東京を深掘りして、“気づき”を提案する─創刊40周年の雑誌『東京人』のこだわりとは?

創業40周年を迎えた月刊誌『東京人』(都市出版)に注目し、創刊からの40年間に起こった出来事や、東京の変化を振り返った。

この内容をお届けしたのは、1月16日(金)放送のJ-WAVE『INNOVATION WORLD』(ナビゲーター:川田十夢)の「GLOBAL OPEN INNOVATION」。各分野のエキスパートを招き、知る人ぞ知る、新たなイノベーションの息吹を探るコーナーだ。

東京の新しい発見を与え続ける『東京人』が創刊40周年

今回は、2026年に創刊40周年を迎えた雑誌『東京人』に注目。長きにわたり、東京という都市を多角的に見つめ、その魅力や奥行きを伝えてきた同誌にとって、節目となる年だ。ゲストに副編集長の田中紀子さんを招き、雑誌の歴史を紐解きながら、東京の変化について話を聞いた。

川田:ちなみに、田中さんは編集部にどれくらいいらっしゃるんですか?

田中:私が社員として入ったのが1996年なので、2026年でちょうど30年になります。

川田:じゃあ、『東京人』の歴史の4分の3は田中さんが関わっているわけですね。2026年1月号(2025年12月3日発売)で500号ですよね。

田中:はい。自分が関わったのは、おそらく350冊くらいです(笑)。

川田:40周年ということで、創刊は1986年ですよね。

1986年は、バブル経済が始まった年。男女雇用機会均等法が施行され、ダイアナ妃が来日するなど、社会的な注目を集める出来事が相次いだ。一方で、チェルノブイリ原発事故やスペースシャトル・チャレンジャー号の事故といった、世界に衝撃を与える悲劇も起きている。音楽シーンでは、中森明菜の『DESIRE-情熱-』や石井明美の『CHA-CHA-CHA』などがヒットし、時代を象徴する楽曲として広く親しまれた。

川田:そんな40年にわたって東京を見つめてきた『東京人』ですが、あらためてどんな雑誌なのか教えてください。

田中:創刊時のコンセプトは、「都市を味わい、都市を批評し、都市を創る」です。普段、何気なく歩いている街のなかにも、建築の様式や地形、歴史など、視点を変えることで新しい発見があります。そうした“気づき”を提案している雑誌になります。

川田:『東京人』の佇まいというか、街の切り取り方って独特ですよね。僕はテクノロジーの人間だと思われがちですが、街を歩きながら過去にさかのぼる感覚がすごく好きで。「ここには昔、何があったんだろう」と考えるのが楽しいんです。その大もとは、まさに『東京人』だなと思っています。

田中:ありがとうございます。

『東京人』の特集で意識しているものは「歴史」

1986年に『東京人』が創刊された背景には、東京都の文化政策があった。現在は都市出版が発行しているが、創刊当初は東京都が関わるかたちでスタートした雑誌だ。

当時の都知事・鈴木俊一が掲げていた「マイタウン東京構想」の一環として、東京の文化を内外に発信するメディアを立ち上げようという動きがあった。江戸東京博物館や東京都写真美術館といった文化施設の整備と並行し、「東京の文化を伝える雑誌を作ろう」という流れのなかで、『東京人』は誕生した。

川田:最初は東京都発信の雑誌だったんですね。特集の切り口も多彩ですが、編集方針はどう考えていらっしゃるんですか?

田中:創刊編集長から言われていたのは、「編集者の知識には限りがあるので、特集を組む際には詳しい人に話を聞きなさい」ということでした。まずは専門家に取材して、そこから企画を膨らませていく。編集者自身の関心を軸に、深掘りしていくスタイルです。

これまで数多くの特集を組んできた田中が、印象深い企画として挙げたのは、1997年11月号の「劇場へようこそ」という特集だった。

田中:当時、下北沢を中心に、大人計画やナイロン100℃、東京サンシャインボーイズなど、多くの劇団や俳優の方に出ていただきました。

川田:すばらしいですね。東京と劇団・舞台は切っても切れない関係ですよね。

田中:どの特集にも言えることですが、「東京は長い歴史の上に成り立っている」ことを意識しています。必ず歴史を押さえたうえで、いまと過去をつなぐ構成にしています。あらためて読んでみると、97年当時の空気がそのまま残っている感じがしますね。

40年前の東京特集をあらためて実施

番組では、川田お気に入りの『東京人』の特集をピックアップ。2009年11月号の「大瀧詠一の映画カラオケのすすめ」を紹介した。

川田:田中さんが担当されていたと聞きましたが、どういうきっかけで特集を組まれたんですか?

田中:大瀧さんが、古い日本映画、とくに成瀬巳喜男監督作品のロケ地を特定している、という情報を得まして。「これは特集にしよう」と企画が始まりました。

川田:やっていることがめちゃくちゃかっこいいですよね。

田中:たとえば、普通のカラオケのMVにはミュージシャンがいなくて、風景だけが流れますよね。同じように、映画の登場人物ではなく、背景の風景写真だけを見て、その風景がどこのものか、それこそ看板ひとつから場所を特定するような作業をされていました。まさに研究成果の発表でしたね。

川田:粋ですよね。まさに大人の遊びですよね。

田中:好きなことを突き詰めた、幸せな特集を組めた時間でした。

川田:当時は「聖地巡礼」という言葉も、まだ一般的じゃなかったですよね。先駆けだったと思います。

『東京人』は40周年という節目の年を迎えるが、今後も記念企画が予定されている。2月3日(火)発売の3月号では、「〈東京人〉的、読書案内 本があるしあわせ」と題した特集を展開する予定だ。過去のバックナンバーを振り返り、40年前に行った特集をあらためて掘り下げることで、『東京人』ならではの視点から読書の魅力を再提示する試みとなっている。

川田:すばらしいなあ。僕も業界は違いますが、根本は同じだと感じているんですね。何か企画を思いついたら、持ち込んでもいいですか?

田中:ぜひ。どんなテーマでも『東京人』らしく制作いたします。

川田:相談させてください!3月号の特集も楽しみです。

『東京人』の詳細は公式サイトまで。

『INNOVATION WORLD』のコーナー「GLOBAL OPEN INNOVATION」では、各分野のエキスパートを招き業界トレンドをお届けする。放送は毎週金曜の21時15分ごろから。
番組情報
INNOVATION WORLD
毎週金曜
20:00-22:00

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