ここ数年、俳優の中川大志がオモシロい。主演映画『FUNNY BUNNY』(4月29日公開)では、ユーモアとペーソスを行き来する自称小説家・剣持聡のトリッキーさを体現。持ち前の端正なルックスとは裏腹のコメディリリーフぶりが遺憾なく発揮された役どころといえる。シリアスな演技に定評がある一方で、コント番組への出演やユーモアを求められるキャラクターを演じることも増えた。しかし10代の頃は“イケメン”的役割の洗礼を受けて、思い悩むこともあったという。「なぜ芝居を見てくれないの?」。そんな葛藤とジレンマを克服して辿り着いた今。オモシロい人には、それなりの理由がある。
中川:僕は根本的にお笑い好きです。でも10代の頃は二枚目の役が多くて、そればかりという時期もありました。いろいろな先輩方が通ってきた道ですし、“カッコいい”演技には技術も必要で、カッコ良くあるということがどれだけ難しいのかというのも自分でやってみて理解しています。ただそのような作品やキャラクターばかりが重なったときに「これ以外だって自分はできるんだ!」という気持ちがすごくあって……。というのもキラキラ系の作品ではやはり“カッコ良さ”が求められがちで、いただく感想や評価も「カッコ良かった」「キュンキュンした」という見た目に関するものが大半を占めていました。ありがたいと恐縮しつつも「なぜ芝居を見てくれないの?」というジレンマもありました。
──そのジレンマは解消されましたか?
中川:事務所やマネジャーさんにも、三枚目やコメディにも挑戦したいということを自分から伝えて、そこからちょこちょことコミカルなCMやコント番組への出演が増えました。それを見てくれたクリエイターの方々が「あれ?実はそういうの好きなんだ!?」と気づいてくれて、ちょっとずつ与えられるキャラクターの幅も広がっていきました。
──ということは、もうキラキラ系卒業宣言ですか!?
中川:それはまったくありません! 年齢を重ねることでできなくなる役というものもあり、それこそキラキラ恋愛ものだったり、青春学園ものだったりするので、お話をいただけるうちは全力でキラキラさせていただきます! やりたくても年齢の問題などで要求されない時代が必ず来るわけですから。
──飯塚健監督とはこれで何度目の顔合わせでしょうか?
中川:飯塚監督とご一緒するのはカメオ出演を含めると今作で6回目です。これまでに一番ご一緒している監督です。僕としては純粋に監督の作品が好きなだけですが、どうしてこんなに呼んでくれるんでしょうか(笑)? 飯塚監督の現場は本当に楽しくて、僕の脳みそではたどり着けないような発想があります。脚本もそうだし、編集や仕上げの部分もそう。マジックを毎回感じさせてくれるので、作品に参加するたびに新鮮な驚きがあります。
【関連記事】中川大志「どこまで行っているのだろうか」 息もできない過酷な撮影を振り返る
──しかも今回は飯塚監督から原作小説を数年前に渡されていたという……。
中川:そのときはまさか映像化するとは思っておらず、作品の世界観やロジック、時間軸が面白くて、純粋に一読者として楽しんでいました。それから数年の間に飯塚監督とお仕事をする中で「いつか映像化したい」という思いを聞いていて、このように主演として参加させていただくことができました。小説をもらったときはまさか自分が演じるとは思わずに読んでいたので、自分の中での剣持聡像というのが頭の中にできあがっていました。演じる上では自分自身が想像したものプラス、飯塚監督が思い浮かべる剣持聡を演じなければいけないわけですから、結構なプレッシャーがありました。
──初共演の岡山天音さんとのラリーはまるで漫才のようでした。中川さんのお笑いイズムが活かされていると感じます。
中川:すごく楽しかったです!飯塚組の特徴は会話劇で、さらにテンポ感も求められます。セリフのピッチも重要で、東京03・角田晃広さんと天音君と僕との3人のシーンではセリフ合わせの練習を事前にしました。でも本番当日に飯塚監督がアドリブで脚本にないセリフや展開を入れてくるので、かなりフレキシブル。角田さんが僕に顔を接近させて来る場面は笑ったら負けです。角田さんのことは大好きですが、「笑うものか!」と無で対峙しました(笑)。
中川:『家政婦のミタ』がなければ僕はどうなっていただろうか? と想像がつかないほどに、あの作品から明らかに状況は変わっていきました。人生の中で一番忙しかったのではないかと思います。当時は中学2年生で茨城県に住んでいましたから、仕事のたびに上京したりして。学業の両立もしっかりとやっていたので、自分でもよくやっていたなあと思います。当時の僕を褒めてあげたいくらいです(笑)。
──現在も十分に多忙だと思いますが……。
中川:今も多忙なときはあります。でも休めるときは休みたいという気持ちに変化しています。というのも、作品から作品へと切り替わる時間、準備の時間は俳優をやる上でとても重要なものだと感じているからです。ペース配分が大切であるということがわかってきたので、そこが目まぐるしくなってしまうと、どうしたって流れ作業のようになってしまう。自分の脳の容量的にもそこまで空きがある方ではないので、なるべく掛け持ちをしないように一つ一つの仕事を大切にしています。
──どのような時間が中川さんのリラックスタイムですか?
中川:僕のリラックスタイムは、釣りですね。もともとがアウトドア好き。撮影現場にいるときはずっと室内だったり、沢山の人に囲まれているわけですから、休みの日は外に出たり、自然に触れたいと思うことが多いです。釣りをしているときは、仕事のことは一切考えずに、釣り糸の先にある針に全集中(笑)。ものすごく集中するので、あっという間に一日が終わってしまいます。その「考えない」という時間と、趣味に没頭している瞬間は僕にとってはとても貴重なリラックスタイムです。
映画『FUNNY BUNNY』は、映画館とauスマートパスプレミアムで同時ロードショー。詳細は公式サイトまで。
(文・写真=石井隼人)
■作品情報
タイトル:FUNNY BUNNY
・公開日:
4/29(木・祝)より、映画館&auスマートパスプレミアムにて同時ロードショー
・配給:「FUNNY BUNNY」製作委員会
(C)2021「FUNNY BUNNY」製作委員会
・出演
中川大志 岡山天音 / 関めぐみ 森田想 レイニ ゆうたろう
田中俊介 佐野弘樹 山中聡 落合モトキ / 角田晃広 菅原大吉
・スタッフ
監督・脚本・編集:飯塚健 製作総指揮:森田圭 エグゼクティブプロデューサー:多田一国 大野高宏
プロデューサー:金山 宇田川寧 吉田憲一 共同プロデューサー:田口雄介
音楽:海田庄吾 撮影:小松高志
2021年/日本/103分/カラー/ビスタ/5.1ch/ https://funnybunny-movie.jp
原作:舞台「FUNNY BUNNY -鳥獣と寂寞の空-」(演出・脚本 飯塚健 /青山円形劇場、 2012)、小説「FUNNY BUNNY」(飯塚健/朝日新聞出版)
製作:KDDI 制作プロダクション:ダブ 配給:「FUNNY BUNNY」製作委員会(C)2021「FUNNY BUNNY」製作委員会
10代の頃に感じていたジレンマ
──中川さんは今作でのトリッキーな役やボケ的役回りのキャラクターが非常にお上手です。しかし10代の頃は、いわゆる“イケメン”系統の役が多かったですよね?中川:僕は根本的にお笑い好きです。でも10代の頃は二枚目の役が多くて、そればかりという時期もありました。いろいろな先輩方が通ってきた道ですし、“カッコいい”演技には技術も必要で、カッコ良くあるということがどれだけ難しいのかというのも自分でやってみて理解しています。ただそのような作品やキャラクターばかりが重なったときに「これ以外だって自分はできるんだ!」という気持ちがすごくあって……。というのもキラキラ系の作品ではやはり“カッコ良さ”が求められがちで、いただく感想や評価も「カッコ良かった」「キュンキュンした」という見た目に関するものが大半を占めていました。ありがたいと恐縮しつつも「なぜ芝居を見てくれないの?」というジレンマもありました。
──そのジレンマは解消されましたか?
中川:事務所やマネジャーさんにも、三枚目やコメディにも挑戦したいということを自分から伝えて、そこからちょこちょことコミカルなCMやコント番組への出演が増えました。それを見てくれたクリエイターの方々が「あれ?実はそういうの好きなんだ!?」と気づいてくれて、ちょっとずつ与えられるキャラクターの幅も広がっていきました。
──ということは、もうキラキラ系卒業宣言ですか!?
中川:それはまったくありません! 年齢を重ねることでできなくなる役というものもあり、それこそキラキラ恋愛ものだったり、青春学園ものだったりするので、お話をいただけるうちは全力でキラキラさせていただきます! やりたくても年齢の問題などで要求されない時代が必ず来るわけですから。
読者として楽しんでいた作品の映像化で主演
【本予告】映画『FUNNY BUNNY(ファニーバニー)』(60秒)
中川:飯塚監督とご一緒するのはカメオ出演を含めると今作で6回目です。これまでに一番ご一緒している監督です。僕としては純粋に監督の作品が好きなだけですが、どうしてこんなに呼んでくれるんでしょうか(笑)? 飯塚監督の現場は本当に楽しくて、僕の脳みそではたどり着けないような発想があります。脚本もそうだし、編集や仕上げの部分もそう。マジックを毎回感じさせてくれるので、作品に参加するたびに新鮮な驚きがあります。
【関連記事】中川大志「どこまで行っているのだろうか」 息もできない過酷な撮影を振り返る
(C)2021「FUNNY BUNNY」製作委員会
中川:そのときはまさか映像化するとは思っておらず、作品の世界観やロジック、時間軸が面白くて、純粋に一読者として楽しんでいました。それから数年の間に飯塚監督とお仕事をする中で「いつか映像化したい」という思いを聞いていて、このように主演として参加させていただくことができました。小説をもらったときはまさか自分が演じるとは思わずに読んでいたので、自分の中での剣持聡像というのが頭の中にできあがっていました。演じる上では自分自身が想像したものプラス、飯塚監督が思い浮かべる剣持聡を演じなければいけないわけですから、結構なプレッシャーがありました。
(C)2021「FUNNY BUNNY」製作委員会
中川:すごく楽しかったです!飯塚組の特徴は会話劇で、さらにテンポ感も求められます。セリフのピッチも重要で、東京03・角田晃広さんと天音君と僕との3人のシーンではセリフ合わせの練習を事前にしました。でも本番当日に飯塚監督がアドリブで脚本にないセリフや展開を入れてくるので、かなりフレキシブル。角田さんが僕に顔を接近させて来る場面は笑ったら負けです。角田さんのことは大好きですが、「笑うものか!」と無で対峙しました(笑)。
『家政婦のミタ』撮影当時は「人生の中で一番忙しかったのではないか」
──中川さんの知名度を高めた連続ドラマ『家政婦のミタ』放送から10年が経ちます。当時はどのような変化がありましたか?中川:『家政婦のミタ』がなければ僕はどうなっていただろうか? と想像がつかないほどに、あの作品から明らかに状況は変わっていきました。人生の中で一番忙しかったのではないかと思います。当時は中学2年生で茨城県に住んでいましたから、仕事のたびに上京したりして。学業の両立もしっかりとやっていたので、自分でもよくやっていたなあと思います。当時の僕を褒めてあげたいくらいです(笑)。
──現在も十分に多忙だと思いますが……。
中川:今も多忙なときはあります。でも休めるときは休みたいという気持ちに変化しています。というのも、作品から作品へと切り替わる時間、準備の時間は俳優をやる上でとても重要なものだと感じているからです。ペース配分が大切であるということがわかってきたので、そこが目まぐるしくなってしまうと、どうしたって流れ作業のようになってしまう。自分の脳の容量的にもそこまで空きがある方ではないので、なるべく掛け持ちをしないように一つ一つの仕事を大切にしています。
中川:僕のリラックスタイムは、釣りですね。もともとがアウトドア好き。撮影現場にいるときはずっと室内だったり、沢山の人に囲まれているわけですから、休みの日は外に出たり、自然に触れたいと思うことが多いです。釣りをしているときは、仕事のことは一切考えずに、釣り糸の先にある針に全集中(笑)。ものすごく集中するので、あっという間に一日が終わってしまいます。その「考えない」という時間と、趣味に没頭している瞬間は僕にとってはとても貴重なリラックスタイムです。
映画『FUNNY BUNNY』は、映画館とauスマートパスプレミアムで同時ロードショー。詳細は公式サイトまで。
(文・写真=石井隼人)
■作品情報
タイトル:FUNNY BUNNY
・公開日:
4/29(木・祝)より、映画館&auスマートパスプレミアムにて同時ロードショー
・配給:「FUNNY BUNNY」製作委員会
(C)2021「FUNNY BUNNY」製作委員会
・出演
中川大志 岡山天音 / 関めぐみ 森田想 レイニ ゆうたろう
田中俊介 佐野弘樹 山中聡 落合モトキ / 角田晃広 菅原大吉
・スタッフ
監督・脚本・編集:飯塚健 製作総指揮:森田圭 エグゼクティブプロデューサー:多田一国 大野高宏
プロデューサー:金山 宇田川寧 吉田憲一 共同プロデューサー:田口雄介
音楽:海田庄吾 撮影:小松高志
2021年/日本/103分/カラー/ビスタ/5.1ch/ https://funnybunny-movie.jp
原作:舞台「FUNNY BUNNY -鳥獣と寂寞の空-」(演出・脚本 飯塚健 /青山円形劇場、 2012)、小説「FUNNY BUNNY」(飯塚健/朝日新聞出版)
製作:KDDI 制作プロダクション:ダブ 配給:「FUNNY BUNNY」製作委員会(C)2021「FUNNY BUNNY」製作委員会