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THE YELLOW MONKEY 東京ドーム公演、「演出」は音楽をどう引き立てた? 映像作家・山田健人が明かす

THE YELLOW MONKEY 東京ドーム公演、「演出」は音楽をどう引き立てた? 映像作家・山田健人が明かす

映像作家、山田健人が、4月に行われたTHE YELLOW MONKEYの東京ドーム公演の演出について語った。

山田がトークを繰り広げたのは、自身がナビゲーターを務めるJ-WAVEで放送中の番組『THE PLAYBACK』。ここでは5月24日(金)のオンエア内容をテキストで紹介する。トーク音声は2024年5月31日28時ごろまで、radikoタイムフリー機能で再生可能。

2024年5月31日28時ごろまで

THE YELLOW MONKEYと山田健人の関係

THE YELLOW MONKEYは4月27日に東京ドームで「THE YELLOW MONKEY SUPER BIG EGG 2024 “SHINE ON”」を開催。山田がライブ演出を務めた。

動員人数制限がある中で行われた2020年11月の公演以来の同会場での開催となった。また、バンドとしての活動は2020年12月28日の日本武道館公演以来、3年半ぶりのライブだ。

山田:THE YELLOW MONKEYは2016年に再結成をされましたが、その後の最初の東京ドーム公演「THE YELLOW MONKEY SUPER BIG EGG 2017」のオープニングの部分だけライブ演出を担当したのがきっかけで。2019年のアリーナツアーや、一番近しいところだと2019年末から2020年11月まで、結局コロナで開催延期とかもあったんですけど、30周年のドームツアーにも関わっていたので、ずっとなんだかんだでお世話になっていて。その間、ミュージックビデオや配信ライブをいくつも監督したり、ボーカルの吉井和哉さんのソロもご一緒したりしました。

前回演出を手掛けたTHE YELLOW MONKEYのライブからはいくぶん年月が経ったことから「久々なので気合いが入った」と山田は明かした。

山田:今回のライブは、いわゆるレコ発みたいなことではなくて、ツアーでもなくて、THE YELLOW MONKEY×東京ドームと言えばこれでしょ、みたいなシリーズの1本で、セットリストややることなんかも王道中の王道というか。横綱楽曲も多くやって、このシリーズを楽しみにしているファンの方もきっといるんじゃないかというくらいのライブだったので、単純にワクワクしていました。

THE YELLOW MONKEYは「とにかくライブがすごい」

今回の東京ドーム公演の演出について山田が語り始める。

山田:今回はなぜ前回のライブから時間が空いたかというと、30周年のドームツアーを終えた後、ソロで活動をされていた中で吉井さんの病気があって、久しぶりのライブだったので、そういう部分の影響を受けたセットリストだったと思います。例えば、2、3曲やってからドラムのANNIE(菊地英二)さんとベースのHEESEY(廣瀬洋一)さんのセッションだったり、ギターのEMMA(菊地英昭)さんのソロの時間があったりするような、ゆったりとした(構成で)。いつもだと4、5曲やって、しかも走り回って転げ回ってっていうようなセットリストもあったと思うんですけど、3曲くらいに1回で曲間があったり、ドキュメンタリー映像を流したりするセットリストでいくという話にはなっていました。

山田は「それはポジティブなことだと思う」と振り返り、「メンバーの体力的な懸念があるということではないんですけど、新しいチャレンジっていうことですよね」と続ける。

山田:そういう意味では今まで以上に演出に対する負荷は多くかかったと言っても過言ではないと思っているというか。これもポジティブな話で、彼らはバケモノなんですよね。すご過ぎるから。パフォーマンスももちろん楽曲もいいし。そんなことを僕の口から出すのも大変おこがましいくらいの伝説的ロックバンドだと思うので。普段、照明やら映像やら、良い作用をしていることもたくさんあるとは思います。前回のドームツアーでやった『球根』の演出とか、いくつもTHE YELLOW MONKEYの楽曲に演出みたいな要素が加わることでもっと感動的で壮大なスケール感で、深いところで楽曲をお届けできている瞬間はありましたけど、それがなくたってライブとかも完璧ですし、とにかくライブがすごいんですよ。だけど、今回に関してはそういう思いのこもったライブで、それがネガティブではなく、ここから再出発だっていうニュアンスが伝わるようなMCや楽曲の選び方があったということは、観てくださった方は分かると思います。映像や照明、メンバーの立ち位置でライブをさらに良くしていく、それはライブ作りにおいては当たり前のことなんですけど、今回はもっと必然性があったと個人的には思っているので、緊張感はめちゃくちゃありました。

改修された東京ドームのオーロラビジョンも活用

いい意味で分かりやすいセットリストで、「今のTHE YELLOW MONKEYです」という感じだった、と山田は表現する。

山田:THE YELLOW MONKEYのドーム公演だと恒例の流れも含めて、例えば『悲しきASIAN BOY』や『JAM』、『ALRIGHT』、『LOVE LOVE SHOW』、『SPARK』、『ROCK STAR』など大箱映えするような楽曲はもちろんたくさんある中に、5月29日にリリースされる10枚目のアルバム『Sparkle X』から新しい楽曲が点在して入っているような感じなので、そういう意味では演出を考えやすかったというか。今回はステージの両サイドに主にカメラの絵が出るようなLEDと、ステージ中央奥に横に細長い作りのLEDが3段あって、それがモーターで上下するので、3つが1つに重なれば細長い一行のLEDにも見えるし、それが開くと正面から大きな1枚に見えるような感じの大きなLEDがあって。映像的にはすごく使いやすく、シーン的な変化、転換もあって、考えやすくやりやすいセットではありましたね。

ライブ開演前は、再結成後のTHE YELLOW MONKEYのライブの名物にもなるスタートまでのカウントダウン映像から始まり、そこから未発表の曲が流れ、観客が「なんだ、この曲は?」とざわつく中でメンバーが登場。『バラ色の日々』からライブがスタートした。

山田:まずお客さんに歌わせるという、すごくTHE YELLOW MONKEY的な粋な流れで始まり、そこから新曲の『SHINE ON』や有名曲にどんどんつながっていきました。前回の東京ドーム公演になかったのは、今、東京ドームのオーロラビジョンっていうんですか、客席の上に付いている、野球だと点数が表示されたりリプレイが流れたりするビジョンが改修されまして、めちゃくちゃデカくなったんです。それだけじゃなくて、リボンビジョンとよく言うんですけど、グラウンドと1階スタンド席の間とかにある外周をぐるっと回る細長いLEDも追加されていて、それも活用できるということでした。例えば『Tactics』や『天道虫』で、オーロラビジョンとこちらで用意したLEDのビジョンにすごい面数のカメラの映像を出したりも、初めてできたりして。おそらくアリーナ席の前のほうの人はちょっと観づらい部分があったかもしれないけど、スタンド席の人からするとすごく立体感があるというか。ドームに対してのステージって遠くに感じるんですけど、その大きなビジョンが頭上のほうに付いていることと、そこにメンバーの映像が出ることで、いい立体感や壮大さを出せたと思っています。

シンプルだけど迫力とカッコよさを両立できる演出になった

山田は今回のお気に入りの演出に、ライブの本編の最後に披露したニューアルバム収録の『ホテルニュートリノ』を挙げた。



山田:この楽曲からイメージできる、とある夜の街角のCGをこちらで用意して、その街角みたいなものがステージの後ろのLEDに建っているんですね。街角なので建物が何軒かあって、そこにネオンの看板がいくつもあって。その看板がこの曲の歌詞からインスパイアされたものや、THE YELLOW MONKEYのこれまでの楽曲のタイトルからインスパイアされたもので、ちゃんとオリジナルな街角にして。街自体はそこにあるんだけど、頭上にある大きなオーロラビジョンに星空を出したりしたんです。東京ドームに常設されている設備とこちらで用意した設備を一枚物として見せることも実はしていましたし、それがうまくいったなと思っています。

また、同アルバム収録の『ソナタの暗闇』の演出も解説する。



山田:我々が持ち込んだビジョン3面分を全部歌詞に使いました。歌詞全編の輪郭が最初から最後までステージ上に出ていて、それは一行ずつ丁寧に書かれているんじゃなく、この曲で言うと“ソナタの暗闇”ってワードや歌詞の一行、センテンスごとに区切ってランダムに配置されている感じで。その歌詞を歌うと、輪郭だけだった歌詞に色が付いて浮かび上がってくるような。最初は輪郭だらけの文字だったものが、塗り絵のように最後はぎっしり全部塗られるという。この手法は極めてシンプルだけど、すごく迫力とカッコよさを両立できるなって感じで、またやりたかったので今回やれてよかったです。しかもドームみたいなデカいところで。これは観ていただいたみなさんの記憶にもしっかり残っているんじゃないでしょうか。

立体感的に楽曲がより深みを増した

山田は、ライブ中に流れたドキュメンタリー映像についても言及した。

山田:吉井さんの喉の病気を克服してステージに戻るまでのリハーサルの映像や、メンバー含めたインタビューも混ざるような映像で。これは僕のベストフレンドのエリザベス宮地くんが吉井さんのこの4年間というか、ずっと追いかけていて。その宮地くんが録り溜めた映像の一部を編集していただいて、それを流して。その後に披露された楽曲が1997年にリリースの6枚目のアルバム『SICKS』に収録された『人生の終わり (FOR GRANDMOTHER)』でした。命の終わりに対する思いを歌ったような曲で、ドキュメンタリーの中でも吉井さんが、大きな病気を経験されたことで命や自分の人生に対する考え方がいい意味でも変わっていったっていう話が出てくるんですが、そういう部分にかなりリンクするような感じで。これがすごくよかったですね。演出がどうこうっていうことより、ドキュメンタリーとかがちゃんと必然性があるかたちできちんとライブの合間に流れたことは、ただシンプルにいい楽曲を聴いて盛り上がるだけじゃない、それが僕はTHE YELLOW MONKEYの魅力だとこれまでも思っていましたけど、すごく彼らの持つロックのいい奥行きというか、心にグッとくる瞬間が必ずあるような部分に確実になったと思います。

ライブはアンコールでニューアルバム収録の『復活の日』の映像が流れ、ライブが終わるという流れだった。

山田:この映像はライブの2週間前くらいに吉井さんだけ登場する映像を撮りたいですと言って、撮らせてもらった映像です。そもそも新曲なので吉井さん含めみなさんが「歌詞は出したいよ」というお話があって。ライブの最後に『復活の日』というタイトル通り、ここから再出発するというメッセージがすごく込められている楽曲なんですけど、それを音源として流そうと。歌詞だけ出ているのはどうか、みたいな議論があったんですけど、そこに歌っている吉井さんがまっすぐカメラを見つめたワンカットの絵があったらより良いんじゃないかと提案させてもらって、撮らせていただきました。この映像もすごく僕も気に入っていて。ライブで歌詞だけ出ていてもグッとくると思うんですけど、ドームのオーロラビジョンに歌詞が出ていて、こちらで用意したLEDに撮り下ろした映像が流れることで、楽曲がより立体的になり深みを増して伝わったかなと思っています。これもやってよかったと思っています。

山田健人の最新情報は、Xの公式アカウントまで。

『THE PLAYBACK』は、音だけでは完成しない世界で表現を続ける映像作家・山田健人が、音だけの世界=「ラジオ」でその頭の中に浮かんでいる世界や作品について言語化していく。オンエアは毎週金曜24時30分から。

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2024年6月1日28時59分まで

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毎週金曜
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