ユニゾン・田淵智也がアニソンの魅力を解説! 楽曲を作る上で大切な“89秒”とは?

J-WAVEで放送中の番組『SONAR MUSIC』(ナビゲーター:あっこゴリラ)。番組では、毎回ゲストを迎え、様々なテーマを掘り下げていく。

2月22日(月)のオンエアでは、UNISON SQUARE GARDENの田淵智也とシンガーソングライターの草野華余子がゲストに登場。「アニソンヒットの秘訣! 89秒とその向こう側! 」をテーマにお届けした。

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アニソンを書くときに意識していることは、“聴き手の違い”

今回番組では、アニメソングを徹底解剖。昨年は『鬼滅の刃』旋風もあって、LiSAの『炎』がレコード大賞を受賞、チャート上位の曲もアニメタイアップなどが続々登場している今の音楽シーン。そのアニソンの魅力はもちろん、独特な制作方法や楽曲展開、89秒という限られた時間の中での表現方法などを紐解いていった。

ゲストには、UNISON SQUARE GARDENの田淵智也が登場。田淵はバンドのほとんどの楽曲の作詞作曲を行い、アニメソングのクリエイターとしても大活躍中。これまで数多くのアニメタイアップを手掛けており、『シュガーソングとビターステップ』はアニメ『血界戦線』のEDテーマとなっているなど、J-ROCKシーンのみならず、アニソンシーンでも大人気である。

あっこゴリラ:田淵さんとアニソンとの出会いは?
田淵:高校2年生くらいから単純にアニソンっていい曲が多いなと思って、無作為にかき集めて聴き続けていました。音楽のジャンルとして掘り出したのはその頃ですかね。
あっこゴリラ:記憶に残っている中で、初めて出会ったアニソンってどんな曲ですか?
田淵:幼少期に一番強く残っているのは、『ツヨシしっかりしなさい』のED『GOOD DAY I・N・G』。めちゃめちゃいい曲です!
あっこゴリラ:へえ~! 田淵さん的に、アニソンの魅力ってどんなところだと思いますか?
田淵:僕は単純にJ-POPよりもっとおもしろい感じのものがあるなって思って、音楽のジャンルとして聴いてたっていうのもありますけど、それとは別にアニメの絵やストーリーと一緒に毎週見てたら泣いちゃったみたいな、そういうアニメーションとの化学反応みたいなものがあって、そういうのは印象的なアニソンとして残ってますね。
あっこゴリラ:確かに同じ曲でも映像とかストーリーが乗っかってくることで別の響き方をしたりしますよね。田淵さんが、今までで衝撃を受けたアニソンを教えてください!
田淵:『ちっちゃな雪使いシュガー』というアニメのOPテーマで、『sugar baby love』という世界的に有名な曲のカバーです。

【石田燿子『Sugar Baby Love』を聴く】

あっこゴリラ:リスナーからも「懐かしい!私の青春」なんてメッセージもきてますが、めちゃめちゃいい曲ですね。
田淵:往年の名作ですね。
あっこゴリラ:そんな田淵さん自らがアニソンを作ることになったきっかけは?
田淵:レーベルからお話をいただいて、アニメ『TIGER&BUNNY』のオープニング曲『オリオンをなぞる』という曲を作ったのが最初になるかな。
あっこゴリラ:これは書き下ろしですよね?
田淵:はい。脚本を読ませていただいて。
あっこゴリラ:バンドの楽曲とアニソンを手掛ける上で、意識の違いとかありました?
田淵:今になって冷静に考えると、バンドにとってはバンドのお客さんが全てでそこに刺さればいいわけで、アニソンを書く場合はアニメを見てる人に刺さればいいので、そういう聴き手の違いみたいなものは作るときに書き分けてますね。
あっこゴリラ:なるほど~。
田淵:ただ僕みたいにバンドの人が書く場合は、それぞれの良い所を取らないと納得しないなって思っていて。だからそこのお互いの良い所を探るというのは書くときに意識しています。
あっこゴリラ:タイアップされてる方の話を聞くと、自分たちのスタイルは崩さずにその物語に自分たちのスタイルで寄り添うことをされているのかなって印象はありますね。
田淵:そうですね。やっぱりそれにもセンスが必要だと思っていて。別にバンドが格好つけすぎてもハマるわけじゃないし、監督さんとかのイメージに合ったジャストな曲を作らないといけないので、自分たちのスタイルを出したところでそのアニメに合ってなければ負けなんですよね。なので、作品を彩れるものっていうのを第一前提に思っています。

【UNISON SQUARE GARDEN『オリオンをなぞる』を聴く】

アニソンを作る上で大切な89秒とは?

ここからは、アニメソングには欠かせない「89秒」という数字について迫った。

あっこゴリラ:今回のテーマにもありますが、この「89秒」とは一体どういう意味があるんですか?
田淵:1話につき30分というアニメの放送枠の関係上、OP、EDテーマが流れる時間は大体どれも89秒という決まりがあるんです。
あっこゴリラ:そうなんだ~!
田淵:J-POPのワンコーラスって、大体90秒くらいの印象ないですか?
あっこゴリラ:あります!
田淵:多分その辺からこの89秒っていうのが来てるんじゃないなと思います。今は、どこも89秒でアレンジしたものを納品してくださいってルールがありますね。
あっこゴリラ:短くてもダメなんですもんね。
田淵:そうですね。でも僕は、ワンコーラス90秒ってイメージがあるので、89秒という縛りに関しては特に違和感や特別感は持ってないかな。
あっこゴリラ:他に、アニメのタイアップソングを作っていく際に気をつけていることってありますか?
田淵:あくまで音楽って作品にとっては添え物なので、アニメをちゃんと彩れているかどうかっていうのが必要最低条件にして最強条件でもあります。メロディーを聴いたときにアニメーションが活き活き動いている模様が浮かぶかどうか、作品にふさわしいかどうかが大事になってくるんじゃないかなと思います。何をとっても作品を彩れているかが大事なので、監督が思い描くイメージをしっかりリサーチして共有することが第一かもしれません。
あっこゴリラ:そんな田淵さんが唸ったアニメサイズのすごい楽曲ってありますか?
田淵:『涼宮ハルヒの憂鬱』というアニメのED『ハレ晴れユカイ』です。実はこの曲、ここまで話してきた89秒とう概念をそもそも否定する65秒のアニメサイズなんです。
あっこゴリラ:えっ!? そういうこともあるんですか?
田淵:実は89秒ルールって、そんなに厳密なルールではなくて、この曲は、元々制作側にその意図があって65秒でオーダーしたらしく、そういう作り手の熱意もあって、音楽もいい、さらにスタッフワークもいい、いろんなものが合わさって社会現象を生んだ歴史的転換点だったと思います。

【アニメ『涼宮ハルヒの憂鬱』EDテーマ『ハレ晴れユカイ』を聴く】

あっこゴリラ:最近はストリーミング時代と言われていますが、アニソンとストリーミングヒット曲の作り方で共通する部分ってあったりしますか?
田淵:それぞれの良さがあると思っていて、音楽の主流がストリーミングヒットという解釈でいいと思うので、それが程なくしてアニソンの新しい概念になってくるのかなと思います。Eveさんやずっと真夜中でいいのになど、ネットカルチャーから出てきた人がアニソンシーンにもっと流入してきてくれるならば、それがアニソンの新しいヒットの形になるのかなと思います。
あっこゴリラ:確かにネットカルチャー出の人とアニソンシーンって相性がよさそうな気がしますよね。
田淵:やっぱり動画カルチャーから上がってきた人たちが多いので、やっぱり映像ありきで楽曲を表現することにものすごく長けている人たちだと思います。
あっこゴリラ:確かに。では、アニメソングのクリエイターというものについてお聞きしたいんですが、田淵さんのようにバンドと両立していたり、職業作家だったり、今はどういう方が多いんですか?
田淵:今の若手は、自分名義のプロジェクトをやりたかったり、そもそも作家になる前にそちらを先に始めるというケースは前より増えている気がしています。
あっこゴリラ:なるほど~。アニソンのクリエイターになる条件や傾向ってありますか?
田淵:音楽に対する探究心や熱意など、純粋な気持ちがとにかくある人じゃないと遅かれ早かれ終わっていくと思います。ここ10年くらいのアニメカルチャーの隆盛に対する「憧れ」だけで入ってきた人は、あまり仕事が続いていかないかもしれませんね。まず個性が無いと継続的な仕事には繋がりづらいので、どの潮流から来ても音楽に個性があるというのは必要条件だと思います。
あっこゴリラ:今、アニソン界のメインストリームで活躍しているアニソンクリエイターは?
田淵:僕らの世代で若手の憧れとしてまず名前が挙がるのは、「モナカ」という音楽事務所にいる田中秀和くんだと思います。とにかく彼が作る曲には圧倒的な個性があります。それでいてアニメのタイアップの打席が回って来たときに革命的な楽曲を連続で書いていたので、その名前を出すだけで強い引きになるみたいな象徴的なクリエイターかなと思います。

【Wake Up, Girls!『恋?で愛?で暴君です』を聴く】

テレビサイズの「89秒」とフルサイズの違い

ここからは、近年のアニメソングの中でスマッシュヒットを記録したLiSAの『紅蓮華』を作曲した作曲家、シンガーソングライターの草野華余子も登場。

【LiSA『紅蓮華』を聴く】

あっこゴリラ:『紅蓮華』を作る際に意識したことは?
草野:この曲に関しては、LiSAちゃんやそのチームの方たちとディスカッションして作ったので、ある程度テンポ感とかキーとか構成に縛りがあって。その中で“縦横無尽に動き回る”っていうことはすごく意識しました。
あっこゴリラ:おお~!
草野:『鬼滅の刃』は和テイストなアニメなんですけど、私は元々和メロを書く人なので、どちらかと言うとよりビートを効かせて、洋楽的にするっていうことにこだわりました。
あっこゴリラ:田淵さんは、この『紅蓮華』の魅力って何だと思います?
田淵:めちゃヒットした後に解析するのなんか恥ずかしいな(笑)。この曲って、Aメロ、Bメロ、サビが全部分断してるんです。一回メロディーが終わるんです。でも、そのすべてが並んだときにしっかりしたメロディーがすべてに配置されているので、みんなが覚えやすい、歌いやすいっていう側面があるのかなって思います。
草野:確かに近年のアニソンにある8ビートでオケが突っ走るって感じでもなく、わりと洋楽的にナチュラルな感じの流れのオケが入ってて、それの上にメロディーを置くってなったときの場面の転換の感じとか、89秒のアニメの絵を想像しながらメロディーを書きましたね。そういう意味でセクションごとに緩急をつけるみたいな楽曲の作り方は、私けっこうするかもしれない。
あっこゴリラ:アニメのキャラクターが動くのを想像しながら曲を書くって、なんかすごい! メロディーはどうやってつけるんですか?
草野:一番多いのは、鼻歌で一本撮りかな。近年担当させていただいたアニメの曲は、主線は30分くらいで終わってますね。
あっこゴリラ:ええ~!? すごい!

【LiSA『DOCTOR』を聴く】

番組冒頭からアニソンのオンエアにおける尺「89秒」について話してきたが、アーティストや、作曲者からしたら「89秒」のテレビサイズで収まる以外の部分にもその息吹が込められているのではないだろうか。

田淵:やっぱりフルサイズでいい曲を作ろうっていう気持ちは変わらないので、「89秒」のテレビサイズでオッケーが出て、その先は特に作家の自由が利くところなので、作家にもよりますが、自分はそもそも音楽を作る楽しみが「自分が好きな曲を作る」ということなので、想いというよりかは自分の好みを詰められるということなのかもしれません。
あっこゴリラ:草野さんはどうですか?
草野:私も田淵さんと一緒で、作品を制作されている方に心からシンクロしたものを作りたいという思いはあるんですけど、最近は、アニメ制作サイドの意図の斜め上をいったなって思うものを作りたいとすごく意識しています。
あっこゴリラ:うんうん。
草野:あと、フルサイズの場合はコンサートとかでの実演を想定しているので、生でアーティストさんや声優さんが歌ったときに盛り上がる曲ような、ワンコーラスで出来なかったさらなる起伏とか、ジェットコースター感をみなさんに与えられるようにっていうのは心掛けています。
あっこゴリラ:私個人の印象では、アニソンのフル尺を聴いたときに意外な展開がめちゃめちゃ多いなって。
草野:あはははは。みんなワンコーラスで込められなかった自分のいい意味でのエゴとかは2番以降に入れがちなのかも(笑)。

【DIALOGUE+『あやふわアスタリスク』を聴く】

J-WAVE『SONAR MUSIC』は月~木の22:00-24:00にオンエア。
番組情報
SONAR MUSIC
月・火・水・木曜
22:00-24:00

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