2019年にJ-WAVEのアジア専門音楽番組として誕生した『MUSIX ASIA』が、2023年春から、アジアの国々への「イメージトリップ」に誘う新プログラム『RINREI ASIAN SOUNDSCAPE』(毎週金曜 24:00~24:30)へとリニューアル。毎回アジアの様々な国をフィーチャーし、その土地の人々や文化などとの触れ合いをストーリーに仕立て、音楽とともにお届けする。
旅の水先案内人となるナビゲーターは、『MUSIX ASIA』に引き続き、シンガポールに縁を持つ俳優・金沢雅美が務める。5月5日の放送で訪れた旅先は、フィリピンの首都「マニラ」。ここでは、金沢の語りで展開された空想旅行の模様と、イマジネーションの旅に彩(いろどり)を添えた楽曲と併せてテキスト形式にて紹介する。
【これまでのイメージトリップはコチラ】
「そう、普段は他でも仕事をしてるんだけど、空いた時間にGrabで稼ぐんだ」
そんな会話を楽しんでいるうちに、スペイン統治時代の16世紀に建てられたマニラ最古の旧城壁都市「イントラムロス」の入り口へとたどり着く。南側にある分厚い石の門をくぐると、目の前に伸びるのは当時の面影を残す石畳の道。その上を観光馬車のカレッサが「パカ、パカ」と軽快に通り過ぎていく。
「蹄の音に時が巻き戻されるようだ」
過去に思いを巡らせるのであれば、第二次世界大戦下において、マニラが日本とアメリカの戦場となった苦い記憶も忘れてはならない。激しい戦闘の末、イントラムロスの壁や建物の多くは破壊されたが、時を経て再建され今に至る。
怒涛の歴史の中で犠牲になった多くの人たちに黙祷を捧げる。どんなに時代が移り変わっても、マニラに吹く風だけは変わらない。
「優しい風がそっと私の頰を撫でた」
金沢がそうつぶやくと、Ben & Benの「ARAW-ARAW」の情緒的なイントロが、南国の風のように熱っぽくしっとりと流れる。
「自転車での散策も気持ちがよさそうだが、ここはゆっくり石畳を歩きたい」
そんなわけで、ルナ通りを400メートルほど北に歩く。すると見えてきたのは、サン・オウガスチン教会だ。この教会は、1945年に起こったマニラ市街戦でも、石造りの姿をそのまま残すことができたことから、“奇跡の教会”と呼ばれている。
レリーフが美しい木製の扉に施されていたのは、司教・聖オウガスチンと母・モニカの繊細な彫刻。扉を開けると、金沢は「白を基調とした天井画が眩しい」と、その荘厳な美しさに思わず息を飲む、ここでかかるのは、女性シンガーMORISSETTEのナンバー「GUSTO KO NANG BUMITAW」。ピアノの音色と透き通るような歌声が、どこか讃美歌を思わせる。
中華街の活気を感じながらゆっくりと歩いているうちに、メインストリートであるオンピン通りの両端にある、ビノンド教会とサンタクルス教会が見えてきた。ここでは、中国とカトリックの文化が混ざり合っており、街角のキリスト像には、線香があげられ、菊の花が供えられている。
「いったいここのイエス様は何語を話すのだろうか?」
こんな素朴な疑問とともに流れるのは、フィリピン系オーストラリア人の女性シンガーYlona Garciaの楽曲「Dahan Dahan Dahan Lang」。南国リゾート感満載のウクレレが刻む陽気なリズムが、異国の不思議な文化に触れた時の楽しさを表現しているかのようだ。
「夕方の5時までには来たかった場所だ」
なぜなら通りの西側に広がるマニラ湾は、夕日の名所だから。諸説あるが、バリ島、釧路と合わせて、世界三大夕日の一つと言われている。
砂の上を歩くほどに近づく、押しては返すさざ波の音。空と海をオレンジ色に染めながら、大きな太陽が沈んでいく。南国の夕暮れ時は日本とはまた違った趣があり、その美しい景観は金沢を饒舌にする。
「マニラの太陽は熱く、沈んだ瞬間、『じゅ』と音がしそうだ」
最後のナンバーはNOBITAの「Ikaw Lang(あなただけ)」。心地よい歌声とメロディを聴きながら目を閉じれば、マニラ湾のサンセットビーチが自然と浮かんでくる。
(構成=小島浩平)
旅の水先案内人となるナビゲーターは、『MUSIX ASIA』に引き続き、シンガポールに縁を持つ俳優・金沢雅美が務める。5月5日の放送で訪れた旅先は、フィリピンの首都「マニラ」。ここでは、金沢の語りで展開された空想旅行の模様と、イマジネーションの旅に彩(いろどり)を添えた楽曲と併せてテキスト形式にて紹介する。
【これまでのイメージトリップはコチラ】
<ナビゲーターの金沢雅美>
16世紀に建てられた旧城壁都市「イントラムロス」へ
羽田空港からおよそ5時間。イマジネーションの旅は、ニノイ・アキノ国際空港に降り立つところから始まる。熱帯性気候特有のむわっとした熱気に包まれる中、東南アジアで人気の配車アプリ「Grab」を利用することに。待つことおよそ10分後。タクシーが到着し、ドアが開けば、カーラジオからフィリピンの陽気なポップスが聞こえてくる。ドライバーは若い男性。ふと車用のフォトフレームに飾られた、三人のちびっ子の写真に目がいく。「お子さんですか?」。そう尋ねると、運転手はハンドルを切りながら、こう答えた。「そう、普段は他でも仕事をしてるんだけど、空いた時間にGrabで稼ぐんだ」
そんな会話を楽しんでいるうちに、スペイン統治時代の16世紀に建てられたマニラ最古の旧城壁都市「イントラムロス」の入り口へとたどり着く。南側にある分厚い石の門をくぐると、目の前に伸びるのは当時の面影を残す石畳の道。その上を観光馬車のカレッサが「パカ、パカ」と軽快に通り過ぎていく。
過去に思いを巡らせるのであれば、第二次世界大戦下において、マニラが日本とアメリカの戦場となった苦い記憶も忘れてはならない。激しい戦闘の末、イントラムロスの壁や建物の多くは破壊されたが、時を経て再建され今に至る。
怒涛の歴史の中で犠牲になった多くの人たちに黙祷を捧げる。どんなに時代が移り変わっても、マニラに吹く風だけは変わらない。
「優しい風がそっと私の頰を撫でた」
金沢がそうつぶやくと、Ben & Benの「ARAW-ARAW」の情緒的なイントロが、南国の風のように熱っぽくしっとりと流れる。
竹製自転車「バン・バイク」で名所を巡るツアーが人気に
どこからともなく聞こえてくる自転車の車輪の音――。イントラムロスでは、遺跡を竹製自転車「バン・バイク」で巡る「エコツアー」が人気だ。とはいえ、せっかく訪れたマニラの名所。急いで通り過ぎる必要もない。「自転車での散策も気持ちがよさそうだが、ここはゆっくり石畳を歩きたい」
そんなわけで、ルナ通りを400メートルほど北に歩く。すると見えてきたのは、サン・オウガスチン教会だ。この教会は、1945年に起こったマニラ市街戦でも、石造りの姿をそのまま残すことができたことから、“奇跡の教会”と呼ばれている。
レリーフが美しい木製の扉に施されていたのは、司教・聖オウガスチンと母・モニカの繊細な彫刻。扉を開けると、金沢は「白を基調とした天井画が眩しい」と、その荘厳な美しさに思わず息を飲む、ここでかかるのは、女性シンガーMORISSETTEのナンバー「GUSTO KO NANG BUMITAW」。ピアノの音色と透き通るような歌声が、どこか讃美歌を思わせる。
画像素材:PIXTA
中国とカトリックの文化が混在するチャイナタウン
イントラムロスのパシッグ川を挟んで対岸に位置するのは、世界で一番古いと言われているチャイナタウンだ。威勢のいい露天商の声が響くこの街では、宝石店、家具屋、電器屋、金物屋、漢方薬局が軒を連ね、路地裏には果物や野菜の露店がある。中華街の活気を感じながらゆっくりと歩いているうちに、メインストリートであるオンピン通りの両端にある、ビノンド教会とサンタクルス教会が見えてきた。ここでは、中国とカトリックの文化が混ざり合っており、街角のキリスト像には、線香があげられ、菊の花が供えられている。
「いったいここのイエス様は何語を話すのだろうか?」
こんな素朴な疑問とともに流れるのは、フィリピン系オーストラリア人の女性シンガーYlona Garciaの楽曲「Dahan Dahan Dahan Lang」。南国リゾート感満載のウクレレが刻む陽気なリズムが、異国の不思議な文化に触れた時の楽しさを表現しているかのようだ。
旅の締めくくりに見たい、マニラ湾に沈む夕日
ロハス通りはマニラのメインストリート。市街地を南北に走る、交通量の多い賑やかな通りだ。「夕方の5時までには来たかった場所だ」
なぜなら通りの西側に広がるマニラ湾は、夕日の名所だから。諸説あるが、バリ島、釧路と合わせて、世界三大夕日の一つと言われている。
「マニラの太陽は熱く、沈んだ瞬間、『じゅ』と音がしそうだ」
最後のナンバーはNOBITAの「Ikaw Lang(あなただけ)」。心地よい歌声とメロディを聴きながら目を閉じれば、マニラ湾のサンセットビーチが自然と浮かんでくる。
(構成=小島浩平)
番組情報
- RINREI ASIAN SOUNDSCAPE
-
金曜24:00-24:30