、サイトウ・キネン・オーケストラもですが、ゼロから何かを始める方で、アジア人でヨーロッパのウィーン歌劇場の監督までされています。2025年11月に、小澤征爾先生が長く監督されていたボストン交響楽団に初めて行ったときも、もう退任されて何年も経っているのに「セイジ、セイジ」と、自分たちの“セイジ”なんですよ。サイトウ・キネン・オーケストラや松本でも、自分たちの小澤征爾。どこにいっても「私たちの小澤征爾」だと思われているので、唯一無二だと思いますね。
クリス:音楽を通して伝わっていることが多くあるということですよね。
「2026セイジ・オザワ 松本フェスティバル」は8月16日(日)から9月2日(水)まで開催。沖澤が8月22日(土)、23日(日)に指揮を務める『トゥランガリーラ交響曲』以外にも多彩な演目が繰り広げられる。
クリス:ほかにも、いろいろな演目が?
沖澤:はい。オーケストラのコンサートは『トゥランガリーラ交響曲』の次の週に、フランソワ=グザヴィエ・ロトブルックナーの『交響曲第8番』が演奏されます。また、2026年の「ふれあいコンサート」という室内楽のコンサートのテーマは、武満 徹さんです。日本を代表する作曲家を中心に組まれているので、私もぜひ行きたいと思っています。
クリス:武満 徹さんの没後30年を記念して、8月25日(火)には「ふれあいコンサート Iラヴェルと武満 徹」、8月28日(金)には「ふれあいコンサート IIドビュッシーと武満 徹」というテーマで行われます。
特別な音を持つサイトウ・キネン・オーケストラとの共演。沖澤は、その特別感についても教えてくれた。
沖澤:サイトウ・キネン・オーケストラにしかない緊張感はありますが、これまで何度か共演させていただいて、舞台でのあの感覚を味わってしまっていて、言葉にはできないですが、特別なんですよね。サイトウ・キネン・オーケストラのメンバーとは、それぞれが所属されているオーケストラでもご一緒することがもちろんあって、それも喜びですが、松本にいらっしゃるときのみなさんはちょっと違うので、その感じもうれしいです。
クリス:みなさんにとっても、“ホーム感”があるのでしょうね。
沖澤:それと同時に、やっぱりすごい人たちが集まっているのでその緊張感は特別です。終わったあとに楽しく食事に行ったりすることもあって、それって音楽祭ならではですよね。
「2026セイジ・オザワ 松本フェスティバル」の詳細はイベント公式サイトまで。
クリス智子がお届けする『TALK TO NEIGHBORS』は、J-WAVEで月曜~木曜の13時よりオンエア。ポッドキャストでも配信中。
沖澤が登場したのは、クリス智子がお届けする『TALK TO NEIGHBORS』。この番組は毎週ひと組、クリスが今、声を届けたい人を迎える30分のトークプログラム。月曜から木曜はラジオでオンエアし、翌金曜には放送した内容に加えて、限定トークも含むポッドキャストを配信している。
ここでは、7月23日(木)にオンエアしたトーク内容(ポッドキャストのエピソード3)をテキストでお届けする。
・ポッドキャストページ
この夏、超大作『トゥランガリーラ交響曲』を指揮
毎年、夏に長野県松本市で開催される国際音楽祭「2026セイジ・オザワ 松本フェスティバル」。今年は8月16日(日)に開幕し、沖澤は8月22日(土)、23日(日)にキッセイ文化ホール(長野県松本文化会館)で行われる「オーケストラ コンサート Aプログラム」にて『メシアン:トゥランガリーラ交響曲』を指揮する。自身初となる『トゥランガリーラ交響曲』の指揮を目前に、彼女は「楽しみでワクワクしている」と語る。
クリス:いろいろな曲があるからこれだけが特別ということではないかもしれないですが、とても新鮮で、色彩が豊かですよね。
沖澤:そうですね。あとは、聴きに行くと毎回、最終楽章にいくころにはトランス状態というか(笑)。クラシック音楽にはない、不思議な高揚感が味わえると思います。
クリス:えぇ~!? 作曲家の(オリヴィエ・)メシアンさんがそういう方なのでしょうか?
沖澤:メシアンさんは共感覚を持っていて、実は私にも少しあるんですけど、音を聴いたときに色が見えるとか、人によっては文字に色があるとか、感覚がいろいろ共鳴するような……。メシアンはそうやって全部見えた状態で作曲をしているので、なんとかそこに近づきたいなとは思います。また、強靭なリズムを持っていて、オーケストラは演奏が困難です。現代のオーケストラはとても水準が高いうえに、サイトウ・キネン・オーケストラはスーパーオーケストラなのでなんでもできるんですけど、それでも難しい曲です。
クリス:打楽器がフィーチャーされる曲だという点では、通常のオーケストラの打楽器のセッティングやスペースよりも大きいのでしょうか?
沖澤:大きいです。また、普通はそれぞれの楽器を誰が演奏するかは演奏者に委ねられているものですが、メシアンは全部、指定しています。たとえば、パーカッション奏者1、2、3、4と別れていて「この奏者がこの楽器も演奏する」など、そこまで見据えて作曲されているんです。
クリス:へぇ……。打楽器奏者がそれぞれふたつや3つ、5つの楽器をやって、そういう方が何人もいらっしゃるということなんですね。
沖澤:そうです。
クリス:打楽器は、後ろのほうに大きく構えていらっしゃる?
沖澤:そうですね。ただ、この曲に関しては、たとえば「ビブラフォンは舞台の前面がいいのか」などは、今悩んでいるところです。
クリス:音の出方もまた違いますもんね。
沖澤:あまり舞台の奥に行くと、今度は時差があったり。でも、いつも時差を計算しながら演奏されている方が前に来ると、今度は早すぎる可能性もあって、そういうことも打楽器奏者や金管楽器の方は、絶妙なタイミングを計って普段、演奏されています。
クリス:沖澤さんは、みなさんのその感覚を読みながら指揮をしていくということですよね。
沖澤:そうですね。ある程度、仕上がったら客席に降りて、客席で聴きながらバランスを調整することもあります。
小澤征爾を前に味わった“特別”な感覚
続いて、クリスは「『トゥランガリーラ交響曲』をされるにあたって、いつぐらいに曲目が決まって、動いていたのでしょうか?」と問いかける。沖澤:はっきり覚えていませんが、1年以上前だったと思います。
クリス:指揮の場合、“自分らしさ”とは違うのかもしれませんが、「この方が指揮をされたから、こういう音色になる」というのは、やっぱりありますよね?
沖澤:あると思います。
クリス:これまでもいろいろな『トゥランガリーラ交響曲』を聴いてきたなかで、沖澤さんはどういう『トゥランガリーラ交響曲』を指揮できたらいいなと思っていらっしゃいますか?
沖澤:「すべてをクリアにすることによって、濃厚にしたい」という想いがあります。演奏が混沌とすることで生み出されるグルーヴ感みたいなものもありますが、この曲の場合はどこまでも緻密に作ったうえで、それを体に沁み込ませる。そして、オーケストラがこの曲を知り尽くしている状態にしたうえで本番で自由になるような、そこを目指したいです。
沖澤も尊敬する指揮者・小澤征爾が日本で初演した『トゥランガリーラ交響曲』。サイトウ・キネン・オーケストラが演奏するのは、今回が初めてだという。
クリス:以前、お話を伺ったときに、サイトウ・キネン・オーケストラの演奏を最初に聴いて「度肝を抜かれた」と仰っていましたよね。そのクオリティやみなさんのチームワークで今回『トゥランガリーラ交響曲』を演奏すると。
沖澤:そうです、楽しみですね。
クリス:沖澤さんと「セイジ・オザワ 松本フェスティバル」との最初のご縁は、『フィガロの結婚』でしたか?
沖澤:はい、2022年です。
クリス:小澤征爾さんがご存命のときで、リモートなどいろいろなかたちでご覧になってくださっていたと聞きました。
沖澤:そうです。初日のリハーサル直前に、オーケストラのみなさんが席に着かれている状態で、指揮台の目の前にある大きなスクリーンで小澤征爾先生とリモートでつながりました。あのときの空気が一瞬で変わる体験は、特別でした。その後、実際に松本まで足をお運びになって、もちろん一方的に演奏会やリハーサルには行っていましたけど、お話しさせていただくのは初めてでした。
クリス:リモートで空気が変わるのは、すごいですね!
沖澤:パっと変わりましたね。小澤征爾先生は気さくな人柄だったりチャーミングだったりというエピソードがたくさん出ますが、やっぱりオーケストラの前に立たれたときのあの緊張感とすさまじい集中力、あとは情熱ですよね。目の力だけでも圧倒されましたし、それでも威圧とはまったく別なんですよね。そこがなんとも言えない特別な瞬間でした。
見どころ満載! 多彩なプログラムを用意した音楽の祭典
小澤征爾をはじめ、さまざまな先輩指揮者の背中を追いかけてきた沖澤。尊敬する人物は、多くいると語る。沖澤:自分が習ってきた先生方やアシスタントをさせていただいた先生方は、それぞれまったく別の個性をお持ちですが、やっぱり舞台に立たれて嘘がない方は演奏に説得力があるし、伝わるんですよね。特に、小澤征爾先生とベルリン・フィルでアシスタントしていたキリル・ペトレンコ先生は、性格はまったく違うのに共通点を感じる方でした。また、小澤征爾先生の場合、サイトウ・キネン・オーケストラもですが、ゼロから何かを始める方で、アジア人でヨーロッパのウィーン歌劇場の監督までされています。2025年11月に、小澤征爾先生が長く監督されていたボストン交響楽団に初めて行ったときも、もう退任されて何年も経っているのに「セイジ、セイジ」と、自分たちの“セイジ”なんですよ。サイトウ・キネン・オーケストラや松本でも、自分たちの小澤征爾。どこにいっても「私たちの小澤征爾」だと思われているので、唯一無二だと思いますね。
クリス:音楽を通して伝わっていることが多くあるということですよね。
「2026セイジ・オザワ 松本フェスティバル」は8月16日(日)から9月2日(水)まで開催。沖澤が8月22日(土)、23日(日)に指揮を務める『トゥランガリーラ交響曲』以外にも多彩な演目が繰り広げられる。
クリス:ほかにも、いろいろな演目が?
沖澤:はい。オーケストラのコンサートは『トゥランガリーラ交響曲』の次の週に、フランソワ=グザヴィエ・ロトブルックナーの『交響曲第8番』が演奏されます。また、2026年の「ふれあいコンサート」という室内楽のコンサートのテーマは、武満 徹さんです。日本を代表する作曲家を中心に組まれているので、私もぜひ行きたいと思っています。
クリス:武満 徹さんの没後30年を記念して、8月25日(火)には「ふれあいコンサート Iラヴェルと武満 徹」、8月28日(金)には「ふれあいコンサート IIドビュッシーと武満 徹」というテーマで行われます。
特別な音を持つサイトウ・キネン・オーケストラとの共演。沖澤は、その特別感についても教えてくれた。
沖澤:サイトウ・キネン・オーケストラにしかない緊張感はありますが、これまで何度か共演させていただいて、舞台でのあの感覚を味わってしまっていて、言葉にはできないですが、特別なんですよね。サイトウ・キネン・オーケストラのメンバーとは、それぞれが所属されているオーケストラでもご一緒することがもちろんあって、それも喜びですが、松本にいらっしゃるときのみなさんはちょっと違うので、その感じもうれしいです。
クリス:みなさんにとっても、“ホーム感”があるのでしょうね。
沖澤:それと同時に、やっぱりすごい人たちが集まっているのでその緊張感は特別です。終わったあとに楽しく食事に行ったりすることもあって、それって音楽祭ならではですよね。
「2026セイジ・オザワ 松本フェスティバル」の詳細はイベント公式サイトまで。
クリス智子がお届けする『TALK TO NEIGHBORS』は、J-WAVEで月曜~木曜の13時よりオンエア。ポッドキャストでも配信中。
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