メロトロンやストリングスが効果的。アイルランド・ダブリンのSSW、Aoife Nessa Francesのデビューアルバム

J-WAVEの番組作りに携わるスタッフたち。日々、ジャンルを問わず音楽を聴き続けているラジオ番組制作者たちの、おすすめの楽曲やアーティストを紹介します。(J-WAVE NEWS編集部)


■Aoife Nessa Frances『Land of No Junction』(2020年1月リリース)

The Beatlesのサイケデリック期を代表する名盤『Sgt. Pepper's Lonely Hearts Club Band』。タイトルにあるSgt. Pepper(ペパー軍曹)はPaul McCartneyが飛行機で食事をしているとき、当時のローディーが言った「Salt and Pepper」という言葉を聞き間違えたことで生まれたと言われている。アイルランド・ダブリンを拠点に活動するシンガーソングライター、Aoife Nessa Francesのデビューアルバムのタイトル『Land of No Junction』も、彼女がウェールズにある町、Llandudno Junction(スランディドノ・ジャンクション)を聞き間違えたことで生まれた。

メロトロンやストリングスが効果的に使われる本作『Land of No Junction』は『Sgt. Pepper's Lonely Hearts Club Band』や『Magical Mystery Tour』のようなポップでサイケデリックな仕上がりになっている。特に「Blow Up」のアレンジはどちらかのアルバムに入っていても全く不思議じゃない。大学で映画を学んでいた彼女は、この曲のタイトルをMichelangelo Antonioniの映画から拝借している。フォークテイストな作品ではあるが、メロトロンのインスト曲「A Long Dress」やロックテイストな「Libra」のような曲もあってアルバム全体の構成も良い。

深く霧がかかったどこかの田舎町の一軒家の前で演奏されているようなタイトル曲「Land of No Junction」。ここがその場所だったのか。夢の中を漂いながら、最後に辿り着く“分岐点のない世界”。収録されている曲のうち一番長い6分を超えるトラックだか、とても短く感じるのは夢が覚めないことを願うからなのだろうか。



■執筆者プロフィール

・盛口薫(もりぐちかおる)

担当番組
『SAPPORO BEER OTOAJITO』
『TAKRAM RADIO』

ラジオ番組制作者。初めて生で見た有名人はカイヤ。この春、大阪にある実家が諸事情のため消滅したので、行き場を失ったCDがダンボールに入って、現在住んでいるワンルームのド狭い部屋に積み重なっている。

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