「継続」する秘訣は? 燃え尽きてしまったら? 別所哲也に、藤原しおりが聞く

別所哲也と藤原しおりが「継続」をテーマに語り合った。

ふたりがトークしたのは、J-WAVEの番組『HITACHI BUTSURYU TOMOLAB. ~TOMORROW LABORATORY』。オンエアは6月12日(土)。

同番組はラジオを「ラボ」に見立て、藤原しおりがチーフとしてお届けする番組。「SDGs」「環境問題」などの社会問題を「私たちそれぞれの身近にある困りごと」にかみ砕き、未来を明るくするヒントを研究。知識やアイデア、行動力を持って人生を切り拓いてきた有識者をラボの仲間「フェロー」として迎えて、解決へのアクションへと結ぶ“ハブ”を目指す。

「ご機嫌」を保つことが継続の秘訣

別所は慶應義塾大学在学中から俳優のキャリアをスタート。ハリウッド映画の出演を経て、帰国後はトレンディドラマに出演。丸大食品「丸大ハム」のCMに約10年間出演して「ハムの人」としても話題に。

また、現在開催中のアカデミー賞公認、アジア最大級となる国際短編映画祭「ショートショート フィルムフェスティバル & アジア」を主宰。今年度で23回を数える。さらに、2006年10月から、およそ15年にわたってJ-WAVEの平日朝の声として『J-WAVE TOKYO MORNING RADIO』のナビゲーターを担当。40年間で5000食以上を食した「ナポリタン好き」としても知られている。

藤原:今夜のイシューは「継続」です。「サステナブル」「持続可能性」という言葉が最近メディアでよく取り上げられています。国や企業など大きな主語になっちゃうと、なかなかピンとこなかったりしますが、個人レベルで考えられないかなと思い、「サステナブル」「持続可能性」という言葉を紐解くと「継続」という言葉に置きかえられるんじゃないかと思いました。そこで、別所さんをゲストにお迎えしました。別所さんは長く続けられていることがたくさんあります。「ショートショート フィルムフェスティバル & アジア」を20年以上、J-WAVEのナビゲーターも通算20年ほど。まさに継続してらっしゃいますよね。

『超一流の強運力』(ポプラ社)の著者である安田 正は「地道な努力を続けるためのマインド、強運になるためのマインドは『自分をご機嫌に保つことが大切』」と語っている。「夢が大きくなるほどプロセスには困難があり、長い時間も必要になる。ご機嫌に取り組めるかどうかで、結果が出るまでのスピードや達成感がまったく異なる」という。

別所:わかる。
藤原:わかりますか。
別所:僕も最近、朝の番組で「ご機嫌は自分で作るもの」とよく言っているんですよ。ビックリした。
藤原:別所さんもやっぱりご機嫌を保たれているんですね。
別所:ようは同じなにかに接してやるにしても、気持ちよくポジティブに取り組むのと、なにかいろいろ言い訳をつけて難しくやろうとするのでは、全然楽しさが違う。朝の番組も、毎朝6時から9時の3時間、雨が降る日も冬の夜が明ける前も寒い日も暑い日も、こうやって六本木ヒルズに来るんですけれども、なにか出会いを楽しまないと、ご機嫌にやっていかないと、けっきょく周りもご機嫌じゃなくなっちゃう。自分の好きなように、ある意味やりたい放題(笑)。だから勝手に踊り出したら「踊る別所」が始まったり。あれも踊らされているんじゃなくて、勝手に踊っているんですよ。
藤原:踊らされていたら嫌ですもん、聴きたくないですよ(笑)。
別所:でしょ(笑)。勝手にやらせていただいていることがみんなにつながって。
藤原:自分を楽しませるものを、そのときどきで見つけているってことなんですかね?
別所:そうですね。何年経っても発見があるし、新しい出会いがあるじゃないですか。それがもう楽しくてしょうがないというか、ワクワクする。

映画祭20周年で感じた「燃え尽き症候群」

藤原が「本当につらいとき、どのように乗り越えているのか」と質問する。

別所:一番大きかったのは、僕が映画祭で20周年を迎えたときに「これが燃え尽き症候群だ」って初めて感じたこと。それまで毎年やっている映画祭も毎日やっているラジオも疑問を持つことがなかったんですけど、映画祭を20年やったときに、20年間という子どもでいったら成人するまでビジョンを持ってやってきて、スコーンとなにもなくなって。そのときはものすごく、正直……。初めて言いますけど、苦しくて。なにを目標にしてやったらいいのかわからなくなって、「なんのためなんだろう?」と思ったことがあったんです。けっきょくたどり着いたのは、そこに集う仲間や作品のすばらしさで、ひとつひとつこちらの心が動くこと、周りにある小さな喜びが大切なんだなと思いました。

別所は30代のときにも心が一度折れかけたことを告白。2本の連続ドラマを抱え、記憶があいまいになるほど多忙だった時期に「いま一番ときめいたり、ワクワクしたりすることはなんですか?」と質問され、それに答えられなかったことにショックを受けたそうだ。

そこで半年の休暇を得てアメリカへ行き、ショートフィルムに出会い、映画祭につながっていった。そんな経緯もあり、映画祭が20周年をむかえたときには睡眠不足にも悩まされたと別所はいう。

別所:まあもともと僕はショートスリーパーで、だいたい4時間半ぐらいしか寝ないんです。それでも1時間も寝ると起きちゃうぐらい。
藤原:もっとショートになっちゃったんですね。
別所:「ハイパーテンション」の状態になってしまって。それを落ち着けるのになにをしたのかというと、ゆっくり家の周りをお散歩するとか、身の回りにある足元を見るとか。さっき言ったような、小さな幸せというんですかね。今日着る服のほつれたところが愛おしいなと思ってみたり、自分や周りにあることをよく観察して、映画祭から遠ざかるわけではなくて、自分や周りをよく見るということをやったり、ちゃんと呼吸をするというのかな、深呼吸をしたりしていったら、自然と抜けられました。
藤原:それを聞けてよかったです。
別所:ほんと? あんまりこういうことを話さないからね。
藤原:ここは、そういうことを話すラボなんです。
別所:継続じゃなくていいの?
藤原:それも継続するためのヒントだと思います。

継続も変化していく

藤原は別所の話を聞き、寓話『うさぎとかめ』を例に出す。同物語では最後まで休まずにゴールを目指すかめが勝負に勝つ。しかし「かめがいいことのようにされているが、うさぎみたいにワーッと進んで、休んで、また進み始めてもいいのかなと思う」と藤原はいう。

別所は藤原の例をもとに、うさぎとかめにはそれぞれのスタイルがあり、どちらが良いとは言えないのではないかとコメントする。また「継続すること」自体がいいとも限らない、必ずしも同じ状態が続くことが「継続」ではないと、みずからの経験をもとに語った。

別所:きっと持続可能な継続できることって、よく見ると風合いというか肌触りとか、考え方とかやっていることはちょっとずつ変化していると思うから。「こうじゃなきゃいけない」って頑なに長く続くことって、実は本当はあまりないんじゃないかなって。僕がやっている映画祭も朝のラジオも、たとえば足かけ10年やった帝国劇場の舞台『レ・ミゼラブル』も、変化していないようでいろいろな変化があるし、僕自身も主人公ジャン・バルジャンをやっているときは、まだ結婚していないときから結婚して子どもが生まれて、人生もどんどん変化しているなかで、その役柄を10年近くやらせていただいていたから。観てくれるお客さまも変化しているし。だから変化と一緒に継続はあるから「絶対これだ」というものがずっと続いているように見えるけど、そうじゃないんじゃないかなっていう。
藤原:そういう意味では毎回プツプツ切れているかもしれないですよね。小さいものが連続していて、大きく見たらつながっている。でも毎回終わっているのかもしれないですよね。
別所:なんか哲学者みたい。
藤原:あはは(笑)。
別所:どんなものも因数分解したり分子レベルで見たりしたら、つながっているように見えたけど「点と点だったんだ」みたいな。ちゃんと接着剤としてつながるものがあったんだ、みたいになることがあるから、継続ってすごく深いね。

「ショートショート フィルムフェスティバル & アジア」は6月21日(※オンライン会場の一部は6月30日(水))まで開催中。詳細はこちら

J-WAVE『HITACHI BUTSURYU TOMOLAB. ~TOMORROW LABORATORY』は毎週土曜20時から20時54分にオンエア。
radikoで聴く
2021年6月19日28時59分まで

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番組情報
HITACHI BUTSURYU TOMOLAB.〜TOMORROW LABORATORY
毎週土曜
20:00-20:54

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