長く繁栄する企業の「ゴミ置き場の特徴」とは? 廃棄物・資源循環のエキスパートが語る

レコテック株式会社 代表取締役の野崎衛さんが、会社立ち上げの経緯や同社が展開する次世代型廃棄物管理システムの特徴、さらに、循環型社会の実現に貢献する上で一般消費者が重視すべきことなどについて語った。

野崎さんは、ゴミの発生から運搬、リサイクルまでのすべての過程をスマホやタブレットでチェックできるプラットフォームを構築し、資源循環の見える化を実現。日本が抱える一般廃棄物のリサイクルの課題解決に向けて取り組んでいる人物だ。

野崎さんが登場したのは、俳優の小澤征悦がナビゲーターを務めるJ-WAVEの番組『BMW FREUDE FOR LIFE』(毎週土曜 11:00-11:30)。同番組は、新しい時代を切り開き駆け抜けていく人物を毎回ゲストに招き、BMWでの車中インタビューを通して、これまでの軌跡や今後の展望に迫るプログラムだ。

企業・商業施設のゴミ置き場を見て起業を決意

「BMW iX xDrive60 M Sport」は六本木ヒルズを出発。車中にて野崎さんは、起業に至った経緯を語り始めた。

野崎:私はもともとスウェーデンに本社を置く廃棄物処理機械メーカーの日本代理店に勤めていました。当時、ありとあらゆる企業・商業施設のゴミ置き場を見て回ったのですが、どこも大変な量のゴミが堆積していて。目の当たりにする度に「果たしてこれは持続可能なのか?」と考えたものです。また、ほとんどのゴミ置き場が地下に設置され、誰も注目していないことからビジネスチャンスがあると思い、独立することを決めました。

かくしてレコテック株式会社は2007年5月に創業。その後2021年11月には資源循環プラットフォーム「pool」をリリースした。同プラットフォームは、「誰が」「どこで」「何を」「どれだけ」排出しているかを可視化することで回収コストの削減を期待できる、廃棄物計量管理システム。現在、百貨店やショッピングモール、オフィスビル、工場など様々な施設に導入されている。

こうした資源循環のビジネスを立ち上げた背景には、前職の仕事で接したスウェーデンの影響も少なからずあったと野崎さんは話す。

野崎:スウェーデンは環境先進国と言われていますが、とりわけ教育が進んでいるという印象を受けます。環境問題を解決する上で重要なのは、「教育」「規制」「技術」です。私たちは技術の側面からアプローチしていますが、中でも根気と時間を要するプロセスが教育です。この教育にしっかりと取り組んでいるため、スウェーデンでは子どもが高い環境リテラシーを持ち、結果として国民の日々の行動・意識に反映されているのだと思います。

長く繁栄する企業、ゴミ置き場の特徴は?

そんな話をしているうちに「BMW iX xDrive60 M Sport」は、poolが導入されている東京都世田谷区二子玉川のデパート「玉川高島屋」に到着。同デパートのゴミ置き場を案内しながら野崎さんは、自身が開発した廃棄物計量管理システムがどのように活用されているかについて説明する。

野崎:玉川高島屋さんに入っている350近いテナントの全てがpoolシステムを利用し、何のゴミがどのくらい排出されているのかを日々管理しています。これにより各テナントではゴミとコストの削減、リサイクル率の向上といったぞれぞれの目標に対し、具体的なアクションを取りやすくなります。また、見てわかると思うのですが、ゴミ置き場がすごくきれいですよね。通常、人に見せないような場所を、むしろ人に見てもらう前提で作ることによってゴミを持ってくる人の意識を変える狙いがあります。

私はこれまで相当な数のゴミ置き場を見てきましたが、長く繁栄している企業ほどゴミ置き場がきれいなんですよ。これは間違いなく言えることです。玉川高島屋さんは50年以上の歴史がある施設ですが、やはりこういった見えないところをしっかりときれいにしていくことがお客様へのホスピタリティに繋がっていくと思います。その一端をpoolが担わせていただいているのはうれしいことですし、やりがいのあるプロジェクトだと感じています。

廃プラスチックから生まれる新たな素材「pool樹脂」とは?

資源回収の流れを一括管理し、種類ごとにゴミを可視化できるpoolシステムだが、そこでデータ化され管理された廃プラスチックから新たな素材「pool樹脂」を誕生させている。この素材の新しさとは、どんなところにあるのだろうか。

野崎: pool樹脂はPCR(ポストコンシューマーリサイクル)材という、使い終わったプラスチックを回収し、再資源化した素材になります。従来利用されていたPIR(ポストインダストリアルリサイクル)材は、工場から排出された端材を再利用した再生材料でした。当社では高島屋さんや三越さん、大丸さん、アトレさんなどの商業施設から回収した衣料品にかかるビニールを材料にしてpool樹脂を作成しています。

使い捨てられている多くのプラスチックをPCR材として製品に戻すことで、その製造にかかる二酸化炭素の排出量は最大77%削減されている。その用途はじわじわと広がりを見せ、北海道で行われている「RISING SUN ROCK FESTIVAL」の会場で使用されるゴミ袋にも導入されている。

過酷なスポーツに挑んで気付いた地球の強大さ

こうした実業家としての顔とは別に野崎さんにはもう一つの顔がある。それが、御年54歳にして過酷なレースに挑むアマチュアアスリートとしての一面だ。

野崎:私は、大自然を舞台にトレッキングやマウンテンバイク、カヤックなど複数の種目をこなす「アドベンチャーレース」という競技に取り組んでいます。レースは3日間にわたって実施されることもあり、かなりハードです。競技中には、森でハチの大群に襲われることもあれば、山で迷うこともあります。

私のような環境問題と向き合う人はよく「地球のために……」なんて言いますが、アドベンチャーレースをやっていると、そういった感覚が全くなくなりますね。人間が地球のためにできることなんて、恐らくありません。地球は人間よりもはるかに強くて、私たちはそのほんの些細な一部として生かされている。そんなことをアドベンチャーレースで自然の生命力や脅威に圧倒される度に強く感じるんです。

野崎さんは企業や商業施設、工場から出る廃棄物など、大きな規模の資源循環に取り組んでいるが、では、一般家庭でできること、一人ひとりができることはどんなことだろうか。

野崎:まずはシンプルに自治体のゴミ出しルールを守ることが大前提です。たとえば、リチウムイオン電池の不適切な処分によって火災が起きるといった問題も発生していますから、社会コストを下げるためにも、一人ひとりがルールを順守しなければなりません。ただ一番目を向けるべきは、捨てるときよりも買うときです。消費が変われば世の中が変わるという意味において、消費者はヒエラルキーの頂点に立っていますから。なので、常日頃から社会課題にアンテナを立て、自分が購入するモノが世の中にどんなインパクトを与えているかを意識する必要があると思います。

廃棄物・資源循環のエキスパートとして環境問題と向き合い続ける野崎さん。最後に自身にとっての挑戦、そしてその先にあるFreude=喜びとは何かと尋ねると、こんな答えが返ってきた。

野崎:誰も最適解を見つけていない、いわゆる社会課題になっている事象をビジネスで解決していくことにやりがいを感じています。企業として収益をしっかりと上げながら、社会に対してインパクトのある事業を今後も展開していきたいです。また、挑戦していく過程で、会社のメンバーや家族がみんなハッピーになっていくことも大切です。そのあたりを達成していくことが私にとっての「挑戦」ですね。

(構成=小島浩平)

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