世界も注目、とろける「佐賀牛」誕生40周年! “艶さし”など魅力を堪能する料理&トークイベントをレポート

提供:佐賀県


ブランド誕生40周年を迎えた佐賀牛。その魅力をコース料理とトークショーで発信するイベント「佐賀牛 40th Anniversary ~Saga Beef meats NEIGHBORS~」が2024年10月29日、神奈川県・横浜市山下町のイタリアンレストラン「SALONE2007」にて、昼の部・夜の部の2部構成で開催された。ここでは、昼の部の模様を写真とテキストで紹介する。

A5ランクのサーロインにランプ肉も…全10品目のコース料理を紹介

佐賀県の肥沃な大地と清らかな水によって育まれた最高級ブランド和牛・佐賀牛。色鮮やかな赤身にきめ細かく刻まれた“さし”(脂肪)が織りなす霜降りは、大理石さながらの美しさから「艶さし」と呼ばれ、日本のみならず世界中の食通を魅了してやまない。審査基準は厳しく、(社)日本食肉格付協会の肉質等級規格に定められた最高肉質である5~4等級、かつ脂肪交雑(BMS値)12段階中の7以上をクリアした選りすぐりの和牛だけが佐賀牛と名乗ることができる。

そんな佐賀牛が1984年のブランド発足から今年で40年を迎えた。この節目の年を祝うとともに、ブランドの魅力を発信するべく、山下公園にほど近い人気イタリアンレストラン「SALONE2007」で開催された本イベント。昼の部・夜の部合計40名の参加者に、この日限りのコース料理が振る舞われたほか、イベントをプロデュースした世界NO1.フーディの浜田岳文さん、同レストランの弓削啓太シェフ、JAグループ佐賀肥育牛部会 部会長で株式会社山口畜産代表取締役を務める山口伸彦さんの3名に、J-WAVEナビゲーターのクリス智子が話を聞くトークショーも行われた。

コースは全10品目。白トリュフの香りを付けたジャガイモをブランデーでフランベした佐賀牛A5ランクのサーロインで巻いた「佐賀牛 A5サーロインのスピエディーノ」、に始まり、「佐賀県産 鯖のマリナート クレマ ディ ズッカ」、「佐賀県産 牛レバーとポレンタ」、「佐賀県産 紅葉鯛のヴァポーレ」と、佐賀県の食材を贅沢に使用した料理が続く。

そこから「トンナレッリ インサルサ ~世界大会のパスタ~」、「佐賀県産 牛タンのクッキアイオ レフォールと杜松」、「ファゴッティーニ 佐賀牛のラグー」を経て、ほど良い脂と肉らしい旨味を両立したメインディッシュの「佐賀牛ランプ肉のロースト」へと至る。最後は「和梨のコンポート」「洋ナシのタルト」と2つのデザートで締めくくられた。コースを通しての特徴は、味わいが繊細さと複雑さを併せ持つこと。あらゆる旨味を、佐賀牛のとろける食感や甘さが包みこんでいるような食べ心地だった。

どこに行っても“馴染む”─佐賀牛は佐賀県民に似ている!?

全員がコース料理を堪能し終えたところで、トークショーが開始。司会のクリスが「皆さん、おいしかったですね!」と声をかけると、20名のゲストは拍手で応えた。

まずは、料理を担当した弓削シェフが「メインのお肉をいかに楽しんでいただくか、流れを考慮してコースを作りました」と解説を始めた。

弓削:一品目の「佐賀牛 A5サーロインのスピエディーノ」は、感動体験を一発目にということで、最初にグッと心を掴むことを意識しました。柔らかなサーロインのお肉で、テンションを上げていただくイメージですね。そこから前半~中盤にかけて飽きがこないよう多彩な味の料理を用意し、メインディッシュには、肉を信じてシンプルな味付けの「佐賀牛ランプ肉のロースト」をお出ししました。このように、最後の最後までワクワクが続き、より良い状態でメインに至れるようコースを設定しました。

かくいう弓削シェフも実は佐賀県の出身。地元が生んだブランド牛の魅力について、「佐賀牛は佐賀県民みたいな感じ。僕を含め、どこに行っても馴染んでしまう(笑)。そんな、佐賀県民らしさが出ているお肉と言えるかもしれません」と、様々な料理と相性が良いことを挙げた。さらに、故郷のPRに繋がる企画でシェフを務めたことに「佐賀県を出てから『いつか故郷に錦を飾りたい。そのために僕ができることは何なんだろう?』と考えながら日々やってきました。なので今回は、佐賀県に少しでも還元できたらいいなという気持ちで料理を作らせていただきました」と思いを口にした。

今回のイベントで弓削シェフに白羽の矢を立てたのが、浜田さんだ。浜田さんはもともと、東京・横浜・大阪でイタリアンレストランを展開するSALONEグループ統括料理長の樋口敬洋さんと付き合いがあり、同グループの大阪・中之島の店舗「リストランテ クイントカント」で弓削シェフが腕を振るっていた数年前から、その味に確かな信頼を置いていたそう。また、弓削シェフの出身が佐賀であることも認識しており、本イベントの話が来た時から「料理をお任せするのにぴったりだ」と思っていたと振り返る。

浜田:ぴったりだと思ったのは、弓削さんが佐賀出身であることはもちろん、佐賀牛を料理に取り入れる上で、イタリアンが最適だと踏んでいたからです。イタリア料理はすべての部位を使い切る意識が高く、現代的に言えばサステナブル。異なる部位の特色を存分に活かしてくれそうだと考えました。それに、カジュアルではない高級レストランにあたる「リストランテ」で料理をするとなると、イタリアン以外あり得ないと思ったので、弓削さんにお願いすることにしたのです。

「和牛」は世界の食通も注目

そもそも、世界の食通の間で「和牛」は今どのように捉えられているのか。美食を求めて世界約127カ国・地域を踏破した経験から、グローバルな食のトレンドを知る浜田さんは、「現在、日本食が世界で高く評価されていますが、食材として特に認知されているのが和牛です」と説きます。

浜野:和牛には、『さし』と呼ばれる網状の微細な白い脂肪が入っています。このさしによって、赤身の柔らかさとともに、くちどけの良さが楽しめるわけですが、ヨーロッパをはじめとした他国の牛肉とはまったく似ていません。そういった希少で良質な食材が日本にあることを幸運に思います。そして、海外の市場で出回っている和牛は九州産のものが比較的多く、その中でも佐賀牛は人気であるため、その存在感は今後さらに高まっていくことでしょう。

「食べ手のリテラシー」も重要

「近所に住む後輩の牧場で育った牛のランプ肉だったので、身近な佐賀牛で良かったです」と言うのは山口さん。生産者目線から、佐賀牛のおいしさの秘訣を語ってくれた。

山口:ちょうど今、佐賀平野では稲刈りが行われています。佐賀県の畜産農家では、安全な地元の稲わらを飼料にしたいというこだわりから、収穫をした後に残る稲わらを確保し、佐賀牛に食べさせているんです。あとは、牛のエサを食べる量が落ちたら色々な栄養剤を与えたりもしています。牛はしゃべることができないので、まるで我が子を見るかのように牛の気持ちに寄り添い、状態を察知して適宜対応しています。

佐賀の生産者に愛情をもって育まれて40年。今や日本全国のみならず世界へ羽ばたく佐賀牛だが、作り手も伝える側も見据えるのは10年、20年先の未来だ。最後に山口さんと浜田さんに佐賀牛の今後の展望について、思いを語ってもらった。

山口:40周年を迎えられたのは、先輩たちのおかげです。とはいえ40周年はあくまで通過点。佐賀県の畜産農家では現在、若手が着実に育っています。私自身、先輩たちから受け継いだ技術や魂を後輩たちに受け継ぎ、50周年、60周年を迎えたいと思っています。また本日、弓削シェフのおかげで様々な顔の佐賀牛を知ることができ、佐賀牛を今まで以上に活かせるのではないかと可能性を感じました。ですので、今日体験したことを佐賀に戻って後輩や周りの関係者に伝えていきたいと思います。

浜田:生産者さんが作る食材の良し悪しは、食べ手のリテラシーに掛かっていると考えていて。良い肉は良い。良くない肉があるとすれば、「もっとこうだったらいいのに」と、食べ手が何を評価しているのかを発信していく。そのようにして、良い肉とはどんな肉かという価値観をみんなで考えて作っていければ、生産者さんは必然的により良い牛肉を作ってくれるし、和牛の評価も世界でもっと上がっていくと考えています。

(取材・文=小島浩平、撮影=竹内洋平)

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