こだわりの逸品を、本の一節とともに魅せる―中田英寿が厳選したモノが買えるショップがオープン

中田英寿×J-WAVEがコラボレーションしたエンターテインメントレストラン「J-WAVE NIHONMONO LOUNGE」が、7月14日(火)にオープンした。JR山手線の新駅「高輪ゲートウェイ駅」の駅前特設会場で開かれている、期間限定のイベントだ。

中田が厳選した酒、食事だけでなく、J-WAVEの番組『VOICES FROM NIHONMONO』で紹介したモノを買えるショップ「NIHONMONO TOKYO(ニホンモノ・トウキョウ)」も魅力のひとつだ。

ただ商品を並べるだけでなく、一つひとつのモノに興味が惹かれる空間となっている。空間づくりを手がけたのは、ブックディレクター・幅 允孝さんと、美術家・ミヤケマイさん。どんな点にこだわったのか? ふたりが7月11日(土)にオンエアされたJ-WAVE『VOICES FROM NIHONMONO』(アンバサダー:中田英寿、案内役:レイチェル・チャン)にリモート出演して語った。


■本屋からヒントを得た、ストーリーを感じる空間づくり

中田はこれまで全国を巡り、食からモノまでジャンルを問わず“本当にいいもの”に触れてきた。「ニホンモノ・トウキョウ」には、そんな中田が選んだモノが販売されている。商品の見せ方にもこだわりたいと考えた中田が、ブックディレクターである幅さんに依頼をしたのはなぜなのだろうか。

中田:百貨店などでも、こだわりの商品を並べているショップはありますよね。そうした店に訪れたとき、自分は産地を巡ってちょっと知識があるから「あそこのものかな?」とか思うけど、ただモノが置いてあって値段がついているだけだと、一般のお客さんにはわからない。「どうやったら人に伝わるんだろう」と考えたときに、ふと思い浮かべたのが本屋さん。何万冊もあるなかで、知らない本を手に取って買っていくのはなぜだろうと思ったときに、置き方の工夫もあるけど、「これはこういう本です」「こんな内容です」というちょっとした言葉があって、そういう説明がうまいんじゃないかなと。

本屋のように置くとおもしろいのではないか――そう考えて、「やっぱり幅さんだなと、無茶ぶりをしたのが最初です」と中田は明かす。幅さんは、中田の事務所のライブラリを定期的に作っているのだ。

:日々どんな本を読んでらっしゃるのか、どういう事象に興味があるのかということは、自分のなかで解釈ができていたんです。今回はプライベートな事務所というよりオープンな場所ではあるんですけれども、そのなかでヒデさんらしいモノの差し出し方を、本を使ってできないだろうかと考えました。先ほどヒデさんが言った「知らないものを手に取って買っていく」のはなぜか、モノのおもしろさは何かと考えると、もちろんパッケージデザインもあるかもしれないんですけれど、「ストーリーを伝えること」が重要だと僕は思ったんです。モノを作った人だったり、モノの背景にあることだったり、もっと言えば、時間をさかのぼって、そのモノがどういうふうに扱われてきたのかという来歴を示すといいんじゃないか、と。


■印象的な言葉が浮かぶ空間―本の一節を抽出

ショップでは、中田が集めたものが7つのテーマに分けて販売されている。一つひとつの分類に、幅は一冊ずつ本を選んだ。

:本のなかの一節を抽出し、空間に言葉が浮いているような不思議な什器を建築家・永山祐子さんにお願いして作っていただきました。いろいろなモノと人との出会いを楽しんでもらいたいなと思っています。



幅の言葉通り、売り場には文章が“浮かんで”いる。透明な板に印刷したり、モニターに写したりするのではなく、文字の一つひとつが削って作られたもの。その下に、商品が並んでいる。



さまざまな本から抽出された言葉の中で、お酒が好きなレイチェルが「いちばん刺さった」と感じたのは、『泥酔懺悔』(筑摩書房)の一節だ。



:『泥酔懺悔』は、朝倉かすみさん、山崎ナオコーラさん、角田光代さんといった、いろいろな女性作家が、お酒を飲んでやらかした失敗をそれぞれエッセイにまとめた一冊ですね。
中田:あはは(笑)。
:引用したのは、平松洋子さんという、食を中心としたエッセイストが若かりしころにお酒でやらかしてしまった失敗ですね。初めて飲んだお酒がまわってしまって、倒れているんですけど心地がよい、という意味の一節です。その文章がレイチェルさんに刺さったんですね(笑)。レイチェルさんがそこまで反応してくれるのは、なんとなく想像通りなんですけども。
レイチェル:(笑)。
:そういう文章がある横に、ヒデさんがいろいろな場所から選んできた酒器が並んでいるという次第です。
中田:食器のような器があるところには、どういう文章があるんですか?
:白洲正子さんの『器つれづれ』(世界文化社)から抽出しています。器というものをどういうふうに見るべきなのか、どう探すべきなのかという写真エッセイです。上に(『器つれづれ』の文字が)浮いているように見せながら、下にはいろいろな皿や椀物が並んでいます。
中田:文章と、そこに並んでいるものが関連付けられている。自分で考えて幅さんにふっておきながら、これはすごいアイデアだと思いました。これから、これをみんな真似していくんじゃないかと思うんですけれど、どうですか?
:僕もすごくおもしろいと思います。やっぱりモノの背景や歴史みたいなものがギュッとひとつの束になる感じはすごくあるんですよね。古今東西、たとえば西加奈子さんの甘味にまつわるような言葉もあれば、日本茶のコーナーでは夏目漱石『草枕』(新潮社)からとったものもあります。新しいものと古いものを混ぜながら。
中田:これは大ヒットだね。商標を早めにとっておいたほうがいいんじゃない?
:「(C)中田英寿」でとっておきますか(笑)。モノのうしろ側を想像するのは、ある人にとっては「面倒くさい」「非効率なこと」かもしれません。でも今、能率・効率だけではない、即効性より遅効性のよさみたいなものが少しずつ見直される時代になりました。すると、こういう本の裏側にある言葉や、モノのうしろにある物語を一緒に味わうのはいいんじゃないかなと僕は思いました。
レイチェル:ぜひみなさん、足を運んで空間全体を五感で楽しんでいただきたいと思います。


■QRコードが印鑑のように…日本文化と新しさが融合したショッパー

番組後半では、オリジナルのショッパーと包装紙の制作に携わった美術家・ミヤケマイさんがトークを展開した。



レイチェル:どのようなリクエストがあったのでしょうか?
ミヤマ:ヒデさんが非常に本物というものにこだわれる方で、「いいものを作ってね」みたいな。
中田:ざっくりしちゃってごめんなさい(笑)。
ミヤマ:ざっくりはしているんですけど、はっきりしていらっしゃる。そういうほうが私はやりやすくてよかったです。

ミヤマさんはまず、「NIHONMONO」と「本物」の音が似ていることに着目。和歌や、日本独自のひらがなといったところにポイントを置き、今回は和歌の短冊の表装のようなデザインにして、文字を入れることにしたのだという。

ミヤマ:今回「J-WAVE NIHONMONO LOUNGE」に関わっているのは、ヒデさんをはじめ、幅さんや永山さんといった、私も知っている方々なので、「自分との接点がどこらへんにあるのかな?」と考えました。日本を感じる色、情熱と冷静と精神性を表す赤と青と白みたいな感じで、みんな熱いけどすごく冷静なところもある。愚鈍にならなくて、よい意味でフットワークの軽い感じがみなさんの芸風なので、そういう感じにできたらいいなと考えて作らせていただきました。
中田:ショッピングバッグをもらうときにも、それがどれくらい使いまわせるかというのが非常に重要なところだと思う。ブランドのイメージがあまりにも強すぎるとか、ある一定の商品にしか合わないとか、そうではなくて、いつでもみんながこの紙袋を使って持っていたい、どんなファッションでも変じゃない、そういうことが大事なんじゃないかなと思って。使い捨てではなくて、使いまわされる紙袋を作りたいと思ったんですよね。
レイチェル:すごくシンプルで、モダンな感じもあり、さきほどおっしゃった和のような表装です。
中田:そこにQRコードがあって、パッと「にほんものストア」に飛べるという新しい仕掛けもあってね。
ミヤマ:そうなんです。(高輪ゲートウェイ駅は)新しい駅ですし、現代性も取り入れたかったので、これからの光景ということもあって、今回はQRのリンクで飛べるほうが、産地の背景がわかっていいかなと思って、印鑑のような形で押させてもらいました。

置かれているモノだけでなく、空間もこだわられたニホンモノ・トウキョウ。ぜひ足を運んでみてほしい。

ニホンモノ・トウキョウがある「J-WAVE NIHONMONO LOUNGE」は、9月6日(日)まで開催されている。現在、事前予約制。詳細は公式サイトまで。

・「J-WAVE NIHONMONO LOUNGE」公式サイト
https://www.j-wave.co.jp/special/tgf/nihonmonolounge/

【この記事の放送回をradikoで聴く】(2020年7月17日28時59分まで)
PC・スマホアプリ「radiko.jpプレミアム」(有料)なら、日本全国どこにいてもJ-WAVEが楽しめます。番組放送後1週間は「radiko.jpタイムフリー」機能で聴き直せます。

【番組情報】
番組名:『VOICES FROM NIHONMONO』
放送日時:毎週土曜 22時-22時54分
オフィシャルサイト: https://www.j-wave.co.jp/original/nihonmono/

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