J-WAVEで放送中の番組『ROPPONGI PASSION PIT』(ナビゲーター:DEAN FUJIOKA/三原勇希)。各界で活躍する情熱を持ったゲストを迎えて、「好き」や「情熱」をテーマにトークを展開。
9月26日(土)のオンエアでは、チームラボ代表の猪子寿之が登場。チームラボの作品展開の意図や、新作の解説、今後の目標について語った。
先日、DEANは猪子と一緒に九州へ出かけたという。
DEAN:仕事の徹夜明けに羽田空港で飛行機に乗って福岡県に行き、そのあと佐賀県に行って、(猪子さんから)いろんな情報を入れていただきました。最後、夜中12時からサウナに行きましたよね。あのときまで、どちらかというと嫌いなくらいサウナに全く興味がなかったんですけど、初めて“整う"体験をしたんです。東京に戻ってから我慢できなくなって、一人でサウナに行ってしまいましたね(笑)。
猪子:我慢できなくなりますよね。あそこのサウナが一番いいですよね。
DEAN:最近、サウナーの人たちと話すと、僕が整った初体験がトップオブトップの環境だったし、そのあともルーフトップのサウナとか、すごくいいサウナ体験をしていたから「サウナーとしての育ちが良すぎる」って言われました(笑)。
猪子:サイエンスがなかった時代は、世界があまり見えていなかったんです。でも今はサイエンスによって、世界がずいぶん見えるようになりました。一方、アートは世界の見え方を変えてきた。子どもの頃はサイエンスに興味を持っていたけど、大人になるにつれサイエンスとアート、どちらも楽しいと思いはじめて、世界そのものをより見えるようにするよりも、世界の見え方を変えるほうが面白いと思って、よりアートに興味が出てきました。
チームラボのターニングポイントは、現代美術家の村上 隆がオフィスに遊びに来たこと。村上はチームラボの作品を見て、国際的に発表することを提案。2011年に台北にある村上のギャラリーで展示を開催し、それがチームラボのアートデビューとなった。
その後、香港やシンガポールでも作品を発表。ニューヨークのギャラリーとの契約も決まり、2015年に東京で作品を発表。DEANは日本での発表の方法に驚いたという。
猪子:普通、アート作品を作ると、美術館に呼んでもらって展示をしたり、ギャラリーと契約してそこを通して作品を売ったりするんですけど、自分たちは自らミュージアムを作って、自分たちが好きなように作品を置いて、自分たちでチケットを売って、そのチケットの収入で成り立たせることを始めました。
DEAN:つまり自らプラットフォームを作って、コンテンツを作ったわけですよね。
猪子:まさにそうなんです。プラットフォームを作ったほうがいいなと思ったんです。
DEAN:そこが本当にすごい。
猪子は「枠組みの中で評価されることが目的になるのが嫌だった」と自らプラットフォームを作った理由を語る。
猪子:枠組みの中にいると、その中で使われるだけですよね。例えば一時的に評価がなくなったり、批判されたりしても、自分で自分が生きる枠組みを作ったほうが、自分の一番いい生き方ができると思ったんです。なかなか日本の人ってそういう考えにならなくて、枠組みの中の今の価値基準でいいものを目指してしまい、今の価値基準からはみ出るものを異物として排除してしまうんです。でも、海外だとみんな自らグローバルのプラットフォームを作っている。アップルだって音楽のプラットフォームを作っているし、Netflixもディズニーも自分のプラットフォームを作っていますよね。そうやって自分でプラットフォームまで作ったほうが、自分自身がより生きやすくなると思っています。
DEAN:届けたい人へダイレクトに伝わりますよね。プラットフォームに乗っかると、何かしらショーレースみたいになってしまいますからね。
猪子:自ら場所を作り、その場所に作品を置いてチケットを売ることは、日本の歴史上でも珍しい試みだったと思います。その影響から、世界中でその動きが広がっていると感じています。
このミュージアムの象徴的な作品となる、真っ白い塊が空中に浮き続ける「雲」をテーマとした作品を制作。今年の年末に発表する予定だという。
新型コロナウイルスの影響を受けながらも、マカオでこの作品を制作した猪子は、ウイルスを例えにこの作品を解説した。
猪子:今の生物学の定義では、ウイルスって生命か生命じゃないかわからないんですよね。生物学上では、例えば自分で子どもを作れるとか、細胞膜があるとか、そういうものを生命の定義にしています。この作品はそれには全て当てはまらないので、生物ではないことになります。でも、どう見ても、机とか物と比べると生命がないものとは思えない。もっと言うと、生命とそうでないものの境界って引けなくて、連続しているということが今の考え方なんです。ウイルスを筆頭に、生物学上から生命を考えていたからわけがわからなくなってしまっていたけど、物理から見ると、専門的なことを全て飛ばして、「生命とはエネルギーの秩序」だと考えています。
「宇宙は秩序がなくなる方向に必ず向かうが、生命だけは秩序を維持する不思議な存在だ」と猪子は続ける。
猪子:例えば、死んだら腐っていくから秩序のない方向に向かって生命ではなくなるけど、生きている限り腐らないですよね。
DEAN:治癒する方向に向かいますからね。
猪子:本来は腐ってぐちゃぐちゃになっていくのに、生命だけは秩序を維持する。その「生命とはエネルギーの秩序」を作品として作りました。最初は泡の海みたいになっているけど、秩序を作った瞬間に塊がボコッと浮き上がって空中にとどまるんです。
DEAN:意思を持つかのように。
猪子:そう。宇宙の原理に反するように浮く作品です。
DEAN:めちゃくちゃおもしろい!
猪子は、雲のような塊が浮かんでは消えるこの作品を見ていると、この世とあの世にいるような錯覚に陥ると同時に、安心感を覚えると言う。
猪子:制作当時、僕は新型コロナが怖すぎて「マカオにも新型コロナが来ているんじゃないか」と死への恐怖を抱きました。でも、この作品の中にいると「もしかしたら死後の世界ってこんな感じなのかな」って思ったんです。死後の世界があると思えると、人って死への恐怖が少しやわらぐんです。
DEAN:信仰の原理ですね。
猪子:まさにそう。その時に宗教の役割って死後の世界を描くことなんだなと気づきました。それによって、死への恐怖がやわらぐんだと。1300年前に初めて奈良に都ができたとき、大陸から文明と共に疫病も入ってきて、日本で初めて病が流行るんです。多くの人が亡くなり、それで奈良の大仏を作ったと言われています。この大仏を作ることで、仏教が考える死後の世界、もしくは生と死が輪廻していくという教えを知ることで、人々が少しでも安心感を持ったのだと思います。大仏のように、今から1000年後に、「新型コロナが来て怖すぎて、1000年前の人がこの白い塊を作ったらしいよ」と言われたらいいなと思っています(笑)。
猪子:サウナとアートの(ミュージアム)を考えています。サウナで整っあとに、アートを見るみたいなことを、期間限定でやれたらいいなと思います。 DEAN:期間限定といわず、常設としてやってほしい。
三原:サウナで整ってからアートを見ると、感じ方って変わるんですかね。
猪子:この前、DEANさんとサウナで整った環境は、森と歴史と一体化したような感覚だったので、それって素敵な体験になると思っています。
この番組では毎回ゲストに、自分が思う「情熱」とはなにかを訊く。猪子は「美しい」と答えた。
猪子:情熱こそが生きることそのもののような気がするし、生きることそのものがやっぱり美しいと思います。情熱そのものが美しいと感じる。「頑張らなくても儲かったほうが賢い」とか「情熱的に頑張っているのってダサい」みたいな風潮があったりするけど、それがすごく嫌なんです。頑張らずに得している人は賢いかもしれないけど、全然美しくないと思います。情熱があるほうが単純に美しいと思いますね。
猪子は、10月17日と18日の2日間で開催するデジタルクリエイティブフェスティバル「J-WAVE INNOVATION WORLD FESTA 2020 supported by CHINTAI」に登場する。猪子が出演するのは18日。小橋賢児と「アートとエンターテインメントの未来」を語り合う。詳細はこちらから。
『ROPPONGI PASSION PIT』は、東京・六本木に出現した、いろいろな人の“情熱"が集まり、重なり合い、さらに熱を増して燃え上がる秘密基地として、みんなの熱い思いを電波に乗せて発信。放送は毎週土曜の23時から。
9月26日(土)のオンエアでは、チームラボ代表の猪子寿之が登場。チームラボの作品展開の意図や、新作の解説、今後の目標について語った。
ふたりは一緒に旅行&サウナに行く仲
猪子は1977年徳島県徳島市生まれ。東京大学工学部計数工学科を卒業と同時に、チームラボを創業。アニメーターや技術者、建築家、数学者などで構成されたアート集団のチームラボは、東京のお台場に常設ミュージアム「森ビル デジタルアート ミュージアム:エプソン チームラボ ボーダレス」や、豊洲に「チームラボプラネッツ TOKYO DMM」などを展開している。先日、DEANは猪子と一緒に九州へ出かけたという。
DEAN:仕事の徹夜明けに羽田空港で飛行機に乗って福岡県に行き、そのあと佐賀県に行って、(猪子さんから)いろんな情報を入れていただきました。最後、夜中12時からサウナに行きましたよね。あのときまで、どちらかというと嫌いなくらいサウナに全く興味がなかったんですけど、初めて“整う"体験をしたんです。東京に戻ってから我慢できなくなって、一人でサウナに行ってしまいましたね(笑)。
猪子:我慢できなくなりますよね。あそこのサウナが一番いいですよね。
DEAN:最近、サウナーの人たちと話すと、僕が整った初体験がトップオブトップの環境だったし、そのあともルーフトップのサウナとか、すごくいいサウナ体験をしていたから「サウナーとしての育ちが良すぎる」って言われました(笑)。
よりよい人生を送るために「自分が生きる枠組み」を作る
2001年頃、猪子は学生の友だちと、集団の実験の場としてチームラボを立ち上げた。猪子:サイエンスがなかった時代は、世界があまり見えていなかったんです。でも今はサイエンスによって、世界がずいぶん見えるようになりました。一方、アートは世界の見え方を変えてきた。子どもの頃はサイエンスに興味を持っていたけど、大人になるにつれサイエンスとアート、どちらも楽しいと思いはじめて、世界そのものをより見えるようにするよりも、世界の見え方を変えるほうが面白いと思って、よりアートに興味が出てきました。
チームラボのターニングポイントは、現代美術家の村上 隆がオフィスに遊びに来たこと。村上はチームラボの作品を見て、国際的に発表することを提案。2011年に台北にある村上のギャラリーで展示を開催し、それがチームラボのアートデビューとなった。
その後、香港やシンガポールでも作品を発表。ニューヨークのギャラリーとの契約も決まり、2015年に東京で作品を発表。DEANは日本での発表の方法に驚いたという。
猪子:普通、アート作品を作ると、美術館に呼んでもらって展示をしたり、ギャラリーと契約してそこを通して作品を売ったりするんですけど、自分たちは自らミュージアムを作って、自分たちが好きなように作品を置いて、自分たちでチケットを売って、そのチケットの収入で成り立たせることを始めました。
DEAN:つまり自らプラットフォームを作って、コンテンツを作ったわけですよね。
猪子:まさにそうなんです。プラットフォームを作ったほうがいいなと思ったんです。
DEAN:そこが本当にすごい。
猪子は「枠組みの中で評価されることが目的になるのが嫌だった」と自らプラットフォームを作った理由を語る。
猪子:枠組みの中にいると、その中で使われるだけですよね。例えば一時的に評価がなくなったり、批判されたりしても、自分で自分が生きる枠組みを作ったほうが、自分の一番いい生き方ができると思ったんです。なかなか日本の人ってそういう考えにならなくて、枠組みの中の今の価値基準でいいものを目指してしまい、今の価値基準からはみ出るものを異物として排除してしまうんです。でも、海外だとみんな自らグローバルのプラットフォームを作っている。アップルだって音楽のプラットフォームを作っているし、Netflixもディズニーも自分のプラットフォームを作っていますよね。そうやって自分でプラットフォームまで作ったほうが、自分自身がより生きやすくなると思っています。
DEAN:届けたい人へダイレクトに伝わりますよね。プラットフォームに乗っかると、何かしらショーレースみたいになってしまいますからね。
猪子:自ら場所を作り、その場所に作品を置いてチケットを売ることは、日本の歴史上でも珍しい試みだったと思います。その影響から、世界中でその動きが広がっていると感じています。
「生命のエネルギーの秩序」を表現した作品
チームラボは6月にマカオで常設展「チームラボ スーパーネイチャー マカオ」をオープンした。猪子:今の生物学の定義では、ウイルスって生命か生命じゃないかわからないんですよね。生物学上では、例えば自分で子どもを作れるとか、細胞膜があるとか、そういうものを生命の定義にしています。この作品はそれには全て当てはまらないので、生物ではないことになります。でも、どう見ても、机とか物と比べると生命がないものとは思えない。もっと言うと、生命とそうでないものの境界って引けなくて、連続しているということが今の考え方なんです。ウイルスを筆頭に、生物学上から生命を考えていたからわけがわからなくなってしまっていたけど、物理から見ると、専門的なことを全て飛ばして、「生命とはエネルギーの秩序」だと考えています。
「宇宙は秩序がなくなる方向に必ず向かうが、生命だけは秩序を維持する不思議な存在だ」と猪子は続ける。
猪子:例えば、死んだら腐っていくから秩序のない方向に向かって生命ではなくなるけど、生きている限り腐らないですよね。
DEAN:治癒する方向に向かいますからね。
猪子:本来は腐ってぐちゃぐちゃになっていくのに、生命だけは秩序を維持する。その「生命とはエネルギーの秩序」を作品として作りました。最初は泡の海みたいになっているけど、秩序を作った瞬間に塊がボコッと浮き上がって空中にとどまるんです。
DEAN:意思を持つかのように。
猪子:そう。宇宙の原理に反するように浮く作品です。
DEAN:めちゃくちゃおもしろい!
猪子は、雲のような塊が浮かんでは消えるこの作品を見ていると、この世とあの世にいるような錯覚に陥ると同時に、安心感を覚えると言う。
猪子:制作当時、僕は新型コロナが怖すぎて「マカオにも新型コロナが来ているんじゃないか」と死への恐怖を抱きました。でも、この作品の中にいると「もしかしたら死後の世界ってこんな感じなのかな」って思ったんです。死後の世界があると思えると、人って死への恐怖が少しやわらぐんです。
DEAN:信仰の原理ですね。
猪子:まさにそう。その時に宗教の役割って死後の世界を描くことなんだなと気づきました。それによって、死への恐怖がやわらぐんだと。1300年前に初めて奈良に都ができたとき、大陸から文明と共に疫病も入ってきて、日本で初めて病が流行るんです。多くの人が亡くなり、それで奈良の大仏を作ったと言われています。この大仏を作ることで、仏教が考える死後の世界、もしくは生と死が輪廻していくという教えを知ることで、人々が少しでも安心感を持ったのだと思います。大仏のように、今から1000年後に、「新型コロナが来て怖すぎて、1000年前の人がこの白い塊を作ったらしいよ」と言われたらいいなと思っています(笑)。
生きることそのものが美しい
チームラボの今後の目標について、猪子は「いま展開するミュージアムをさらに充実させながら、世界中に新たなミュージアムを作っていきたい」と話す。加えて、「確実ではない」と前置きしつつ、意外なアイデアも膨らませているという。猪子:サウナとアートの(ミュージアム)を考えています。サウナで整っあとに、アートを見るみたいなことを、期間限定でやれたらいいなと思います。 DEAN:期間限定といわず、常設としてやってほしい。
三原:サウナで整ってからアートを見ると、感じ方って変わるんですかね。
猪子:この前、DEANさんとサウナで整った環境は、森と歴史と一体化したような感覚だったので、それって素敵な体験になると思っています。
この番組では毎回ゲストに、自分が思う「情熱」とはなにかを訊く。猪子は「美しい」と答えた。
猪子:情熱こそが生きることそのもののような気がするし、生きることそのものがやっぱり美しいと思います。情熱そのものが美しいと感じる。「頑張らなくても儲かったほうが賢い」とか「情熱的に頑張っているのってダサい」みたいな風潮があったりするけど、それがすごく嫌なんです。頑張らずに得している人は賢いかもしれないけど、全然美しくないと思います。情熱があるほうが単純に美しいと思いますね。
猪子は、10月17日と18日の2日間で開催するデジタルクリエイティブフェスティバル「J-WAVE INNOVATION WORLD FESTA 2020 supported by CHINTAI」に登場する。猪子が出演するのは18日。小橋賢児と「アートとエンターテインメントの未来」を語り合う。詳細はこちらから。
『ROPPONGI PASSION PIT』は、東京・六本木に出現した、いろいろな人の“情熱"が集まり、重なり合い、さらに熱を増して燃え上がる秘密基地として、みんなの熱い思いを電波に乗せて発信。放送は毎週土曜の23時から。
番組情報
- ROPPONGI PASSION PIT
-
毎週土曜23:00-23:54