世界的デザイナーであるnendoの佐藤オオキとクリス智子が、ホットドッグなどに付いてくる、ケチャップとマスタードが同時に出てくる容器「パキッテ」のデザインについてトークを展開した。
この内容をお届けしたのは、11月22日(土)放送のJ-WAVE『HEBEL HAUS CREADIO』(ナビゲーター:佐藤オオキ、クリス智子)。「デザインを音で楽しむ」をテーマにお送りする番組だ。
番組は、Spotifyなどのポッドキャストでも聴くことができる。
・ポッドキャストページ
私の数字の「8」の書き方は、まず左半分を上から書いて、そのまま下から右半分を書いて、天辺で書き終える書法です。人前で8を書いているとすごく視線を感じます。
佐藤:僕は8のお団子ふたつ上と下、順番に書いていきますけど、このリスナーは逆の3を書いて、表の3を書いて8にするってことですね。へえ。
クリス:天辺で書き終えるってけっこう真んなかで合わないかも。
佐藤:これはリスクが高いですね。ちゃんと出会わなければいけない点が2回登場しますからね。
クリス:ちょっと空中ブランコ的ですよね。
佐藤:そうそう。それを2回やるんですよ。これは緊張感がある書き方だな。
クリス:いま書いてみると、毎回ちょっと違う8になってかわいいですけどね。あ、だんだんうまくなってくる。
佐藤:見てると動きがかわいいですね。
クリス:このリスナーは左から書くけど、私は左利きだから、右から書いたほうがやりやすい。
佐藤:ほんとだ!
クリス:ほら。
佐藤:なんでドヤ顔するの(笑)。
クリス:漢字とかだと書き順の個性ってありますけど、数字はシンプルなぶん、驚くというか。
佐藤:書き順を変えるだけで書いているときの印象がだいぶ変わるんですね。面白いですね。
佐藤:(実物を手にして)これですよね。こんな真剣に見たのは初めてかもしれない。
クリス:これだけで見ることもないですよね。
佐藤:たしかに、単独では見ないものですよね。これ、パキッテっていうんですね。よくできてますよね。
クリス:真んなかに出し口があって片手でできて。
佐藤:これ、出口がある面に筋というか、ライン状のリブ(凹凸)がありますよね。これでこの面が硬くなって、てこの原理でパキッと折れるけど、ここが柔らかいとフニャってなってパキッと折れないんですよ。パキッとやるためには、ほかを硬くしなくちゃいけなくて、そのためのリブが4本ずつくらい入ってるんですけど、その4本のうち1本だけが内側に長くて、それが折れたときにストローみたいに飛び出すための口になるんでしょうね。これ、すごいですよ。リブでありながら注ぎ口になっていて。本当にすごい。あと、パキッと割れる口のところに技術があると思うんです。
ここで、パキッテの製造を手がける株式会社ディスペンパックジャパン経営企画部の平野さんから届いたコメントを紹介した。
平野:パキッテのアイデアは、アメリカ人の発明家による発想から生まれたと聞いています。高所での作業時にけがをした際に、片手で簡単に出る薬があればとても便利だという着想を得たことがきっかけだったそうです。このアイデアに共感した国内の商社と食品メーカーが共同で事業化を進めるため、合弁会社として私どもの会社を立ち上げました。アメリカのものは特許だけ取って、絵しかなかったようです。容器のアイデアのみがある段階のスタートだったものですから、製造する機械がなかったんですね。製造が安定するまでは2、3年はかかったと思います。アメリカでも機械の開発はしていたのですが、日本のほうが早く、私どもが最初に世の中に出させていただきました。
佐藤:面白い。アメリカの特許が先だったんですね。ただ、製品化できたのは日本が先だったと。
クリス:1987年に生産が開始されたそうです。もともとは医療用だったって、びっくり。
佐藤:何を入れようとしたんですかね。軟膏とか? それにしたら量が多いですよね。
クリス:ふたつっていうと、片方に消毒液と……。でも、一気に出ても困るか。
平野:最初はドレッシングとかを入れて出させていただきました。当時としては常識を超えたもので、画期的な容器ではあったんですね。当然ながら、みなさん使い方がわからないので「これ、どうやって使うんだ」みたいな声も多く聞きましたし、そのときは普及しきれませんでした。その後、トマト・マスタードなど大手チェーン店やコンビニエンスストア、学校給食などで徐々に採用が広がり、認知度が上がり、いまではほぼみなさんが知っている状態になりました。おそらく慣れた人からすると直感的で楽しく使えるんじゃないかなと。パキッと気持ちよく折れるというのが、この容器の利便なのかなと思っています。
クリス:たしかに、気持ちよさがありますよね。
佐藤:最初はどう使っていいかわからない感じだったんですね。それでいうと、割れる面が同じ色ですけど、ここを境に割れるんだよってわかるように2色で塗り分けたりすると。
クリス:いま、改善してます(笑)?
佐藤:割れるものなんだってもう一段階わかるかなって。もうひとつは持ち方ですよね。野球でいうストレートみたいな。人差し指と中指と親指の3本の指で持つのであれば、持ちたくなるくびれとか。そういうのがあると、ここを持つのかなってなるかもしれないですね。
クリス:それは右利き、左利き関係なくユニバーサルですもんね。
平野:一般的な容器は、底の部分が硬くてふたが柔らかいフィルムですが、一方でパキッテはその構造が逆転しています。ふたが硬くて内容物が入っている底が柔らかい。この特殊な構造は、指で折り曲げた際にふたがパチンと破断して出し口ができるという大きな役割があります。
また、平野さんは構造が逆転しているふたのフィルムがちょうつがいの役割も果たすのだと語る。
平野:ちょうつがいのようにきれいに折り曲がっていきますが、その裏にある柔らかいフィルムはきれいに絞り出せる。そういうものを高い精度で多くの数をシールしてトリミングするのが非常に難しい技術でした。この製品を最後にトリミングするときに、通常は薄い側から刃を入れて、最後に硬いところを切るという機械の設計があるんです。しかし、パキッテの場合はまったく逆転していますので、硬いほうから刃を入れて最後に柔らかいフィルムを切るというのは、実は非常に難しくてなかなか切りきれないというトラブルがあったと聞いています。
佐藤:すごいですね。いまの説明を聞いて思ったんですけど、どうやって(内容物を)詰めているんですかね。普通は器のほうが硬くてふたが柔らかい。だから硬い器の中にマスタードとかケチャップを入れて、柔らかいふたをシーリングするイメージがあるんですけど。柔らかい袋に入れるのって難しそうですよね。その状態の上に硬いふたをシーリングするのも難しそうですよね。
クリス:たしかに。言われると謎がまた深まりますね。
クリス:甘いのから、タラコソースとかイチゴバターとか粒あんもありますね。
佐藤:粒あん、出ますかね。
クリス:これは出し口が大きめですね。
佐藤:(実際に試してみると)ダムが決壊するように大量の粒が。気持ちいいな。一生やってられるやつですね。
現在、製造されているパキッテの形状は、出し口がだけでおよそ10種類。もっと細かく分類すると20種類以上にもなる。先ほどの粒あんのように具材が大きいものに対して大きく開く出し口のタイプ「マルチ」や、トマトソース×マスタードなどの2種類を同時に出すタイプ「ツイン」、また1種類の「シングル」もあるという。
佐藤:さっきのマスタードで気付いたんですけど、グッと使い切ったときに微妙に垂れちゃうかなって思ったんですよね。口のところに残ってるケチャップとかマスタードがいるかなって。でも、手を離すとさっきのちょうづがい、てこの原理で袋がむしろ膨らむのでひゅっと最後、液体を引き込むんですよ。
クリス:よくできてる。
佐藤:すごいですね。
クリス:手が汚れませんからね。
佐藤:面白いな。すごいデザインですね。
平野さんからは、「パキッテ界の新星」として卵かけご飯(TKG)用のしょうゆだれと卵ソースのパキッテ「秒でどこでもTKG!?卵かけ風ご飯のたれ」も送られた。
佐藤:卵としょうゆがなくても、これひとつで解決。でも、そもそもしょうゆも卵もないのに卵かけご飯を食べたいと思ってること自体が、どれだけ社会に対して甘えているか(笑)。米しかない分際なんですよね。
クリス:これからヒマラヤに登りたいと思っているのかもしれないじゃないですか(笑)。
佐藤:アウトドアでご飯は持って行けるけど卵は持っていけないとか。
クリス:あとは、卵が高かったりしてなかなか買えないときとか。これまではどちらかというとパンとかスパゲッティとか洋食のものが多かったみたいですけど、こういうご飯ものも出てきたそうです。
佐藤:気になりますね。
『HEBEL HAUS CREADIO』は、世界的デザイナーである佐藤オオキとクリス智子の軽快なトークで、デザインの奥深い魅力をお届けする。放送は毎週土曜17時から。ポッドキャストでも配信中。
この内容をお届けしたのは、11月22日(土)放送のJ-WAVE『HEBEL HAUS CREADIO』(ナビゲーター:佐藤オオキ、クリス智子)。「デザインを音で楽しむ」をテーマにお送りする番組だ。
番組は、Spotifyなどのポッドキャストでも聴くことができる。
・ポッドキャストページ
緊張感がある数字の「8」の書き方
まず、リスナーから届いた文字に関するメッセージを紹介した。私の数字の「8」の書き方は、まず左半分を上から書いて、そのまま下から右半分を書いて、天辺で書き終える書法です。人前で8を書いているとすごく視線を感じます。
佐藤:僕は8のお団子ふたつ上と下、順番に書いていきますけど、このリスナーは逆の3を書いて、表の3を書いて8にするってことですね。へえ。
クリス:天辺で書き終えるってけっこう真んなかで合わないかも。
佐藤:これはリスクが高いですね。ちゃんと出会わなければいけない点が2回登場しますからね。
クリス:ちょっと空中ブランコ的ですよね。
佐藤:そうそう。それを2回やるんですよ。これは緊張感がある書き方だな。
クリス:いま書いてみると、毎回ちょっと違う8になってかわいいですけどね。あ、だんだんうまくなってくる。
佐藤:見てると動きがかわいいですね。
クリス:このリスナーは左から書くけど、私は左利きだから、右から書いたほうがやりやすい。
佐藤:ほんとだ!
クリス:ほら。
佐藤:なんでドヤ顔するの(笑)。
クリス:漢字とかだと書き順の個性ってありますけど、数字はシンプルなぶん、驚くというか。
佐藤:書き順を変えるだけで書いているときの印象がだいぶ変わるんですね。面白いですね。
発明家の発想から生まれた「パキッテ」
続いて、パキッテのデザインの話題に。パキッテは、ホットドッグなどを買ったときに付いてくる、ケチャップとマスタードが同時に出てくる容器だ。佐藤:(実物を手にして)これですよね。こんな真剣に見たのは初めてかもしれない。
クリス:これだけで見ることもないですよね。
佐藤:たしかに、単独では見ないものですよね。これ、パキッテっていうんですね。よくできてますよね。
クリス:真んなかに出し口があって片手でできて。
佐藤:これ、出口がある面に筋というか、ライン状のリブ(凹凸)がありますよね。これでこの面が硬くなって、てこの原理でパキッと折れるけど、ここが柔らかいとフニャってなってパキッと折れないんですよ。パキッとやるためには、ほかを硬くしなくちゃいけなくて、そのためのリブが4本ずつくらい入ってるんですけど、その4本のうち1本だけが内側に長くて、それが折れたときにストローみたいに飛び出すための口になるんでしょうね。これ、すごいですよ。リブでありながら注ぎ口になっていて。本当にすごい。あと、パキッと割れる口のところに技術があると思うんです。
ここで、パキッテの製造を手がける株式会社ディスペンパックジャパン経営企画部の平野さんから届いたコメントを紹介した。
平野:パキッテのアイデアは、アメリカ人の発明家による発想から生まれたと聞いています。高所での作業時にけがをした際に、片手で簡単に出る薬があればとても便利だという着想を得たことがきっかけだったそうです。このアイデアに共感した国内の商社と食品メーカーが共同で事業化を進めるため、合弁会社として私どもの会社を立ち上げました。アメリカのものは特許だけ取って、絵しかなかったようです。容器のアイデアのみがある段階のスタートだったものですから、製造する機械がなかったんですね。製造が安定するまでは2、3年はかかったと思います。アメリカでも機械の開発はしていたのですが、日本のほうが早く、私どもが最初に世の中に出させていただきました。
佐藤:面白い。アメリカの特許が先だったんですね。ただ、製品化できたのは日本が先だったと。
クリス:1987年に生産が開始されたそうです。もともとは医療用だったって、びっくり。
佐藤:何を入れようとしたんですかね。軟膏とか? それにしたら量が多いですよね。
クリス:ふたつっていうと、片方に消毒液と……。でも、一気に出ても困るか。
世の中に浸透するまでには時間がかかった
パキッテのもともとの商品名は「ディスペンパック」だったが、より覚えやすいように2019年から「パキッテ」に変更。いまではコンビニなどで定番となったパキッテだが、世の中に浸透するまでには少し時間がかかったという。平野:最初はドレッシングとかを入れて出させていただきました。当時としては常識を超えたもので、画期的な容器ではあったんですね。当然ながら、みなさん使い方がわからないので「これ、どうやって使うんだ」みたいな声も多く聞きましたし、そのときは普及しきれませんでした。その後、トマト・マスタードなど大手チェーン店やコンビニエンスストア、学校給食などで徐々に採用が広がり、認知度が上がり、いまではほぼみなさんが知っている状態になりました。おそらく慣れた人からすると直感的で楽しく使えるんじゃないかなと。パキッと気持ちよく折れるというのが、この容器の利便なのかなと思っています。
クリス:たしかに、気持ちよさがありますよね。
佐藤:最初はどう使っていいかわからない感じだったんですね。それでいうと、割れる面が同じ色ですけど、ここを境に割れるんだよってわかるように2色で塗り分けたりすると。
クリス:いま、改善してます(笑)?
佐藤:割れるものなんだってもう一段階わかるかなって。もうひとつは持ち方ですよね。野球でいうストレートみたいな。人差し指と中指と親指の3本の指で持つのであれば、持ちたくなるくびれとか。そういうのがあると、ここを持つのかなってなるかもしれないですね。
クリス:それは右利き、左利き関係なくユニバーサルですもんね。
一般の容器とは構造が逆転 製造の裏側は…
パキッテの構造の秘密について、平野さんはこうコメントする。平野:一般的な容器は、底の部分が硬くてふたが柔らかいフィルムですが、一方でパキッテはその構造が逆転しています。ふたが硬くて内容物が入っている底が柔らかい。この特殊な構造は、指で折り曲げた際にふたがパチンと破断して出し口ができるという大きな役割があります。
また、平野さんは構造が逆転しているふたのフィルムがちょうつがいの役割も果たすのだと語る。
平野:ちょうつがいのようにきれいに折り曲がっていきますが、その裏にある柔らかいフィルムはきれいに絞り出せる。そういうものを高い精度で多くの数をシールしてトリミングするのが非常に難しい技術でした。この製品を最後にトリミングするときに、通常は薄い側から刃を入れて、最後に硬いところを切るという機械の設計があるんです。しかし、パキッテの場合はまったく逆転していますので、硬いほうから刃を入れて最後に柔らかいフィルムを切るというのは、実は非常に難しくてなかなか切りきれないというトラブルがあったと聞いています。
佐藤:すごいですね。いまの説明を聞いて思ったんですけど、どうやって(内容物を)詰めているんですかね。普通は器のほうが硬くてふたが柔らかい。だから硬い器の中にマスタードとかケチャップを入れて、柔らかいふたをシーリングするイメージがあるんですけど。柔らかい袋に入れるのって難しそうですよね。その状態の上に硬いふたをシーリングするのも難しそうですよね。
クリス:たしかに。言われると謎がまた深まりますね。
「パキッテ界の新星」に驚き
スタジオには、パキッテの製造を手がける平野さんから送られたさまざまなパキッテが届き、ふたりは興味津々の様子。#パキッテ はケチャップ&マスタードだけではなく
— HEBEL HAUS CREADIO (@creadio_813) November 22, 2025
イチゴ&バター風味クリームやつぶあんなど
種類もたくさん!
コンビニやスーパーでも売っているので
是非、手に取ってみてください🏪
株式会社ディスペンパックジャパンの平野さん
ご協力いただきありがとうございました🙏!#creadio813 #jwave pic.twitter.com/eQfzv3T1k4
佐藤:粒あん、出ますかね。
クリス:これは出し口が大きめですね。
佐藤:(実際に試してみると)ダムが決壊するように大量の粒が。気持ちいいな。一生やってられるやつですね。
現在、製造されているパキッテの形状は、出し口がだけでおよそ10種類。もっと細かく分類すると20種類以上にもなる。先ほどの粒あんのように具材が大きいものに対して大きく開く出し口のタイプ「マルチ」や、トマトソース×マスタードなどの2種類を同時に出すタイプ「ツイン」、また1種類の「シングル」もあるという。
佐藤:さっきのマスタードで気付いたんですけど、グッと使い切ったときに微妙に垂れちゃうかなって思ったんですよね。口のところに残ってるケチャップとかマスタードがいるかなって。でも、手を離すとさっきのちょうづがい、てこの原理で袋がむしろ膨らむのでひゅっと最後、液体を引き込むんですよ。
クリス:よくできてる。
佐藤:すごいですね。
クリス:手が汚れませんからね。
佐藤:面白いな。すごいデザインですね。
平野さんからは、「パキッテ界の新星」として卵かけご飯(TKG)用のしょうゆだれと卵ソースのパキッテ「秒でどこでもTKG!?卵かけ風ご飯のたれ」も送られた。
佐藤:卵としょうゆがなくても、これひとつで解決。でも、そもそもしょうゆも卵もないのに卵かけご飯を食べたいと思ってること自体が、どれだけ社会に対して甘えているか(笑)。米しかない分際なんですよね。
クリス:これからヒマラヤに登りたいと思っているのかもしれないじゃないですか(笑)。
佐藤:アウトドアでご飯は持って行けるけど卵は持っていけないとか。
クリス:あとは、卵が高かったりしてなかなか買えないときとか。これまではどちらかというとパンとかスパゲッティとか洋食のものが多かったみたいですけど、こういうご飯ものも出てきたそうです。
佐藤:気になりますね。
『HEBEL HAUS CREADIO』は、世界的デザイナーである佐藤オオキとクリス智子の軽快なトークで、デザインの奥深い魅力をお届けする。放送は毎週土曜17時から。ポッドキャストでも配信中。
番組情報
- HEBEL HAUS CREADIO
-
毎週土曜17:00-17:54