阪神タイガースの近本光司選手が、同じ兵庫県出身で元AKB48の福留光帆と対談。生まれ故郷・淡路市の魅力や地元球団である阪神に大型契約で残留した理由、そして自身が行う地域貢献活動への思いについて語った。
近本選手が登場したのは、J-WAVEが兵庫県とのコラボレーションで制作するポッドキャスト番組『ヒョーゴ★トーク』。ナビゲーターを務める福留が兵庫県職員とともに、県の魅力や意外な取り組み、今力を入れているプロジェクトなどを紹介するプログラムだ。
・ポッドキャストページ
職員:実は近本選手と福留さんには意外な共通点があるんですよね。
福留:中学時代にソフトボールに所属していました。
近本:野球とソフトボールはほぼ一緒ですもんね。じゃあ、キャッチボールはできますよね?
福留:いや、たぶんできません!私、暴投ばかりなので。
近本:僕もですよ(笑)。
福留:いつも先輩に怒られていました。しかも10か月で辞めましたし。
近本:やめたんかい!(笑)
職員:近本選手は阪神で主に中堅手を務められていますが、福留さんもソフトボール部時代の守備位置はセンターだったとか。
福留:そうです。でも私、本当はサードになりたくて。一年生のポジションを決めるときにいったん三塁を守ってみたら打球が全く捕れず、監督から「お前はセンターや!」と言われたんですよ。それで、センターを守ることになったんですけど、サードとは違ってグラウンドの全体が見渡せるからええなと思っていました。
近本:たしかに、サードのほうが難しいと思います。あんなに速い打球、捕れません。逆にセンターは簡単です。フワ―ッと飛んできたボールを捕るだけなので。
福留:これ、私が「そうですよね」って共感したら炎上するやつだ(笑)。
近本:ほとんどのプロ野球選手は「俺が一番だ」という自信を持って入団します。でも、すぐにポキッと鼻を折られるんです。
福留:AKB48も同じです。「絶対にセンターになるぞ」という気持ちで加入しても、自分がそんなにかわいくないことに気づくんですよ。「あれ? 私よりかわいい子がめちゃくちゃおるやん。私、尼崎ではかわいかったのになぁ……」みたいな。
職員:「自分が一番だ」と思って入っているということは、「フォア・ザ・チーム」の感覚とは少し違うのでしょうか?
近本:学生であれば「フォア・ザ・チーム」の大切さを教えられますが、プロでは、自分が活躍しないと生き残れません。チームのために自己犠牲を払ったとしても、評価されるのはやはり成績。どれだけ右打ちで自分がアウトになるのと引き換えに前の走者を次の塁に進めたとしても、ヒットを放つ選手のほうが成績もお金も地位も上がるんです。
福留:シビアな世界ですね……。
近本:みんな一律ではなく、成績に準じてお金が変わりますからね。とはいえ、自分の成績がよくて優勝できなかったときと、自分の成績があまりよくなくてもチームのために動いて優勝できたときだったら、後者のほうが(年俸は)上がるんですよ。
福留:そうなんだ……!
近本:僕、嘘をつけないんですよ。SNSではいくらでも嘘を交えて取りつくろうことができますが、ポッドキャストであれば、自分が思っていることを声に出してそのまま発信できるし、聴いてくれる人に「今気持ちが乗っていないな」とか「テンション高いな」と心のうちまで感じ取ってもらえる。そんなふうに、プロ野球選手ではない本当の自分を伝えるためのツールとしてポッドキャストが適していると思ったんです。
職員:個人的にはオフシーズンだけではなく、シーズン中もやっていたのがすごいと思いました。
近本:シーズン中は実験的に配信していました。というのも、自分の野球の成績がいいとき・悪いときも録り続けて、声のトーンが変わるのかどうか検証したかったんです。25年シーズンは、30数打席打てないときもあったのですが、そのときの配信を聴き直してもいつ録ったんだっけ?と思うくらい、普段と変わらないテンションでした。つまり、プロ野球選手の人格と『チカブレンド』での人格をしっかりと切り分けられていたようで。それはいい発見だなと思いました。
福留:息抜きみたいな場所になっていたんですかね?
近本:そうですね。うまくいかないときはモヤモヤすることもあるんですけど、ポッドキャストではそういった悩みから離れてリフレッシュできるんです。
福留:反省しなきゃですね……。私、日頃のストレスを全部ラジオにぶつけてます。給料日直後はめっちゃ声高いし、お金がないときはすごく暗いし。自分の情緒がラジオに表れています。
近本:(笑)。いや、それはそれでおもしろいと思いますよ。
近本:個人的には違う土地で生活したい、プレーしたい、海外にも行ってみたいという気持ちもありましたが、それは自分が「どうやりたいか」だと思うんですよ。でも、僕が常に大事にしているのは「どう在りたいか」。自分が理想とする在り方や生き方を考えたときに、生まれ故郷であり、プロ野球選手になるきっかけ・繋がりをくれた兵庫県に残り、この街で暮らす人たちの前で、近くでプレーしたいという結論に至ったんです。残りの現役生活は5年確約されていますが、その先は未定です。限られた現役生活の中で、応援してくださった方々に恩返しをするには、やっぱり兵庫県、やっぱり阪神となりました。
福留:素敵過ぎる。秒で東京に引っ越した私とは大違いだ……どうしよう……。
近本:いや、それはそれでいいと思うんですよ。東京で頑張っている姿を応援してくれている方々に見せることもすごく大事なことではないでしょうか。
福留:ありがとうございます。救われました。
近本:淡路島や自主トレで訪れる鹿児島・沖永良部島の子どもたちを甲子園に招待するほか、兵庫県内にあるサンテレビさん、関西学院大学さんなどにも招き、様々な体験をしてもらうプロジェクトを手掛けています。目的は“本物”を感じ取ってもらうこと。今は情報過多な時代です。インターネットやSNSで様々な情報にアクセスでき、何でも知ったつもりになってしまう。また、離島である淡路島・沖永良部島で生まれ育った児童の中には、島の高校に進学し、地元の企業に就職するしかないと閉じこもってしまう子もいるかもしれません。そこで僕らのプロジェクトを通じて本物を目で見て体験することで、将来、進学や就職など人生の分岐点に立ったときの選択肢の一つにしてほしいですし、違う世界を知ることで地元のよさを再認識してもらいたいとも考えています。
職員:そういった場を作ることが私たちの仕事なのですが、近本さんが既にやられているとは……!
近本:もちろん僕だけではできませんでした。僕はこの思いがあってずっとやりたかったのですが、現役プロ野球選手である以上、どうしても一人ではできませんでした。そこで何とか動いてくれる人を一人見つけて、その人と県庁さんと一緒に協力してプロジェクトを推進しています。
福留:「LINK UP」のプロジェクトとしてこれから挑戦したいことはありますか?
近本:今は芦屋市でキャリア教育を行っているのですが、次は高校生を対象にしたプロジェクトを実施したいです。たとえば、空き家問題や交流の場創出などの地域課題へ地元の子たちに向き合ってもらい、解決できるように導くサポートを民間企業・行政・教育機関などと協力して行いたいです。
福留:未来の世代に繋いでいこうというスタンスなのですね。
近本:正直な話、僕は「場」を作るだけでいいんです。実際にやるのは、もう次の世代に入っていってるので。
職員:この「場」=仕組みを作るという考え方が素晴らしいですね。
近本:母校である関西学院大学の教えがよかったのかもしれません。
福留:というと?
近本:関西学院大学には「Mastery for Service」(奉仕のための練達)というスクールモットーがあります。これは奉仕をするためには自分を鍛える、成長させるということが大切だという考え方です。このスクールモットーを学んできたので、子どもたちにも成長してもらいたい、県庁にも成長してもらいたい、そのためにはまず自分が成長していきたいという気持ちで活動しています。
福留:近本選手、今回は貴重なお話をありがとうございました。最後に兵庫県に住んでいる方や兵庫に興味を持っている方に向けたメッセージをお願いします。
近本:僕や県庁、行政ができることはどう頑張っても仕組みを作ることだけです。結局は市民の方々が思いを持って活動していただけることがすごくいいエネルギーを生んでいくので、ぜひ行動の一歩を踏み出していただければ幸いです。
『ヒョーゴ★トーク』では、意外と知られていない兵庫県庁のお仕事、移動式図書館「兵庫 旅するキッカケ文庫」、兵庫の新たなオリジナル米「コ・ノ・ホ・シ」など、毎回、兵庫県にまつわる様々なトピックについて福留と兵庫県職員が“ゆるっと、でもまじめに”掘り下げながら語り合っている。
(構成=小島浩平)
近本選手が登場したのは、J-WAVEが兵庫県とのコラボレーションで制作するポッドキャスト番組『ヒョーゴ★トーク』。ナビゲーターを務める福留が兵庫県職員とともに、県の魅力や意外な取り組み、今力を入れているプロジェクトなどを紹介するプログラムだ。
・ポッドキャストページ
近本選手と福留の意外な共通点とは?
『ヒョーゴ★トーク』は2025年10月からスタートした全20回のポッドキャスト番組。第11回目の配信には、近本選手が登場した。番組開始以来初のゲスト、それも地元を代表するスターの登場とあって、福留は「緊張しちゃいます」と恐縮する。そんな中、兵庫県職員が2人には出身地以外にも共通点があると水を向けた。
福留光帆と、兵庫県職員
福留:中学時代にソフトボールに所属していました。
近本:野球とソフトボールはほぼ一緒ですもんね。じゃあ、キャッチボールはできますよね?
福留:いや、たぶんできません!私、暴投ばかりなので。
近本:僕もですよ(笑)。
福留:いつも先輩に怒られていました。しかも10か月で辞めましたし。
近本:やめたんかい!(笑)
職員:近本選手は阪神で主に中堅手を務められていますが、福留さんもソフトボール部時代の守備位置はセンターだったとか。
福留:そうです。でも私、本当はサードになりたくて。一年生のポジションを決めるときにいったん三塁を守ってみたら打球が全く捕れず、監督から「お前はセンターや!」と言われたんですよ。それで、センターを守ることになったんですけど、サードとは違ってグラウンドの全体が見渡せるからええなと思っていました。
近本:たしかに、サードのほうが難しいと思います。あんなに速い打球、捕れません。逆にセンターは簡単です。フワ―ッと飛んできたボールを捕るだけなので。
福留:これ、私が「そうですよね」って共感したら炎上するやつだ(笑)。
「フォア・ザ・チーム」では生き残れないプロ野球の過酷さ
2人の共通点はもう一つある。それは、大所帯のチームで活動している(いた)ことだ。特に阪神は、全国の野球エリートの上澄み中の上澄みがしのぎを削る過酷な環境。その中で、頭角を現すことの難しさについて、近本選手は実体験を交えて語る。
福留:AKB48も同じです。「絶対にセンターになるぞ」という気持ちで加入しても、自分がそんなにかわいくないことに気づくんですよ。「あれ? 私よりかわいい子がめちゃくちゃおるやん。私、尼崎ではかわいかったのになぁ……」みたいな。
職員:「自分が一番だ」と思って入っているということは、「フォア・ザ・チーム」の感覚とは少し違うのでしょうか?
近本:学生であれば「フォア・ザ・チーム」の大切さを教えられますが、プロでは、自分が活躍しないと生き残れません。チームのために自己犠牲を払ったとしても、評価されるのはやはり成績。どれだけ右打ちで自分がアウトになるのと引き換えに前の走者を次の塁に進めたとしても、ヒットを放つ選手のほうが成績もお金も地位も上がるんです。
福留:シビアな世界ですね……。
近本:みんな一律ではなく、成績に準じてお金が変わりますからね。とはいえ、自分の成績がよくて優勝できなかったときと、自分の成績があまりよくなくてもチームのために動いて優勝できたときだったら、後者のほうが(年俸は)上がるんですよ。
福留:そうなんだ……!
近本光司がポッドキャストで見せる"素の自分"
近本選手の活躍の場はグラウンドの上だけに留まらない。2024年12月からは自身の公式ポッドキャスト番組『チカブレンド』を毎週配信している。現役プロ野球選手が生の声を発信する意義とは?近本:僕、嘘をつけないんですよ。SNSではいくらでも嘘を交えて取りつくろうことができますが、ポッドキャストであれば、自分が思っていることを声に出してそのまま発信できるし、聴いてくれる人に「今気持ちが乗っていないな」とか「テンション高いな」と心のうちまで感じ取ってもらえる。そんなふうに、プロ野球選手ではない本当の自分を伝えるためのツールとしてポッドキャストが適していると思ったんです。
近本:シーズン中は実験的に配信していました。というのも、自分の野球の成績がいいとき・悪いときも録り続けて、声のトーンが変わるのかどうか検証したかったんです。25年シーズンは、30数打席打てないときもあったのですが、そのときの配信を聴き直してもいつ録ったんだっけ?と思うくらい、普段と変わらないテンションでした。つまり、プロ野球選手の人格と『チカブレンド』での人格をしっかりと切り分けられていたようで。それはいい発見だなと思いました。
福留:息抜きみたいな場所になっていたんですかね?
近本:そうですね。うまくいかないときはモヤモヤすることもあるんですけど、ポッドキャストではそういった悩みから離れてリフレッシュできるんです。
福留:反省しなきゃですね……。私、日頃のストレスを全部ラジオにぶつけてます。給料日直後はめっちゃ声高いし、お金がないときはすごく暗いし。自分の情緒がラジオに表れています。
近本:(笑)。いや、それはそれでおもしろいと思いますよ。
国内FA権取得も…貫いた“兵庫愛”
2025年11月11日、兵庫県をはじめとした全国の虎党にうれしいニュースが舞い込んできた。近本選手が今季取得した国内FA権を行使せず、阪神に残留することを決断したのだ。契約条件は球団史上最大規模となる5年総額25億円(推定)。この決断の背景には、地元への深い愛着が秘められていた。近本:個人的には違う土地で生活したい、プレーしたい、海外にも行ってみたいという気持ちもありましたが、それは自分が「どうやりたいか」だと思うんですよ。でも、僕が常に大事にしているのは「どう在りたいか」。自分が理想とする在り方や生き方を考えたときに、生まれ故郷であり、プロ野球選手になるきっかけ・繋がりをくれた兵庫県に残り、この街で暮らす人たちの前で、近くでプレーしたいという結論に至ったんです。残りの現役生活は5年確約されていますが、その先は未定です。限られた現役生活の中で、応援してくださった方々に恩返しをするには、やっぱり兵庫県、やっぱり阪神となりました。
福留:素敵過ぎる。秒で東京に引っ越した私とは大違いだ……どうしよう……。
近本:いや、それはそれでいいと思うんですよ。東京で頑張っている姿を応援してくれている方々に見せることもすごく大事なことではないでしょうか。
福留:ありがとうございます。救われました。
"場"を作る─地域貢献活動も
その深い地元愛は一つの形となって動き出している。24年2月には、近本選手が理事を務める「一般社団法人 LINK UP」を設立。同社団法人ではどのような活動を展開しているのか。近本:淡路島や自主トレで訪れる鹿児島・沖永良部島の子どもたちを甲子園に招待するほか、兵庫県内にあるサンテレビさん、関西学院大学さんなどにも招き、様々な体験をしてもらうプロジェクトを手掛けています。目的は“本物”を感じ取ってもらうこと。今は情報過多な時代です。インターネットやSNSで様々な情報にアクセスでき、何でも知ったつもりになってしまう。また、離島である淡路島・沖永良部島で生まれ育った児童の中には、島の高校に進学し、地元の企業に就職するしかないと閉じこもってしまう子もいるかもしれません。そこで僕らのプロジェクトを通じて本物を目で見て体験することで、将来、進学や就職など人生の分岐点に立ったときの選択肢の一つにしてほしいですし、違う世界を知ることで地元のよさを再認識してもらいたいとも考えています。
職員:そういった場を作ることが私たちの仕事なのですが、近本さんが既にやられているとは……!
近本:もちろん僕だけではできませんでした。僕はこの思いがあってずっとやりたかったのですが、現役プロ野球選手である以上、どうしても一人ではできませんでした。そこで何とか動いてくれる人を一人見つけて、その人と県庁さんと一緒に協力してプロジェクトを推進しています。
福留:「LINK UP」のプロジェクトとしてこれから挑戦したいことはありますか?
福留:未来の世代に繋いでいこうというスタンスなのですね。
近本:正直な話、僕は「場」を作るだけでいいんです。実際にやるのは、もう次の世代に入っていってるので。
職員:この「場」=仕組みを作るという考え方が素晴らしいですね。
近本:母校である関西学院大学の教えがよかったのかもしれません。
福留:というと?
近本:関西学院大学には「Mastery for Service」(奉仕のための練達)というスクールモットーがあります。これは奉仕をするためには自分を鍛える、成長させるということが大切だという考え方です。このスクールモットーを学んできたので、子どもたちにも成長してもらいたい、県庁にも成長してもらいたい、そのためにはまず自分が成長していきたいという気持ちで活動しています。
福留:近本選手、今回は貴重なお話をありがとうございました。最後に兵庫県に住んでいる方や兵庫に興味を持っている方に向けたメッセージをお願いします。
近本:僕や県庁、行政ができることはどう頑張っても仕組みを作ることだけです。結局は市民の方々が思いを持って活動していただけることがすごくいいエネルギーを生んでいくので、ぜひ行動の一歩を踏み出していただければ幸いです。
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(構成=小島浩平)
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