Def Tech『My Way』大ヒットの裏で、Microが感じていたことは? SKY-HIが聞く

Def TechのMicroが、J-WAVEでSKY-HIと対談。Def Techのこれまでの歩みと思い、楽曲制作について語った。

Microが登場したのは、J-WAVEで放送中の番組『DIVE TO THE NEW WORLD』(ナビゲーター:SKY-HI)。オンエアは11月19日(土)。

Def Techは11月25日(金)にデジタルシングル『Save Me Tonight』をリリース。

再び『My Way』が注目を浴びた理由

まずはコロナ禍の活動から。SKY-HIはこの期間について「言葉は難しいけど、音楽活動にとって大事な時期になったという方も少なくなかった」と話す。

SKY-HI:その間に Def Tech『My Way』が15年以上ぶりにまたヒットするっていう。ちょうどSEKAI NO OWARIのFukaseくんと話をしたときに、「一発ヒットするっていうのは珍しい話ではないけど、2発目のヒットを作れる人は本当に少ないから頑張りたい」って話していて。SEKAI NO OWARIは『Habit』で再び大ブームを作ったんですけど。同じ曲でヒットするってものすごいですよね。

Def Tech - My Way / THE FIRST TAKE

Micro:時代がまたマッチしてっていうのもそうだし、よかったのは半分以上の歌詞が英語だから、リリース当時は理解されてなかったのも大きいなって思いますね。全部が日本語の詞だったらたぶん「ああ、もう知ってるよね」ってなるけど、10年経っても僕自身も相方のShenのリリックを理解してないし。

SKY-HI:あはは!(笑)

Micro:あいつも俺の歌詞を全然わかってないと思うし。音楽ってフィーリングとかグルーブで持っていっちゃうから。そう思ってたら15年経って字幕ついてる『THE FIRST TAKE』が公開されて「ここでShenはこんなこと言ってたんだ」って今俺らがわかるってことは、みんなが(ようやく)わかってくれだしたかっていうこともありますね。

SKY-HI:そういえば自分ももれなくその立場だったかもしれないです。

そんなDef Techの楽曲制作についてSKY-HIが「どういうふうに作られるんですか?」と質問した。

Micro:最近は詞が先ってなかなかなくて、曲先でビート作って、トラックメイカーの子にふってるデモとかを聴いたりしながら、その曲をShenとずっとループして聴きながらコミュニケーションを取って。今の時代に何を言うべきか、何を自分が言われたいのかってことをすごく話しながらすり合わせていって、僕らのメソッドじゃないですけど、1行目は英語、2行目は日本語ってすると、導入は洋楽に聴こえるけど、アウトロは邦楽に聴こえるっていう。飽きさせない英語と日本語のサビの分量を考えたりとか。

SKY-HI:Def Techってオリジナリティの強さをすごく感じるけど、それは自然にやってたら出るのか、Def Techのスタイルがメロディとかフロウにもあるんですかね。

Micro:僕ら自体、当時のクラブとライブハウスをずっとまわってるとき、深夜2時とかのライブで、BボーイたちBガールたちがわんさかいる中で、そこに海を持ち込みたかったんですよね。あの深夜帯のゴリゴリの人たちがいるクラブで自然を感じたり海を感じたりすることがサウンドでできるかってことはずっと意識していて。

SKY-HI:なるほど。

Micro:クラブでかかるいい曲と帰り道で自分が購入してまで聴きたい曲の差って何だろうって。眠りに就く前に聴いてほしいし、朝起きてから選ばれたいし。クラブではかからなくていいよなっていう分け方を当時はしてましたね。

SKY-HIは、Def Techは独特なハイブリッドさがあると表現する。

SKY-HI:Def Techはクラブミュージックとかラップミュージック、ブラックミュージックのバイブスとサーフな感じのハイブリッドさがすごく独特なんですかね。

Micro:うれしいです。本当にそれを狙ってますよね。デモを作っていても海を感じるのか、波の音をわざわざ入れなくても聴こえてくるかどうかっていうのはすごく気にしてたりしますね。

SKY-HI:腑に落ちることがたくさんありますね。

昔は『My Way』に抵抗感があった

Def Techは2001年に結成。2005年に大ヒットアルバム『Def Tech』をリリースした。

Micro:『My Way』が入っているこのアルバムは2001年にはできてたんです。それをうちの事務所の社長とかが「まだ君たちの出番じゃない」と。今はZEEBRAさんとかDragon Ashとか大先輩たちが黄金時代を築いている中で、でもそのシーンにはいて、下積みをずっとしながら、2年、3年、4年経ってもまだこのアルバム出さないんですかって。それでも「まだ君たちの番じゃない」って言われて。それでケツメイシさんが売れて、ああいうメロディラップが日本に定着し始めて「今だよ」って。でも4年経って何が今なんだろうって思ってて。

SKY-HI:なるほど。

Micro:もちろんメジャーとの契約もしたかったから、そういうところにもデモテープを持っていったけど、どこも手をつないでくれなくて。というか、まだ全然足りないなとか言われたり、目の前でデモテープを投げ捨てられたこともあったし。

SKY-HI:あの時代の音楽業界って感じですね(笑)。

Micro:それを目の当たりにして、ヒット直前にわっと寄ってきてくれたんですけど、じゃあ自主でやってみようと思って。その前にMONGOL800がインディーズでヒットしてたし、ELLEGARDENとかも当時ね。

SKY-HI:インディーズであの規模のヒットって、4年間費やしてきてよかったなって思えるレベルの快進撃だったのかなって思いますけど。

その一方で、Microは当時「『My Way』が大嫌いだった」と告白する。

Micro:この9曲入りのアルバムは『My Way』を外したくて。ゴリゴリのクラブシーンの中で『My Way』のソフトでライトなヒップホップを歌うのがすごく嫌で。もっと自分たちはゴリゴリしてたしガツガツしてたから、こんなソフトな曲はちょっと恥ずかしくてリリースしたくないんです、8曲入りを出したいですって社長に言ったら、「お前、人がいいって言うものを聞けないアーティストになっていくのか」ってめちゃくちゃ怒られて。自己満足だけで、自分がいいと思うだけのアーティストはツボが押せないマッサージ師と同じだって言われて。

SKY-HI:それすごくいい表現だな。

Micro:「ここがいいでしょ?」ってしゃべり過ぎのマッサージ師より、うまい人はしゃべらなかったりするみたいな。お前はツボを押せないマッサージ師だよって言われて。それでも嫌なんです、恥ずかしいです、4年も歌ってますし飽きてますって言ったら、「お前だけ辞めて、メンバーチェンジしてこのまま9曲入りでリリースするから」って言われて、ちょっと1分考えさせてくださいって言って「……歌います!」って(笑)。「1万回歌っても1万回飽きずに歌えるか?」って言われて「何万回でも飽きずに新しい気持ちで歌います」って(笑)。

大ヒットの裏側で、2人の仲は…

SKY-HIがMicroに、Def Techが大ヒットの渦中にいた頃の様子を訊くと、意外な答えが返ってきた。

Micro:2人の仲はもう終わってましたよね。Shenの楽屋には鍵が掛かってて俺は入れないし、携帯電話はつながらない状態で、ステージ以外だと目が合うだけでケンカが始まっちゃいそうなくらい。報われたって瞬間は短くて、翌年には解散して。

SKY-HI:2005年に大ヒットして2007年に解散してるわけですからね。

Micro:全国ツアー中には会話することがなかったですし。

SKY-HI:なんでそうなったんですか。

Micro:お互いの言語の自由度具合が今と違って、互いの思いが全然当時は伝わってなかったけど一生懸命やってきたっていうのと、ひとつ自分の大きな原因は、僕がオーバープロデュースしてきちゃったなって。Def Techはこうあるべきだ、Shenにはこう歌ってほしい、こういうことを書いてほしい、でもこのトップラインは違うよ、そうやって良い悪いを言ってた。今だったら「トライしてみようよ」「それもいいんじゃない」って言えるけど、当時21、22歳くらいの僕と彼だと「俺は絶対に間違えないから」「こっちが正しい」ってナビゲートしていったら、「これは本当に僕なのか」って彼は自分のアイデンティティを失っていっちゃったり、僕は過剰なダメ出ししかしなくなっちゃったり。

Def Tech解散後、Microはレーベルヘッドとして裏方にもまわり、フロントマンとしても年に1回はソロアルバムをリリースし続けた。また、映画を作ったりしながら「再結成するなら準備をしておこう」と考え、コツコツやっていたと振り返る。

SKY-HI:そして2010年にDef Techが再結成したわけですね。

Micro:Shenがハワイから帰ってきてくれて、子どもが生まれたっていうタイミングで。赤ちゃんを抱きに来てくれって言ってくれて、会いに行ったらShenの奥さんが「Def Techはどうでもいいから、この娘に2人で1曲ハーモニーを奏でて」って言われて、「どうする?」ってなって。3、4年前に見た優しい目になって、「じゃあ、明日からスタジオに入ってみよう」ってことで、曲ができ始めました。

SKY-HI:めちゃくちゃいい話じゃないですか。そういう話を聞いて、さらに活動が活発化されているってところがすごくエモーショナルですね。

番組では他にも、MicroがDef Techが11月25日(金)にリリースするデジタルシングル『Save Me Tonight』や、Microが出演するオリジナルミュージカル『りんご』について話す場面もあった。

Def Techの最新情報は、公式サイトまたは、オフィシャルTwitterまで。

『DIVE TO THE NEW WORLD』は国内外のさまざまなフィールドで活躍するアーティストやクリエイターたちの“本心”にSKY-HIが“DIVE”していくプログラム。放送は毎週土曜23時から。
radikoで聴く
2022年11月26日28時59分まで

PC・スマホアプリ「radiko.jpプレミアム」(有料)なら、日本全国どこにいてもJ-WAVEが楽しめます。番組放送後1週間は「radiko.jpタイムフリー」機能で聴き直せます。

番組情報
DIVE TO THE NEW WORLD
毎週土曜
23:00-23:54

関連記事