吉岡里帆が「本当に最高」と感激した、『情熱大陸』ナレーションとは? 窪田 等が“声で伝えるポイント”を語る

ナレーター・窪田 等(くぼた・ひとし)が、印象的だった『情熱大陸』の収録エピソードや、自身のYouTubeチャンネルの活動について語った。

窪田が登場したのは、J-WAVEで放送中の番組『UR LIFESTYLE COLLEGE』(ナビゲーター:吉岡里帆)。9月15日(日)のオンエア内容をテキストで紹介する。音声は23日までradikoで楽しめる。また、その後はポッドキャストで配信し、全国で再生可能となる。

『情熱大陸』でお馴染みにナレーターがゲストに登場

窪田 等は1951年、山梨県生まれ。高校卒業後、大手情報通信企業の技術職を経て、ナレーターへ転身。以降、『情熱大陸』(TBS系)をはじめ、テレビ、ラジオなどの各媒体でドキュメンタリー、情報バラエティ、CMなどあらゆるジャンルのナレーションで活躍している。

吉岡:来ていただけて、とても光栄です。

窪田:こちらこそ。吉岡さんとどんなお話ができるのかと楽しみにしておりました。

吉岡:絶対にラジオでお会いしたいと思っていました。同じブースであのお声を聞けたらこんなに幸せなことはないなと。

窪田:どうでした(笑)?

吉岡:すごく今、耳が幸せです。窪田さんといえば、毎週日曜に放送される『情熱大陸』。こちらは1998年にスタートして以来、26年担当されていらっしゃいます。

窪田:長いですよねえ。1,300回を超えましたからね。

吉岡:驚きです。ブースに来ていただいて感動したのが、ミキサーさんに「よろしくお願いします」と頭を下げていらっしゃったことです。

窪田:僕らは普段の仕事柄ディレクターさんとは戦ったりしますけども、ミキサーさんは味方につけないと(笑)。声の調子のトーンをかえていただけますから。それこそ50年ぐらい昔に「ミキサーさんとは絶対に喧嘩をするな。ツマミ1つでお前の声なんかどうにでもなる」と言われたことがあるんですよ(笑)。今でもその思いは変わらないです。

声だけで伝えるために重視すること

ナレーションの仕事に携わることもある吉岡は、窪田から“声だけで伝えること”で重視するポイントを聞いた。

窪田:声だけというのはやはり制限がありますからね。声の持っている力とか、あるいは表現力など、響きがものすごく大事になるわけです。私たちが気を遣うのは、文章の内容です。区切り方1つでも違ってくるから、どういう風に伝えたらいいだろうか、もっと言えば作家さんがどういう思いで書いたのか、その文章をどのように伝えたらいいかをまず考えます。点の打ち方で意味合いが変わりますからね。

吉岡:全然違いますよね。

窪田:ですから、わからないことはしっかりと確認をして喋っていく、ということをやっています。

吉岡:読む側がしっかりと(内容を)理解していないといけないという点にすごく共感しました。もちろん、言葉は書いてあるのでその通りに言ったらお客様に伝わるんですよね。でも、どのように伝わってどのように伝わるべきなのかを考えていくということを、どんなにベテランの方も必ず大事にされているんだなと感じました。

窪田:常に仕事の第一がそれですね。台本を読み、まず「これはどういうことなんだろう?」と画を想像しながらやります。何の抵抗もなくスーッと内容が入っていくようなナレーションができたら最高だなと思いますね。

吉岡:もう、すでにそうですよ!

窪田:なかなか難しいんです(笑)。

吉岡:スタッフさんとは普段どんなやり取りをされるのでしょうか?

窪田:テレビの番組だとバラエティとか情報系はそのままポンポンと録っていくんですよ。台本を見たらすぐに録ります。ただ、特に僕がレギュラーでやっているドキュメンタリーの場合は、頭から全部見せてもらうんですよ。それで内容を理解する。その前の下読みの段階から「これはどういう意味だろう」というのがあればディレクターに聞くと「映像を観たらわかりますよ」と言われるので、それを観たら納得。「これでいける、わかりました」って感じですね。

映像にもっとも適した形で声を届けたい

吉岡は窪田の印象的なナレーションとして、 2010年に『情熱大陸』で放送された画家・石井一男の回を挙げた。

吉岡:女神を描いていらっしゃる画家さんの回ですね。

窪田:あれはすごかった。

吉岡:映像では、取材に行かれた石井さんが1人、影絵で遊んでいらっしゃった。ディレクターさんは台本に「石井一男は影絵で遊んでいた」と書いていたと。ですが、窪田さんは「“石井一男は”を取ってもらえますか」とおっしゃったそうですね。この話が本当に興味深いです。

窪田:と言いますのも、邪魔じゃないですか。「石井一男は影絵で遊んでいた」と言うと、ちょっと距離感がありますよね。「影絵で遊んでいた」と言うと、ちょっと近付くじゃないですか。

吉岡:全然違います。急に近くなりました。

窪田:僕はそういう風に表現したかったんです。ディレクターに取っていいですかと聞くと、さらに「窪田さん。“遊んでいた”だけでやってくれる?」と。

吉岡:このやり取りが痺れます!

窪田:そうなると、もっと近くにいかないといけない。単に「遊んでいた」と言ってもいいのでしょうけれど、自分としてはそれだけじゃつまらないなと思って調整したんです。
その場の情景が想像できる「遊んでいた」のナレーションに、吉岡は声を弾ませて喜んだ。

吉岡:うわ、痺れる! 本当に最高です。

窪田:言葉の響きによって伝え方が違うんですよね。

吉岡:おこがましいんですけど、私もデビューしてからナレーションの仕事をさせてもらっていて。読み方の語尾をほんのり明るくしたり、こちらの感情が乗る瞬間を自分の耳で聞いた瞬間、「お客さんに伝えられるかもしれない」と希望が見えたことがあったんですね。この仕事はなんて楽しいのだろうとそのとき思いました。それってやっぱり、レジェンドの窪田さんたちが築いてこられた“丁寧な仕事”を、子どもの頃から聞いてきたからなんだろうなって感じました。

窪田:そうおっしゃっていただけるとすごく嬉しいです。そこまでの意識はないですけどね(笑)。ただ、「こういう風に表現したい」という(思いがある)。「こういう風に言えば伝わるだろうか」「ここは優しく言いたいな」とか、そういうことを考えながら読んでいるので、そのシチュエーションに一番合った読み方を模索しています。

週に1本朗読をYouTubeで公開

窪田は自身のYouTubeチャンネル「窪田等の世界」にて、毎週1本朗読を配信している。

吉岡:名作を朗読されているんですけども、本当に素敵です。収録は大変ではないですか?

窪田:大変で苦しくてしょうがないです(笑)。

吉岡:なぜご自身にムチを打ってやられているんですか(笑)。

窪田:苦しんだけれども、「さあ読まなきゃ」と思うんです。毎週ずっとやっていて欠かしていないんですけど、そろそろ危ないです(笑)。

吉岡:すごいですね。

窪田:やっぱり自分って文章を声に出して音にすることが好きなんだなと、つくづく感じましたよ。仕事で散々やっているのに、家に帰っても朗読して自分で録音していますから。義務感もあるんですけど、きっかけが「何か世の中の役に立ちたい」でしたからね。話は遡るんですけど、東日本大震災のときにナレーターとして役に立つことができないかということで、YouTubeのラジオ番組を作ったんです。内容はプロの作家さんに書いていただきましたけども、心が温かくなるようなものだったんですね。そういったことを以前にやっていたんです。

コロナ禍、何か力になれればと考えた窪田は「窪田等の世界」をスタートさせたという。

窪田:当時、まん延してはいけないということで、あろうことか『情熱大陸』が自宅でリモート録音になったわけです。自宅にマイクがあるというのは、それが初めてのことだったんですよ。マイクがあるから何かできないかなと考え、それで「青空文庫」という著作権フリーの著作物を読むなら問題ないだろうと思ったんです。(チャンネルを)管理してくれている人から「1週間に1本できる?」と聞かれたので「できるでしょう」とつい言ってしまってね(笑)。

吉岡:それでYouTubeが始まったんですね。いつ見ても新しい作品が窪田さんの声で聴けると思うだけでも、毎日の癒しになりますよね。

窪田:そう言っていただけると嬉しいです。苦労のしがいがありますね(笑)。

窪田 等の自宅の雰囲気をチェック

番組では、ゲストのライフスタイルに注目。窪田が書いた自宅の様子の絵を見ながら、吉岡はトークを進行した。

吉岡:半地下なんですか!?

窪田:そうなんですよ。上部に明かり取りがありますね。

吉岡:あえて半地下を選ばれたのでしょうか。

窪田:そうですね。そこを寝るところにして、仕事場にもなっています。

吉岡:なるほど、宅録ができる環境なんですね。プライベートでも音へのこだわりを感じます。

窪田:遮音まではやっていないんですけども、落ち着いた環境ですね。

吉岡:ライフスタイルにまつわることで好きなこと、苦手なことはありますか?

窪田:僕、お酒が飲めないんですよ。なのでYouTubeを夜中の2時とか3時までやることができるんですね。やっぱり体を動かすこととか外に出ることが好きで、釣りとかゴルフをします。

吉岡:いいですね!

窪田:それも犠牲になりましたけどね(笑)。

吉岡:YouTubeがありますからね(笑)。今日は窪田さんがお仕事をされる際の思いを聞けて、より一層大好きになりました。これから窪田さんがナレーションされている作品を見るとき、より輝いて見えるなと思いました。貴重なお話をありがとうございました。ラジオ、いかがでしたか?

窪田:意外と喋っちゃうもんですね(笑)。僕はとにかくナレーション原稿を喋るのが仕事だから、フリートークは苦手だなって意識があるんです。やっぱり、吉岡さんが振ってくださったり雰囲気のおかげですよ。近い感じでお話しできたので、こちらこそ本当に嬉しかったです。

吉岡:ありがとうございました!

『UR LIFESTYLE COLLEGE』では、心地よい音楽とともに、より良いライフスタイルを考える。オンエアは毎週日曜18時から。
radikoで聴く
2024年9月22日28時59分まで

PC・スマホアプリ「radiko.jpプレミアム」(有料)なら、日本全国どこにいてもJ-WAVEが楽しめます。番組放送後1週間は「radiko.jpタイムフリー」機能で聴き直せます。

番組情報
UR LIFESTYLE COLLEGE
毎週日曜
18:00-18:54

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