磁気テープの現代の活用とその効果を、「東洋経済オンライン」編集長の吉川明日香さんが語った。
吉川さんが登場したのは、J-WAVEで放送中の番組『J-WAVE TOKYO MORNING RADIO』(ナビゲーター:別所哲也)のワンコーナー「MORNING VISION」。ここでは、1月19日(水)のオンエア内容をテキストで紹介する。
ビデオテープやカセットテープなどの磁気テープは、20世紀を代表する技術のひとつ。「懐かしい」と感じる人も多いだろうが、実は現在も活用されている。その利用方法について吉川さんが語った。
吉川:今、意外な場所で懐かしの磁気テープが脚光を浴びています。たとえば、アメリカ・ノースカロライナにあるGoogleのデータセンター。ロボットが縦横無尽に動き回り、記録メディアを出し入れしてデータを保存、取り出していますが、そこで使われているのがあの磁気テープです。Googleやマイクロソフトといった世界のプラットフォーマーは、クラウドなどへデータをバックアップする必要があり、そこで磁気テープをデータの保存や活用のためにこぞって採用しているのです。ハードディスクドライブ、HDDよりもデータのアクセス速度は遅いのですが、一方でデータを50年以上保存できるうえ、消費電力が圧倒的に少なく、HDDと比べてCO2の排出量を最大95%削減できるなど数々のメリットがあります。実は、技術革新も止まっておらず、今後のさらなる大容量化のロードマップが示されており、プラットフォーマーからの信頼の裏付けとなっています。
別所:なるほど。磁気テープをGoogleなどがデータ保存に使い始めている。その背景にあることも見えてきましたね。省電力化。
吉川:AIやIoTの活用が進んだことにより、保存しておくべきデータ量はどんどん大幅に増えていく一方です。全世界で流通するデータ量は2015年に20ゼタバイト以下だったものが、2025年には175ゼタバイトと、約9倍になる試算もあります。1ゼタバイトとは1キロギガバイトのことで、175ゼタバイトを現在の平均的なインターネット通信速度でダウンロードしようとすると、なんと18億年もかかる計算になります。ただ、こうしたデータの7割近くが取り出した後も利用することが少ない、アクセス頻度の低いコールドデータだといわれています。磁気テープの売りは、長期にわたり保存が可能な安定性と、圧倒的な安さ。アクセス頻度の低いデータの単純な保存に使うにはうってつけというわけです。
別所:ゼタバイトの世界。たしかに使う頻度が少ないコールドデータの保存には、磁気テープが最適です。
吉川:磁気テープは1990年代にHDDが普及し始めて以来冬の時代が続き、大手各社の撤退が続きました。残ったのが日本の富士フイルムとSONYグループという状況です。残った2社のうちの1社である富士フイルムは、爆増するデータを活用するために磁気テープが必要になるときがいつか来ると、2000年頃から予想。データの大容量化を目指した技術革新に、研究と投資を続けてきたそうです。磁気テープは数マイクロメートルという食品用ラップの半分程度の薄さに、磁性層と、非磁性層を均一に塗布する必要があります。そこで生きたのが、富士フイルムが写真フィルム製造で培った、微粒子を薄く、均一に塗布する技術です。磁性体を高い密度で薄くなめらかに塗ることで、記憶容量をさらに高めることに成功しています。2021年9月には、手のひらサイズのカセット1巻に、最大容量45テラバイトを保存できる磁気テープを発売しました。HDDの最大容量は約20テラバイトですから、磁気テープはその2倍以上と画期的な数字です。
別所:こうやって聞いていると、20世紀を代表する技術である磁気テープが、いま21世紀のデータ時代を支えるための重要な役割を担いつつある。この技術革新に日本の企業も関わっているのは、ちょっと嬉しくもあります。その背景にある省電力化という大きなエコシステムとしての課題もしっかりと見据えての進化、期待していきましょう。
『J-WAVE TOKYO MORNING RADIO』のワンコーナー「MORNING VISION」では、世界の気になるニュースにフォーカス。放送は月曜~木曜の7時40分頃から。お楽しみに!
吉川さんが登場したのは、J-WAVEで放送中の番組『J-WAVE TOKYO MORNING RADIO』(ナビゲーター:別所哲也)のワンコーナー「MORNING VISION」。ここでは、1月19日(水)のオンエア内容をテキストで紹介する。
世界のデータ保存、磁気テープを活用
一般家庭でのテレビや動画の録画の多くはハードディスクが普及した。そのハードディスクの前に広く使われていたのがビデオテープだ。また、音楽はカセットテープに録音するのがスタンダードな時代もあった。ビデオテープやカセットテープなどの磁気テープは、20世紀を代表する技術のひとつ。「懐かしい」と感じる人も多いだろうが、実は現在も活用されている。その利用方法について吉川さんが語った。
吉川:今、意外な場所で懐かしの磁気テープが脚光を浴びています。たとえば、アメリカ・ノースカロライナにあるGoogleのデータセンター。ロボットが縦横無尽に動き回り、記録メディアを出し入れしてデータを保存、取り出していますが、そこで使われているのがあの磁気テープです。Googleやマイクロソフトといった世界のプラットフォーマーは、クラウドなどへデータをバックアップする必要があり、そこで磁気テープをデータの保存や活用のためにこぞって採用しているのです。ハードディスクドライブ、HDDよりもデータのアクセス速度は遅いのですが、一方でデータを50年以上保存できるうえ、消費電力が圧倒的に少なく、HDDと比べてCO2の排出量を最大95%削減できるなど数々のメリットがあります。実は、技術革新も止まっておらず、今後のさらなる大容量化のロードマップが示されており、プラットフォーマーからの信頼の裏付けとなっています。
別所:なるほど。磁気テープをGoogleなどがデータ保存に使い始めている。その背景にあることも見えてきましたね。省電力化。
「コールドデータ」の保存にうってつけ
磁気テープが脚光を浴びている背景には、世界で流通するデータ量の膨大な増加もあるようだ。吉川:AIやIoTの活用が進んだことにより、保存しておくべきデータ量はどんどん大幅に増えていく一方です。全世界で流通するデータ量は2015年に20ゼタバイト以下だったものが、2025年には175ゼタバイトと、約9倍になる試算もあります。1ゼタバイトとは1キロギガバイトのことで、175ゼタバイトを現在の平均的なインターネット通信速度でダウンロードしようとすると、なんと18億年もかかる計算になります。ただ、こうしたデータの7割近くが取り出した後も利用することが少ない、アクセス頻度の低いコールドデータだといわれています。磁気テープの売りは、長期にわたり保存が可能な安定性と、圧倒的な安さ。アクセス頻度の低いデータの単純な保存に使うにはうってつけというわけです。
別所:ゼタバイトの世界。たしかに使う頻度が少ないコールドデータの保存には、磁気テープが最適です。
フィルム製造技術が、磁気テープ作りに生きる
生活者にとっては20世紀の保存方法だった磁気テープだが、いまもその技術は進化を続けているようだ。吉川:磁気テープは1990年代にHDDが普及し始めて以来冬の時代が続き、大手各社の撤退が続きました。残ったのが日本の富士フイルムとSONYグループという状況です。残った2社のうちの1社である富士フイルムは、爆増するデータを活用するために磁気テープが必要になるときがいつか来ると、2000年頃から予想。データの大容量化を目指した技術革新に、研究と投資を続けてきたそうです。磁気テープは数マイクロメートルという食品用ラップの半分程度の薄さに、磁性層と、非磁性層を均一に塗布する必要があります。そこで生きたのが、富士フイルムが写真フィルム製造で培った、微粒子を薄く、均一に塗布する技術です。磁性体を高い密度で薄くなめらかに塗ることで、記憶容量をさらに高めることに成功しています。2021年9月には、手のひらサイズのカセット1巻に、最大容量45テラバイトを保存できる磁気テープを発売しました。HDDの最大容量は約20テラバイトですから、磁気テープはその2倍以上と画期的な数字です。
別所:こうやって聞いていると、20世紀を代表する技術である磁気テープが、いま21世紀のデータ時代を支えるための重要な役割を担いつつある。この技術革新に日本の企業も関わっているのは、ちょっと嬉しくもあります。その背景にある省電力化という大きなエコシステムとしての課題もしっかりと見据えての進化、期待していきましょう。
『J-WAVE TOKYO MORNING RADIO』のワンコーナー「MORNING VISION」では、世界の気になるニュースにフォーカス。放送は月曜~木曜の7時40分頃から。お楽しみに!
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