今の大学生は、ラジオをどう愛している? 「人生を変えた出会い」を綴る

「若者のラジオ離れ」と言われて久しい今も、熱心な若いリスナーはいる。音楽、映画などエンターテインメントのアクセスが容易になったこの時代に、彼らはなぜラジオを愛するのだろうか?

そこで、J-WAVEの大学生・専門学生コミュニティ「J-WAVE WACODES」がラジオの思い出を語る連載「わたしとラジオ」をスタート。家族と車のなかで、災害時の情報源として、深夜にこっそり夜更かしして……それぞれのラジオとの思い出から、世代を問わないラジオの普遍的な価値を探る。

初回を担当するのは、大学3年生のモンブラン13世。「J-WAVEは私の人生を変えてくれた」と語る理由は?(J-WAVE NEWS編集部)

好きな作家も、バイト先も、ラジオがきっかけだった

中学三年の一学期が終わった頃、私はテニス部をやめました。なぜか? 日曜日に試合があるせいで、J-WAVEの魅力的なプログラムが聴けなかったからです。

部活を辞めた私は、思う存分読書に時間を捧げることができるようになりました。特にハマったのが浅田次郎で、これまで80冊以上は読んだと思います。そのきっかけは、J-WAVEで彼の短編小説を朗読する番組を聴いたことでした。

大学に入り、私は本好きが高じてとある本屋でアルバイトをするようになりました。そこは、杏さんと大倉眞一郎さんの番組『BOOK BAR』(2019年まで放送)を通じて知った本屋です。

ここまで言えば、「J-WAVEは私の人生を変えてくれた」なんて大仰な台詞も少しは説得力を持つかもしれません。そう、J-WAVEは確かに私の人生を変えたのです。

聴き始めたのは偶然だった

歴史制度分析の概念で、「決定的分岐」と「経路依存性」というものがあります。歴史の歩みを列車が線路を走る様子に例え、線路が交差するところでポイント一つをちょこっと動かすことが「決定的分岐」、切り替わった線路の上を走り続けるのが「経路依存性」です。そのポイントがいつ、何によって動くのかは実際の列車と違って、時に必然的に、時に偶然によって決まります。歴史は常に合理的に変化するわけではないことを示す概念ですが、私の人生の路線が切り替わったのも偶然によってでした。

中学二年生に進級した時、英語教師にNHKラジオの「基礎英語」を聴くように言われました。素直にラジオが受信できるICレコーダーを買ってダイアルをくるくる回していたところ、車の中でよく聴くフレーズを耳にしたのです。手元の画面に表示されていた周波数は81.3。その時、私が乗る列車の行き先は静かに、しかし大きく変更されたわけですが、13歳の私はそれを知る由もありませんし、当時の英語教師も、まさか「基礎英語」を聴くよう指示して生徒が部活をやめるとは思わなかったでしょう。その因果関係の不可解さたるや、「風が吹けば桶屋が儲かる」、「北京で蝶が羽ばたくとニューヨークで嵐が起きる」と並べても遜色ないと自負しています。

J-WAVEで列車といえば、毎年クリスマスイヴの深夜に放送される『沢木耕太郎〜ミッドナイト・エクスプレス 天涯へ〜』でしょう。12月になるとこの番組の宣伝が流れ始めるのですが、これを聴くと一年という時間が流れたことをしみじみと感じることができる、自分にとって特別な番組です。以前は午前3時の番組終了後に妹のクリスマスプレゼントをそっと部屋に置くという「崇高な」お役目がありましたが、今では高校生になり、もうその必要もありません。

話が「脱線」してしまいました。私が乗る列車はその後、いくつかのポイントで路線変更しながらも無邪気に走り続けています。J-WAVEに出会わなかった方の線路は遥か彼方に消えてしまいました。その線路がどこに延びているのか、時々気になることもありますが、それは知らないまま想像を膨らませるだけの方が愉しいのかもしれません。何かの拍子にまた線路のポイントが切り替わることを期待しつつ、私は今日もJ-WAVEに耳を傾けます。

モンブラン13世 プロフィール

本と音楽とカフェと野球を愛する。本は読むより選ぶ方が好きなタイプで当然積読に悩まされるが、ある時「積読ではない、小さな本屋を作っているのだ」というツイートを見てコペルニクス的転回が生じ、以来嬉々として本を積み上げている。

J-WAVE WACODES

大学生・専門学生コミュニティ「J-WAVE WACODES」は、J-WAVEの主催する各種イベントに参加、特別番組の企画、番組と連動したアンケート調査など、さまざまな活動を行っています。詳しい活動は下記からチェック!
ホームページ:https://www.j-wave.co.jp/special/wacodes/
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