DEAN FUJIOKAの憧れ。DJ KRUSHの「ラップなきヒップホップ」作り方とは?

J-WAVEで放送中の番組『ROPPONGI PASSION PIT』(ナビゲーター:DEAN FUJIOKA/三原勇希)。各界で活躍する情熱を持ったゲストを迎えて、「好き」や「情熱」をテーマにトークを展開。8月29日(土)のオンエアでは、DJ KRUSHがゲストに登場。DEANが追いかけ続けたという、DJ KRUSHの経緯を掘り下げた。

DEANはDJ KRUSHの追っかけ?

DJ KRUSHは1962年東京生まれ。1994年の1stアルバム『KRUSH』以降、数多くの作品を手がけ、6thアルバム『漸-ZEN-』がアメリカAFIMアワード“ベスト エレクトロニカ アルバム 2001”最優秀賞を受賞するなど、欧米のクラブシーンからも高い評価を獲得。国際的活動を展開しながら、映画、ドラマ、CMなど幅広い分野で活躍し、2020年3月にはビートで紡いだ最新アルバム『TRICKSTER』をリリースした。

三原:ボス(DEAN)がずっとお会いしたかった方ということで、ボスはKRUSHさんのライブを世界各国で何度も観てきたんですよね。
DEAN:そうなんです。もちろん今日が初めましてなんですけど、自分の思い出的にはお久しぶりですという気持ちです。一方的にいろいろな国でずっと追いかけてきました。
DJ KRUSH:どこかでご挨拶にわざわざ来てくれたそうなんですけど、僕は全然覚えてないんです。
DEAN:香港のときにご挨拶だけさせていただいて、もう15年ぐらい前ですかね。初めてライブに行かせていただいたのが、シアトルのイベントのとき。
三原:すごい。鮮明に覚えてらっしゃるんですね。
DJ KRUSH:うれしい。追っかけみたいじゃないですか(笑)。
DEAN:そうです(笑)。たまたま自分がいろいろなところを転々としてきて、KRUSHさんはライブで世界中を回られていたじゃないですか。自分がそのときに住んでいる街にKRUSHさんがいらっしゃるとき、ライブに行けるときは必ず観に行くみたいな感じでした。
DJ KRUSH:相当いろいろなところに行っているんですね。
DEAN:学生のときはアメリカにいて、そのあとは香港に引っ越して今のキャリアを始めました。台湾、ジャカルタに移って、日本に帰ってきたというか、仕事を始めるようになりました。
DJ KRUSH:それでタイミングを見て、来てくれている感じですね。ありがとうございます。
三原:KRUSHさんのライブパフォーマンスに、そこまでボスが感銘を受けたのはどういうところだったんですか?
DEAN:生き様。どう説明すればいいのかわからないんですけど……。自分のアイデンティティというものがわからなくなるときがあるんだけど、KRUSHさんの音楽を聴くと、ジャパニーズというかアジア人としての芯みたいなものの、自分の中での自問自答のきっかけをいただくというか。あえて言葉にするとそんな感じですかね。
DJ KRUSH:伝わってますよ。
DEAN:ありがとうございます。

DJ KRUSHの曲作りのこだわりにDEAN鳥肌!

三原は、DJ KRUSHの音楽を聴いた感想を「映像が浮かぶよう」だと表現する。DJ KRUSHは、曲作りについて解説した。

DJ KRUSH:言葉を使えないですから。ラップも一回やってみたんですが、すごく下手くそで(笑)。試しに録音してみたら最悪で、当時はカセットだったのでゴミ箱に捨てました。
DEAN:あはは(笑)。それ、いまとなっては宝じゃないですか。
DJ KRUSH:とっておいたらレアですね(笑)。
DEAN:めっちゃ聴きたい。
DJ KRUSH:まあ、そこから切り替えてね。なんとか音だけで自分の世界観を(表現するようになった)。一曲の中でストーリーがちゃんとあって、飛び立ってどこに着陸するか、みたいな。
DEAN:わかる!
DJ KRUSH:ビルとビルの間を高すぎず低すぎず、中間をぬうような着陸をする音はどんな感じの音だとか、そういうのをめいっぱい想像して、それに従って音をひとつずつ絵を描くみたいにですね。「違うな、もうちょっと後ろだな」「これはもうちょっとドラムの後ろにいたほうがいいな」とか俯瞰で見て一曲を作る。短編集のようなものを作っていく感覚ですね。
DEAN:鳥肌が立った!
DJ KRUSH:言葉が乗っていないから国境がないじゃないですか。僕らと全然文化が違う人たち、若い人も年配の人も、食べ物も違う人たちが、日本から来た俺が作った音がどう頭の中で展開されるのか。そこは自由じゃないですか。「ああしろ、こうしろ」と言葉で言ってないし。それに興味があったというのはあるね。
三原:「言葉がない」というマイナスに思っていたところが、逆にプラスに働いたんですね。
DJ KRUSH:「主役がいなくなってよかった」みたいな(笑)。「俺がやんないと」っていう。自分でプールを作って好きな色の水をはって、好きな温度にして自分で泳ぐ、みたいな。以前はラッパーに泳がせていたんだけど。
三原:「これまでのヒップホップと違うものをやろう」という意識はあったんですか?
DJ KRUSH:とにかくこれで“成り立ち”をしたかった。当時ラップが乗っていないヒップホップってあまりなかったんです。ブレイクビーツみたいに、ただ単に同じ繰り返し、要するにラップを乗せる用のトラックはいっぱい出ていたんです。有名なプロデューサーもいっぱいいるんですけど、そうじゃなくて、インストでちゃんとドラマがあって映像的で、ちゃんと着地するものは少なかった。だから、そっちにシフトしていきました。

世界で認められたワンアンドオンリーな音楽

DJ KRUSHの音楽は世界でも評価され、イギリスを代表するインディーレーベル「Mo' Wax(モ・ワックス)」に所属した。

DJ KRUSH:ラッパーがいるKrush Posseのときに、日本映画『TVO』のアナログのサントラ盤リミックス(「THE MOTION PICTURE SOUNDTRACK“TVO” DJ KRUSH REMIX」)をやったんです。それがイギリスに流れて、イギリスの雑誌『Straight No Chaser』の編集長ポール・ブラッドショウが、誌面でそのリミックス版のレコードを紹介してくれたんです。
三原:ジャズ雑誌で?
DJ KRUSH:「こいつは誰だ?」「日本人みたいだぞ」って向こうで騒がれて、そのあとにデモテープがそこのチャートにバーンって入っちゃって。「DJ KRUSHって何者だ?」みたいになって、当時はレコードレーベル「Talkin' Loud」のジャイルス・ピーターソンから「うちでやらないか?」みたいな話がきたんです。だけど「Mo' Wax」の創始者ジェームス・ラヴェルはすごく若かったし、それこそ情熱と熱意がすごかったので「じゃあMo' Waxでやろう」ということになったんですね。
DEAN:なるほど。ワンアンドオンリーになると、どこに行っても求められるというシンプルな強さが、今のお話で見えました。
DJ KRUSH:当時は昔でいうアシッドジャズブームで、クラブでもけっこう踊れるジャズみたいなものがかかっていたんです。Brand New Heaviesとか、日本でいうとKyoto Jazz MassiveやU.F.O.が流行っている時期。僕らは次のところに行っていて、アシッドジャズは終わるから、そうじゃない短いブレイクビーツでドラマがあって、ラップはないけどルーツはヒップホップみたいな。ジェームスが「そういう壮大でドラマ的な曲をやらない?」と言っていて、考えていることが一緒じゃないかという話になったんです。気がついたらDJ Shadowという同じようなことを考えていて曲も出していた人がいて。そういうところで、ジェームスの目というか耳はすごいなと思いました。
DEAN:自分はそこをモロにくらっていたリスナーでしたね。DJ Shadowのライブも何度も行かせてもらったし、大好きで聴いていました。

この番組では毎回ゲストに、自分が思う「情熱」とはなにかを訊く。DJ KRUSHは「理屈では説明できない、何十年も追いかけている熱意と好奇心」と答えた。

DEAN:感慨深くて、全然コメントが出てこない(笑)。ここでこうやっていることが自分の中でグッと来ていますね。まさかKRUSHさんに「情熱とは何ですか」と訊く日が来るとは思わなかった。
三原:長い間何を聴いても「これがDJ KRUSHだ」と思わせるものが音の中にあるというのは、そういうことですよね。
DJ KRUSH:自分と向き合って、まだ探し求めてこのままずっと旅を続けると思うんだけど。自分の感性でどこまでできるのか。熱い旅路がずっと続きます。
DEAN:今後も楽しみにしています!

『ROPPONGI PASSION PIT』は、東京・六本木に出現した、いろいろな人の“情熱”が集まり、重なり合い、さらに熱を増して燃え上がる秘密基地として、みんなの熱い思いを電波に乗せて発信。放送は毎週土曜の23時から。
番組情報
ROPPONGI PASSION PIT
毎週土曜
23:00-23:54

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