ピアノニスト・角野隼斗が、ボルチモアで印象的だった演奏会のエピソードを語った。
内容をお届けしたのは、J-WAVEで放送中の番組『ACROSS THE SKY』(ナビゲーター:小川紗良)のコーナー「TOKYO TATEMONO MUSIC OF THE SPHERES」。このコーナーでは、角野隼斗が、音楽を通したさまざまな“出会い”をもとに、楽曲とトークをお届けする。10月27日(日)のオンエアをテキストで紹介。
角野:ボルチモアとはワシントンDCの近くで、フィラデルフィアとDCのあいだくらいにある町です。ニューヨークからもそんなに遠くはなくて、東京と大阪ぐらいの距離な気がします。非常に歴史の古い町で、星条旗の歌詞が生まれたことなんかでも有名です。近年はわりと治安が悪い都市としても知られていて、「どんな感じなんだろう」と思ってたんですけど、 港付近は再開発が進んでいて、少し散歩した感じもとても綺麗でございました。ボルチモアはシンフォニーオーケストラと、そして指揮者のマリン・オルソップさんとショパンのピアノ協奏曲2番を演奏しまして、3日間ぐらいありましてね。2日がボルチモアで、1日だけはDCに行ってやったんですが、とってもよいコンサートでありました。
コンサートでは現地の人々が数多く訪れた。ニューヨークとは異なり、ボルチモアはアジア人の数が少なかったと角野は振り返る。
角野:アメリカは聴衆の方々もすごくアクティブに反応してくれるんですね。違いを感じておもしろいなと思ったりもしました。学校とかもあるんでそれなりにはいると思うんですけれども、ニューヨークと違ってボルチモアはアジア人もそんなに多くないんですよね。バックステージではアメリカ人に囲まれて話す場面が多いんですけども、やっぱり体格も大きいですし、英語っていうのもあるけど、ちょっと萎縮しちゃうんです。自分では何の気なしに話してると思っていても、自信の度合いが日本にいるときよりもなかったりする。口を手で隠していたりしたので、あんまりよくないな、自信を持たなきゃなと思ったんです。
堂々とした振舞いを意識しながらステージに入った角野だったが、そこで予想外の出来事があったという。
角野:お辞儀をして、座って、ジャケットのボタンを外して、ふと下を見たら、ズボンのチャックが開いていましてですね。めちゃくちゃ自信を持って入ったのにチャックが開いていたと思って、またそこで自信をなくしたんですけど、(そこから演奏する)ショパンのコンチェルト2番っていうのは非常に繊細なコンチェルトでありますから、そんなに自信を持って弾くような音楽でもないんですね。だから、それはそれでちょうどよかったのかもしれないです。
角野はショパンの二番の二楽章について解説する。
角野:ショパンのコンチェルトは2曲ありまして、実は1番よりも2番のほうが先に作曲されてるんですね。ショパンはどういうわけか、あとに作曲したほうを1番と名前をつけて最初に出版してるんですけど、2番は1番以上にショパンの繊細さが表れています。当時恋心を抱いていたコンスタンツィヤという女性へのラブレターのようなものだと、ショパン自身が言っていることもあったんですね。ですので、この曲は200年前のラブソングですね。ショパンが20歳頃の作品です。
角野:先週はボルチモアにいましたが、先々週は大阪にいまして。大阪で関西フィルと、藤岡幸夫さんという指揮者と菅野祐悟さんの新作のピアノコンチェルトを初演するというコンサートがありました。クラシックは昔の曲を演奏するというイメージがあると思いますし、もちろんそれが主流なんですけれども、なかには現代の作曲家が現代の音楽家のために書いた新しい曲をコンサートで演奏するということもあるんですね。そういうときは、我われ演奏者もお客さんも知らない、新しい何かに出会うワクワク感というのがあります。
関西フィルハーモニー管弦楽団の第350回定期演奏会では、菅野による書き下ろしのピアノ協奏曲が披露された。
角野:菅野祐悟さんという、劇伴の世界でもっとも有名な1人と言っても過言ではない方に、僕のためにピアノコンチェルトを書いていただきまして。とても壮大で新しい響きもあり、おもしろいのがピアノだけじゃないんですよね。僕がよく使っているトイピアノと、ピアノのなかの弦を直接ミュートして特殊な音を出すっていう内部奏法があるんですけど、そういう普段では使わないようなセットも取り組んだ曲を書いていただきまして、大変素晴らしい機会でした。いつか、それがどこかで流れるときもあるかもしれないので、そのときは楽しみにしていただけたらと思います。
角野:ドビュッシーのとても有名な曲ですけども、あえて僕はアップライトピアノで演奏しました。僕あまり知らなかったのですが、月の光って本当に明るいんですよ。このあいだモロッコにミュージックビデオの撮影に行ったのですが、人工的な光が何もないところに、満月の光だけが照らされていたんです。
砂漠を照らす月の光を間近で観測した角野は、改めて月の明るさを体感できたと話す。
角野:明るいと言っても、それは太陽の光が月に反射してさらされているだけなんですよね。それなのにこれだけ明るいっていうのはすごいことだなと思ったりしました。そんな明るい間接光の雰囲気が『月の光』にはとてもよく現れているなと思い、今回のアルバムのテーマが宇宙ということもありまして、月にちなんだこの曲を収録で演奏してみました。11月3日の放送は「『Human Universe』リリース直後のオンエアということで、アルバムの制作エピソードやアルバムのお話を、たくさん曲をかけながら話していこうと思います。
『ACROSS THE SKY』のワンコーナー「TOKYO TATEMONO MUSIC OF THE SPHERES」では、角野隼斗が音楽を通したさまざまな“出会い”をもとに選曲と語りをお届けする。オンエアは11時30分頃から。
内容をお届けしたのは、J-WAVEで放送中の番組『ACROSS THE SKY』(ナビゲーター:小川紗良)のコーナー「TOKYO TATEMONO MUSIC OF THE SPHERES」。このコーナーでは、角野隼斗が、音楽を通したさまざまな“出会い”をもとに、楽曲とトークをお届けする。10月27日(日)のオンエアをテキストで紹介。
2024年11月3日28時ごろまで
ボルチモアでショパンのピアノ協奏曲第2番を演奏
2023年4月より東京とニューヨークの2拠点生活で活動する角野。先日は、アメリカ合衆国のメリーランド州にある都市・ボルチモアのコンサートにてピアノ演奏をおこなった。角野:ボルチモアとはワシントンDCの近くで、フィラデルフィアとDCのあいだくらいにある町です。ニューヨークからもそんなに遠くはなくて、東京と大阪ぐらいの距離な気がします。非常に歴史の古い町で、星条旗の歌詞が生まれたことなんかでも有名です。近年はわりと治安が悪い都市としても知られていて、「どんな感じなんだろう」と思ってたんですけど、 港付近は再開発が進んでいて、少し散歩した感じもとても綺麗でございました。ボルチモアはシンフォニーオーケストラと、そして指揮者のマリン・オルソップさんとショパンのピアノ協奏曲2番を演奏しまして、3日間ぐらいありましてね。2日がボルチモアで、1日だけはDCに行ってやったんですが、とってもよいコンサートでありました。
コンサートでは現地の人々が数多く訪れた。ニューヨークとは異なり、ボルチモアはアジア人の数が少なかったと角野は振り返る。
角野:アメリカは聴衆の方々もすごくアクティブに反応してくれるんですね。違いを感じておもしろいなと思ったりもしました。学校とかもあるんでそれなりにはいると思うんですけれども、ニューヨークと違ってボルチモアはアジア人もそんなに多くないんですよね。バックステージではアメリカ人に囲まれて話す場面が多いんですけども、やっぱり体格も大きいですし、英語っていうのもあるけど、ちょっと萎縮しちゃうんです。自分では何の気なしに話してると思っていても、自信の度合いが日本にいるときよりもなかったりする。口を手で隠していたりしたので、あんまりよくないな、自信を持たなきゃなと思ったんです。
堂々とした振舞いを意識しながらステージに入った角野だったが、そこで予想外の出来事があったという。
角野:お辞儀をして、座って、ジャケットのボタンを外して、ふと下を見たら、ズボンのチャックが開いていましてですね。めちゃくちゃ自信を持って入ったのにチャックが開いていたと思って、またそこで自信をなくしたんですけど、(そこから演奏する)ショパンのコンチェルト2番っていうのは非常に繊細なコンチェルトでありますから、そんなに自信を持って弾くような音楽でもないんですね。だから、それはそれでちょうどよかったのかもしれないです。
角野はショパンの二番の二楽章について解説する。
角野:ショパンのコンチェルトは2曲ありまして、実は1番よりも2番のほうが先に作曲されてるんですね。ショパンはどういうわけか、あとに作曲したほうを1番と名前をつけて最初に出版してるんですけど、2番は1番以上にショパンの繊細さが表れています。当時恋心を抱いていたコンスタンツィヤという女性へのラブレターのようなものだと、ショパン自身が言っていることもあったんですね。ですので、この曲は200年前のラブソングですね。ショパンが20歳頃の作品です。
新たな音楽と出会える“クラシックの初演”
続けて角野は、大阪の関西フィルのコンサートに参加したエピソードを語った。角野:先週はボルチモアにいましたが、先々週は大阪にいまして。大阪で関西フィルと、藤岡幸夫さんという指揮者と菅野祐悟さんの新作のピアノコンチェルトを初演するというコンサートがありました。クラシックは昔の曲を演奏するというイメージがあると思いますし、もちろんそれが主流なんですけれども、なかには現代の作曲家が現代の音楽家のために書いた新しい曲をコンサートで演奏するということもあるんですね。そういうときは、我われ演奏者もお客さんも知らない、新しい何かに出会うワクワク感というのがあります。
関西フィルハーモニー管弦楽団の第350回定期演奏会では、菅野による書き下ろしのピアノ協奏曲が披露された。
角野:菅野祐悟さんという、劇伴の世界でもっとも有名な1人と言っても過言ではない方に、僕のためにピアノコンチェルトを書いていただきまして。とても壮大で新しい響きもあり、おもしろいのがピアノだけじゃないんですよね。僕がよく使っているトイピアノと、ピアノのなかの弦を直接ミュートして特殊な音を出すっていう内部奏法があるんですけど、そういう普段では使わないようなセットも取り組んだ曲を書いていただきまして、大変素晴らしい機会でした。いつか、それがどこかで流れるときもあるかもしれないので、そのときは楽しみにしていただけたらと思います。
広大な砂漠で月の光を浴びる
10月30日(水)、角野は世界デビューアルバム『Human Universe』をリリースする。発売に先駆け、番組では未配信のアルバム収録曲『月の光』をオンエアした。角野:ドビュッシーのとても有名な曲ですけども、あえて僕はアップライトピアノで演奏しました。僕あまり知らなかったのですが、月の光って本当に明るいんですよ。このあいだモロッコにミュージックビデオの撮影に行ったのですが、人工的な光が何もないところに、満月の光だけが照らされていたんです。
砂漠を照らす月の光を間近で観測した角野は、改めて月の明るさを体感できたと話す。
角野:明るいと言っても、それは太陽の光が月に反射してさらされているだけなんですよね。それなのにこれだけ明るいっていうのはすごいことだなと思ったりしました。そんな明るい間接光の雰囲気が『月の光』にはとてもよく現れているなと思い、今回のアルバムのテーマが宇宙ということもありまして、月にちなんだこの曲を収録で演奏してみました。11月3日の放送は「『Human Universe』リリース直後のオンエアということで、アルバムの制作エピソードやアルバムのお話を、たくさん曲をかけながら話していこうと思います。
放送開始から2024年11月10日28時ごろまで
radikoで聴く
2024年11月3日28時59分まで
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番組情報
- ACROSS THE SKY
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毎週日曜9:00-12:00