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「3密」という言葉が持つ日本語のよさとは? 『現代用語の基礎知識』の編集長が語る

「3密」という言葉が持つ日本語のよさとは? 『現代用語の基礎知識』の編集長が語る

言葉から社会を切り取る『現代用語の基礎知識』。膨大に生まれる言葉のリサーチ方法などを、同書の編集長・大塚陽子さんが語った。

大塚さんが登場したのは、J-WAVEで放送中の番組『INNOVATION WORLD』(ナビゲーター:川田十夢)のワンコーナー「DNP GLOBAL OPEN INNOVATION」。12月18日(金)のオンエア。

『現代用語の基礎知識』今年はコロナ関連が多かった

大塚さんは2008年版の『現代用語の基礎知識』の編集にたずさわり、現在は編集長に。新語・流行語大賞の審査員も担当している。同書に今年掲載された言葉の傾向とは?

川田:創刊が1948年なんですね。
大塚:70数年経ってますので、かなりの歴史になったかなと思います。
川田:当時から各ジャンルの専門家が選んでいたんですか?
大塚:基本的に原稿を書いていただく、言葉の解説をしていただくのは各ジャンルの専門の先生方にずっとお願いをして書いてもらっていますので、「なんの言葉を載せるか」というところも、執筆の先生方と相談をしながら決めていきます。
川田:『現代用語の基礎知識』に今年、収録された言葉をバーッと見てみたんです。ほとんどコロナの影響下の言葉だらけじゃないですか。
大塚:この1年はコロナに振り回されてしまった年だと思います。新しい言葉は毎日毎日生まれていましたし、直接コロナ関連の解説用語ではなくても、どのジャンルにもコロナウイルス感染症の話が出てくるような本の中身になり「今年の記録」といった形になりました。
川田:だってなにをするにしても、持続化給付金にしてもオンライン診療にせよ、Go To キャンペーンも全部影響下ですもんね。
大塚:そうですよね。
川田:今年は医療関係の方の意見を訊いたりもされたんですか?
大塚:巻頭で新型コロナウイルスのおさらいする特集ページも作りました。そこはみなさん専門の先生方に書いていただきましたし、なかの医学のページについても医学専門の方に書いていただいています。
川田:これを読んでいると、改めて今年は特別な年だったなと思いますよね。
大塚:本当に。誰もが体験をしたことがないような年になったなと、しみじみ思います。
川田:例年、やくみつるさんの漫画はどちらかというとブラックジョーク的に受け止めてましたけど。今年はなんか、ちょっとほっこりします。
大塚:「今年はこれしかないだろう」というところですね。

言葉の流行は昔よりも入れかわる

新しい現代用語は、日々どのようにリサーチしているのか。

大塚:基本的には昔から変わらずに、新聞や雑誌ですね。最近はネットの力もありますので、ネットやSNSで使われている新しい言葉を日々拾い資料にして先生方に相談するという段取りです。
川田:最近はネットから頻出用語は洗い出しやすいですが、ネットがなかったときは逆にどうしていたんだろう?と思います。
大塚:新聞と雑誌と日々、図書館に行っていろいろと調べていたと、歴代の編集長から聞きました。
川田:選考委員の方が複数いらっしゃいますが、そういう方々から持ち込まれる言葉もあるんですか?
大塚:もちろんございます。

大塚さんが審査員を務めた『2020 ユーキャン新語・流行語大賞』には、大ヒット漫画『鬼滅の刃』や、Netflixで公開されて世界で人気となった韓国ドラマ『愛の不時着』などがノミネートされた。

川田:「まぁねぇ~」も入ってましたが、これはぼる塾の持ちネタですか?
大塚:ぼる塾です。
川田:これは田辺(智加)に伝えたんですか?
大塚:直接はお伝えしていませんが、ノミネート語を発表したときに恐らく。
川田:受賞コメントとして「まぁね~」って言ってほしいですけどね(笑)。お笑いの言葉がひとつでも入っているとなごみますね。
大塚:言葉の賞でちょっと面白がっていただきたいという部分もあります。暗い気持ちになるよりもハッピーになりたいというか。

ここで川田は、大塚さんが編集長を続けるなかで感じていることは何か? と質問を投げかけた。

大塚:ネットの影響もあって、流行のスピードがものすごく早くなっています。それと人権的な話について強く意識をしていかないといけない時代になっているなと感じています。昭和的な笑って許されていたような時代はもう終わっているわけで、変わっていかなければいけない、意識をしていかなければいけないと思っています。
川田:言葉に対する“当たり”も強くなりましたよね。
大塚:そう思います。
川田:言葉尻だとか主語の話もそうですし。
大塚:ネットでついポロッと書いてしまい、炎上をしてしまうということが増えました。

流行語大賞は、言語学者・金田一秀穂の一言で決まった

続いて今年の流行語大賞に輝いた「3密」について、受賞に至るまでの過程を大塚さんが解説をした。

川田:今年もいろいろな言葉が出ましたが、選定はスムーズだったんでしょうか。
大塚:今年は全部のノミネート語やトップ10がコロナ関連でもおかしくないような年で。選考会があるんですが、なかなか難航しました。
川田:たくさんのコロナ関係ワードがあるなかで「3密」になったのはなぜでしょうか。
大塚:選考委員のなかに言語学者の金田一秀穂先生がいらっしゃるんですが、「日本語のよさが出た表現だったんじゃないか」とおっしゃっていたんです。昔で言うところの結婚の条件の「3高」だとか、大変な肉体労働を表す「3K」というように、いくつかある大事なことをまとめて表現するのが日本語は得意なんだ、というようなことをおっしゃっていて「なるほどな」と思って。選考会でもみなさんそこで納得をして、満場一致という形でした。
川田:今年の大賞が「3密」なのは確かにと納得しました。選考委員じゃない多くの人もこの時期は評論家みたいになっちゃいますが、「3密」はしっくりきました。受賞者にトロフィーとかあげるんでしたっけ?
大塚:盾をお渡ししています。
川田:「3密」の場合は都知事ですか?
大塚:都知事に受賞していただきました。
川田:毎回誰にあげるのかというのは難しいですよね。
大塚:一番悩ましくて大変なところです。
川田:今年も終わりですが、来年のこととかも考えていたりするんですか?
大塚:毎年本ができた段階でもう、次の本を「さあどうするか」と考え始めるのが決まりというか習慣なので、日々の新語探し「言葉を観察する」というのを進めています。
川田:大変な仕事だと思います。こうやって本も合わせて言葉で一年を振り返るとまた違いますからね。
大塚:それを楽しんでいただけるとうれしいと思います。

『INNOVATION WORLD』のワンコーナー「DNP GLOBAL OPEN INNOVATION」は、各分野のエキスパートを招き業界トレンドをお届けする。放送は毎週金曜の21時15分頃から。

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