音楽、映画、エンタメ「ここだけの話」
 『クレヨンしんちゃん』声優・小林由美子が、先代・矢島晶子から引き継ぎ時に「もらって泣いたプレゼント」とは?

『クレヨンしんちゃん』声優・小林由美子が、先代・矢島晶子から引き継ぎ時に「もらって泣いたプレゼント」とは?

『クレヨンしんちゃん』が今年2022年でアニメ30周年、同4月22日より全国公開中の『映画クレヨンしんちゃん もののけニンジャ珍風伝』をもって劇場版第30作目を迎えた。そんな節目のタイミングでこのほど、J-WAVEの『STEP ONE』が、クレヨンしんちゃんとのスペシャルコラボ番組をポッドキャスト上にて配信。ナビゲーターのサッシャが、2018年より野原しんのすけの声を務める小林由美子をゲストに招き、劇場最新作の見どころや収録の裏話、先代声優の矢島晶子からしんのすけの声を引き継いだときの心境などについて聞いた。

ポッドキャストは5月31日まで期間限定で配信中。以下のページより、Spotify、Apple Podcast、Amazon Music、Google Podcastで聞くことができる。

https://www.j-wave.co.jp/podcasts/

劇場版最新作では、原作の“胸アツシーン”に注目!

アニメ30周年、劇場版30作目となる『映画クレヨンしんちゃん もののけニンジャ珍風伝』の見どころは何なのか。同作を既に鑑賞済だというサッシャが尋ねると、小林は映画版ならではのド迫力のアクションシーンがあること以外に、もう一つの注目ポイントを挙げた。

小林:30周年目にして、しんのすけの出生の秘密が明かされるところですね。5歳以前のしんのすけの姿がチラチラと垣間見えたりするほか、「しんのすけ」という名前がどうやって決まったのかがわかる原作のエピソードも描かれていたりと、昔からのファンの方にとって胸アツなシーンがたくさんあるんです。そんなふうに30周年目に相応しい笑いあり、涙あり、アクションシーンありのこれぞ「しんのすけ・ザ・ムービー」の作品に仕上がっていると思います。

サッシャ:映画に登場した2歳のしんちゃんは、見た目は赤ちゃんなのに眉毛だけは今のままでしたね。

小林:そう。眉毛だけはご立派なんです(笑)。その2歳のしんのすけを演じるのがすっごい難しくて! 先代の矢島さんは、2歳のしんのすけを演じていたとき、ちゃんと2歳なんだけど、ちゃんとしんのすけという絶妙な塩梅で演じていらっしゃっていたんですよ。

サッシャ:じゃあ今作では、2歳のしんちゃんを演じることに最も気を遣ったのでしょうか?

小林:そうですね。しんのすけの声優を務めて今年で4年目になるのですが、2歳のしんちゃんはこれまでやったことがなくて。なので、2歳のしんちゃんを演じている矢島さんの音声をめちゃくちゃ聴いて、1から勉強し直しました。あと、うちの息子が今年で5歳なんですけど、2歳だった頃のビデオを見て、2歳児と5歳児の声色・しゃべり方の違いなどを研究したりもして。まぁ、あまり参考にはなりませんでしたが(笑)。

サッシャ:色々な努力をされていたんですね。

ならはしみき、森川智之と同じブースに入ると“家族”になれる

アフレコの収録は新型コロナウイルス感染拡大防止の観点から、他のキャストと一緒に行わなかったそうだ。しかし、野原ひろし役の森川智之と、野原みさえ役のならはしみきとだけは同じブースで掛け合いを演じたという小林。野原家の声優陣3人が集まったことで、どんな化学反応が生まれたのか。

小林:。毎回毎回そうなのですが、ならはし(みき)さんは本当にみさえ母ちゃんとして、森川(智之)さんは本当にひろし父ちゃんとしてその場にいてくれる。なので、一緒のブースで録るとすごく心強いんですよね。

サッシャ:実は今回のポッドキャストの収録は、『クレヨンしんちゃん』のアフレコを普段録っているスタジオで行っているんですよね。まさにここに「父ちゃん、母ちゃんがいる」みたいな感じだったと。

小林:本当にそうで。父ちゃんと母ちゃんが春日部からこの都内のこのスタジオにやってきて、アフレコしているみたいなイメージなんです。

サッシャ:じゃあ、小林さん自身、しんちゃんの役に入りやすいということもあるのでしょうか?

小林:お二人がいるスタジオに入った瞬間に“家族”になれるというか。私の中では、「父ちゃんと母ちゃんは実在している」というぐらいの感覚があって、演じる上ですごく有難いんですよね。
CS22_main_poster_b1_RGB.jpg

(C) 臼井儀人/双葉社・シンエイ・テレビ朝日・ADK 2022

今だから語れる、“しんのすけ”に抜擢された舞台裏

小林が野原しんのすけ役を演じ始めたのは、2018年7月6日放送の「クレヨンしんちゃん」から。前任の矢島晶子がおよそ26年間かけて作り上げてきた“国民的キャラクター”の声を引き継ぐことになった舞台裏では、どんなやり取りが行われていたのだろうか。

小林:あるとき、スタジオのデスクの方から「内容はお伝えできないんですけど、今すぐスタジオに来られますか?」というお電話をいただきまして。

サッシャ:そんなことってあります!?(笑)

小林:私、なんかやっちゃったのかなと思ったんですよ。フリーランスだから、たとえば提出した請求書に記載した「0」の数が多かったのかなとか、あるいは、まだ公表してはいけないスタジオの作品をSNSに載せちゃったのかなとか色々考えました。今すぐ行くことはさすがに難しかったので、翌日スタジオに伺うことになったのですが、とにかく「呼び出し=怒られる」というイメージで。最悪、スタジオ出禁も有り得ると予想しつつ恐る恐る現地に行くと、そこには神妙な顔をしたスタッフの皆さんがいらっしゃって。

そして、スタジオ内の防音バッチリの収録ブースに入り、音響監督の方から「『クレヨンしんちゃん』で矢島さんが交代になるということで、後任を引き受けていただけますか?」と伝えられたんです。ただそのとき、私は「怒られる」という予感で頭がいっぱいだったので、驚きやうれしさよりも「怒られるんじゃなかったんだ~!」とホッとする気持ちのほうが上回っていて。もちろん、私の中でお断りするという選択肢は絶対になかったんですけど、本来一度持ち帰ってから丁寧にお返事するべきだったのに、「あ、やります!ぜひ!」と即答してしまいました(笑)。

その後2か月ほど「しんちゃんレクチャー」の機会が設けられたといい、矢島が26年間構築した野原しんのすけのキャラクターをみっちり学んだという。

サッシャ:最初にオファーを受けたときには世の中的にしんちゃんの声優さんが交代するということは当然公表されていないですよね。

小林:はい、絶対に極秘でした。

サッシャ:ご家族にも言えなかったのでしょうか?

小林:家族にももちろん言わなかったのですが、しんちゃんの声だけにこだわるあまり、うまく芝居ができないというスランプに陥ってしまったんです。そのときに「しんちゃんとして日常会話ができないとダメだ」という思いから、家にいるときの普段の会話を全部しんちゃんの声でしていました。なので、娘に「どうしたの?ママ。こわい……」と変に怖がられてしまいましたね(笑)。

サッシャ:それはすごい話だ(笑)。ちなみに、前任の矢島さんから何か引継ぎなどはあったのでしょうか?

小林:矢島さんからの引継ぎはこれといってなかったのですが、私含めた野原家のキャストにマスコット人形をプレゼントしてくださいました。そのマスコットが手をつなげるようになっていて、「家族一緒に」という意味を込めてくださっていたんです。それをいただいたときは泣きそうになりました。というか、泣きました。今はそのマスコットをお守りとしてバッグに付けて常に持ち歩いています。

サッシャ:すごい素敵なお話ですね。それにしても、誰もが知っている国民的キャラクターの声優を務めるというのは、大変なプレッシャーがあると思うのですが。

小林:いやもう、それを考えちゃうとドツボにハマっちゃうと思っていました。幸いにも、とにかくスタッフ・キャストの皆さんがめちゃくちゃあたたかくて。第1話の収録のときなんかはすごく緊張してスタジオに伺ったんですけど、ひま(野原ひまわり)役のこおろぎさとみさんが「待ってたよ~!」と言って抱きしめてくれたりとか、皆さんが私に変なプレッシャーを与えないようにと温かい現場を作ってくださったんです。なので、たしかにプレッシャーはあったのですが、「この場を楽しまなかったら勿体ないな」と切り替えて収録に臨んでいました。あとその頃は、SNSは一切見ずに、自分のしんちゃんをしっかりと作っていくことに集中していましたね。

サッシャ:初回放送は家族みんなでご覧になられたんでしょうか?

小林:観ました。私だけ正座してドキドキが止まらなくて。あんなに緊張して『クレヨンしんちゃん』を観る日が来るとは思ってもみなかったです(笑)。

全30作の中で特にお気に入りの作品は?

矢島とバトンタッチするにあたり、これまで公開された劇場版クレヨンしんちゃん30作を全て鑑賞したという小林。そんな彼女が挙げる特にお気に入りの3作品とは?

小林:まずは『ヘンダーランドの大冒険』です。この作品の中に出てくる「スゲーナスゴイデス」という呪文がありますけど、それが一緒に見ている子どもたちとハマっちゃって。しばらくずっと家の中で「スゲーナスゴイデス!」とやたらめったらに使っていた時期があるんです(笑)。しんちゃんの映画ではそういうキャッチ―なセリフがいくつも登場してきましたが、中でも「スゲーナスゴイデス」はコミカルなワードのはずなのに、劇中で使われるとカッコいい響きもあって、印象に残っているんですよね。

サッシャ:『ヘンダーランド』は、しんちゃんのしっかりとした一面が見られる作品でもありますよね。敵に騙されてる父ちゃんと母ちゃんを助けたりとかして。では続いて、2作品目は何にしましょう?

小林:『爆睡!ユメミーワールド大突撃』です。脚本に新しいメンバー加わっていたりと印象に残っています。

サッシャ:脚本担当には劇団ひとりさんもクレジットされていますよね。

小林:そうなんです。なので、ちょっとこれまでのしんちゃんとは違うカラーの面白さがありました。あとは、母ちゃんが「野菜は食べたくないだのわがまま言うんじゃない!」と子どもたちに必死で訴えながら戦うシーンにグッときて。同じ子を持つ母親として「いや、そうだよ!」と思わず共感してしまいました(笑)。

サッシャ:なるほど(笑)。じゃあ最後、3作品目を教えてください。

小林:はい。「新婚旅行ハリケーン ~失われたひろし」です。やはり、しんのすけの声を交代してから最初にやらせていただいた劇場版作品ということで、個人的に色々な思い入れがあります。父ちゃんと母ちゃんがメインの話だったこともあって、ずっと2人の背中を見ながらアフレコができたのがすごく有難くて。「この二人からしんのすけが生まれてきたんだ」という、5年間育ててもらった背景やしんのすけの原点を見せていただいた気がしました。声優を交代させていただいた一作目で、いきなりしんのすけ単体で冒険に出るストーリーでは不安もあったかと思いますが、「新婚旅行ハリケーン」では、「父ちゃんと母ちゃんがいてしんのすけがいるんだ」と再確認しつつ演じられたので、この作品が一作目で本当にラッキーだったなと感じましたね。

『映画クレヨンしんちゃん もののけニンジャ珍風伝』の公式サイトはこちら

(構成=小島浩平)

この記事の続きを読むには、
以下から登録/ログインをしてください。

  • 新規登録簡単30
  • J-meアカウントでログイン
  • メールアドレスでログイン

関連リンク