音楽の「ヒットの法則」は嘘? その先にある仕事・創作論を、Yaffle×常田俊太郎が語る

音楽プロデューサーのYaffleと、音楽家であり実業家でもある常田俊太郎が対談。制作のスタンスやヒットとの距離感、そしてこれからの表現について語り合った。

この内容をお届けしたのは、3月8日(日)放送のJ-WAVE『J-WAVE SELECTION TUMI MODE: ONGOING - An Attitude of Constant Evolution』(ナビゲーター:ハリー杉山)。各ジャンルのトップランナー2組【ハリー杉山×杉原行里】【Yaffle×常田俊太郎】の対談を通じて、日々の仕事や、自分をアップデートするヒントを探るプログラムだ。

ここでは、Yaffleと常田俊太郎の対談の一部をテキストで紹介する。

「面白いことをぶっ込んでやろう精神」がある

Yaffleはこれまで藤井 風や米津玄師のプロデュース、アレンジを担当してきた。また、常田はバイオリニストで音楽プロジェクト・MILLENNIUM PARADEのメンバーでもあり、株式会社ユートニックの共同代表でもある。

初対面だというふたりだが、同世代ということもあり、冒頭から自然に言葉を交わしていく。

Yaffle:常田さんって90年生まれ?

常田:そうなんですよ。

Yaffle:僕、91年の3月なんで。

常田:同学年ですね。

Yaffle:常田さんは音楽家だけではないですよね。それがすごい。(活動の際は)ギアは変えてるんですか?

常田:そこはめちゃくちゃ変えてますね。粛々モードとアウトプットしようモードがあって。音楽側にも両方あるし、会社側にも両方あって。僕が会社で働いていたときは生命保険とかの会社のコンサルとかやってたんですけど、全然AIとかなくて超下働きのときは数字をひたすら入力していくみたいな。そういう超機械的で無になれる作業も意外と好きで。音楽だと楽譜を作るって、ある程度そういう時間があったり。

Yaffle:採譜したり、浄書したり。

常田:そうです。そういうのも好きで。逆に、アレンジの取っかかりを考えるとか「ここにどんなのをぶっ込んだら面白いかな」とか。会社側の話で言うと新しい事業を考えるとか、「このお客さんに何を持っていったら刺さるかな」とかってときは、何か面白いことをぶっ込んでやろう精神みたいな。どっちにも両方の要素があるのかなっていう感じはありますね。

常田は、Yaffleについて「いろんな引き出しを持っているイメージがある」と語り、その根幹にあるものを尋ねる。

Yaffle:音楽エリートみたいな文脈で言えば真逆というか。本当にあとから入ってきたっていうか、アウトサイダーなイメージで。高校までは音楽に関係ない学校でしたし、僕は音感とか全然なくて。音大に入るときにテストがあるじゃないですか。すげえやったけど全然できなかった(笑)。

常田:ジャズもやってたんですか?

Yaffle:そうですね。大学にジャズ研みたいなのってあるじゃないですか、ビッグバンドとか。そういうところに出入りしていて。ジャズも好きだったけど、先にポップスジャズで勉強としてのクラシックみたいなのがあって、それで戻ってきてポップスみたいな。

常田:すごく合点がいったというか。(Yaffleさんの音楽って)その要素が全部ふわっといろいろなところにあるなって。

Yaffle:全部まぶそうかな、みたいな感じはあったんですけど。今はある意味、教育というか古典的な何かを積み重ねてない人たちが見た古典のよさみたいなものをそのまま引っ張って来られちゃってるから、両方のバリエーションが増していて。また新しい時代になってるなって。それもそうだし、昔よりは古典をやってる人たちの感覚もだんだん変わってきてるなって。

常田:そうですね。けっこうクロスオーバーしてる感じはありますよね。

ヒットの法則は"嘘"? それでも追い求めるか

続いての話題は、ヒットメーカーのあり方について。

Yaffle:ヒットメーカーの自覚があるのかは別として、仮に何か携わったプロジェクトがバーンって跳ねたとなると、次も種類が似たようなもので結果としても数字としても同じようなものを求められるけど、それに対するマインドセットみたいなものって何かありますか。

常田:僕は結論から言うと、それはあんまり考えてなくって。僕がやってる仕事は、曲に対してストリングスセクションなり、僕のバックグラウンドの要素をどう注入するかっていう関わり方をすることが多いので、合気道的というか、自分から技を繰り出すというよりは来たものに対してこう返すみたいな仕事の仕方が多いんです。インプットが毎回違うから、それに対してこうっていうのは意外とジレンマとしては感じてない仕事が多いのかなと思うんですけど、Yaffleさんはもっと総合的にやってるから、そういうジレンマがありませんか。

Yaffle:クライアントがいて、その奥に市場があるじゃないですか。僕は初めのころは、市場とか何も考えてなくて、頼んできた人が喜べばいいし、もっと言えば喜ばなくてもいいやと思ってたんです(笑)。自分がしたいことをしていけばいいって。でも、だんだんそれも飽きてきて。たまたまうまくいったものがあったときに、そこで直接のクライアントの奥のマーケットが見えて、マーケットがどう反応するかみたいなのが、わかったようなわかんないような状態がずっと続くわけなんですけど。そういうところを意識したりはします。

常田:もちろん、他の曲でどう伸びてるとか、これがハマってファンが増えて、こういう音楽がたぶん好きなんだろうなとか考えますけど、それがマーケットイン的に「じゃあ、こういうふうにしよう」っていうのは僕はあんまりないですね。

Yaffle:プロダクトアウト的な?

常田:そうですね、非常に。

Yaffleは「誰も売れるか売れないかはわからず、ヒットの法則なんて嘘だと思っている」と言う一方で、「それでもなお法則があると仮定して追い求めていくという態度を取るべきかどうかは、仕事論として持っている」と話す。

常田:料理でいうと、Yaffleさんの仕事ってシェフ的な感じなんですよ。僕はどちらかというと農家とか、調味料とかをめちゃ作ってるみたいな人なので、「この調味料を入れたらうまくなるんじゃない?」みたいなのとか「いい野菜を作ったら喜んでくれるかな」とかはあるんですけど、店全体の評価はそれだけでは決まらないじゃないですか。あんまりそこばっかり考えてもしょうがないかな、っていうふうには思っていて。

Yaffle:それってある意味ピュアですよね。(マーケットが)わかった気になってそれでやってみて大ゴケすると、誰も得しないし、売れないし、自分としてもアートとしてなんか微妙みたいに思っているのだとしたら、あえて(マーケットを)知ってるフリをしてないほうがいいのかなって、今の話を聞いて思いました。何が売れるかわかんねえ(笑)。

常田:わかんないですよね。ぶっちゃけ(笑)。

溜まってきたものがドバっと出せる時期に

最後に話題は、「2026年以降のビジョン」へと移った。

常田:個人的にもうちょっとゼロイチじゃないですけど、自分の表現とか作品みたいなものを増やしていきたいなって思ってますね。

Yaffle:発信をよりしたいと。

常田:そうですね。発信もそうだし、何かにサポートで入るっていうんじゃない、自分のプロジェクトみたいなことをよりやっていきたいなと。

Yaffle:なぜそう思うんですか?

常田:なんか面白いものが作れそうな気がしてきたっていう感じかもしれないですね。アイデアとか、こういうアプローチで作ったらけっこういい感じになるんじゃないか、みたいなものを数年試し続けてるみたいな感じはあるんです。「これまだ出してもな……」みたいなものが、ちょっと「こういう感じかな」みたいにイメージが湧いてきたみたいなのはあるかもしれないです。

Yaffle:溜まってきたものがドバっと出せるような。

常田:そうですね。Yaffleさんはどうですか?

Yaffle:聴いてくれてる人と直で向き合いたいですね。ライブもそうですけど、「あ、この人が聴いてるんだ」みたいなのと向き合う。あとはアーティストプロデュースだと、すごくドライな言い方をすれば、僕は関わってるけどもそこにアーティストがいて、アーティストを聴きに来ている人だから。それはそれで素敵だなと思いつつ、自分の作品の発表みたいなウェイトはより増していきたいなっていうのはすごくありますね。

常田:今はそういうタイミングなんですね。

Yaffle:だんだんわかることがキャリアとともに増えてきたので、また別の次元のわからないことに悪戦苦闘したいモードみたいなのがありますね。

Yaffleの最新情報はソニーミュージックの公式サイトまで。

常田俊太郎の最新情報は公式サイトまで。
番組情報
J-WAVE SELECTION TUMI MODE: ONGOING - An Attitude of Constant Evolution
3月8日(日)
22:00-22:54

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