©真藤順丈/講談社 ©2025「宝島」製作委員会

映画『宝島』に捧げた妻夫木 聡の覚悟、広瀬すずが表現した“太陽のような存在”─大友啓史監督が制作秘話を語る

映画『宝島』の大友啓史監督が、同作の撮影エピソードを語り、主演を務めた妻夫木聡もコメント出演した。

大友監督が登場したのは、J-WAVEの新番組『MIDDAY LOUNGE』。グローバルなルーツを持つ国際色豊かなナビゲーターたちが、「新しい自分、新しい世界と出会う旅」へと誘う3時間のプログラムだ。ナビゲーターは、月曜 ハリー杉山、火曜 市川紗椰、水曜 クリス・ペプラー、木曜 ジョン・カビラが担当。

「PICK OF THE DAY」のコーナーでは、各曜日のナビゲーターの個性に特化した特集をお届け。ここでは、10月2日(木)にオンエアした内容をテキストで紹介する。

アメリカ統治下の沖縄で生きる若者たちを描く

木曜の「PICK OF THE DAY」では、ナビゲーターのジョン・カビラがいま注目すべきトピックを多角的な視点でチェック。今回は、戦後の沖縄を舞台にした映画『宝島』にフォーカスした。

戦後沖縄を舞台に、史実に記されてこなかった真実を描いた真藤順丈の傑作小説『宝島』。第160回直木賞をはじめ、山田風太郎賞、沖縄書店大賞を受賞し三冠を達成した本作が、東映とソニー・ピクチャーズの共同配給で実写映画化された。

監督は『龍馬伝』『るろうに剣心』シリーズなどで知られる大友啓史。主演に妻夫木聡、共演に広瀬すず、窪田正孝、永山瑛太ら豪華キャストが集結。日本に見捨てられ、アメリカに支配された戦後沖縄。混迷の時代を駆け抜けた“戦果アギヤー”と呼ばれる若者たちの生き様を、圧倒的熱量とスケールで描く。

【本予告】 映画『宝島』9月19日(金)公開

ジョン:太平洋戦争で日本の領土が陸上戦の舞台となった沖縄。敗戦後、日本と分割されます。終戦から1972年までアメリカによって統治されますが、映画では1952年からの20年間の沖縄を描いています。米軍基地から盗んだ物資を住人に分け与える“戦果アギヤー”の群像劇で始まる『宝島』ですけども、公開から2週間が経ちます。ご覧になったみなさんから、どんな声が届いているのでしょうか?

大友:あの時代の沖縄を知らなかった方からの「こんなことがあったんだ」という反応が、まず大きいです。歴史ものではありますが、直木賞を受賞したエンターテインメントでもあるので、「思った以上に楽しんだ」というお声もいただいてますね。

ジョン:大友さんはNHK連続テレビ小説『ちゅらさん』で沖縄と向き合いました。ですが、そちらはファミリードラマでしたので、『宝島』とはまったく違うものでしたね。原作も含め、『宝島』の物語のどんなところに強く惹かれたのでしょうか?

大友:『ちゅらさん』の主人公は、沖縄が本土復帰した日に誕生した“復帰っ子”だったんです。撮影では沖縄の人の優しさと強さの両方を感じることが多くて、それはきっと、復帰前の歴史とつながっているんだろうって想いがずっとあったんですよ。

大友監督は、アメリカ統治下の出来事や、戦争の過酷な体験を沖縄の人々が背負っていることを実感し、いつか『ちゅらさん』の舞台となる時代より前の沖縄を描きたいと考えていた。

大友:17年ぐらいそんな想いを抱いて作品を探していて、2019年に原作と出会った感じですね。

ジョン:エンターテインメントに落とし込む時代背景には暗く重い部分もあります。ただ、そのなかにも沖縄の息づくスピリットがあるんですよね。

大友:僕が原作で惹かれた部分はそこなんですよね。とても大変な時代、日本は高度経済成長のいちばんいい時期だったんだけど、逆に沖縄の人たちはいろんな不条理に苦しんでいた。そこで粘り強く、たくましく生きていた若者たちの姿は、いまの時代に伝える意味があると思ったんですよね。

主演・妻夫木聡が『宝島』出演に込めた想い

ここで番組では、映画『宝島』で主演を務めた妻夫木のコメントをオンエア。作品の舞台となった沖縄への想いが語られていた。

妻夫木:映画『涙そうそう』のときにできた親友たちがいて、プライベートでも沖縄に遊びに行くようになったんですが、僕はどこか、あたたかい沖縄の土地と人たちに甘えていた部分があったなと、節々に感じていたんです。あるとき、沖縄のカフェにいて、戦闘機がワッと通って、親友から「妻夫木、これが沖縄よ」と言われたんですね。ハッとしましたし、僕はどこか見て見ぬふりをしてきたんじゃないかという想いがありました。沖縄に対してやり残したことがある、もっと向き合わないといけないことがあると、ずっと思っていたんですよね。そんななか、『宝島』のオファーをいただいたので、僕としては“運命”だと思いましたし、自分に課せられた使命だと感じました。この映画を観て、なにか行動を起こせとはまったく思わないし、自分のなかで起こった感情がその人なりの答えだと思うので、素直にその感情のままに従ってほしいなと思います。誰しもに、宝って、確実にあると思うんです。その宝を感じてほしいし、希望ある未来をこの映画を通して見つめ直していくのは、すごく重要なことだなと思いましたね。

妻夫木のコメントを聞き終えたジョンは、大友監督に感想を求める。

ジョン:妻夫木さんのコメントでした。大友さん、どのような想いですか?

大友:彼はずっとブレませんね。そのベースには、自分のしっかりとした思いがある。やると決めたら、心も体もこのプロジェクトに捧げる、その覚悟がすごいですよね。とても心強いパートナーです。

ジョン:他の出演者のエピソードもお聞かせいただけますか?

大友:広瀬すずさんは唯一の20代で、僕は「太陽のようにいてほしい」とお願いしたんですね。太陽は曇りで陰るときもあるけど、いつも世界の中心にいるわけです。広瀬すずさん演じるヤマコはまさにそんな存在で、男たちを強く引っ張り、泣きながら立ち上がって、様々な出来事とど真ん中で向き合う、大事な役でした。広瀬さんは僕のオーダーを、とてもうまく咀嚼してやってくれたと思います。

作品のリアリティを徹底的に追求

コロナ禍による二度の撮影延期を乗り越え、企画から6年をかけて完成した『宝島』。大友監督は「逆に言うと準備期間が増えたというか、俳優たちはいろんなことに備えてくれて、プロジェクトがどんどん強くなった」と振り返る。

大友:2025年は戦後80年だし、なんだか導かれたような気がします。

ジョン:沖縄での撮影期間が40日以上あったそうですね。

大友:2カ月弱かな。沖縄はみなさんが思っている青い海、青い空だけじゃなくて、いきなり土砂降りになることもあるんですよ。晴れたから撮影しようと思ったらまた雨が降ったりね(笑)。お天道様の声を聞きながら、それって沖縄に宿る先祖の心だったりするのかなと、そういうことを感じながらの撮影でした。

ジョン:いろいろなインタビューで「リアリティの追求も大きなテーマだった」とおっしゃっていましたね。1952年から72年の再現、これは大変だったんじゃないですか?

大友:そうですね。たとえば、江戸時代だったらいろんなところにセットが残っているんですけど、アメリカ統治下の沖縄って本当にないんですよ。辺野古の近くにある、当時の飲食街の建物の躯体を借りて、そこを美術で飾って、看板も全部手描きで作ったりもしました。細かいところで手がかかる題材ではありましたね。

ジョン:車も50台ほど太平洋を渡ってきたんですよね?

大友:そうそう(笑)。あの時代のアメリカの象徴といえば音楽と車ですからね。逆に言うと、1台車を通りに置くとあの時代に戻れるんですよ。アメリカとか韓国からけっこうなお値段の車を購入して、最後はひっくり返して燃やすわけです。そうやって、あの時代の沖縄の方々の、なぜそういう行動に向かったのかも含めて、リアルに表現したいという想いがありました。

ジョン:加えて、かなりのリサーチと現地の方への取材を行ったんですよね。

大友:そうですね。僕ら本土の人間がしっかり伝えたいという想いがありました。代わりに、と言うのは恐縮ですけれども、伝えなければいけないメッセージがいっぱいあると思いましたね。

ジョン:いまは、アテンションスパンが数十秒という時代です。小さな画面を見て、エンタメを経験されている方々に、どう訴えますか? (上映時間は)3時間11分……!

大友:沖縄の20年の重さっていうのを思うと、やっぱり3時間はかかります。あの時代の彼ら彼女らのいろんな想いっていうのを、我々が体感して知るのに、決して3時間というのは長い尺ではない。いろんな技術を尽くして、楽しんで、ハラハラドキドキしながら、沖縄のあの時代を追体験していただける作品になっています。

J-WAVE『MIDDAY LOUNGE』のコーナー「PICK OF THE DAY」は、それぞれのナビゲーターの個性に特化した特集をお届けする。放送は月曜~木曜の15時25分ごろから。
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2025年10月9日28時59分まで

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番組情報
MIDDAY LOUNGE
月・火・水・木曜
13:30-16:30

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