俳優/アーティストの片桐 仁が、自身のアート活動やその魅力を語った。また、全盲の美術鑑賞者/写真家の白鳥建二とともに、葛飾北斎の作品を言葉とともに堪能した。
この内容をお届けしたのは、10月26日(日)放送のJ-WAVE『J-WAVE SELECTION TOKYO ART ODYSSEY』(ナビゲーター:中田絢千)。作品を「見る」だけでなく、音や言葉、記憶を通して「感じる」。あなたの五感に静かに触れる特別プログラムだ。
radikoでは、2025年11月2日(日)28時ごろまでタイムフリー機能で楽しめる。
その一環として、10月10日(金)から13日(月・祝)まで、東京・天王洲運河一帯で開催された国内最大級のアートフェスティバル「MEET YOUR ART FESTIVAL 2025」で、J-WAVEナビゲーターの中田絢千が、俳優/アーティストとして活躍する片桐 仁をゲストに迎え、公開収録を行った。
中田:「MEET YOUR ART FESTIVAL 2025」の展示はご覧になられましたか?
片桐:はい。すごいエネルギーというか、人がこんなにアートフェスティバルに来るっていうのが、まずすごいなって。アーティストの方もいらっしゃるし、「いまの日本のアートはこうなってますよ」っていうのを普段アートに触れない人も参加できてる感じがして、すごくいいですね。
中田:アーティストのみなさんは、さまざまな創意工夫をされていましたよね。
片桐:作品の近くにアーティストがいるっていうのはすごくいいですよね。
中田:片桐さんも観に行かれたときにアーティストの方とコミュニケーションは取られるほうですか?
片桐:ちょっと恥ずかしいので、人がいっぱいいるときは話を聞けないときもあるんですけど、やっぱりアーティストがしゃべると「ああ、そうなんだ!」ってすごく思うというか。美術館に行くと、100年前に描かれたゴッホの絵を観てもゴッホとはしゃべれないわけじゃないですか。「これはこういう絵だと思う」って想像して美術館の人としゃべるのでもいいんですけど、描いたり作ったりした本人がいるっていうのは特別。いま、我々が体験できるよさだと思いますね。
中田:いま、片桐さんがお持ちのiPhoneカバーもご自身でお作りになったんですよね?
片桐:これは「キャワイーフォン」(CatwaiiPhone)ですね。
中田:こういった作品は美大時代から作られていたんですか?
片桐:美大時代に日光江戸村に行って、おもちゃの水戸黄門の印籠を買ったんですよ。その紋所のマークがシールで「剥がしたら何かできるかな?」ってことで、紋所に顔(の造形)を付けたんですよ。それがウケて。
中田:思いつきから生まれたんですね。
片桐:そうです。粘土も彫刻でひとつの作品を作るのも面白いんですけど、何かに粘土を盛るとウケるんですよね。あと、これの何がすごいかって、コミュニケーションツールになるんですよ。
中田:「これ、なんですか?」って。
片桐:そうです。初めて会った俳優さんとか監督とか、そういう人たちとしゃべるきっかけになって。世界中どこ行ってもウケますから。だから、持ち運ぶってところもアートなんだなって実感しましたね。
アート制作と俳優活動を並行して行っている片桐にとって、それぞれにおいて共通している点や、まったく異なると感じる点はどんなところだろうか。
片桐:全然違うのは、こういったもの作りはひとりでやってるってことですよね。一方で、ドラマは俳優がひとりいてもできないですから。監督がいて、カメラマンがいて、照明がいて……みんなが作るなかのひとりなので、そういう被写体というか、ひとつの画材になるような気持ちよさはありますね。
中田:なるほど。舞台作品だとどうですか?
片桐:舞台は本番で同じことを何回もやりますし、誰かがセリフを間違えたとか、自分が噛んだとか、そういうときにみんなでリカバリーをし合う感じは面白いですよね。
中田:そういった、みんなでその日の正解を作ろうとする姿勢って、ちょっとアートとも似ているところがありますよね。
片桐:思いっきりアートだと思います。お客さまが目の前にいらっしゃって、その日、その場所の空気感があって、生のやり取りをするって面白いですよね。
中田:今後、片桐さんがやってみたいこと、たくらんでいることは?
片桐:アートフェスティバルみたいなものに、みんなでできるもので参加できないかなって。お呼びはかかってないですけど、言っていこうと思って。
中田:それこそ2026年の「MEET YOUR ART FESTIVAL」には片桐さんの作品があるかもしれないですね。
片桐:ワークショップもやれますし、粘土で壁画を描いたりとかね。
中田:続報に期待ですね。
片桐:僕が期待してますね(笑)。
【関連記事】片桐 仁が生み出す「不条理粘土アート」とは? 粘土を1000袋ほど使った経験も
ふたりを出迎えたのは、全盲の美術鑑賞者・白鳥建二。白鳥は視覚ではなく、一緒に鑑賞する方から聞いた言葉と、そこから想像する世界でアートを感じ取る美術鑑賞者だ。
白鳥:私は美術鑑賞会のナビゲーター役をやっていまして、作品の前で何人かで作品についていろいろ話しているうちに鑑賞したような気分になるっていう鑑賞会なんです。ここ数年は年に10〜20カ所くらいでナビゲーター役をさせてもらっているんですけど、元ネタは個人的な経験からきていて。もう30年くらい前の話なんですけど、20代半ばくらいのときに、そのころに付き合い始めた彼女が美術館によく行くって聞いて、美術館デートをしようと思ったんです。
片桐:そのころから全盲だったんですか。
白鳥:そうです。小さいころから目が見えなかったので。そうしたら、けっこう美術館の経験が楽しくて、これは試す価値があるなと思って。
そこから白鳥は、全盲の自分がひとりで美術館に行ったときに、何を楽しめるのかを模索し始めたという。
白鳥:美術館のいろいろな立場の人に一緒に館内を歩いてもらって、どういう作品なのか、そのときの感想や印象を話してもらったりとか、ガイドツアーに参加したりとか、音声ガイドを聴いたりとか、いろんなパターンを試していたんです。そのうちに、作品の目の前で単純に解説してもらうのではなく、作品を目の前にリラックスして自由に話してもらうのが気軽でいいなって思ったんです。
片桐:なるほど。
白鳥:そうしたら、一緒に歩いてくれる人たちが「これは見える人にとっても面白いから、ぜひ活動をやったほうがいい」と言ってくれて、それで見える人・見えない人が一緒に鑑賞する鑑賞会が2000年くらいから始まりました。
片桐:もう25年くらいやられてるんですね。
中田:すごい化学反応ですね。
白鳥:いまは、ひとつの作品の前で20分とか30分かけて作品を鑑賞するんですけど、時間をかけるっていうのもまたいいんですよ。
中田:参加者の方に投げかける質問とかってあるんですか。
白鳥:最近、僕は黙ってるんですよ(笑)。そのときの掛け合わせが(参加者同士で)どうなるかっていうのを待ったほうがいいなって気づいてきたので、今日も僕はそんなにしゃべらないです。
片桐:ちょっと緊張してきましたね(笑)。
中田:作品名は『椿説弓張月』(ちんせつゆみはりづき)。
白鳥:あの……普段、鑑賞会をやるときは最初にタイトルを読むのはやめておこうって提案しているんですよ。
中田:なんと(笑)!
白鳥:理由は、タイトルを見ると、そういう気分になっちゃいますよね。それは悪くはないけど、せっかく作品の前でなんでもかんでもしゃべれる機会なので。
中田:たしかに。最初にタイトルを知るとちょっともったいないですね。
仕切り直して、3人は目の前の北斎の絵と向き合う。
中田:けっこう大きな作品ですね。
片桐:実際は本のサイズで、それを拡大したのが壁に映ってる感じですね。
中田:あ、そうか。
片桐:4×3メートルの壁画のように見えるんだけど、実際はB5サイズ見開きくらいの本の挿絵ですね。
白鳥:それ、大きくしても大丈夫っていうのもすごいですね。
中田:これはどんな作品なのか、私と片桐さんが言葉にしていきましょう。
白鳥:しゃべりたいことをしゃべってもらうのがいちばんいいですね。
片桐:すごい力を感じますね。
中田:真ん中に人がいるんですけど、その人がニヤリとしている感じがするんですけど。
片桐:お坊さんみたいな人がでっかい鈴みたいなのを座って鳴らした瞬間に、たくさんの人がバーッと放射状に飛ばされているみたいな。
中田:私は逆にその人に向かって引き寄せられていると思いました。まわりにいる人たちもなかなか強面ですよね。その人たちはそのお坊さんみたいな人を狙っているのかな。
片桐:弓で狙っている人もいるし。
中田:でも、笑って、お祭り騒ぎしてる人も見えるし。
片桐:これ、どういう場面なんだろう。
北斎の絵を前に中田と片桐の考察はますます深まり、尽きることのない議論が続く。あっという間に30分が過ぎたところで、中田は白鳥に感想を尋ねる。
中田:白鳥さん、私たちの話を聞きながらの美術鑑賞はいかがでしたか?
白鳥:よかったですね。たぶん、北斎の絵はチラッとは誰かと一緒に観たことはあったんですけど、浮世絵をこんなにしっかり鑑賞したことがなかったので。(ふたりの話を聞いて北斎の)奇才ぶりがすごく印象的でしたね。
中田:私と片桐さんの会話で印象的だった言葉ってありましたか?
白鳥:たぶん、中心にいるお坊さんみたいな人の呼び名が会話のなかでちょっとずつ変わってきたんですよ。
中田:そうだったかも。
白鳥:最後のほうはまとまってくるんですけど、そういうのが僕としてはワクワクポイントで、どこに落ち着くのかなって。登場人物の役どころも、まわりに吹っ飛んでる人たちの話はどこまでいくのかなとか。ほかの映画でもドラマでも小説でも、細かい設定を知りたくなるときと、あんまり知り過ぎるとちょっと詰まっちゃうときと、あると思うんです。どこまで話が進むのかなっていうのは、毎回楽しみにしていますね。
中田:先がわからないこそ面白いんですよね。
白鳥:そうですね。あと、ゴールを決めないっていう。ゴールを決めなくても楽しめるポイントはいっぱいあるわけで。細かくわかって楽しめることも当然あるし、細かくわからないけど楽しめるっていうこともあって、どっちがいいとか悪いとかってことでもない。
片桐:観る人によりますもんね。
白鳥:だから、いつも話がどこにいくのか、どこまでいくかっていうのが楽しみで、今日もそうでしたね。
白鳥との鑑賞を終えて、中田は感想を口にする。
中田:私はこれまでわりと美術館に行ったり作品を鑑賞したりしてきたほうだと思うんですけど、なんとなく「作者の意図をわからないといけない」という気持ちがどこかにあったなって今日、片桐さんと白鳥さんとお話をして思いました。
片桐:誰しもあると思いますよ。
中田:どちらかと言うと「わからないね」「どうなんだろう」って言い合えて、「でも、好きだな」とか「ちょっと苦手だな」と思えること自体が豊かなことかなって思いましたね。
片桐:自分は何が好きなんだろう、苦手なんだろうとかね。
中田:そうそう。あらためて自分の価値観とかものの見方に出会う。同時に、片桐さんや白鳥さんの言葉に「なるほど」って。その相互作用が美術鑑賞と身近にあるって初めて知りました。
片桐:これは、ほかではなかなか経験できないですよね。
■「HOKUSAI-ぜんぶ、北斎のしわざでした。展」公式サイト
片桐 仁の最新情報はトゥインクル・コーポレーションの公式サイトまで。
白鳥建二の最新情報はX公式アカウント(@kenkenshiratori)まで。
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この内容をお届けしたのは、10月26日(日)放送のJ-WAVE『J-WAVE SELECTION TOKYO ART ODYSSEY』(ナビゲーター:中田絢千)。作品を「見る」だけでなく、音や言葉、記憶を通して「感じる」。あなたの五感に静かに触れる特別プログラムだ。
radikoでは、2025年11月2日(日)28時ごろまでタイムフリー機能で楽しめる。
エネルギーを感じるアートフェスティバル
J-WAVEでは、2025年9月24日(水)から11月9日(日)まで、「聴く」だけにとどまらない、感覚をフルに刺激する秋のキャンペーン「TOKYO ART ODYSSEY – 研ぎ澄ませ! 五感 –」を実施。その一環として、10月10日(金)から13日(月・祝)まで、東京・天王洲運河一帯で開催された国内最大級のアートフェスティバル「MEET YOUR ART FESTIVAL 2025」で、J-WAVEナビゲーターの中田絢千が、俳優/アーティストとして活躍する片桐 仁をゲストに迎え、公開収録を行った。
中田:「MEET YOUR ART FESTIVAL 2025」の展示はご覧になられましたか?
片桐:はい。すごいエネルギーというか、人がこんなにアートフェスティバルに来るっていうのが、まずすごいなって。アーティストの方もいらっしゃるし、「いまの日本のアートはこうなってますよ」っていうのを普段アートに触れない人も参加できてる感じがして、すごくいいですね。

片桐:作品の近くにアーティストがいるっていうのはすごくいいですよね。
中田:片桐さんも観に行かれたときにアーティストの方とコミュニケーションは取られるほうですか?
片桐:ちょっと恥ずかしいので、人がいっぱいいるときは話を聞けないときもあるんですけど、やっぱりアーティストがしゃべると「ああ、そうなんだ!」ってすごく思うというか。美術館に行くと、100年前に描かれたゴッホの絵を観てもゴッホとはしゃべれないわけじゃないですか。「これはこういう絵だと思う」って想像して美術館の人としゃべるのでもいいんですけど、描いたり作ったりした本人がいるっていうのは特別。いま、我々が体験できるよさだと思いますね。

<公開収録の様子>
アート制作と俳優業は似ている?
片桐は、多摩美術大学絵画科版画専攻を卒業。在学中に小林賢太郎とともにコントユニット・ラーメンズを結成。現在は俳優のほか、粘土造形家としても知られ、全国で作品展も行っている。中田:いま、片桐さんがお持ちのiPhoneカバーもご自身でお作りになったんですよね?
片桐:これは「キャワイーフォン」(CatwaiiPhone)ですね。

片桐:美大時代に日光江戸村に行って、おもちゃの水戸黄門の印籠を買ったんですよ。その紋所のマークがシールで「剥がしたら何かできるかな?」ってことで、紋所に顔(の造形)を付けたんですよ。それがウケて。
中田:思いつきから生まれたんですね。
片桐:そうです。粘土も彫刻でひとつの作品を作るのも面白いんですけど、何かに粘土を盛るとウケるんですよね。あと、これの何がすごいかって、コミュニケーションツールになるんですよ。
中田:「これ、なんですか?」って。
片桐:そうです。初めて会った俳優さんとか監督とか、そういう人たちとしゃべるきっかけになって。世界中どこ行ってもウケますから。だから、持ち運ぶってところもアートなんだなって実感しましたね。
アート制作と俳優活動を並行して行っている片桐にとって、それぞれにおいて共通している点や、まったく異なると感じる点はどんなところだろうか。
片桐:全然違うのは、こういったもの作りはひとりでやってるってことですよね。一方で、ドラマは俳優がひとりいてもできないですから。監督がいて、カメラマンがいて、照明がいて……みんなが作るなかのひとりなので、そういう被写体というか、ひとつの画材になるような気持ちよさはありますね。
中田:なるほど。舞台作品だとどうですか?
片桐:舞台は本番で同じことを何回もやりますし、誰かがセリフを間違えたとか、自分が噛んだとか、そういうときにみんなでリカバリーをし合う感じは面白いですよね。
中田:そういった、みんなでその日の正解を作ろうとする姿勢って、ちょっとアートとも似ているところがありますよね。
片桐:思いっきりアートだと思います。お客さまが目の前にいらっしゃって、その日、その場所の空気感があって、生のやり取りをするって面白いですよね。
中田:今後、片桐さんがやってみたいこと、たくらんでいることは?
片桐:アートフェスティバルみたいなものに、みんなでできるもので参加できないかなって。お呼びはかかってないですけど、言っていこうと思って。
中田:それこそ2026年の「MEET YOUR ART FESTIVAL」には片桐さんの作品があるかもしれないですね。
片桐:ワークショップもやれますし、粘土で壁画を描いたりとかね。
中田:続報に期待ですね。
片桐:僕が期待してますね(笑)。
【関連記事】片桐 仁が生み出す「不条理粘土アート」とは? 粘土を1000袋ほど使った経験も

対話しながら作品を楽しむ“新しい美術鑑賞”
トークセッションを終えた片桐と中田は、東京・八重洲にある美術館・CREATIVE MUSEUM TOKYOで開催中の、浮世絵師・葛飾北斎の作品を集めた「HOKUSAI-ぜんぶ、北斎のしわざでした。展」(11月30日(日)まで)を訪れた。ふたりを出迎えたのは、全盲の美術鑑賞者・白鳥建二。白鳥は視覚ではなく、一緒に鑑賞する方から聞いた言葉と、そこから想像する世界でアートを感じ取る美術鑑賞者だ。

片桐:そのころから全盲だったんですか。
白鳥:そうです。小さいころから目が見えなかったので。そうしたら、けっこう美術館の経験が楽しくて、これは試す価値があるなと思って。
そこから白鳥は、全盲の自分がひとりで美術館に行ったときに、何を楽しめるのかを模索し始めたという。
白鳥:美術館のいろいろな立場の人に一緒に館内を歩いてもらって、どういう作品なのか、そのときの感想や印象を話してもらったりとか、ガイドツアーに参加したりとか、音声ガイドを聴いたりとか、いろんなパターンを試していたんです。そのうちに、作品の目の前で単純に解説してもらうのではなく、作品を目の前にリラックスして自由に話してもらうのが気軽でいいなって思ったんです。
片桐:なるほど。
白鳥:そうしたら、一緒に歩いてくれる人たちが「これは見える人にとっても面白いから、ぜひ活動をやったほうがいい」と言ってくれて、それで見える人・見えない人が一緒に鑑賞する鑑賞会が2000年くらいから始まりました。
片桐:もう25年くらいやられてるんですね。
中田:すごい化学反応ですね。
白鳥:いまは、ひとつの作品の前で20分とか30分かけて作品を鑑賞するんですけど、時間をかけるっていうのもまたいいんですよ。
中田:参加者の方に投げかける質問とかってあるんですか。
白鳥:最近、僕は黙ってるんですよ(笑)。そのときの掛け合わせが(参加者同士で)どうなるかっていうのを待ったほうがいいなって気づいてきたので、今日も僕はそんなにしゃべらないです。
片桐:ちょっと緊張してきましたね(笑)。
作品名は最初に読まない、その理由は?
早速、中田と片桐は白鳥と一緒に、「HOKUSAI-ぜんぶ、北斎のしわざでした。展」のある作品を一緒に鑑賞することに。
白鳥:あの……普段、鑑賞会をやるときは最初にタイトルを読むのはやめておこうって提案しているんですよ。
中田:なんと(笑)!
白鳥:理由は、タイトルを見ると、そういう気分になっちゃいますよね。それは悪くはないけど、せっかく作品の前でなんでもかんでもしゃべれる機会なので。
中田:たしかに。最初にタイトルを知るとちょっともったいないですね。
仕切り直して、3人は目の前の北斎の絵と向き合う。
中田:けっこう大きな作品ですね。
片桐:実際は本のサイズで、それを拡大したのが壁に映ってる感じですね。
中田:あ、そうか。
片桐:4×3メートルの壁画のように見えるんだけど、実際はB5サイズ見開きくらいの本の挿絵ですね。
白鳥:それ、大きくしても大丈夫っていうのもすごいですね。
中田:これはどんな作品なのか、私と片桐さんが言葉にしていきましょう。
白鳥:しゃべりたいことをしゃべってもらうのがいちばんいいですね。
片桐:すごい力を感じますね。
中田:真ん中に人がいるんですけど、その人がニヤリとしている感じがするんですけど。
片桐:お坊さんみたいな人がでっかい鈴みたいなのを座って鳴らした瞬間に、たくさんの人がバーッと放射状に飛ばされているみたいな。
中田:私は逆にその人に向かって引き寄せられていると思いました。まわりにいる人たちもなかなか強面ですよね。その人たちはそのお坊さんみたいな人を狙っているのかな。
片桐:弓で狙っている人もいるし。
中田:でも、笑って、お祭り騒ぎしてる人も見えるし。
片桐:これ、どういう場面なんだろう。
あらためて自分の価値観や、ものの見方に出会えた

中田:白鳥さん、私たちの話を聞きながらの美術鑑賞はいかがでしたか?
白鳥:よかったですね。たぶん、北斎の絵はチラッとは誰かと一緒に観たことはあったんですけど、浮世絵をこんなにしっかり鑑賞したことがなかったので。(ふたりの話を聞いて北斎の)奇才ぶりがすごく印象的でしたね。
中田:私と片桐さんの会話で印象的だった言葉ってありましたか?
白鳥:たぶん、中心にいるお坊さんみたいな人の呼び名が会話のなかでちょっとずつ変わってきたんですよ。
中田:そうだったかも。
白鳥:最後のほうはまとまってくるんですけど、そういうのが僕としてはワクワクポイントで、どこに落ち着くのかなって。登場人物の役どころも、まわりに吹っ飛んでる人たちの話はどこまでいくのかなとか。ほかの映画でもドラマでも小説でも、細かい設定を知りたくなるときと、あんまり知り過ぎるとちょっと詰まっちゃうときと、あると思うんです。どこまで話が進むのかなっていうのは、毎回楽しみにしていますね。
中田:先がわからないこそ面白いんですよね。
白鳥:そうですね。あと、ゴールを決めないっていう。ゴールを決めなくても楽しめるポイントはいっぱいあるわけで。細かくわかって楽しめることも当然あるし、細かくわからないけど楽しめるっていうこともあって、どっちがいいとか悪いとかってことでもない。
片桐:観る人によりますもんね。
白鳥:だから、いつも話がどこにいくのか、どこまでいくかっていうのが楽しみで、今日もそうでしたね。
白鳥との鑑賞を終えて、中田は感想を口にする。
中田:私はこれまでわりと美術館に行ったり作品を鑑賞したりしてきたほうだと思うんですけど、なんとなく「作者の意図をわからないといけない」という気持ちがどこかにあったなって今日、片桐さんと白鳥さんとお話をして思いました。
片桐:誰しもあると思いますよ。
中田:どちらかと言うと「わからないね」「どうなんだろう」って言い合えて、「でも、好きだな」とか「ちょっと苦手だな」と思えること自体が豊かなことかなって思いましたね。
片桐:自分は何が好きなんだろう、苦手なんだろうとかね。
中田:そうそう。あらためて自分の価値観とかものの見方に出会う。同時に、片桐さんや白鳥さんの言葉に「なるほど」って。その相互作用が美術鑑賞と身近にあるって初めて知りました。
片桐:これは、ほかではなかなか経験できないですよね。
■「HOKUSAI-ぜんぶ、北斎のしわざでした。展」公式サイト
片桐 仁の最新情報はトゥインクル・コーポレーションの公式サイトまで。
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この記事の放送回をradikoで聴く2025年11月2日28時59分まで
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番組情報
- J-WAVE SELECTION TOKYO ART ODYSSEY
-
2025年10月26日(日)22:00-22:54
-
中田絢千
