クリエイティブディレクターの小橋賢児が、杉原行里さんと新しいモビリティの可能性について語り合った。杉原さんはパラスポーツなどのギア開発をはじめ、さまざまなモビリティ関連のプロダクトを開発する株式会社RDS代表に加え、テクノロジーの最前線を紹介するウェブメディア『HERO X』の編集長を務めている。
小橋と杉原さんが登場した「INNOVATION WORLD COMPLEX at Takanawa Gateway Fest」の公開収録の模様を、8月23日(日)放送のJ-WAVEのPodcast連動プログラム『INNOVATION WORLD ERA』でオンエアした。小橋は同番組の第4週目のマンスリーナビゲーター。
小橋:RDSは、見たことがないような車いすとか未来の世界で走れるモビリティを開発しているようなイメージがあります。具体的にどんな会社ですか?
杉原:デザイン会社と思っている人や、カーボンや設計が得意な会社だと思っている人もいますが、自社で全て完結するような研究開発型企業ですね。
小橋:RDSは積極的にダイバーシティ的なモビリティを作っているように感じます。
杉原:F1などモータースポーツで培われたテクノロジーって、一般社会にけっこう落とし込まれているんですよね。たとえば1980年代後半〜90年代に、今では当たり前のように車に搭載されているパドルシフトが開発されました。そのおかげで、足が悪い方が車を運転できるようになりました。そういったモータースポーツのエンターテインメントという枠組みの中で、さまざまなテクノロジーを研究開発しています。RDSも同様に、この企業で培われたテクノロジーをいかに一般社会に落とし込めるかがテーマで、自分のなかで気を付けながら開発をしています。
人類は、移動の自由が広がるとともに進化した部分も多い。しかし、コロナ禍のいま、移動自体が制限されるようになった。このような状況において、杉原さんは「移動」についてどう考えているのだろうか。
杉原:人に会えなくなりましたよね。今後何十年間か先は当たり前になってくる世界かもしれませんが、僕たちにとってその世界はなかなか受け入れがたい。でも、今後は「モビリティのテクノロジーを介して、どうやって安全に人に会えるのか」がすごく大事な観点になってくると思っています。このコロナ禍で大変な状況なのは重々承知ですが、そのなかでも新しいものがけっこう生まれてきています。たとえば電動キックボード。今までは危ないという概念を持たれていましたが、今はパーソナルエリアを守れるパーソナル・モビリティのような位置付けになっています。たったこの3ヶ月でこんなに人の考え方って変わるんだと、その様子を見ていてすごいなと感じました。
小橋:確かに、パーソナルな空間や時間をどう使うかという考え方は、ものすごく変わってきたと思いますね。
杉原:そう話すと、「私は足が悪いわけじゃない」と思われがちですが、この概念がひっくり返ると思うんです。
小橋:最初は単純に機能として車いすが必要だったけど、それが当たり前になって車いすがカッコいいものになると、「これに乗りたい」という意識が芽生える。加えて、カッコいい車いすでできるスポーツが生まれたら、「この車いすに乗ってスポーツに参加したい」となりますからね。
杉原さんは「福祉を今の時代にアップデートしたい」と話し、小橋はその考えに同調する。
小橋:物事って誰かを助けたいという思いから始まりますが、それが当たり前になると、今度はその時代の人たちに最適化するようにアップデートがないといけないと思うんです。「福祉のものだからオシャレじゃなくていい」って、おかしいと思うんですよね。
杉原:そう、誰が決めたんだろうって思いますからね。
小橋:(杉原)行里くんは、そうところにフォーカスを当てて、カッコよくアップデートをしていこうとしていますよね。
番組では、車いすマラソンやレースの魅力を伝えるVRエンターテイメント「CYBER WHEEL X(サイバーウィル エックス)」を紹介した。
「CYBER WHEEL X」は、映画『トロン』からインスパイアされ開発されたVR車いすレーサーのゲーム。RDSと、さまざまなデジタルテクノロジーに精通したクリエイターとテクノロジストからなるクリエイティブ集団・1→10 (ワントゥーテン)と、千葉工業大学未来ロボット技術研究センター(fuRo)の3社が協業して開発している。
杉原:「CYBER WHEEL X」は、VRでみなさんを2100年の東京へご案内するという、ひとつのエンターテインメントです。とはいえ、VRだけどみなさんが車いすをこぐことで、圧倒的な没入感を得られることができます。たとえば「車いすレーサーって楽しい」というコミュニケーションって直接的すぎて、自分事化している、もしくは興味がある人にしか刺さりにくいものだったりしますよね。でも、これを間接的にエンターテインメントとしてやってもらうと、子どもも大人も一体何なのかわからなくても遊んでいるんです。最後に、「これって車いすレーサーなんですよ」って伝えると「そうなんだ!」「応援する」ってなるんですよ。このコミュニケーションってとても大事なんです。
杉原:僕は「選択肢が豊かな未来がすごく大事だ」と講演会などでよく言わせてもらうのですが、本音で言うと、つまらなそうな顔をしている人がイヤなんです。みなさん「選ぶ」という権利があると思うので、やらないって選択も全然いいんですけど、何か身体に特徴があるからやれないってすごく気まずいじゃないですか。そうであれば、それはテクノロジーで解決できるんじゃないかなと。僕たちは街中でおじいちゃんやおばあちゃんが、めちゃくちゃカッコいいモビリティで走っている姿をみて、まわりの人たちがそれを欲しがる未来ってめちゃくちゃ楽しみなんですよね。それってパラダイムシフトが起きる瞬間なんじゃないかなと思います。
小橋:今まで日の目に当たらなかったものを、そのままにしておいていのかって言うと、決してそうでは全くなくて。それをテクノロジーとかクリエイティブを用いて超えていくことで、その境界線が外れて全員が同じものを共有して楽しめるようになることって、これからすごく大事なことだと思うんですよね。
杉原:すごく大事だと思います。今まではマイノリティとマジョリティの陣取り合戦みたいな感じでしたよね。でも、今はこれらがごちゃ混ぜになっている状況で、自分が多数派か少数派かなんて実はどうでもよくて。自分がやりたいことを選択していく、その余白がものすごく大事だと思っています。たまに僕が「RDS WF01」で街中を走っていると、光っているからめちゃくちゃ見られるんです。コンビニに着いて、立ち上がると「なんでだよ」「立てるのかよ」って言われるんです(笑)。
小橋:確かに(笑)。
杉原:でも、これ(を使う未来が)来るよって。すごく面白くないですか。
小橋:人は歩くことはもちろん、車とか電車があれば事足りるのに、さらにスケボーがあったり、ローラースケートがあったり、e-bikeがあったり、多様な移動の仕方がありますよね。移動ってただ目的地に行くだけじゃなくて、その道中を楽しむことじゃないですか。そう考えると、「RDS WF01」は足の悪い方だけの乗り物だけではなくて、この瞬間を楽しむ新しいモビリティになる可能性がありますよね。
杉原:まさにその通りですね。今ある概念を早く壊したいと思っています。
小橋は概念を壊した例として「メガネ」をあげ、「目が悪い人がつけていたけど、今となればファッションとしてつけている」と語る。
杉原:今はメガネがあって、コンタクトレンズがあって、矯正があって、そんな流れがありますよね。僕はそういう(多様な)未来がいつかではなく、すでに来ているんだと思っています。それをみなさんが少しでも自分事化することによって輪がどんどん広がって、みなさんの大切な人たちにテクノロジーが落とし込まれていく。僕は常にワクワクを大事にしていて、ワクワクすることがモビリティやマシンに搭載されていく未来を生きているうちに実現したいと思います。
杉原が、車いすにもアタッチメントできる開発中の小型電動スクーターを紹介する場面もあり、小橋は「一緒に未来のモビリティを作りたい」と提案。杉原も「やりましょう!」と固い約束を交わした。
『INNOVATION WORLD ERA』では、各界のイノベーターが週替りでナビゲート。第1週目はライゾマティクスの真鍋大度、第2週目はASIAN KUNG-FU GENERATION・後藤正文、第3週目は女優で創作あーちすとの「のん」、第4週目はクリエイティブディレクター・小橋賢児。放送は毎週日曜日23時から。
小橋と杉原さんが登場した「INNOVATION WORLD COMPLEX at Takanawa Gateway Fest」の公開収録の模様を、8月23日(日)放送のJ-WAVEのPodcast連動プログラム『INNOVATION WORLD ERA』でオンエアした。小橋は同番組の第4週目のマンスリーナビゲーター。
人と会えない時代に活かせる、モビリティのテクノロジー
杉原さんが代表を務める株式会社RDSは、モータースポーツの最高峰・F1に参戦するF1チーム「スクーデリア・アルファタウリ・ホンダ」とパートナーシップを組むなど、モビリティ・テクノロジーの最前線とも関係が深い会社だ。小橋:RDSは、見たことがないような車いすとか未来の世界で走れるモビリティを開発しているようなイメージがあります。具体的にどんな会社ですか?
杉原:デザイン会社と思っている人や、カーボンや設計が得意な会社だと思っている人もいますが、自社で全て完結するような研究開発型企業ですね。
小橋:RDSは積極的にダイバーシティ的なモビリティを作っているように感じます。
杉原:F1などモータースポーツで培われたテクノロジーって、一般社会にけっこう落とし込まれているんですよね。たとえば1980年代後半〜90年代に、今では当たり前のように車に搭載されているパドルシフトが開発されました。そのおかげで、足が悪い方が車を運転できるようになりました。そういったモータースポーツのエンターテインメントという枠組みの中で、さまざまなテクノロジーを研究開発しています。RDSも同様に、この企業で培われたテクノロジーをいかに一般社会に落とし込めるかがテーマで、自分のなかで気を付けながら開発をしています。
人類は、移動の自由が広がるとともに進化した部分も多い。しかし、コロナ禍のいま、移動自体が制限されるようになった。このような状況において、杉原さんは「移動」についてどう考えているのだろうか。
杉原:人に会えなくなりましたよね。今後何十年間か先は当たり前になってくる世界かもしれませんが、僕たちにとってその世界はなかなか受け入れがたい。でも、今後は「モビリティのテクノロジーを介して、どうやって安全に人に会えるのか」がすごく大事な観点になってくると思っています。このコロナ禍で大変な状況なのは重々承知ですが、そのなかでも新しいものがけっこう生まれてきています。たとえば電動キックボード。今までは危ないという概念を持たれていましたが、今はパーソナルエリアを守れるパーソナル・モビリティのような位置付けになっています。たったこの3ヶ月でこんなに人の考え方って変わるんだと、その様子を見ていてすごいなと感じました。
小橋:確かに、パーソナルな空間や時間をどう使うかという考え方は、ものすごく変わってきたと思いますね。
概念がひっくり返る、いつか乗ってみたい車いす
杉原さんは、RDSが開発しているのは「いつか着てみたい服」や「いつか行ってみたい場所」と同じように、「いつか乗ってみたい車いす(モビリティ)だ」と話す。杉原:そう話すと、「私は足が悪いわけじゃない」と思われがちですが、この概念がひっくり返ると思うんです。
小橋:最初は単純に機能として車いすが必要だったけど、それが当たり前になって車いすがカッコいいものになると、「これに乗りたい」という意識が芽生える。加えて、カッコいい車いすでできるスポーツが生まれたら、「この車いすに乗ってスポーツに参加したい」となりますからね。
杉原さんは「福祉を今の時代にアップデートしたい」と話し、小橋はその考えに同調する。
小橋:物事って誰かを助けたいという思いから始まりますが、それが当たり前になると、今度はその時代の人たちに最適化するようにアップデートがないといけないと思うんです。「福祉のものだからオシャレじゃなくていい」って、おかしいと思うんですよね。
杉原:そう、誰が決めたんだろうって思いますからね。
小橋:(杉原)行里くんは、そうところにフォーカスを当てて、カッコよくアップデートをしていこうとしていますよね。
番組では、車いすマラソンやレースの魅力を伝えるVRエンターテイメント「CYBER WHEEL X(サイバーウィル エックス)」を紹介した。
CYBER WHEEL X
杉原:「CYBER WHEEL X」は、VRでみなさんを2100年の東京へご案内するという、ひとつのエンターテインメントです。とはいえ、VRだけどみなさんが車いすをこぐことで、圧倒的な没入感を得られることができます。たとえば「車いすレーサーって楽しい」というコミュニケーションって直接的すぎて、自分事化している、もしくは興味がある人にしか刺さりにくいものだったりしますよね。でも、これを間接的にエンターテインメントとしてやってもらうと、子どもも大人も一体何なのかわからなくても遊んでいるんです。最後に、「これって車いすレーサーなんですよ」って伝えると「そうなんだ!」「応援する」ってなるんですよ。このコミュニケーションってとても大事なんです。
「CYBER WHEEL X」を実際に体験できるイベントが、8/29(土)と30(日)にTakanawa Gateway Fest Sports Weekにて実施予定です!
— INNOVATION WORLD ERA (@iwera813) August 23, 2020
ぜひ会場でご体験ください!
詳しくは下記リンクよりご確認いただけますhttps://t.co/dGx28V9wmB#era813 #jwave
マイノリティもマジョリティも、「やりたいことを選択する」未来へ
小橋は、杉原さんについて「差別や分断が起きる世界において、ボーダレスや繋がり、共生して生きていくことを大切にして真っすぐに向かっている」と表現する。杉原:僕は「選択肢が豊かな未来がすごく大事だ」と講演会などでよく言わせてもらうのですが、本音で言うと、つまらなそうな顔をしている人がイヤなんです。みなさん「選ぶ」という権利があると思うので、やらないって選択も全然いいんですけど、何か身体に特徴があるからやれないってすごく気まずいじゃないですか。そうであれば、それはテクノロジーで解決できるんじゃないかなと。僕たちは街中でおじいちゃんやおばあちゃんが、めちゃくちゃカッコいいモビリティで走っている姿をみて、まわりの人たちがそれを欲しがる未来ってめちゃくちゃ楽しみなんですよね。それってパラダイムシフトが起きる瞬間なんじゃないかなと思います。
小橋:今まで日の目に当たらなかったものを、そのままにしておいていのかって言うと、決してそうでは全くなくて。それをテクノロジーとかクリエイティブを用いて超えていくことで、その境界線が外れて全員が同じものを共有して楽しめるようになることって、これからすごく大事なことだと思うんですよね。
杉原:すごく大事だと思います。今まではマイノリティとマジョリティの陣取り合戦みたいな感じでしたよね。でも、今はこれらがごちゃ混ぜになっている状況で、自分が多数派か少数派かなんて実はどうでもよくて。自分がやりたいことを選択していく、その余白がものすごく大事だと思っています。たまに僕が「RDS WF01」で街中を走っていると、光っているからめちゃくちゃ見られるんです。コンビニに着いて、立ち上がると「なんでだよ」「立てるのかよ」って言われるんです(笑)。
小橋:確かに(笑)。
杉原:でも、これ(を使う未来が)来るよって。すごく面白くないですか。
小橋:人は歩くことはもちろん、車とか電車があれば事足りるのに、さらにスケボーがあったり、ローラースケートがあったり、e-bikeがあったり、多様な移動の仕方がありますよね。移動ってただ目的地に行くだけじゃなくて、その道中を楽しむことじゃないですか。そう考えると、「RDS WF01」は足の悪い方だけの乗り物だけではなくて、この瞬間を楽しむ新しいモビリティになる可能性がありますよね。
杉原:まさにその通りですね。今ある概念を早く壊したいと思っています。
RDSの開発する新しいモビリティ「RDS WF01」
杉原:今はメガネがあって、コンタクトレンズがあって、矯正があって、そんな流れがありますよね。僕はそういう(多様な)未来がいつかではなく、すでに来ているんだと思っています。それをみなさんが少しでも自分事化することによって輪がどんどん広がって、みなさんの大切な人たちにテクノロジーが落とし込まれていく。僕は常にワクワクを大事にしていて、ワクワクすることがモビリティやマシンに搭載されていく未来を生きているうちに実現したいと思います。
杉原が、車いすにもアタッチメントできる開発中の小型電動スクーターを紹介する場面もあり、小橋は「一緒に未来のモビリティを作りたい」と提案。杉原も「やりましょう!」と固い約束を交わした。
『INNOVATION WORLD ERA』では、各界のイノベーターが週替りでナビゲート。第1週目はライゾマティクスの真鍋大度、第2週目はASIAN KUNG-FU GENERATION・後藤正文、第3週目は女優で創作あーちすとの「のん」、第4週目はクリエイティブディレクター・小橋賢児。放送は毎週日曜日23時から。
radikoで聴く
2020年8月30日28時59分まで
PC・スマホアプリ「radiko.jpプレミアム」(有料)なら、日本全国どこにいてもJ-WAVEが楽しめます。番組放送後1週間は「radiko.jpタイムフリー」機能で聴き直せます。
番組情報
- INNOVATION WORLD ERA
-
毎週日曜23:00-23:54