しっぽのついたクッション型セラピーロボット「Qoobo」など個性的なロボットを開発・発表するロボティクスベンチャー・ユカイ工学CEOの青木俊介さんが、J-WAVEで半生を明かした。ロボット作りに目覚めたきっかけや独創的なアイデアを生み出す秘訣、さらには今後のビジョンなどについて語った。
青木さんは1978年神奈川県生まれ。東京大学在学中にチームラボを設立し、その後2007年に立ち上げたユカイ工学でユニークな家庭向けロボットを数多く手掛けている人物だ。
青木さんが登場したのは、俳優の小澤征悦がナビゲーターを務めるJ-WAVEの番組『BMW FREUDE FOR LIFE』(毎週土曜 11:00-11:30)。同番組は、新しい時代を切り開き駆け抜けていく人物を毎回ゲストに招き、BMWでの車中インタビューを通して、これまでの軌跡や今後の展望に迫るプログラムだ。
・ポッドキャストページ
青木:ロボットに熱中したきっかけは中学生の頃に観た映画『ターミネーター』です。めちゃくちゃハマって、ストーリーはもちろんセリフも覚えるくらい何十回と鑑賞しましたが、ターミネーターそのものではなく、それを開発するエンジニアがカッコよくて「こんな人になりたいなぁ」と思うようになりました。その後、AIの勉強をしたのですが、ハードウェア開発の経験はまだありませんでした。そこで、ロボットの研究をしている後輩と国が公募する研究資金に応募し、その資金を元手に秋葉原で電子部品を購入して試作をしたり、1000台ほどロボットを工場で作ってもらったりして経験を積みました。
ユカイ工学のロボットは、猫のしっぽを思わせる「Qoobo」や、猫や犬、パンダなどのぬいぐるみが動く「甘噛みハムハム」など、愛くるしいデザインのものが多い。この方向性に舵を切った背景には、アメリカの巨大テック企業と差別化する意図があった。
青木:AIの規模・性能ではアメリカの巨大テック企業に太刀打ちできません。しかし、可愛さであれば負けないだろうと考えました。それに、僕自身がぬいぐるみなどの可愛いものが大好きなこともあって「可愛いものを作る方向で行こう」と最初から明確に決めていました。
ちなみに、ロボットの定義って結構難しくて。技術的に言い表せば「センサーの情報を使用し、賢く行動ができる機械」。そうすると、車や洗濯機などもロボットと呼べてしまう。しかし、洗濯機に名前を付けて可愛いっている人はおそらくいなくて、一般的に想像されるロボットは、友だちや家族のように接することができる「ドラえもん」のような存在ですよね。そういったことを踏まえ、僕らは「人の心を動かしてくれるもの」=ロボットと呼ぶようにしているんです。
青木:この辺りは、私が仲間と起業した頃によく通った場所です。当時はバイクで取引先を回り、様々な仕事をしながらなんとか食い繋いでいました。今でこそ学生が起業することは珍しくありませんが、僕の学生時代は「大学を出たからにはちゃんと大企業に就職すべき」という風潮が根強くて。にもかかわらず、学業を疎かにして留年してしまったりもして大変でしたね(笑)。最初の仕事は、プログラミングのアルバイトの延長で始めたウェブサイト制作です。また、レコメンデーションエンジンを自社で作り、映画やニュースのおすすめサービスを展開したりもしました。
青木さんはチームラボの最高技術責任者(CTO)→マンガ・小説作品の投稿プラットフォームpixivのCTOを経て、2007年にユカイ工学を設立。試行錯誤を繰り返した末に2015年、会社の転機となる一つのロボットを発売するに至る。
青木:見守りロボット「BOCCO」の初代モデルを発売した2015年が、ユカイ工学にとって大きな転機となった年です。ちょうどPepperが登場し、ロボットやAIに注目が集まり始めたタイミングでもあったので、様々な企業様からお声がけいただくことができました。当時はスマートスピーカーが今ほど市場に流通しておらず、家の中で音楽を再生したり、会話したりするデバイスが身近ではなかったことも追い風になったように思います。
青木:もう一つ、当社にとっての大きな出来事は、しっぽが付いたクッション型の癒しロボット「Qoobo」を発表したことです。このロボットは当初から商品化を目指していたというより、面白そうだから試作したプロダクトでした。試しに国内の展示会で展示したところ、アメリカのジャーナリストの方がものすごく気に入ってくれて。試作品を母国に持ち帰り、テレビ番組で紹介してくださったんです。その反響で、アメリカの様々なテレビ局からお声がけいただき、有名なトークショーにも登場させてもらいました。また、アメリカの老人ホームに試作品を導入し、現地のおじいちゃん・おばあちゃんにすごく喜んでもらったこともありました。そんなふうに「Qoobo」をきっかけに、可愛いロボットは日本以外でも需要があると知ったわけです。
青木:僕たちのチームでは「妄想を形にすること」が、アイデアを作る際のルールとなっています。社会課題の解決みたいな入り口からスタートすると、他にもありそうなプロダクトが完成しがちだと思っていて。なので、自分の記憶や体験を掘り下げて、そこからアイデアのタネを見つけることを心掛けているんです。たとえば、ペットに甘噛みされてうれしかった……といった個人的な体験が、ユニークなアイデアに繋がると考えています。
当社には企画の部署がありません。エンジニアやデザイナーだけでなく、営業・経理・人事など社員全員がアイデア出しに参加しています。もう一つ大事にしているのは「試作」です。アイデアだけを見て欠点を指摘することはとても簡単です。悪いところを見つけることほど安易なことはないので。実際に試作を作ると本当に面白いかどうかがすぐわかるため、必ずやっています。このように、アイデアを出すことと、試作を作ること。この2つが当社の大切にしているルールとなります。
部署や役職に関係なく、社員全員でアイデアを出し合い、面白いものを形にしていくことがユカイ工学の流儀。最近発売されたプロダクトにも誕生秘話があるそうだ。
青木:熱い飲み物や食べ物を冷ます小型ロボット「猫舌ふーふー」は、子育て中の社員のアイデアが元になっています。熱いものを食べられない我が子のために親としていつもふーふーと冷ましてあげるけど、子どもが2人いると疲れて酸欠になってしまう。しんどいから、猫ちゃんが代わりにふーふーしてくれたらいいな、という発想から生まれました。最初は「またそんなギャグみたいなことを(笑)」というノリだったのですが、いったん試作してみると、猫型の小さなロボットがマグカップにちょこんと乗っかり、内臓の小型ファンでやさしく風を送り込む様子がすごくかわいかったんですよね。
「リラックスしたい、癒されたいというニーズは日本のみならず世界中で高まっており、僕らが作っているプロダクトの『癒し要素』は世間から強く求められていると感じます」と手ごたえを語る青木さん。独創的な発想でロボットの可能性を切り拓く彼にとっての挑戦、そしてその先にあるFreude=喜びとは何か。尋ねると、こんな答えが返ってきた。
青木:僕たちは日本発で世界的に認知されるようなブランドを作りたいと考えています。最近は、家電量販店の売り場などで日本の製品見ることが少なくて寂しいんですよね。なので、日本人の作ったものの面白さやよさを、世界中に伝えたいという思いで日々挑戦しています。ロボット制作の過程では、うまくいかないことや憂鬱に感じることも少なくありません。ですが、暗中模索で彷徨っている中、一筋の光が見えるタイミングがあるんです。それが見えた瞬間に「やってきてよかった」と喜びを感じます。
(構成=小島浩平)
青木さんは1978年神奈川県生まれ。東京大学在学中にチームラボを設立し、その後2007年に立ち上げたユカイ工学でユニークな家庭向けロボットを数多く手掛けている人物だ。
青木さんが登場したのは、俳優の小澤征悦がナビゲーターを務めるJ-WAVEの番組『BMW FREUDE FOR LIFE』(毎週土曜 11:00-11:30)。同番組は、新しい時代を切り開き駆け抜けていく人物を毎回ゲストに招き、BMWでの車中インタビューを通して、これまでの軌跡や今後の展望に迫るプログラムだ。
・ポッドキャストページ
ロボット作りに目覚めたきっかけは「ターミネーター」
「ロボティクスで、世界をユカイに。」そんな企業理念のもと、ユカイ工学はユニークな家庭用ロボットを次々と世に送り出している。その発想の原点にはどんな体験があるのだろうか。六本木ヒルズを出発した「BMW 320i Touring M Sport」の車中にて青木さんは語り始めた。青木:ロボットに熱中したきっかけは中学生の頃に観た映画『ターミネーター』です。めちゃくちゃハマって、ストーリーはもちろんセリフも覚えるくらい何十回と鑑賞しましたが、ターミネーターそのものではなく、それを開発するエンジニアがカッコよくて「こんな人になりたいなぁ」と思うようになりました。その後、AIの勉強をしたのですが、ハードウェア開発の経験はまだありませんでした。そこで、ロボットの研究をしている後輩と国が公募する研究資金に応募し、その資金を元手に秋葉原で電子部品を購入して試作をしたり、1000台ほどロボットを工場で作ってもらったりして経験を積みました。

ちなみに、ロボットの定義って結構難しくて。技術的に言い表せば「センサーの情報を使用し、賢く行動ができる機械」。そうすると、車や洗濯機などもロボットと呼べてしまう。しかし、洗濯機に名前を付けて可愛いっている人はおそらくいなくて、一般的に想像されるロボットは、友だちや家族のように接することができる「ドラえもん」のような存在ですよね。そういったことを踏まえ、僕らは「人の心を動かしてくれるもの」=ロボットと呼ぶようにしているんです。
大学4年で仲間と共にチームラボを設立
「BMW 320i Touring M Sport」は文京区本郷エリアを走行。東京大学本郷キャンパスが近づいてきた。懐かしい母校周辺の景色を目にし、青木さんは2001年、工学部4年のときに仲間とチームラボを立ち上げたときのことを述懐する。青木:この辺りは、私が仲間と起業した頃によく通った場所です。当時はバイクで取引先を回り、様々な仕事をしながらなんとか食い繋いでいました。今でこそ学生が起業することは珍しくありませんが、僕の学生時代は「大学を出たからにはちゃんと大企業に就職すべき」という風潮が根強くて。にもかかわらず、学業を疎かにして留年してしまったりもして大変でしたね(笑)。最初の仕事は、プログラミングのアルバイトの延長で始めたウェブサイト制作です。また、レコメンデーションエンジンを自社で作り、映画やニュースのおすすめサービスを展開したりもしました。
青木さんはチームラボの最高技術責任者(CTO)→マンガ・小説作品の投稿プラットフォームpixivのCTOを経て、2007年にユカイ工学を設立。試行錯誤を繰り返した末に2015年、会社の転機となる一つのロボットを発売するに至る。
青木:見守りロボット「BOCCO」の初代モデルを発売した2015年が、ユカイ工学にとって大きな転機となった年です。ちょうどPepperが登場し、ロボットやAIに注目が集まり始めたタイミングでもあったので、様々な企業様からお声がけいただくことができました。当時はスマートスピーカーが今ほど市場に流通しておらず、家の中で音楽を再生したり、会話したりするデバイスが身近ではなかったことも追い風になったように思います。

しっぽ付きの「癒しロボット」が米国のテレビで紹介される
ユカイ工学の勢いは止まらない。しっぽが付いた不思議な形をしたロボットが、青木さんを次のステージへと導く。青木:もう一つ、当社にとっての大きな出来事は、しっぽが付いたクッション型の癒しロボット「Qoobo」を発表したことです。このロボットは当初から商品化を目指していたというより、面白そうだから試作したプロダクトでした。試しに国内の展示会で展示したところ、アメリカのジャーナリストの方がものすごく気に入ってくれて。試作品を母国に持ち帰り、テレビ番組で紹介してくださったんです。その反響で、アメリカの様々なテレビ局からお声がけいただき、有名なトークショーにも登場させてもらいました。また、アメリカの老人ホームに試作品を導入し、現地のおじいちゃん・おばあちゃんにすごく喜んでもらったこともありました。そんなふうに「Qoobo」をきっかけに、可愛いロボットは日本以外でも需要があると知ったわけです。

ユニークなアイデアはどう生まれる?
AI機能をいち早く取り入れ、高齢者の一人暮らしの見守りや家族間の音声メッセージのやりとりを可能にした「BOCCO」と、「しっぽを振ってもらえるとなぜか人はうれしい気持ちになる」という気付きから生まれた、クッション型セラピーロボット「Qoobo」。こうしたユニークなアイデアはどのように生まれているのか?青木:僕たちのチームでは「妄想を形にすること」が、アイデアを作る際のルールとなっています。社会課題の解決みたいな入り口からスタートすると、他にもありそうなプロダクトが完成しがちだと思っていて。なので、自分の記憶や体験を掘り下げて、そこからアイデアのタネを見つけることを心掛けているんです。たとえば、ペットに甘噛みされてうれしかった……といった個人的な体験が、ユニークなアイデアに繋がると考えています。
当社には企画の部署がありません。エンジニアやデザイナーだけでなく、営業・経理・人事など社員全員がアイデア出しに参加しています。もう一つ大事にしているのは「試作」です。アイデアだけを見て欠点を指摘することはとても簡単です。悪いところを見つけることほど安易なことはないので。実際に試作を作ると本当に面白いかどうかがすぐわかるため、必ずやっています。このように、アイデアを出すことと、試作を作ること。この2つが当社の大切にしているルールとなります。
部署や役職に関係なく、社員全員でアイデアを出し合い、面白いものを形にしていくことがユカイ工学の流儀。最近発売されたプロダクトにも誕生秘話があるそうだ。
青木:熱い飲み物や食べ物を冷ます小型ロボット「猫舌ふーふー」は、子育て中の社員のアイデアが元になっています。熱いものを食べられない我が子のために親としていつもふーふーと冷ましてあげるけど、子どもが2人いると疲れて酸欠になってしまう。しんどいから、猫ちゃんが代わりにふーふーしてくれたらいいな、という発想から生まれました。最初は「またそんなギャグみたいなことを(笑)」というノリだったのですが、いったん試作してみると、猫型の小さなロボットがマグカップにちょこんと乗っかり、内臓の小型ファンでやさしく風を送り込む様子がすごくかわいかったんですよね。
「リラックスしたい、癒されたいというニーズは日本のみならず世界中で高まっており、僕らが作っているプロダクトの『癒し要素』は世間から強く求められていると感じます」と手ごたえを語る青木さん。独創的な発想でロボットの可能性を切り拓く彼にとっての挑戦、そしてその先にあるFreude=喜びとは何か。尋ねると、こんな答えが返ってきた。
青木:僕たちは日本発で世界的に認知されるようなブランドを作りたいと考えています。最近は、家電量販店の売り場などで日本の製品見ることが少なくて寂しいんですよね。なので、日本人の作ったものの面白さやよさを、世界中に伝えたいという思いで日々挑戦しています。ロボット制作の過程では、うまくいかないことや憂鬱に感じることも少なくありません。ですが、暗中模索で彷徨っている中、一筋の光が見えるタイミングがあるんです。それが見えた瞬間に「やってきてよかった」と喜びを感じます。
(構成=小島浩平)
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