さまざまなクリエイターに“情熱”について聞く、J-WAVEで放送中の番組『ROPPONGI PASSION PIT』(ナビゲーター:DEAN FUJIOKA/三原勇希)。6月20日(土)のオンエアでは、モーリー・ロバートソンが登場した。
モーリーは1963年生まれニューヨーク出身。日米双方の教育を受けたあと、1981年に東京大学、ハーバード大学に同時合格したことが大きな話題となる。1988年、ハーバード大学を卒業後、J-WAVEナビゲーターを中心に、さまざまな放送実験を行う。現在は国際ジャーナリスト、ミュージシャン、情報番組のコメンテーターなど、幅広く活躍している。そんなモーリーに、少年の頃に感じた日本とアメリカの文化の違いや、発信者として見せる「黒い部分」「白い部分」の使い分けを聞いた。
■アメリカと日本の文化の違い
モーリーとDEANは、モーリーがナビゲーターを務める番組にDEANが出演して以来の再会だという。
モーリー:そのときはインドネシアの音楽や文化についていろいろと伺ったような気がします。あとはDEANさんの活躍がいくつものコンチネント(大陸)にまたがっているので、その話を聞きました。
DEAN:その節はありがとうございました。
三原:これまでのキャリアのなかで、モーリーさんがどのようなことに情熱を燃やしてきたのか、という話を伺っていきたいと思います。1981年に日米の最難関大学を両方受けた理由はなんだったんでしょうか?
モーリー:いろいろな流れがつながっていってそうなったところがあるので、最初から記録作りとか「難関を突破する」という思いはなかったんですね。
父がアメリカ人で母が日本人のモーリーは、国際的な文化に触れて育ってきた。アメリカと日本は当時、今以上に文化の隔たりがあったそうだ。学校の授業の進め方も大きく異なり、自分の能力が発揮しきれない、というハンデがあったという。
モーリー:いろいろ考えた結果、最終的に「日本の高校を卒業しよう」と決めたけど、環境にうまく自分がフィットしなかった。アメリカだといいところだと思われているところが裏目に出て、あっちで褒めてもらえたことが、こっちでは「やるな」と言われるとか、いろいろあったんですね。なんとなく追い込まれて「じゃあ自分は何ができるのか」を数字にして見せないといけない状態になっちゃったと。とりあえずバイリンガルだったので、英語の得点はとれるから、あとの弱い科目を余った時間で補強して、いわゆる偏差値というものを上げていけば認めてもらえるような雰囲気があったんです。逆転の発想で勉強を始めたら、偏差値が上がっていくうちにハーバードも射程に入ってきて。だから、なんとなくですね。
三原:なんとなく。
モーリー:もちろん、追い込みをかけて自分で知力や体力の増強、映画『ロッキー』みたいに早起きしてマラソンして生卵を飲むような(笑)、ああいう感じのこともやっていました。
「アメリカでは普通の子だったのに、日本に来るや否や不良みたいになっちゃった」と自身を振り返る。アメリカでは「勉強も恋もできることが素晴らしい」という価値観だったが、日本では男子校だったこともあり、交際が「不純異性交遊」と言われてしまうことがあったという。
モーリー:今となれば誤解だと思うんですけど、不良で危険な人物ということになっちゃって、クラブ活動も禁止されるぐらいだったんです。
三原:えー、つらい!
モーリー:つらいでしょ? このシステムのほうが間違っていると思うんだけど、僕は「1対全員」だから許されない。どうするんだといったときに、みんなが納得する成績という形で自分の能力を示せば、とりあえず「不良だとは言わせない」みたいになったんです。
モーリーは学校でのバンド活動が禁止されていたことから、他校の生徒とバンドを組むなど「裏をかく」こともあったそうで、それは「ある種ジョーク的な側面があった」と振り返る。
モーリー:言ってみれば、学校のシステムに矛盾を突きつけて「おかしいでしょ?」って。自分のなかでは対話をしているつもりなんですよ。17歳の時点でね。
三原:すごいバイタリティですね。
モーリー:だよね。今の僕にはできない(笑)。今だったら「あの生徒は危ないですよ」って先生に告げ口して報酬をもらうほうになるだろうね。「大人のズルさ」みたいなね(笑)。
DEAN:あはは(笑)。
■「白モーリー」と「黒モーリー」の存在
ほとんどワンマンショーの状態で語り続けるモーリーを前に、DEANはいつの間にか聞き手に回ってしまっていることに気づく。コメンテーターとして長年活躍をしてきたモーリーは、トーク内容には2種類の切り口があるとアドバイスする。
DEAN:普段モーリーさんの声を聞き慣れすぎて、自分がここにいることを一瞬忘れちゃった。
モーリー:あらら、失礼しました。
DEAN:違うんです。モーリーさんの「ニコニコ動画」(以下、ニコ動)をずっとチェックしているんですよ。それから、block.fmでモーリーさんがしゃべっている内容だったり、いろいろなところでモーリーさんが番組をやられていたりするのを観ていて。
モーリーは露出するメディアによって、自分の「白い部分」「黒い部分」のどちらを表に出すかが変わるという。
モーリー:「白モーリー」「黒モーリー」って言われているんです。オセロゲームの白と黒が入れ替わるみたいに、本当の黒いモーリーと、その腹黒さゆえにみんなに真っ白な潔癖さをみせて感動的なことや正論を言って「テレビに出てくれてよかった」ってファンレターがくるようなモーリー。
三原:なるほど。
モーリー:DEANさんはその両方を知ってる。
DEAN:そうですね(笑)。付き合いが長いので。
三原:ニコ動では黒モーリーのほうも出ているんですか?
モーリー:あれは結局のところ、黒く見せかけたファンサービスでしたね。
DEAN:あー、プロレスみたいな感じだったんですね。
モーリー:そうですね。だから「本音を言います」と言いつつお約束になっていくし、ニコ動の場合は購読システムで、相手の支払いにビジネスが依存し始めて、固定ファンを喜ばせないといけなくなる。そして固定ファンは濃くなると、だんだんと要求が強まってくるんですよ。
ファンからの要求により幅のある表現が許されなくなっていったと解説するモーリーは、自身の問題をレジェンドアーティストであるデヴィッド・ボウイの事例と重ね合わせた。
モーリー:デヴィッド・ボウイは自分の何百万もいるファンを3回ぐらい裏切っているんです。『ジギー・スターダスト』という髪の毛ツンツンで、あれの真似をしたのがシド・ヴィシャスでした。それが、あるとき急に今までの音楽スタイルを全部捨てて変わるんです。それを2、3回やって、それでも持ちこたえた。それと比較して言うのも変なんだけど、ニコ動をやっているときに「あ、これ『ジギー・スターダスト』から抜け出せなくなる」って。
DEAN:そのときに思ったんですか?
モーリー:ファンを裏切り始めたら文字でクレームが来るんですよ。「前に言っていたことと違う」みたいな。つまり「I changed my mind.」という「僕は考え方が変わった」ということが、あの世界だと許されない。「お金も払っているのに、なんで裏切るんだ」みたいな。
DEAN:お客さま感覚で。
モーリー:だったら最初からテレビに出て100、200万人を喜ばせて、うそつき放題のほうがいいんじゃない?
DEAN:うそつき放題(笑)。
モーリー:芸能人がいて芸人がいて、そのすぐ近くでニコニコしている僕がいればいいじゃないですか。みんなハッピーよ? お互いにそのほうがハッピーなんだから仮面夫婦だよね(笑)。
DEAN:あはは(笑)。
モーリー:カメラが向けられたときだけ「愛してる」とか言って(笑)。いわゆる「パブリックイメージ」って言葉があるけど、外から見た認識と本人の違いというかね。
三原:J-WAVEの人たちは、黒モーリーさんをよく知っているんじゃないですか?
モーリー:僕が来ると聞いて「まずい」って思った人もいるかもしれないし、なかには「何かやらかしてくれるんじゃないか」と期待している人がいるかもしれない。でもその人に言いたいのは、誰かがやらかすことを期待するなら自分がやらなきゃだめよっていう。
DEAN:確かにそうですね。
モーリー:逃げられるところで「あいつがやってくれると俺が気持ちいい」という話だから。そうじゃなくて、勇気をもって自分でやらなきゃね(笑)。
DEAN:おっしゃるとおりです。
『ROPPONGI PASSION PIT』は、東京・六本木に出現した、いろいろな人の“情熱”が集まり、重なり合い、さらに熱を増して燃え上がる秘密基地として、みんなの熱い思いを電波に乗せて発信。放送は毎週土用の23時から。
【この記事の放送回をradikoで聴く】(2020年6月27日28時59分まで)
PC・スマホアプリ「radiko.jpプレミアム」(有料)なら、日本全国どこにいてもJ-WAVEが楽しめます。番組放送後1週間は「radiko.jpタイムフリー」機能で聴き直せます。
【番組情報】
番組名:『ROPPONGI PASSION PIT』
放送日時:毎週土曜 23時-23時54分
オフィシャルサイト: https://www.j-wave.co.jp/original/passionpit/
モーリーは1963年生まれニューヨーク出身。日米双方の教育を受けたあと、1981年に東京大学、ハーバード大学に同時合格したことが大きな話題となる。1988年、ハーバード大学を卒業後、J-WAVEナビゲーターを中心に、さまざまな放送実験を行う。現在は国際ジャーナリスト、ミュージシャン、情報番組のコメンテーターなど、幅広く活躍している。そんなモーリーに、少年の頃に感じた日本とアメリカの文化の違いや、発信者として見せる「黒い部分」「白い部分」の使い分けを聞いた。
■アメリカと日本の文化の違い
モーリーとDEANは、モーリーがナビゲーターを務める番組にDEANが出演して以来の再会だという。
モーリー:そのときはインドネシアの音楽や文化についていろいろと伺ったような気がします。あとはDEANさんの活躍がいくつものコンチネント(大陸)にまたがっているので、その話を聞きました。
DEAN:その節はありがとうございました。
三原:これまでのキャリアのなかで、モーリーさんがどのようなことに情熱を燃やしてきたのか、という話を伺っていきたいと思います。1981年に日米の最難関大学を両方受けた理由はなんだったんでしょうか?
モーリー:いろいろな流れがつながっていってそうなったところがあるので、最初から記録作りとか「難関を突破する」という思いはなかったんですね。
父がアメリカ人で母が日本人のモーリーは、国際的な文化に触れて育ってきた。アメリカと日本は当時、今以上に文化の隔たりがあったそうだ。学校の授業の進め方も大きく異なり、自分の能力が発揮しきれない、というハンデがあったという。
モーリー:いろいろ考えた結果、最終的に「日本の高校を卒業しよう」と決めたけど、環境にうまく自分がフィットしなかった。アメリカだといいところだと思われているところが裏目に出て、あっちで褒めてもらえたことが、こっちでは「やるな」と言われるとか、いろいろあったんですね。なんとなく追い込まれて「じゃあ自分は何ができるのか」を数字にして見せないといけない状態になっちゃったと。とりあえずバイリンガルだったので、英語の得点はとれるから、あとの弱い科目を余った時間で補強して、いわゆる偏差値というものを上げていけば認めてもらえるような雰囲気があったんです。逆転の発想で勉強を始めたら、偏差値が上がっていくうちにハーバードも射程に入ってきて。だから、なんとなくですね。
三原:なんとなく。
モーリー:もちろん、追い込みをかけて自分で知力や体力の増強、映画『ロッキー』みたいに早起きしてマラソンして生卵を飲むような(笑)、ああいう感じのこともやっていました。
「アメリカでは普通の子だったのに、日本に来るや否や不良みたいになっちゃった」と自身を振り返る。アメリカでは「勉強も恋もできることが素晴らしい」という価値観だったが、日本では男子校だったこともあり、交際が「不純異性交遊」と言われてしまうことがあったという。
モーリー:今となれば誤解だと思うんですけど、不良で危険な人物ということになっちゃって、クラブ活動も禁止されるぐらいだったんです。
三原:えー、つらい!
モーリー:つらいでしょ? このシステムのほうが間違っていると思うんだけど、僕は「1対全員」だから許されない。どうするんだといったときに、みんなが納得する成績という形で自分の能力を示せば、とりあえず「不良だとは言わせない」みたいになったんです。
モーリーは学校でのバンド活動が禁止されていたことから、他校の生徒とバンドを組むなど「裏をかく」こともあったそうで、それは「ある種ジョーク的な側面があった」と振り返る。
モーリー:言ってみれば、学校のシステムに矛盾を突きつけて「おかしいでしょ?」って。自分のなかでは対話をしているつもりなんですよ。17歳の時点でね。
三原:すごいバイタリティですね。
モーリー:だよね。今の僕にはできない(笑)。今だったら「あの生徒は危ないですよ」って先生に告げ口して報酬をもらうほうになるだろうね。「大人のズルさ」みたいなね(笑)。
DEAN:あはは(笑)。
■「白モーリー」と「黒モーリー」の存在
ほとんどワンマンショーの状態で語り続けるモーリーを前に、DEANはいつの間にか聞き手に回ってしまっていることに気づく。コメンテーターとして長年活躍をしてきたモーリーは、トーク内容には2種類の切り口があるとアドバイスする。
DEAN:普段モーリーさんの声を聞き慣れすぎて、自分がここにいることを一瞬忘れちゃった。
モーリー:あらら、失礼しました。
DEAN:違うんです。モーリーさんの「ニコニコ動画」(以下、ニコ動)をずっとチェックしているんですよ。それから、block.fmでモーリーさんがしゃべっている内容だったり、いろいろなところでモーリーさんが番組をやられていたりするのを観ていて。
モーリーは露出するメディアによって、自分の「白い部分」「黒い部分」のどちらを表に出すかが変わるという。
モーリー:「白モーリー」「黒モーリー」って言われているんです。オセロゲームの白と黒が入れ替わるみたいに、本当の黒いモーリーと、その腹黒さゆえにみんなに真っ白な潔癖さをみせて感動的なことや正論を言って「テレビに出てくれてよかった」ってファンレターがくるようなモーリー。
三原:なるほど。
モーリー:DEANさんはその両方を知ってる。
DEAN:そうですね(笑)。付き合いが長いので。
三原:ニコ動では黒モーリーのほうも出ているんですか?
モーリー:あれは結局のところ、黒く見せかけたファンサービスでしたね。
DEAN:あー、プロレスみたいな感じだったんですね。
モーリー:そうですね。だから「本音を言います」と言いつつお約束になっていくし、ニコ動の場合は購読システムで、相手の支払いにビジネスが依存し始めて、固定ファンを喜ばせないといけなくなる。そして固定ファンは濃くなると、だんだんと要求が強まってくるんですよ。
ファンからの要求により幅のある表現が許されなくなっていったと解説するモーリーは、自身の問題をレジェンドアーティストであるデヴィッド・ボウイの事例と重ね合わせた。
モーリー:デヴィッド・ボウイは自分の何百万もいるファンを3回ぐらい裏切っているんです。『ジギー・スターダスト』という髪の毛ツンツンで、あれの真似をしたのがシド・ヴィシャスでした。それが、あるとき急に今までの音楽スタイルを全部捨てて変わるんです。それを2、3回やって、それでも持ちこたえた。それと比較して言うのも変なんだけど、ニコ動をやっているときに「あ、これ『ジギー・スターダスト』から抜け出せなくなる」って。
DEAN:そのときに思ったんですか?
モーリー:ファンを裏切り始めたら文字でクレームが来るんですよ。「前に言っていたことと違う」みたいな。つまり「I changed my mind.」という「僕は考え方が変わった」ということが、あの世界だと許されない。「お金も払っているのに、なんで裏切るんだ」みたいな。
DEAN:お客さま感覚で。
モーリー:だったら最初からテレビに出て100、200万人を喜ばせて、うそつき放題のほうがいいんじゃない?
DEAN:うそつき放題(笑)。
モーリー:芸能人がいて芸人がいて、そのすぐ近くでニコニコしている僕がいればいいじゃないですか。みんなハッピーよ? お互いにそのほうがハッピーなんだから仮面夫婦だよね(笑)。
DEAN:あはは(笑)。
モーリー:カメラが向けられたときだけ「愛してる」とか言って(笑)。いわゆる「パブリックイメージ」って言葉があるけど、外から見た認識と本人の違いというかね。
三原:J-WAVEの人たちは、黒モーリーさんをよく知っているんじゃないですか?
モーリー:僕が来ると聞いて「まずい」って思った人もいるかもしれないし、なかには「何かやらかしてくれるんじゃないか」と期待している人がいるかもしれない。でもその人に言いたいのは、誰かがやらかすことを期待するなら自分がやらなきゃだめよっていう。
DEAN:確かにそうですね。
モーリー:逃げられるところで「あいつがやってくれると俺が気持ちいい」という話だから。そうじゃなくて、勇気をもって自分でやらなきゃね(笑)。
DEAN:おっしゃるとおりです。
『ROPPONGI PASSION PIT』は、東京・六本木に出現した、いろいろな人の“情熱”が集まり、重なり合い、さらに熱を増して燃え上がる秘密基地として、みんなの熱い思いを電波に乗せて発信。放送は毎週土用の23時から。
【この記事の放送回をradikoで聴く】(2020年6月27日28時59分まで)
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【番組情報】
番組名:『ROPPONGI PASSION PIT』
放送日時:毎週土曜 23時-23時54分
オフィシャルサイト: https://www.j-wave.co.jp/original/passionpit/