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映画やドラマでLGBTQ+が悲劇的に描かれる違和感─雑誌『IWAKAN』編集者が語る

映画やドラマでLGBTQ+が悲劇的に描かれる違和感─雑誌『IWAKAN』編集者が語る

多様性という言葉に潜む違和感や、LGBTQ+が登場する作品への疑問について、雑誌『IWAKAN』(Creative Studio REING)の編集者ユリ・アボさんとジェレミー・ベンケムンさんが語った。

ふたりが登場したのは、J-WAVEで放送中の番組『KURASEEDS』(ナビゲーター:山中タイキ)。番組パートナーは小学館のWebマガジン『kufura(クフラ)』の編集長・佐藤明美が務める。ここでは、5月26(木)のオンエアをテキストで紹介。

“違和感”を問いかける雑誌に注目

今回のオンエアでは、暮らしのなかで感じる“違和感”に注目。雑誌『IWAKAN』の創刊メンバーで編集者のユリ・アボさんとジェレミー・ベンケムンさんをゲストに招いた。

『IWAKAN』とはどんなコンセプトの雑誌なのか。

ユリ:世の中の当たり前に“違和感”を問いかける雑誌です。LGBTとかクィアを取り上げることもそうですし、ジェンダーについて考える雑誌でもあるんですけども、それだけじゃないです。普通に生きていて「これって何かおかしくない?」「なんでこれが普通じゃないだろう」ということを広く取り上げる雑誌を作りたいと思いました。特定の人ではなく、みんなが読むことができて、そこに正解はないけれど自分たちで考える、問いかける雑誌にしています。

山中:LGBTQはレズビアン、ゲイ、バイセクシャル、トランスジェンダーに加えて、クィア(Queer:性的マイノリティや既存の性のカテゴリに当てはまらない人々の総称)またはクエスチョニング(Questioning:性自認・性指向が決まっていないセクシュアリティ)の人々のことを指す言葉ですね。『IWAKAN』ではこれまで「女男」「愛情」「政自(※)」にフォーカスをあて、表現や取材をされています。

(※政治と個人にフォーカスした特集を意味する「IWAKAN」の造語)

雑誌のテーマに“多様性”を取り上げた理由

4月に発売された『IWAKAN』の特集は「多様性?」。なぜこのテーマを取り上げたのか話を聞いた。

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ジェレミー:第4号はPride Monthの直前ぐらいに出しました。なぜかというと、Pride Monthに合わせていろんな企業がLGBTQ+に対して急なキャンペーンを出しているからです。どういう風にプレゼンテーションされているのか一緒に考えたいと思いました。

ユリ:多様性を謳うプライドの広告のなかに「私はいないな」と思った瞬間に「それは多様性なのかしら」と思ったのが、最初の違和感でした。普通があるから普通じゃないのを多様性だって分けるけども、「普通って何なの?」ってことも同時に考えないといけない。普通とされる存在は多様性のなかには入らないのかなという“分断”を感じます。

山中:Pride Monthという言葉が出てきましたけど、日本語ではプライド月間と呼びます。LGBTQ、正しくはLGBTQ+(+には既存のカテゴライズに当てはまらないさまざまな性のありようを含む)の権利を啓発する活動やイベントをおこなう月を指します。

日本では「東京レインボープライド」のプライドパレードとプライドフェスティバルが4月22日、23日、24日に開催された。世界的なプライド月間である6月も、カンファレンスやトークライブがおこなわれる予定だ。

山中:日本を応援しているLGBTQ+の企業もあるけども、なかにはLGBTQ+を新しいマーケットとして、内情を知らずに商品を作っている企業もあるんですね。

佐藤:「流れが来ているな」と思うと、そこに乗っかって利用する企業もないわけではないですよね。

山中:「本質を捉えているのかな?」と疑問を感じられた方もいるのではないでしょうか。

LGBTQ+を扱う作品 当事者の声は反映されているか

LGBTQ+のブーム的な取り上げられ方は、ドラマや映画の世界でも顕著になってきている。

ユリ:映画でトランスジェンダーの方を取り上げる作品が近年増えてきたけども、いつも悲劇的に描かれているんです。みんな普通に生きているだけなのに、なぜかコントラストの激しい、極端な描き方をしていることがよく私たちのなかで話題になります。「なぜ普通に生きていることを描けないのか?」は、LGBTQ+に「普通じゃない」というイメージを託しているからではないか、という気がします。ストーリーとか演じる人とかに、はたして当事者の声がどこまで入っているのでしょうか。最近は制作側も気を付けているなと感じております。

『IWAKAN』の「多様性?」では、映画『リトル・ガール』の監督であるセバスチャン・リフシッツのメインインタビューが掲載されている。

ジェレミー:監督もゲイなんだけども、「10代のときからゲイを描いてきた映画を見てきたけれど、ずっと悲劇的な話しかない。自分の人生って別にそんなにおかしくないし、悲劇がメジャーなのはおかしい」と語っていました。

山中:たしかに言われてみると、悲劇的で必要以上にドラマチックな役割を持たされていますね。映画のなかで思い当たる作品がいくつかあります。そういう作品の制作において、ジェレミーさんは「作る側に当事者が参加しているかどうか」が大事だとおっしゃっています。イメージや偏見で作品を作っていないかということですよね。「制作側がどれぐらい理解しているのか、当事者がどんな表現をされたら傷つくのか、偏った表現なのかといった会話をするのは基本」だとジェレミーさんは言っていました。

広告で感じた“違和感”を指摘することは大切な行動

ターゲットを絞り、消費者にイメージを持たせることを念頭に置く「広告」。「多様性?」の発売記念のトークイベントでは、「広告と多様性は相性が悪い」という発言が出たそうだ。

ユリ:広告は短い時間、センテンス、ビジュアル、映像で何かを伝えなければいけない。当然、そんなようなもので人間を描くのは不可能です。2時間の映画で誰かの人生を撮ったり、ドキュメンタリーを作ったほうが人間を描けますよね。究極的には、自分がちょっとでも「違うな」「不快だな」と思うことがすごく尊いんです。ネガティブな意味だけじゃなく、発見もある。「炎上」が怖くてみんなが表現できなくなっちゃうことがあるから、そういったただの批判ではなくて、どう描けばよかったのか、何が足りていなかったのかなど、作り手と受け手が意見交換するのも向き合い方の一つだと思っています。誰かに(違和感を)伝えるということの積み重ねしかないのかなって思います。

山中:『IWAKAN』の「多様性?」ではアーティストが表現した作品が掲載されています。見る側に「何だろうな?」と思わせてくれるものが載っています。

問いかけ続けることで“当たり前”を変えていく機会を生み出す

ユリさんとジェレミーさんは、『IWAKAN』を通して受け手に感じてほしいこと、雑誌を作るなかで気付いたことを語った。

ユリ:私たちが取り上げるテーマというのは、ジェンダー問題やマイノリティとされる人たちの現状をみんなで考えようってことになるんだけど、問いかけて初めて「これって私への問いでもあるかも」って思えるんですよね。これまで自分が気付かなかったものが見えてくる。見えたら、それを無視することって難しいと思うんです。そこから始まる対話とか会話が、社会の“当たり前”を変えていく機会になるかもしれないと思うので、私は問いかけにそういった力があると感じています。レスポンスを返してくれるアーティストや読者の方によって、「これってみんなで考えていい問題なんだ」と気付かせてもらっています。

ジェレミー:自然に思われていることは全然自然ではないことに気付きました。たとえば、夫婦になって結婚をして子どもを産むとかは、そこまで自然ではない。社会が主に作った、やらなければいけない“制度”です。

山中:ジェレミーさんがおっしゃったとおり、時代によっても価値観は変わるし、今の当たり前が10年後100年後にひっくり返ることはあり得ますよね。今回はLGBTQ+が話題に挙がりましたけども、それ自体は急にやってきたものではありません。何が当たり前なのかを、今一度考えてみましょう。

佐藤:LGBTQ+だけじゃなく、たとえば障がいがある・ない、子どもがいる・いないなど、自分と違うものに対して「普通じゃない」と思いがちなんですけども、それぞれが“個性”だと捉えていける見方を持っていきたいなと思わされますね。

あなたの今日が最高1日になるように、暮らしを豊かにしてくれるヒント=種をあなたと一緒に見つけて育てていく番組『KURASEEDS』の放送は、月曜から木曜の朝5時から。

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2022年6月2日28時59分まで

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番組情報
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月・火・水・木曜
5:00-6:00

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