シンガーソングライターでギタリストのReiと音楽ジャーナリストの原田和典さんが、ノラ・ジョーンズの魅力を語った。
ふたりが登場したのはJ-WAVEで放送中の番組『SONAR MUSIC』(ナビゲーター:あっこゴリラ)。番組では、毎回ゲストを迎え、様々なテーマを掘り下げていく。ここでは2月24日(木)にオンエアした内容をテキストで紹介する。
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あっこゴリラ:ノラが登場した当時、どんな感じだったんですか?
原田:大きな衝撃というよりも個人的には「これでいいんだよ」って優しく背中を押されたような感じでした。当時ジャズの最先端を追いかけるのに必死だったのですが、耳に入ったノラの曲は、メロディーもリズムもハーモニーも普遍的で。普遍こそが新鮮で、それが静かな衝撃でした。
あっこゴリラ:社会的に見てもそういった普遍的な要素が新鮮だったんですか?
原田:そうですね。ノラがアルバムデビューを果たす前年にニューヨークで9.11という悲惨な出来事があって、「世界はどうなるんだろう」って多くの方が思っていたと思います。そこにノラの温かい歌声と普遍的な曲作りが現れて、「ちょっと落ち着いて一歩踏み出そうよ」みたいな感じで世界にアピールしたんだと想像しています。
あっこゴリラ:音楽業界からの評価も高かったんですか?
原田:むちゃくちゃ高かったですね。CDショップに行くとノラのアルバムが目立つ場所に置いてあったり、友人から「ノラ・ジョーンズっていいよな」と連絡がくることもあったり。マニアックではない人にもあの優しい歌声が届いていたような気がします。
デビューアルバムは2002年のグラミー賞で主要4部門を含む8冠を獲得するなど、ノラは輝かしいデビューを飾った。
原田:時代も人々も待ち望んでいた存在だったと思います。当時ほどネットが普及していない時代にこれだけ話題になるのは、相当口コミが多かったのだと思います。ノラって人に勧めたくなるところがあるので、そういったことでファンの心も動かされたし、グラミー賞選定者の心も動かされたんじゃないでしょうか。
原田:ノラは2001年に自身のアルバムの制作を始めるんですけど、2000年にブルースのギタリスト、ピーター・マリックのバンドで相当ブルースを仕込まれているんです。ノラの安定した音楽の背景にはブルースがあるんだと思っています。
あっこゴリラ:ノラの父はインドで最も有名な音楽家でビートルズにも影響を与えたシタール奏者のラヴィ・シャンカールなんですよね。
原田:はい。母もコンサートのプロデュースなどをやられたみたいです。でもそういった情報はノラがデビューした頃は知らなくて、ただ「いいな!」って思ったんです。
あっこゴリラ:いちばんいい出会い方ですよね。そもそもノラがジャズに傾倒したのはどんな影響があるんですか。
原田:母の影響だったらしいです。すごく有名なジャズボーカルのビリー・ホリデイの歌が大好きで、よくレコードを聴いていたという話は聴いたことがあります。
ノラは2003年にカントリー・バンドのザ・リトル・ウィリーズを結成、また2008年にはガールズ・バンド、プスンブーツを結成している。
原田:ノラは引き出しが多い人なんでしょうね。無限にバリエーションがあって、ジャンルではなく音楽そのものが大好きな人だと伝わってきます。どれをとってもノラの軽やかな魅力が出ているとも言えるし、興味の尽きないアーティストです。
ソロ活動として、ノラは昨年10月に初のクリスマス・アルバム『アイ・ドリーム・オブ・クリスマス』をリリース。また12月にはニューヨークのエンパイア・ステイト・ビルの屋上でライブパフォーマンスを実施。ソロでも精力的に活動を続けている。
Rei:当時はその知識しかないまま、デビューアルバムを聴いたんですけど、実は何も心にひっかからなかったんですよ。でも、そのとき私はまだ小学生とか中学生くらいで。数年後、私がティーンエイジャーの女の子になってまたこのアルバムを聴くと、すごく大好きになりました。少し大人の女の子になっていくところで、やっとこのアルバムの憂いとか切なさを理解できるようになったのかなって思います。
Reiは『Don't Know Why』を作曲したジェシー・ハリスと友人で、新しい音源ができると送ってもらうほどの親交を続けているという。
あっこゴリラ:ノラ・ジョーンズのすごいところはどこだと思う?
Rei:空気を一瞬にして変える声はやっぱりすばらしいと思います。ブルーノートから彼女はデビューしたんですけど、今のブルーノートの社長のドン・ウォズがイベントで来日したときに、ノラが初めてブルーノートに来て弾き語りをしたときの話をしてくれたんですよ。
原田:おお!
Rei:素朴な20歳そこそこの女の子がピアノの前に座って歌った瞬間に、その場の空気の色が変わった。そういう特別な声だったって言っていて。私もそういうところが何と言ってもすばらしいし、その声を生かすメロディーセンスや、女の子に刺さるリアルが詰め込まれた歌詞も、きっと彼女の声をさらにすてきに聴かせているのかなと思います。
原田:ノラの音楽は僕みたいに音楽を長年聴いてきたオタクのような男にも刺さりますよね。
あっこゴリラ:いい音楽って属性は関係ないですもんね。むしろ解き放ってくれる存在ですよね。
最後にReiは「ノラはジャズの歌姫でもあるけど、初期の作品から最新作まで多岐に渡るスタイルで音楽を作っているので、これを機会にノラの世界に没頭してほしい」とリスナーに呼びかけた。
原田さんは公開中の映画『ザ・ユナイテッド・ステイツ vs. ビリー・ホリデイ』のパンフレットを執筆。また自身の著書『コテコテ・サウンド・マシーン』(SPACE SHOWER BOOKS)も発売中。原田さんの最新情報は、オフィシャルTwitterまで。
Reiは2月18日に細野晴臣をゲストに迎えた新曲『ぎゅ with 細野晴臣』をリリース。また4月13日(水)初のコラボレーションアルバム『QUILT』をリリース。新作を携えたツアー「Rei Release Tour 2022 "QUILT"」が4月よりスタートする。Reiの最新情報は、公式サイトまたは、オフィシャルTwitterまで。
J-WAVE『SONAR MUSIC』は月曜~木曜の22:00-24:00にオンエア。
ふたりが登場したのはJ-WAVEで放送中の番組『SONAR MUSIC』(ナビゲーター:あっこゴリラ)。番組では、毎回ゲストを迎え、様々なテーマを掘り下げていく。ここでは2月24日(木)にオンエアした内容をテキストで紹介する。
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衝撃のデビューアルバム なぜ世界中から受け入れられた?
ノラ・ジョーンズが2002年2月26日に名門ジャズレーベル「ブルーノート」からデビューアルバム『ノラ・ジョーンズ(原題:Come Away With Me)』をリリースして丸20年が経った。番組前半では原田さんがノラの経歴を振り返りながら、その魅力を語った。あっこゴリラ:ノラが登場した当時、どんな感じだったんですか?
原田:大きな衝撃というよりも個人的には「これでいいんだよ」って優しく背中を押されたような感じでした。当時ジャズの最先端を追いかけるのに必死だったのですが、耳に入ったノラの曲は、メロディーもリズムもハーモニーも普遍的で。普遍こそが新鮮で、それが静かな衝撃でした。
あっこゴリラ:社会的に見てもそういった普遍的な要素が新鮮だったんですか?
原田:そうですね。ノラがアルバムデビューを果たす前年にニューヨークで9.11という悲惨な出来事があって、「世界はどうなるんだろう」って多くの方が思っていたと思います。そこにノラの温かい歌声と普遍的な曲作りが現れて、「ちょっと落ち着いて一歩踏み出そうよ」みたいな感じで世界にアピールしたんだと想像しています。
あっこゴリラ:音楽業界からの評価も高かったんですか?
原田:むちゃくちゃ高かったですね。CDショップに行くとノラのアルバムが目立つ場所に置いてあったり、友人から「ノラ・ジョーンズっていいよな」と連絡がくることもあったり。マニアックではない人にもあの優しい歌声が届いていたような気がします。
デビューアルバムは2002年のグラミー賞で主要4部門を含む8冠を獲得するなど、ノラは輝かしいデビューを飾った。
原田:時代も人々も待ち望んでいた存在だったと思います。当時ほどネットが普及していない時代にこれだけ話題になるのは、相当口コミが多かったのだと思います。ノラって人に勧めたくなるところがあるので、そういったことでファンの心も動かされたし、グラミー賞選定者の心も動かされたんじゃないでしょうか。
ノラ・ジョーンズの音楽ルーツは…
ノラは1979年ニューヨーク生まれ。高校のときからボーカル賞などいろいろな音楽賞を受賞し、当時から天才的な才能があったという。高校卒業後は、多くのジャズミュージシャンを輩出しているノース・テキサス大学でジャズ・ピアノを専攻。その後、20歳で故郷のニューヨークに滞在、そこからは大学には戻らずニューヨークで音楽活動を始めた。原田:ノラは2001年に自身のアルバムの制作を始めるんですけど、2000年にブルースのギタリスト、ピーター・マリックのバンドで相当ブルースを仕込まれているんです。ノラの安定した音楽の背景にはブルースがあるんだと思っています。
あっこゴリラ:ノラの父はインドで最も有名な音楽家でビートルズにも影響を与えたシタール奏者のラヴィ・シャンカールなんですよね。
原田:はい。母もコンサートのプロデュースなどをやられたみたいです。でもそういった情報はノラがデビューした頃は知らなくて、ただ「いいな!」って思ったんです。
あっこゴリラ:いちばんいい出会い方ですよね。そもそもノラがジャズに傾倒したのはどんな影響があるんですか。
原田:母の影響だったらしいです。すごく有名なジャズボーカルのビリー・ホリデイの歌が大好きで、よくレコードを聴いていたという話は聴いたことがあります。
ノラは2003年にカントリー・バンドのザ・リトル・ウィリーズを結成、また2008年にはガールズ・バンド、プスンブーツを結成している。
原田:ノラは引き出しが多い人なんでしょうね。無限にバリエーションがあって、ジャンルではなく音楽そのものが大好きな人だと伝わってきます。どれをとってもノラの軽やかな魅力が出ているとも言えるし、興味の尽きないアーティストです。
ソロ活動として、ノラは昨年10月に初のクリスマス・アルバム『アイ・ドリーム・オブ・クリスマス』をリリース。また12月にはニューヨークのエンパイア・ステイト・ビルの屋上でライブパフォーマンスを実施。ソロでも精力的に活動を続けている。
「空気を一瞬にして変える声はやっぱりすばらしい」
後半にはReiが登場。もともとビートルズ好きだったReiは、彼らに影響を与えたノラの父であるラヴィ・シャンカールの娘として、ノラの存在を知ったという。Rei:当時はその知識しかないまま、デビューアルバムを聴いたんですけど、実は何も心にひっかからなかったんですよ。でも、そのとき私はまだ小学生とか中学生くらいで。数年後、私がティーンエイジャーの女の子になってまたこのアルバムを聴くと、すごく大好きになりました。少し大人の女の子になっていくところで、やっとこのアルバムの憂いとか切なさを理解できるようになったのかなって思います。
Reiは『Don't Know Why』を作曲したジェシー・ハリスと友人で、新しい音源ができると送ってもらうほどの親交を続けているという。
あっこゴリラ:ノラ・ジョーンズのすごいところはどこだと思う?
Rei:空気を一瞬にして変える声はやっぱりすばらしいと思います。ブルーノートから彼女はデビューしたんですけど、今のブルーノートの社長のドン・ウォズがイベントで来日したときに、ノラが初めてブルーノートに来て弾き語りをしたときの話をしてくれたんですよ。
原田:おお!
Rei:素朴な20歳そこそこの女の子がピアノの前に座って歌った瞬間に、その場の空気の色が変わった。そういう特別な声だったって言っていて。私もそういうところが何と言ってもすばらしいし、その声を生かすメロディーセンスや、女の子に刺さるリアルが詰め込まれた歌詞も、きっと彼女の声をさらにすてきに聴かせているのかなと思います。
原田:ノラの音楽は僕みたいに音楽を長年聴いてきたオタクのような男にも刺さりますよね。
あっこゴリラ:いい音楽って属性は関係ないですもんね。むしろ解き放ってくれる存在ですよね。
最後にReiは「ノラはジャズの歌姫でもあるけど、初期の作品から最新作まで多岐に渡るスタイルで音楽を作っているので、これを機会にノラの世界に没頭してほしい」とリスナーに呼びかけた。
原田さんは公開中の映画『ザ・ユナイテッド・ステイツ vs. ビリー・ホリデイ』のパンフレットを執筆。また自身の著書『コテコテ・サウンド・マシーン』(SPACE SHOWER BOOKS)も発売中。原田さんの最新情報は、オフィシャルTwitterまで。
Reiは2月18日に細野晴臣をゲストに迎えた新曲『ぎゅ with 細野晴臣』をリリース。また4月13日(水)初のコラボレーションアルバム『QUILT』をリリース。新作を携えたツアー「Rei Release Tour 2022 "QUILT"」が4月よりスタートする。Reiの最新情報は、公式サイトまたは、オフィシャルTwitterまで。
J-WAVE『SONAR MUSIC』は月曜~木曜の22:00-24:00にオンエア。
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2022年3月3日28時59分まで
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番組情報
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