東京を離れて変化した「働くこと」「お金を使うこと」 チャットモンチー(済)福岡晃子が語る

チャットモンチー(済)の福岡晃子と藤原しおりが、「リスタート」をテーマに、福岡の新たな生活について語り合い、新しい環境に身を置くリスナーへエールを贈った。

ふたりがトークしたのは、J-WAVEの番組『HITACHI BUTSURYU TOMOLAB. ~TOMORROW LABORATORY』。オンエアは4月9日(土)。 同番組はラジオを「ラボ」に見立て、藤原しおりがチーフとしてお届けしている。「SDGs」「環境問題」などの社会問題を「私たちそれぞれの身近にある困りごと」にかみ砕き、未来を明るくするヒントを研究。知識やアイデア、行動力を持って人生を切り拓いてきた有識者をラボの仲間「フェロー」として迎えて、解決へのアクションへと結ぶ“ハブ”を目指す。

「自分がドラムをやる」ピンチでありチャンスだった

福岡は、徳島県で結成されたロックバンド「チャットモンチー」にベース・コーラスとして参加。のちにドラムス、キーボードなどマルチにプレイし、2018年まで活動をおこなう。2020年、徳島に戻り、東京との二拠点生活でリスタート。現在は作詞、作曲、演奏家として音楽活動を続けるかたわら、アパレルブランド「STINGRAY」の活動や、みずから代表を務めて運営しているイベントスペース「OLUYO」でさまざまなイベントを企画・開催している。

藤原:ご自宅は古民家なんですよね?

福岡:築60年以上の古民家に住んでおります。

藤原:晃子さんはいくつかのリスタートを経験されているかと思います。リスタートと聞いて思い浮かべることはなんですか?

福岡:チャットモンチーというバンドをやっていて、もともと3人組でデビューしました。3人とも作詞・作曲・アレンジをして、3人でオリジナリティを追及して頑張っていましたが、1人ドラムが抜けちゃうことになったんです。そのときに「脱退」という報告をちょっとでもポジティブな方向に向けられないかなと思い、当時私はベースを弾いていたんですけど「自分がドラムをやる」ということをやってみたら、みんなちょっと笑うんじゃないかなと思って(笑)。

藤原:それサラッと言いますけど、とんでもないことをやってますよね(笑)。

福岡:「なにやっちゃってるの?」みたいなのと、あと「違う誰かを入れない」という気持ちがファンの人にわかってもらえるかなというのがあって。そのとき2人でリスタートすると決めてやりました。まあメチャクチャ怖かったんですけど。

藤原:すごいスタートだと思いますし、前例がないというか。

福岡:挑戦することは2人とも好きだったので、新しい景色が見られるような気がして。本当に不安半分、楽しみ半分という感じでリスタートしました。そのリスタートは人生最大のピンチでありチャンスだったような気がしますね。

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移住して、考え方も性格も変わった

コロナ禍でテレワークの割合が上昇。それにともなう「東京離れ」が起きている。総務省が2022年1月に発表した「住民基本台帳人口移動報告2021年」では、東京23区は初めて転出が上回った。ちなみに23区からの転出先TOP5は以下の通り。

5位:千葉県市川市
4位:埼玉県川口市
3位:埼玉県さいたま市
2位:神奈川県川崎市
1位:神奈川県横浜市

藤原:引っ越しや生活圏を変えることって明確なリスタートになりますよね。

福岡:東京から徳島は700キロぐらい距離が離れている分、風土も違うし環境も違うから、考え方自体が変わっちゃって、自分でもビックリしています。あんなに360日ぐらいお酒を飲んでいた自分が、飲まなくてもいけることにもビックリしています(笑)。

藤原:すごいですね、全然違う生活になっているということですよね。

福岡:具体的に言うと交通手段。徳島県は電車じゃなくて汽車しかないんです。しかも基本的には1時間1本ぐらい。少ない時間帯だと2時間に1本です。東京は電車がすぐ来るじゃないですか。それでも1本乗り遅れたことに対して「もう!」と思ったりするんだけど、こっちは時間をものすごく贅沢に使っているというか。乗り遅れたことによって生まれるイライラが少なくて。

藤原:移住することだけがリスタートとは限らないと思いますが、いまのお話を聞いても「環境を変える」ということは半強制的に価値観や自分の生活スタイルを変えるきっかけになりますよね。

藤原は「移住しようと思ったきっかけはなんだったんですか?」と質問する。

福岡:明確な理由は、私の場合は出産でした。ちょうど出産した時期がコロナ禍で最初の緊急事態宣言のとき。新生児を抱えて人と会うのも怖いし、東京だったらすれ違う距離も近いじゃないですか。だから「なにかあったらどうしよう」と思って、家から出られない状態が何カ月も続いて。

福岡は、緊急事態宣言が解除されたときに徳島へ帰郷。海へ行き、夫に「ここに住むのもいいかもね」と話したことが移住のきっかけになったという。

福岡:夫がメチャクチャ行動力ある人なので(笑)。すぐに役場に電話して「空き家ありますか?」みたいな。そうしたら「ありますよ。明日だったら内見できますよ」みたいな感じで、次の日に内見させてもらって、すぐに決めたみたいな感じです。
藤原:本当にピンときてすぐ、悩む前に動いちゃったという感じなんですね。

「働くこと」「お金を使うこと」とは何か

ここからは「働くこと」について語り合う。

藤原:働く意義や意味ってなんですか?

福岡:音楽は自分のやりたいことで、「好きなこと」を仕事にしていたので、100パーセント仕事でもなかったんです。どこか楽しみであって「自分が作りたいから作っている」というのが大前提にあったので、それを仕事と言い切れなかったというか、むしろ遊び心のほうが多かったんですよ。ただ音楽を作る以外の仕事ももちろんあったので、それを仕事と呼ぶのであれば、本当に疲れ果てるまで毎日全力で仕事をするのが一番正義だと思いました。だけど、こっちに引っ越してきてから全然お金を使わないんです。だから「働く」ということを初めて考えたというか。これだけのお金で済むんだったら、働く量はこれぐらいでいいんだと思ったときに「じゃあ残った時間メチャクチャ自分で使えるやん」みたいな。そうなったときに、働くって自分が思い描く生活水準・生活スタイルのための仕事、かつ人間って働きたい生き物だと思うんです。私の場合はやりたいことと仕事がたまたま、かなり密接なところにあるんですけれども、その分量も自分で調整できるんだなと、こっちに移住してから気づきましたね。

藤原:「お金を使わなくていいんだ」から「働くこと」を考えたんですね。

福岡:東京にいるときは「使うために働く」「働いているから使う」みたいな。「メッチャ働いた自分にご褒美」みたいな感じで、すごく気持ちいいんですけど、やっぱりその幸せって永遠に続かなくて、続かないからまた買っちゃってまた仕事して、みたいな。でもそれが本当に自分のやりたかったことだったのかなと、いまになってちょっと気づき始めて。

藤原:360日お酒を飲んでいた晃子さんが言うんだから、重みが違いますね(笑)。

これからリスタートする人へ

最後に福岡は、リスタートするリスナーに向けてエールを贈った。

福岡:言えることは「不安な分だけチャンスだと思うしかない」ということですよね。経験したことがないから不安なんだと思うんです。それは自分自身が新しい扉を開くチャンスでもあるので、飛び込んでみてからダメだったらダメでいい。自分が決めたことだから誰も責めないので、そうやって前向きに不安なところもとらえられたらいいんじゃないかと思います。たとえば「移住するぞ」と決めた先でなにか違ったら別のところに行けばいいと思うんです。「移住するぞ」といった気持ちが大事かなと思っていて。自分の行動力を褒めてあげるというか、そこで全然成功しているんじゃないかと思います。

藤原:移住も転職も、リスタートすることにおいて、違ったらまた違うことをすればいい、違う場所に行けばいいというね。そこで終わりじゃない。「人生最悪だ」と思わなくて大丈夫ということですよね。

J-WAVE『HITACHI BUTSURYU TOMOLAB. ~TOMORROW LABORATORY』は毎週土曜20時から20時54分にオンエア。
radikoで聴く
2022年4月16日28時59分まで

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番組情報
HITACHI BUTSURYU TOMOLAB.〜TOMORROW LABORATORY
毎週土曜
20:00-20:54

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